電池・電気分解

電池・電気分解
映像:(導入)電池・電気分解
☆ 電池
酸化還元反応を利用してエネルギーを取り打す装置
電池の内部構造は
還元剤(電子を放出)から酸化剤(電子を奪う)に電子が流れる
つまり酸化剤 (正極) から還元剤 (負極) に電流は流れる
::::
::::
・ボルタ電池
希硫酸に亜鉛板と銅板を浸したもの
負極では
Zn → Zn2+ + 2e−
正極では
2H+ + 2e− → H2
となり、銅板のところで水素が発生する
それが欠陥となり
・水素の泡で他の水素イオンが電子を受け取れなくなる
・H2 → 2H+ + 2e−
の逆反応が起こる
そのため、電圧が下がる 分極 がおきる。
::::
そのため、この水素の泡を消すために過酸化水素水などの 減極剤 を加える。
::::::
H2 O2 + 2H+ + 2e− → 2H2 O
となり,分極は起きなくなる。
・ダニエル電池
中央を素焼き板で仕切り、
1
亜鉛板 硫酸亜鉛水溶液 素焼き版 硫酸銅 銅板
としたもの。亜鉛はイオン化傾向が大きく、電子を放出するので(電流が入ってくる)負
極となり、
Zn → Zn2+ + 2e−
銅はイオン化傾向が小さく、電子を奪う(電流が出て行く)ので正極となる。
Cu2+ + 2e− → Cu
記号としては
(−)Zn|ZnSO4 aq|CuSO4 aq|Cu(+)
と表現する
※起電力の物理的な解釈
Zn → Zn2+ +2e− この反応の電位:(E = −0.763V) 負電荷を放出しているので負の値
Cu2+ + 2e− → Cu この反応の電位 (E = 0.340V)
という反応が起こっているので、これらの電位差は
0.340 - (-0.763) = 1.103 V となる。
・マンガン電池
正極活性物質として C に加えて MnO2 を加える
(−)Zn|NH4 Claq, ZnCl2 aq|MnO2 , C(+)
・鉛畜電池
(−)Pb|H2 SO4 |PbO2 (+)
負極の半反応式
Pb → PbSO4 は暗記
−
Pb + SO2−
4 → PbSO4 + 2e
正極の半反応式
PbO2 → PbSO4 は暗記
2
−
PbO2 + 4H+ + SO2−
4 + 2e → PbSO4 + 2H2 O
まとめると
Pb + PbO2 + 2H2 SO4 → 2PbSO4 + 2H2 O
この電池は極板が溶解しないので充電可能な 二次電池 と呼ばれる
::::::::
☆ 電気分解
陽極…電池の正極とつながれているところ
電流が流れ込むので電子が出て行くところ
陰極…電池の負極とつながれているところ
電流が出て行くので電子が入るところ
電解質中の反応は以下の通りである
・ 陽極の反応……電子が出て行く
0 イオン化傾向が高い金属電極は溶け出す
Zn → Zn2+ + 2e−
1 ハロゲン化物イオンが存在
2X− → X2 + 2e−
2 OH− が存在
4OH− → O2 + 2H2 O + 4e−
3 硫酸イオン、硝酸イオンがあるときは酸化されないので 2+4H+ より
2H2 O → O2 + 4H+ + 4e−
・陰極の反応……電子が入ってくる
1 銅、銀イオンが存在
Cu2+ + 2e− → Cu
2 水素イオンが存在
2H+ + 2e− → H2
3
3 イオン化傾向の大きい金属イオンがあるときは還元されず水が還元
2H2 O + 2e− → H2 + 2OH−
(ex) 塩化ナトリウム水溶液の電気分解
陽極
2Cl− → Cl2 + 2e−
陰極
2H2 O + 2e− → H2 + 2OH−
電解質を陽イオン交換膜で仕切れば Na+ が陰極付近に移動し
Na+ + OH− となり水酸化ナトリウム水溶液が生成する
☆ファラデーの法則
1mol の電子が持つ電気量は 96500[C]
電流 [A] は
I[C/S] =
Q
∆t
4
★★問題
1
次の記述のうちから正しいものを1つ選べ
A 塩化ナトリウム水溶液を電気分解すると、陽極付近に水酸化ナトリウムを生じる
B 希硫酸に浸した銅板と亜鉛板を導線でつなぐと、電子は銅板から導線を通って亜鉛板
で移動する
C マンガン乾電池で放電が起こると、負極の亜鉛は酸化される
D 白金を電極として、水酸化ナトリウムの水溶液を電気分解すると、水溶液中の水酸化
ナトリウムの物質量は減少する
E スズめっきしたブリキでは、表面のスズの一部がはがれても、内部の鉄板はさびにく
い
2
下の図に示す電気分解装置において、電解槽 A に硝酸銀水溶液、電解槽 B に塩化銅 (II)
を入れて電気分解したところ、A の陰極の質量が 8.10g 増加した。この電気分解によって
A と B の陽極で発生した気体の標準状態における体積はそれぞれいくらか。発生した気
体は水溶液に溶けないものとし、有効数字2桁で答えよ。ただし Ag=108.
