本科 / 実戦トレーニング期 / Z Study 解答解説編 / 東大コース 化学 見 本 XCAR4A-Z1C2-01 《電気分解》 次の文章を読み,下の問 1∼問 3 に答えよ。ただし,ファラデー定数 は F = 9:65 £ 104 C=mol,原子量は H = 1:0,O = 16:0,S = 32:0,Cu = 63:5, Pt = 195:1 とする。 (25点) 濃度未知の硫酸銅(Ⅱ)水溶液を 200 mL ずつ 2 個のビーカー A,B に 入れ,一方には一対の白金電極を,他方には一対の銅電極を浸して,右 図のように直列回路を組んで電気分解を行ったところ,次の⑴,⑵の結 果を得た。なお,銅電極は微量の他の金属を不純物として含んでいる。 ⑴ 1.0 A の一定電流をある時間流した後,A の電極を取り出し,乾燥させてから質量をはか ったところ,陽極の質量は 0.832 g 減少し,陰極の質量は 0.794 g 増加していた。また,こ こまでの電気分解では,A,B ともに陰極からの気体発生は見られなかった。 A の陽極の質量減少 ) 電極の溶解 ⑵ その後,再び電極をビーカーに戻し,同じ電流をさらに流して電気分解を続けると,B 内 の溶液は無色になった。その後,B の電極を取り出して同じように質量変化を調べると,陰 極の質量は,初めよりも 1.27 g 増加していることがわかった。 B 内の溶液が無色になった ) Cu2+ (青色)がすべて Cu として析出した 問1 ⑴の電気分解で,A,B の陽極と陰極で主に起こる反応を,それぞれ電子 e¡ を含むイ オン反応式で表せ。ただし,不純物として含まれる金属は考えなくてよい。 問2 ⑴の電気分解によって,B 内の水は何 g 減少したか。有効数字 3 桁で答えよ。ただし, 水の蒸発は考えないものとする。 問3 (8点) (8点) ⑴,⑵を合わせて 1.0 A の電流を 2 時間流したとき,B で発生した気体の全体積は,標 準状態で何 L になるか。有効数字 2 桁で答えよ。ただし,標準状態における気体 1 mol の 体積は 22.4 L と考えてよく,発生した気体の水溶液への溶解は無視できるものとする。 (9点) 1:0 £ 602 £ 2 流れた電子の物質量; 〔mol〕 9:65 £ 104 XCAR4A-Z1C2-02 解 答 陽極;2H2 O ¡! O2 + 4H + 4e 問2 B ¡! Cu + 陰極;Cu2+ + 2e¡ ¡! Cu ¡ …………………③ …………………………④ ②式より,A を流れた電子の物質量は 0:794 £ 2 = 2:500 £ 10¡2〔mol〕 63:5 直列回路だから,B にも A と同じ物質量の電子が流れるので, ③式より,B で分解される H2 O の物質量は 2:500 £ 10¡2 £ 1 = 1:250 £ 10¡2〔mol〕 2 よって,求める H2 O の質量は 18:0 £ 1:250 £ 10¡2 = 0:2250〔 g 〕 答 問3 0.225 g 流れた電子の物質量は 1:0 £ 602 £ 2 = 7:46 £ 10¡2〔mol〕 9:65 £ 104 B の陽極で発生する O2 の物質量は,③式より 1 £ 7:46 £ 10¡2 = 1:86 £ 10¡2〔mol〕 4 ………………⑤ 一方,B の陰極では,まず,④式より,Cu の析出が起こる。 Cu 1.27 g の析出に要した電子の物質量は 1:27 £ 2 = 4:00 £ 10¡2〔mol〕 63:5 流れた電子の物質量は 7:46 £ 10¡2 mol なので,残りの電気量 で 2H+ + 2e¡ ¡! H2 の反応により H2 が発生すると考えると,発生する H2 の物質量 は 1 £ (7:46 £ 10¡2 ¡ 4:00 £ 10¡2 ) = 1:73 £ 10¡2〔mol〕 2 ………⑥ よって,⑤式,⑥式より,B で発生した気体の全体積は,標準 状態で,次のようになる。 