配置規定要因分析に基づく施設再配置計画立案支援

GIS -理論と応用
Theory and Applications of GIS, 2011, Vol. 19, No.1, pp.37- 46
【原著論文】
配置規定要因分析に基づく施設再配置計画立案支援
貞広幸雄 *・岩本晃一 **
Decision support method based on the analysis of regulative factors
on facility relocation problem
Yoshio SADAHIRO*, Koichi IWAMOTO**
Abstract: Population decrease is one of the most critical issues in urban planning in developed
countries. This requires us the closure, integration and size reduction of public facilities for economic efficiency. This paper proposes a new decision support method of facility relocation in population
decrease. A focus is on providing a knowledge basis for participants of collaborative planning to
understand the properties of facility location problem that they are facing. Specifically, the relationship between the flexibility of facility location and regulative factors is analyzed. The properties of
facility location problem are described by quantitative measures and visualized by tables, figures
and maps. The method is applied to the school reduction planning in Inage Ward, Japan. It reveals
the properties of the method as well as provides empirical findings.
Keywords: 意 思 決 定(decision support),規 定 要 因(regulative factors),利 用 者 減 少(user
decreasing)
,参加型計画立案(collaborative planning)
1.はじめに
ることも可能である(Mirchandani and Francis, 1990;
近年の都市計画における大きな課題の一つとし
Drezner, 1995; Drezner and Hamacher, 2004).例えば
て,人口減少に対応する都市施設再配置がある.小
利用者の利便性を制約条件,それを満たす最小施設
中学校や各種行政施設など,余剰施設の効率的運営
数を目的関数とする集合被覆問題として定式化する
には既存施設の統廃合が不可欠である.
という方法である.但しこの場合,定式化や求解は
施設再配置計画には,為政者や地域住民などの多
専門家以外には困難であり,また,多様な要因を考
様な参加者が参加する.そのため,地図や図表など
慮した柔軟な計画立案も必ずしも容易ではない.後
を利用した視覚的分析に基づく定性的議論がよく行
者の問題については,多目的最適化モデル(Ross,
われる(Saaty and Peniwati, 2007).現状の施設配置
1980; Current et al., 1990; Melachrinoudis et al., 1995)
と,施設利用者の経年変化を地図やグラフなどの形
を用いることで,意思決定における柔軟性をある程
で可視化し,観察結果に基づいて計画を立案する.
度確保することが可能である.しかしながら,全て
この方法には,誰もが比較的理解しやすく,また,
の要因を定量的に扱い,計画立案に関わる参加者の
多くの要因を様々な視点から評価しつつ施設配置を
意見を完全に反映することは現実的には不可能であ
論ずることができるという長所がある.他方,計画
る.
の根拠に客観性や理論性が乏しく,最終案が説得力
そこで本研究では,既存手法の問題を解決するた
を欠くことも少なくない.
めに,新たな施設配置計画立案支援手法を開発する.
客観性を重視する場合,施設配置計画を空間的
特にここでは参加型計画立案を想定し,参加者に対
最適化問題として定式化し,その解を計画案とす
して有用な情報提供を行うことに主眼を置く.施設
正会員 東京大学大学院工学系研究科(University of Tokyo)
〒 113-8656 東京都文京区本郷 7-3-1 E-mail:[email protected]
** 学生会員 東京大学大学院工学系研究科(University of Tokyo)
*
- 37 -
配置計画の背後にある規定要因を可視化し,それを
3.施設配置規定性分析
ふまえた施設配置案を複数提示した上で,最終的な
3.1 暫定配置案群導出
意思決定は参加者に委ねる.
施設配置案には,計画立案参加者の価値観が強く反
本論文では,人口減少下における既存施設の存廃
映される.そこで本論文では,施設配置に対する価
のみを論ずる.手法自体は,施設の移設や統合,新
値観の規定性を分析するために,2 通りの異なる価
設などにも適用可能であるが,説明を容易にするた
値観に基づいて暫定施設配置案群を導出する.
め,議論の対象を既存施設の統廃合に限定する.
いま,ある地域の全既存施設数及び利用者数を M
以下,2 節及び 3 節において,本論文で提案する
及び N,その要素をそれぞれ F(i=1,
2, ..., M),利用
i
施設配置計画立案支援手法を説明する.4 節では,
者を U(
j j=1, 2, ..., N)とする.人口減少下では,既
提案した手法を小学校再配置計画立案支援に適用
存施設を統廃合して効率化する必要があり,そのた
し,手法の妥当性と有効性の検証を行う.5 節では
めの暫定配置案を X と表す.配置案 X における施
結論をまとめ,今後の研究課題について述べる.