A
B
C
Pt Pt
5
C
★★★問題
1
電解槽に塩化銅 (II) 水溶液を入れ、電気分解を行った。電極板は陽極が炭素 (黒鉛)、陰
極が白金である。電解後、陰極の質量が 1.27g 増加した。Cu=63.5
(1) 陽極、陰極で起こる反応の半反応式をそれぞれ記せ
(2) 陽極から発生した気体は標準状態で何 L か。有効数字3桁で答えよ
2
導線で接続した亜鉛板と銅板を希硫酸に浸し、電池を作成した。
(1) 正極、負極で起こる反応の半反応式をそれぞれ示せ
(2) この電池はしばらくすると電流が流れにくくなる。この現象を何というか。また、
それが起こる理由を答えよ
(3) (2) の現象を防ぐために、正極付近に過酸化水素水を加えることが多い。このとき
起こる正極のイオン反応式を示せ。
3
映像:(典型)電池・電気分解
ダニエル電池 (−)Zn | ZnSO4 aq | CuSO4 aq | Cu(+) を用いて硫酸銅 (II) の電気分
解を行った。電解層には 0.200mol/L 硫酸銅 (II) 水溶液 500mL が入っており、電極板は
ともに白金である。電解後、ダニエル電池の亜鉛板の質量が 3.27g 減少した。原子量は
Cu=63.5,Zn=65.4 として、有効数字3桁で答えよ
(1) 電解後の陰極の質量は何 g 増加するか
(2) 電解槽の陽極から発生した気体は標準状態で何 L か
4
映像:(典型)電池・電気分解
電 解 槽 I,II,III が 直 列 に 接 続 さ れ て お り 、I に は 35.0% 希 硫 酸 が 500mL,II に は
0.300mol/L 硝酸銀水溶液 500mL,III には 0.200mol/L 硫酸銅 (II) 水溶液 500mL が
そ れ ぞ れ 入 っ て い る 。電 極 板 は A が 酸 化 鉛 (IV),B が 鉛 、C,D,E,F は す べ て 白 金
である。電解中、D と F から標準状態で合計 896mL の気体が発生した.原子量は
H=1,O=16,S=32,Cu=63.5,Ag=108 として、以下の問に有効数字3桁で答えよ
6
A
I
B
C
D
II
E
III
F
(1)C と E の質量はそれぞれ何 g 増加するか
(2) 電解槽 I において、消費された硫酸は何 g か。また、生成した水は何 g か
7
★★★★問題
1 九州大
Zn|ZnSO4 (aq)||CuSO4 (aq)|Cu の構造を持つ電池は( ア )と呼ばれる。また,電池
の中で起こる反応は酸化還元反応である。そのため,より強い酸化剤と,より強い還元剤
を組み合わせたときほど高い( イ )力が得られる。酸化剤と還元剤が反応する場合,
還元剤が相手に与える( ウ )の数と酸化剤が相手から奪う( ウ )の数がつり合う
ような物質量の比で反応が進む。
問1 (ア)から(ウ)に適切な語句を入れよ。
問2 上の文中の下線部の電池に1時間電流が流れたとき,一方の電極の質量が 1.27g 増
加した。この間に一定電流が流れたとすると,流れた電流は何 A か.有効数字 3 桁で答え
よ。ただし,原子量は Cu=63.5,Zn=65.4, ファラデー定数=9.65 × 104 [C/mol] とする。
2 鳥取大
鉛畜電池で起こる化学反応は全体として次式で示される。
PbO2 + Pb + 2H2 SO4 2PbSO4 + 2H2 O
H=1.0,S=32,Pb=207, ファラデー定数 96500C/mol とする。
問1 次の文中の( )に適切な語句または数値を入れよ。
この電池の放電時には,正極では,( A ) が( B )され PbSO4 が生じ,一方,
負極では,( C ) が( D )され PbSO4 が生じる。その際,正極物質中の鉛の酸
化数は( a )から ( b ) へ,一方,負極物質中の鉛の酸化数は( c )から( d )へ変化する。
問2 一部放電して電解液中の硫酸濃度が 30%(重量パーセント濃度) になった電池を,
0.50A の一定電流で 2 時間充電すると硫酸濃度は何 % になるか。有効数字 3 桁で求めよ。
ただし,充電前の電解液の質量は 100g であり,流れた電流はすべて充電反応に使われた
ものとする。
8
3 防衛大
塩化銅 (II) 水溶液を入れたビーカーに炭素棒の電極 2 本を入れ,電気分解した。その結
果,陰極の表面に赤みを帯びた物質が析出した,電極の質量は 7.90g 増かした。一方,陽
極からは気泡が発生した。
問1 陽極および陰極で起こった反応を反応式で示せ。