22:4 £ (1:86 £ 10¡2 + 1:73 £ 10¡2 ) = 0:804〔 L 〕 答 0.80 L 電極として白金を用いた場合 と銅を用いた場合とでは,陽 極における反応が異なるが, その違いを押さえる。 ▲ …………………………② + 2e 問 1 の②式の係数に着目す る。 ▲ 陰極;Cu 答案作成のポイント 問 1 の③式の係数に着目す る。 ▲ ¡ 問 1 の③式の係数に着目す る。 ▲ …………………………① 2+ 問 1 の④式の係数に着目す る。 ▲ 陽極;Cu ¡! Cu2+ + 2e¡ A [流 れ た 電 子 の 物 質 量 = Cu ▲ 問 1 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ の析出に使用された電子の物 質量 + H2 の発生に使用され た電子の物質量] という関係 を読み取る。 XCAR4A-Z1C2-03 解 説 A の電極 A で用いた電極が純粋な Cu であれば,各電極では,次の反応 によって同質量の Cu の溶解および析出が見られるはずである。 陽極;Cu ¡! Cu2+ + 2e¡ 陰極;Cu2+ + 2e¡ ¡! Cu しかし,他の金属を微量に含んでいるときは,含まれる金属の イオン化傾向の大小により,陽極では次のような変化が見られ る。 Cu よりもイオン化傾向が大きい金属 ! Cu よりも先にイオン化して溶液中に溶解する。 Cu よりもイオン化傾向が小さい金属 ! 単体のまま沈殿する。 このため,各極板の質量変化は等しくならない。 B の電極 B の各電極における反応は次の通りであり,陽極では H2 O が 酸化されて O2 が発生する。 陽極;2H2 O ¡! O2 + 4H+ + 4e¡ 陰極;Cu2+ + 2e¡ ¡! Cu Zn,Fe,Ni な ど が 溶 解 す ▲ は各極板の質量が変化していることから,A が Cu 電極,B が Pt 電極となる。 る。 Zn ¡! Zn2+ + 2e¡ Fe ¡! Fe2+ + 2e¡ Ni ¡! Ni2+ + 2e¡ Ag や Au な ど が 沈 殿 す る。 ▲ Pt 電極は酸化されにくく,極板の溶解は起こらない。A で これらは陽極泥とよばれる。 CuSO4 水 溶 液 は 弱 酸 性 で, 溶液中の OH¡ はわずかであ るので 4OH¡ ¡! O2 + 2H2 O + 4e¡ とは表さない。 ▲ 問1 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ XCAR4A-Z1C2-04 問1 水が電気分解されるとき,水溶液の液性によって,次のように反応式は使い分けて考える。 陰極 酸性溶液中では H+ が還元されるが,中性・塩基性溶液中では水の電離による H+ の補給が必要 で,結果的に H2 O が還元される。 陽極 塩基性溶液中では OH¡ が酸化されるが,酸性・中性溶液中では水の電離による OH¡ の補給が 必要で,結果的に H2 O が酸化される。 したがって,電極の反応式としては,次の組合せが妥当である。 液性 例 酸性 H2 SO4 水溶液 2H+ + 2e¡ ¡! H2 陰極の反応式 2H2 O ¡! O2 + 4H+ + 4e¡ 陽極の反応式 中性 Na2 SO4 水溶液 2H2 O + 2e¡ ¡! H2 + 2OH¡ 2H2 O ¡! O2 + 4H+ + 4e¡ 塩基性 NaOH 水溶液 2H2 O + 2e¡ ¡! H2 + 2OH¡ 4OH¡ ¡! O2 + 2H2 O + 4e¡
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