設 Fi の存廃を表す二値関数を (X)
とし,Fi を存続
fi
するときに 1,廃止するときに 0 とする.
2.施設配置計画の概略と前提
配置案 X における Fi の施設容量を c(X)
,施設
i
施設配置計画,特に,多数の参加者が関わる場合
接近性を a(X)とする.後者は,利用者
Uj が Fi を
ij
には,施設配置問題自体の理解が重要である.施設
利用できるときに 1,そうではないときに 0 をとる
配置案は,参加者の多様な価値観に基づく様々な条
二値関数である.
件を満たすことが要求されるが,条件が規定的であ
るほど計画は硬直化し,最終的な合意形成が困難に
1)確率法
なる.円滑な施設配置計画のためには,施設配置の
確率法では,施設接近性と施設容量という 2 つの
規定要因を分析し,その結果を計画立案参加者が共
基礎要件を要望条件,即ち,いずれも達成が必須で
有することで,条件の修正等を含む柔軟性の確保が
はないが望ましい条件と見なす.従って,得られる
重要である.
配置案では必ずしも全ての利用者が利用可能な施設
以上をふまえ,本論文では,1)施設配置規定性
を持つわけではなく,また,各施設の利用者数が容
分析,2)配置案群導出,3)最終配置案決定,とい
量を超えることも有り得る.
う 3 つの段階で構成される施設配置計画立案支援手
施設配置の適切性は様々な観点から評価できる
法を提案する.このうち 1)はさらに i)暫定施設
が,一般的には,必要性の高い施設を多く,必要性
配置案群導出,ii)施設重要性評価,iii)暫定配置案
の低い施設をあまり含まない配置ほど適切である.
の適切性評価,iv)暫定施設配置案群の柔軟性評価,
そこでここでは,現在の配置状態における各施設の
の 4 つに分かれており,次節で順次詳細に説明する.
重要性を利用者の確率選択モデルに基づいて以下の
施設配置計画には,重要性の異なる様々な条件が
ように評価する.
付される.そのうち本論文では特に,施設接近性と
各施設利用者は,全利用可能施設のうち一つを等
施設容量を重要な条件とみなし,これらを基礎要件
確率で選択すると仮定すると,利用者 Uj が Fi を利
と呼ぶ.施設接近性とは施設の利用しやすさを表す
用する確率は
概念であり,通常は施設までの距離の減少関数とし
て表現される.他方,相対的に重要性の低いその他
cij ^Xh =
の条件を拡張要件と呼び,最終的な配置案を決定す
である(現状で利用可能な施設を持たない利用者は,
る 3)の段階においてのみ検討の対象とする.
計画対象から除外する).もちろん,現実の施設利
1
!a
ij
i
^Xh
(1)
用はより多様な要因に基づいて行われるが,その詳
細が明らかではない場合の近似としては妥当であろ
- 38 -
この場合,施設配置は集合被覆問題として以下の
う.なおこのとき,施設 Fi の期待利用者数は
ni ^Xh =
!c ^Xh
(2)
ij
j
ように定式化できる.
で与えられる.
^ min
h
^
このモデルに基づき,各施設の重要性,即ち,人
subject to
口減少下でも存置する必要性の高さを,0 ~ 1 の変
!x
fi X , xij Xh
域を持つ以下の 3 つの指標値で表現する.
ij
まず接近要請度とは,各施設を選択する利用者の
j
!x
ij
j
! f ^Xh
i
(6)
i
^Xh # ci fi ^Xh, 6j
^Xh aij ^Xh = 1, 6j
(7)
選択確率の最大値であり,以下の式で与えられる.
ここで,x(X)は利用者
Uj の施設 Fi に対する割
ij
cij ^Xh oi ^Xh = max
j
り当てを表す二値関数である.制約条件はそれぞれ,
(3)
A
利用者数が施設容量を超えない,全ての利用者が必
である.利用可能施設の少ない利用者ほど,各施設
ず 1 つの施設に割り当てられることを表す.
の選択確率は大きくなり,そのような利用者を有す
この問題では,M 及び N が十分に小さな場合に
る施設の接近要請度は高くなる.次に容量要請度と
は総当たり法により最適解を,そうでないときにも,
は,期待利用者の多い施設ほど重要であるという前
発見的解法によって十分に良い近似解を得ることが
提に基づき,各施設の容量に対する期待利用者数の
できる.以下,得られた最小施設数を Mmin とする.