問2 陽極から発生した気体の体積は標準状態で何 L か。ただし,気体は理想気体で,
Cu=63.5 とし,数値は四捨五入して有効数字 2 桁まで求めよ。
4 東京理科大
図のような電解槽を2つ直列につないで電気分解を行った。電解槽 I には硫酸銅の水溶液
が,電解槽 II には陽イオン交換膜をはさんで陽極側には 1mol/L の塩化ナトリウム水溶
液が 1L, 陰極側には 0.1mol/L の水酸化ナトリウム水溶液が 1L 入っている。電解質 I の
電極は銅製,電解槽 II の電極は白金製である。
ある一定の電流で1時間電解したところ,電解槽 I の陰極側で,陰極の重量が 6.35g 増加
した。
このときの電解質 II の陰極側の水酸化ナトリウムの濃度 [mol/L] はいくらになるか。
ファラデー定数=96500C,Cu=63.5, 小数第2位を四捨五入し,発生した気体は溶液に溶
けず溶液の体積は変化せず,電解槽 I では気体は発生しないものとする。
9
★★★★★問題
1 東工大
次の記述アからエの中の金属 A から E は鉄、白金、亜鉛、銀、銅のいずれかである。
ア A の塩の水溶液に B,C,D それぞれを浸すと、いずれの場合も表面に A が析出したが
E を浸しても A は析出しなかった
イ B と C を希硫酸に浸し導線でつなぐと、導線を通じて C から B ヘ電流が流れた。
ウ C を希硫酸に浸しても気体は発生しなかったが、C に D を希硫酸中で接触させると
C の表面から気体が発生した
エ B を浸した B の塩の水溶液と D を浸した D の塩の水溶液を素焼き板で仕切り B と
D を導線でつなぐと B は時間とともに質量が増加し、D は逆に減少した。
(1) イオン化傾向の大きい順に並べよ
(2) 鉄に対等するのは A から E のうちどれか
2 北大
問1 硫酸は水溶液中で次のように電離している
H2 SO4 H+ + HSO−
4
2−
+
HSO−
4 H + SO4
硫酸は強酸として知られているので、100% 完全に電離している印象を与える。しかし、
実際には第1段目は完全電離であるが、2段目は電離定数が 2 × 10−2 [mol/L] の電離と
なっている。
問1 硫酸の濃度が 2.0 × 10−2 mol/L の水溶液がある。HSO−
4 の電離度 α を有効数字2
桁で、pH の値を小数点以下第2位まで求めよ。log 2 = 0.30 とする。
問2
鉛蓄電池は希硫酸を電解質溶液に用いている。この鉛畜電池を使用した後に、電解質溶液
を調べたところ、使用前 34% あった硫酸の質量パーセント濃度が 32% になっていた。使
用前の電解質溶液の質量を 200g として、以下の問に答えよ。H=1,O=16,S=32 とする。
(1) 放電したとき、正極の鉛の酸化数は(a)から(b)に変化する。(a),(b) に正しい数
値を入れよ
(2) 放電の結果として生成した水の質量 [g] を有効数字2桁で求めよ
(3) 充電してもとの状態に戻すには 1A の一定電流で何分通電しなければならないか有
効数字2桁で答えよ。ここで流れた電流は充電反応以外にはつかわれないものとし、また
1F=96500C とする。
10
3 東工大
図のように接続したダニエル電池(起電力は約 1.1V)を用いて鉛蓄電池を接続したとこ
ろ、鉛蓄電池は充電され,鉛蓄電池の正極および負極の質量の和は 48mg 減少した。この
とき次の問に答えよ。O=16,S=32,Cu=63.5,Zn=65.4,Pb=207,F = 96500[C/mol] とす
る。
(1) 鉛畜電池に流れ込んだ電気量 [C] を求めよ
(2) 6個のダニエル電池の正極および負極の重量変化の総和を求めよ
4 京大
映像:(難問)電池・電気分解1
次の文を読んで(イ)から(チ)に適した数値または数式を、また (a) から (i) について
は [A 高く B 低く C 酸化 D 還元 E 正極 F 負極] から正しいものを選べ。ただ
し(チ)の数値は有効数字2桁で答えよ。また、1 ファラデー=96500C とする
メタンを空気中の燃焼させると、次の反応により熱を放出する
CH4 + 2O2 = CO2 + 2H2 O(気体) + 807kJ……………(1)
また、メタンは次の反応で水蒸気と反応し、水素と一酸化炭素を生成する
CH4 + H2 O(気体) = 3H2 + CO − ( イ )kJ……………(2)
水素と一酸化炭素も空気中で燃焼させると、次の反応により熱を放出する
2H2 + O2 = 2H2 O(気体) + 484kJ…………(3)
2CO + O2 = 2CO2 + 560kJ……………(4)
式 (2) の速度は、温度が( a )なったり、反応物質の圧力が( b )になると速く
なるが、化学平衡は、温度が( c )なったり、反応物質の圧力が( d )になると
右辺に移動する。式 (3)(4) の反応の化学平衡は温度が( e )なったり、反応物質の圧
力が( f )になると右辺に移動する。
2mol の水と 1mol のメタンの入った容器を 300K に保つと、容器内の圧力はちょうど 1 気
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圧になった。温度を上昇させ、600K で一定に保つと式 (2) の反応が進み、メタンの xmol
が反応して平衡に達した。このとき、容器内の全物質の量は( ロ )mol となり、圧力
は( ハ )気圧となった。ただし、すべての水は 300K では液体であり、600K では気
体であるとし、液体の体積は無視できるものとする。また、温度変化による容器の体積変
化も無視できるものとする。
式(3),(4) の反応を利用して電池を作ることができる。高温融解状態にある炭酸ナトリ
ウムを電解質溶液に用いた。図のような電池が研究されている。図の A 室にメタンと水
蒸気の混合気体を連続的に導き、触媒を使って式 (2) の反応をさせた後、電池の B 室にメ
タン、水蒸気、一酸化炭素の混合気体を導く。B 室の電極では水素と一酸化炭素のみが、
電解溶液中の CO2−
3 と反応し、式 (5),(6) に示すように( g )されて消失する。
−
H2 + CO2−
3 → H2 O + CO2 + 2e …………(5)
−
CO + CO2−
3 → 2CO2 + 2e ………………(6)
一方、電室の C 室に、充分な量の二酸化炭素を混合した空気を導くと、C 室の電極で酸
素と二酸化炭素が反応し、酸素が( h )されて CO2−
3 が生成して電解質溶液中にと
け込む。式 (5),(6) の反応が式 (2) の反応に比べ、はるかに速いものとすれば、A 室でメ
タンが 1mol 消失するときに、B 室では( 二 )mol の水素と1 mol の一酸化炭素が消
失し、C 室では( ホ )mol の酸素と( へ )mol の二酸化炭素が消失する。このと
き、
( ト )ファラデーの電気量が外部回路に流れ、端子 B が電池の( j )となり、
電池の電圧は 0.80V を示した。この電池を用いると式 (1) で得られる熱エネルギーの( チ )% の電気エネルギーが得られることになる。
5 阪大
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石油や天然ガスの成分である炭化水素を燃焼すると大量の熱が発生する。例えば、0 ℃、
1.0 × 105 [Pa] におけるメタンの燃焼熱は 890kJ/mol, エタンのそれは 1560kJ/mol であ
る。いま、この燃焼反応の逆反応を起こすことを考え、下図のような装置を組み立てて、
太陽エネルギーから太陽電池により電力を取り出し、この電力を利用して、電気分解によ
り水と二酸化炭素から炭化水素を作ることを試みた。電気分解装置の陽極には白金板を陰
極には銅板を用い、0.1mol/L の炭酸水素カリウム水溶液を電解質溶液として、陰極側の
溶液に二酸化炭素を吹き込んだ(このとき、二酸化炭素は CO2 分子として溶けており、
溶液の pH は 6.8 であった)。陰極と陽極を導線で太陽電池につなぎ、太陽電池に光をあ
てて電流を発生させると陰極上でメタンが発生した。
問1 エタンの燃焼反応の熱化学方程式を書け
問2 飽和炭化水素分子に含まれるすべての C-H 結合および C-C 結合がそれぞれ等しい
結合エネルギーを持つと仮定して、メタンとエタンの燃焼熱からプロパンの燃焼熱を求め
よ
問3 中性水溶液の電気分解において、陰極上で水素が発生する反応は次の式となる
2H2 O + 2e− → H2 + 2OH−
この例にならって、陰極上でメタンが生成する反応を式で表せ
問4 太陽電池で発生する光電流は 0.50A で一定であった。この電流の 30% がメタン
の生成に利用されたとして, 標準状態でメタンを 100cm3 得るのにどれだけの時間がか
かるか。分を単位として有効数字2桁で答えよ。ただし気体はすべて理想気体として、
1F=96500C とする。
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