比として定義される.
但し,Mmin を実現する暫定配置案は複数存在しうる
oi ^Xh = min *
C
ni ^Xh
, 14
ci ^Xh
(4)
上限値の 1 は,期待利用者数が容量を超える施設
ことから,それらを可能な限り列挙して暫定配置案
群とする(詳細は Sadahiro and Sadahiro(2009)を参
照のこと).
が必須であるということを表す.
さらに,これら 2 つの要請度のうち,大きな値を絶
3.2 施設重要性評価
対要請度と呼ぶ.
上で得られた K 個の暫定配置案を {X1, X2, ..., XK}
oi ^Xh = max #oi ^Xh, oi ^XhA
C
(5)
とし,次に,各施設の重要性を配置案毎に評価する.
まずは,前述した 3 つの要請度(接近,容量,絶
絶対要請度は,各施設の総合的な必要性の高さを
対)を用いる.確率法の場合,利用者の施設利用を
表す指標である.
確率現象とみなすことから,式(2)~(5)において X
次に,絶対要請度を存続確率とする確率過程に
を Xk とした値が,そのまま施設配置案 Xk の要請度
よって,暫定配置案群を導出する.即ち,各施設は
となる.他方最適化法の場合,利用者の施設への割
それぞれ独立に確率 o(X)で存続するという多項
i
り当ては確率現象ではなく確定的である.しかし,
分布を想定し,それを計算機上でシミュレートして
同一の施設配置案であっても,利用者の施設への割
多数の暫定配置案群を導出する.この場合,配置案
り当ては必ずしも一意に定まるわけではない.従っ
によって施設数や配置は異なり,重要性の高い施設
て原理的には,最小施設数を実現する全ての利用者
ほど多くの案に含まれることになる.
割り当ての組み合わせを母集団とし,そのうちで利
用者 Uj が施設 Fi に割り当てられる組み合わせの割
2)最適化法
合と施設選択確率と見なすことで,利用者の施設利
最適化法では,基礎要因を必ず満たすべき条件,
用を擬似的に確率現象として捉え,確率法の場合と
また,施設数を配置案の適切性の基準と考える.即
同様に要請度が計算できる.もちろん,全ての割り
ち,基礎要因を制約条件とし,施設数を最小化する
当ての組み合わせを列挙することは実際上不可能で
施設配置を導出,それを暫定配置案として取り扱う.
あり,モンテカルロシミュレーション等による近似
- 39 -
計算が必要である.
一方確率法では,必要性の高い施設が多く含まれ
上記 3 つの要請度に加え,さらに様々な数値指標
る案ほど適切であると見なす.この価値観に沿った
が利用可能である.例えば施設の占有率,即ち,各
評価枠を確率法評価枠と呼び,KS と表す.この場
施設の利用者数の容量に対する割合の平均値を用い
合例えば,各配置案の評点を
ることで,施設の利用効率を評価することができる.
これは,確率法,最適化法によって得られた結果に
s_ Xk , Ksi=
ついて,それぞれ以下の式で定義される.
1
pi = K
1
pi = K
n _X i
! ci_Xki
k
i
k
!
k
ij
j
k
i
i
0
k
i
0
i
k
i
0
i
i
k
i
0
(11)
と定義することで,絶対要請度の高い施設を多く含
む配置案に高い評価を与えることができる(定義に
k
ci _ Xk i
i
i
k
(8)
! x _X i
%9 f _X i o _X i+$1- f _X i. $1-o _X i.C
!%9 f _X i o _X i+$1- f _X i. $1-o _X i.C
(9)
関する詳細は Sadahiro(2010)を参照のこと).
最適化法に基づく暫定配置案導出では,配置案の
また利用者の利便性を考えると,施設利用者の施
適切性は施設数によって評価できる.最も簡単な評
設までの平均移動距離なども有効な指標である.
価方法は,施設数を最小化する案にのみ点数を与え
以上の指標は,各施設の重要性を示すものである
るものである.この評価枠を最適化法評価枠と呼び,
が,そこには施設配置に対する価値観の規定性が反
KM と表す.この場合,施設数を最小化する案の個
映されている.従ってこれらを地図上に図示し,施
数を KM として,評点は以下のように定義される.
設利用者の空間分布などと比較対照しながら論ずる
ことで,基礎要件による規定性の地域的な差異を把
握することができる.
1 if ! f _ X i = M
i
k
min
s _ Xk , KM i = * K M
i
0
otherwise
(12)
あるいはまた,最小施設数を実現する暫定配置案に
3.3 暫定配置案の適切性評価
ついて,他の評価指標,例えば,利用者の平均移動
次に,評価枠と評点という新たな概念を導入し,
距離の逆数を評点に重み付けするという方法もあり
各暫定配置案の適切性を評価する.
得る.このような評価枠を修正最適化法評価枠と呼
評価枠とは,配置案の評価基準を与える枠組みで
び,KM' と表す.
あり,K と表記する.評価枠も上述の評価指標群
以上 4 つの評価枠による暫定配置案の評点例を模
と同様,施設配置に対する価値観を反映しており,
式的に図 1 に示す.均等評価枠 K0 では全ての案に
個々の価値観に応じて様々な評価枠が考えられる.
等しい評点が与えられているのに対し,確率法評価
評点とは,所与の評価枠において各配置案の適切
枠 KS では必要性の高い施設が存続する案により高
性を数値で表現したものであり,全ての配置案の総
い評点が与えられている.また,2 つの最適化法評
和が 1.0 となるように基準化されているものとする.
価枠ではいずれも,施設数を最小化する暫定配置案
最も単純な評価枠は,全ての実現可能な配置案(2
M
にのみ正の評点が与えられているが,その値は KM
通り)が全て同程度に適切であるか,或いは適切性
では均等であるのに対し,利用者の移動距離を勘案
の評価が困難であると見なす考え方である.このよ
した KM' ではより適切な位置に施設の存続する案に
うな評価枠を本論文では均等評価枠と呼び,K0 と
より高い評点が与えられている.
表す.この場合,全ての配置案は同等に扱われるた
め,各配置案の評点は以下のように均等である.
s _ Xk , K0i = 1
K
(10)
- 40 -
5/10
【審査用原稿用紙】

   
0
S
M
M'




















各施設配置柔軟度の差を基礎要件の影響と考えれば
例えば
よい.例えば


    0 
(14)
(14)
は,施設接近性と施設容量を要望条件と見なしたと
は,施設接近性と施設容量を要望条件と見なしたと
きの施設配置の柔軟性低下,即ち,2 つの基礎要件
きの施設配置の柔軟性低下,即ち,2 つの基礎要件
の要望条件としての規定性を表す.一方,これらを
の要望条件としての規定性を表す.一方,これらを
必須条件と見なす場合,その規定性は
必須条件と見なす場合,その規定性は
 
  
1 次元空間に立地する
7 つの既存施設
図図
1 1 1 次元空間に立地する
7 つの既存施設の統廃
の統廃合案に対する,4
つの評価枠に
合案に対する,4
つの評価枠による評点.黒丸は存
よる評点.黒丸は存続する施設,白
続する施設,白丸は廃止する施設,下の数字は各施
設の絶対要請度を表す.
丸は廃止する施設,下の数字は各施
設の絶対要請度を表す.
3.4 暫定施設配置案群の柔軟性評価
前述の通り,評価枠は施設配置に対する価値観を
3.
4 暫定施設配置案群の柔軟性評価
反映したものである.従って,評価枠自体を分析す
前述の通り,評価枠は施設配置に対する価値観を
ることにより,価値観の規定性が施設配置案の柔軟
反映したものである.従って,評価枠自体を分析す
性に対して及ぼす影響を評価することができる.
ることにより,価値観の規定性が施設配置案の柔軟
最終的な意思決定段階において,配置案群の評点
性に対して及ぼす影響を評価することができる.
が比較的均等な場合には,多くの配置案について多
最終的な意思決定段階において,配置案群の評点
様な要因を考慮した総合的な比較検討を行うことが
が比較的均等な場合には,多くの配置案について多
できる.反対に,一部の配置案の評点のみが高い場
様な要因を考慮した総合的な比較検討を行うことが
合には,実質的な選択肢が少なく,最終的な意思決
できる.反対に,一部の配置案の評点のみが高い場
定での柔軟性は低下する.
合には,実質的な選択肢が少なく,最終的な意思決
こうした評点の偏りを定量化するために,ここで
定での柔軟性は低下する.
は配置案群からの最終配置案決定を,各配置案の評
こうした評点の偏りを定量化するために,ここで
点を選択確率とする確率過程と見なす.すると,確
は配置案群からの最終配置案決定を,各配置案の評
率分布の偏りはシャノン情報量(Shannon, 1951)に
点を選択確率とする確率過程と見なす.すると,確
よって評価することができる.即ち,配置案群{1,
率分布の偏りはシャノン情報量(Shannon, 1951)に
2, ..., K}より,評価枠による評価に基づいて最終
よって評価することができる.即ち,配置案群 {X1,
配置案を選択する場合,施設配置柔軟度を
X2, ..., XK} より,評価枠 K による評価に基づいて最
      s  k ,   log s  k ,   (13)
終配置案を選択する場合,施設配置柔軟度を

k
と定める.この値は,配置案群の評点が均等なほど
U^ Kh = -! s _ Xk , Ki log s _ Xk , Ki
(13)
k


S   S
TU_ K
S i = U _ KS i - U _ K0i
大きくなり,選択の柔軟性が高いことを表す.
と定める.この値は,配置案群の評点が均等なほど
施設配置柔軟度の異なる評価枠間での比較により,
大きくなり,選択の柔軟性が高いことを表す.
基礎要件の規定度が評価できる.即ち,任意の基礎
施設配置柔軟度の異なる評価枠間での比較によ
要件の有無のみ異なる 2 つの評価枠を想定し,各施
り,基礎要件の規定度が評価できる.即ち,任意の
設配置柔軟度の差を基礎要件の影響と考えればよい.
基礎要件の有無のみ異なる 2 つの評価枠を想定し,
         0 
M
TU_ KM i = UM_ KM i - U_ K
0i
(15)
(15)
で評価される.さらに,2 つの値の差である
で評価される.さらに,2 つの値の差である TU(KM)
­
(M)-(S)は,基礎要件の扱いの厳密さの差異
TU(KS)は,基礎要件の扱いの厳密さの差異による
による影響を表すと考えることができる.
影響を表すと考えることができる.
基礎要件の規定性が高い場合には,必要に応じて
基礎要件の規定性が高い場合には,必要に応じて
基礎要件の見直し等を行う.例えば要件の緩和や撤
基礎要件の見直し等を行う.例えば要件の緩和や撤
廃,要件を満たすような物的条件の整備などの施策
廃,要件を満たすような物的条件の整備などの施策
を検討する.その結果をふまえ,再び暫定配置案を
を検討する.その結果をふまえ,再び暫定配置案を
導出し,施設配置の規定性を分析する.
導出し,施設配置の規定性を分析する.
3.5 配置案群導出と最終配置案決定
3.5 配置案群導出と最終配置案決定
以上の結果をふまえ,基礎要件等を十分に検討し
以上の結果をふまえ,基礎要件等を十分に検討し
た後で,最終配置案決定のための配置案群を導出す
た後で,最終配置案決定のための配置案群を導出す
る.既に暫定配置案群が適切な数だけ得られていれ
る.既に暫定配置案群が適切な数だけ得られていれ
ば,それをそのまま用いることができるが,配置案
ば,それをそのまま用いることができるが,配置案
群が過剰な場合には,代表例を抽出して最終的な議
群が過剰な場合には,代表例を抽出して最終的な議
論に供する.
論に供する.
こうして得られた配置案群に基づき,最後に拡張
こうして得られた配置案群に基づき,最後に拡張
要件を考慮した多様な視点からの議論を経て,最終
要件を考慮した多様な視点からの議論を経て,最終
配置案を決定する.適切な配置案を決定できない場
配置案を決定する.適切な配置案を決定できない場
合には,基礎要件の見直しを含めた,計画全体の再
合には,基礎要件の見直しを含めた,計画全体の再
検討を行う等の措置をとる.施設配置の規定性分析
検討を行う等の措置をとる.施設配置の規定性分析
から配置案群導出,最終配置案決定へ至る過程は固
から配置案群導出,最終配置案決定へ至る過程は固
定的なものではなく.必要に応じて適宜,修正や反
定的なものではなく.必要に応じて適宜,修正や反
復を加えるべきである.
復を加えるべきである.
3.6 動的施設配置計画への拡張
上記の方法では,現在の施設利用者分布に基づい
3.
6 動的施設配置計画への拡張
て施設再配置を検討している.しかしながら,人口
上記の方法では,現在の施設利用者分布に基づい
の継続的減少に対応するには,利用者分布の変動を
て施設再配置を検討している.しかしながら,人口
明示的に考慮した動的施設配置計画が必要である.
の継続的減少に対応するには,利用者分布の変動を
状況に応じて臨機応変に廃止あるいは再開できる
明示的に考慮した動的施設配置計画が必要である.
- 41 -
状況に応じて臨機応変に廃止あるいは再開できる
て利用可能施設とし,確率法では等確率の選択対象,
施設であれば,施設配置は随時検討すれば良い.し
最適化法では通学可能な小学校の集合として扱う.
かし通常の施設では,そのような即時的な対応は困
難であり,施設の用途変更や一旦廃止した施設の再
利用には一定程度の時間を要する.そのため動的施
0
1
5 km
設配置計画では,施設状態に一定以上の持続期間を
N
S1
仮定する方が現実的である.
こうした持続条件は,施設配置計画の基礎要件の
S3
一つであることから,最適化法の場合には制約条件
S2
S4
として追加すればよい.他方確率法の場合には,得
S11
られた配置案から持続条件を満たすもののみを抽出
S13
することで対応できる.
0.0 - 200.0
200.0 - 400.0
S12
400.0 - 600.0
S6
600.0 - 800.0
S14
S7
S9
4.適用例:小学校再配置計画立案支援
生徒密度 (1/km2)
S5
S10
S16
S15
S8
800.0 - 1000.0
1000.0 - 1200.0
1200.0 小学校
急速に進行する少子化に伴い,全国で公立小中学
鉄道
校の統廃合が喫緊の課題となっている(葉養,2009;
図 2 2010 年における千葉市稲毛区の学校配
安田,2009).そこで本節では,前節までに提案し
置と生徒密度.
た手法を,生徒減少が予想されている千葉市稲毛区
の小学校再配置計画立案支援に適用する.
4.1 確率法による暫定配置案群の分析
2010 年時点では,稲毛区の小学校数と小学校生
まずはじめに,2010,2030,2050 年の 3 時点に
徒数はそれぞれ 16,6984 人である(図 2).しかし
ついて,確率法により暫定配置案群を導出する.結
2050 年には,生徒数は 4022 人にまで減少すると予
果は表 1 に示す通りであり,生徒数の減少に伴って
想されており(文部科学省 GCOE プロジェクト「都
平均占有率と容量要請度が低下していることがわか
市空間の持続再生学の展開」(2008 ~ 2012 年度)
る.平均通学距離と接近要請度には変化が見られな
の推計結果),小学校の平均占有率は 0.61 から 0.35
いが,これは生徒の等確率な小学校選択を仮定して
に低下する.そこで以下,学校の最大生徒数(容量)
いることによる.施設配置柔軟度は,容量要請度の
を 720 人(学校教育法施行規則第 41 条に基づき,1
低下に伴ってやや上昇している.
学級の生徒数を 40 名,学級数を 18 とする),最大
表 1 確率法による暫定配置案群の各指標値
通学距離を 2km(1956 年中教審答申では 4km とさ
れているが,都市部での適用により現実的な値とし
て採用)として,学校運営効率化のための小学校再
配置計画を検討する.
推計人口は区全体の総数が 1 歳階級別に得られて
おり,これを 2010 年時点での 500m メッシュ人口
分布における 1 歳階級別人口に応じてメッシュ毎に
比例配分し,それぞれ学齢人口の 6 ~ 12 歳人口を
生徒数
平均学校数
平均通学距離
平均占有率
接近要請度
容量要請度
施設配置柔軟度
2010
6984
10.3
1181
0.942
0.457
0.607
8.450
2030
5224
8.2
1181
0.880
0.457
0.454
9.091
2050
4022
7.1
1181
0.783
0.457
0.349
9.092
算出して分析に用いる.各メッシュから小学校まで
図 3 は 2050 年時点での各小学校の占有率を表す.
の通学距離には,細街路を含めた全ての道路ネット
S4 を除く全ての小学校で占有率が 0.5 以下であり,
ワークにおける最短距離を用いる.即ち,各メッシュ
特に区の南部で占有率が過小な小学校が目立つ.
中心からの道路距離が 2km 以内である小学校を全
- 42 -
持っており,接近要請度は低くなる傾向にある.
0
1
5 km
N
S1
0
1
5 km
N
S3
S1
S2
S4
S11
S10
S5
S12
S13
0.0
200.0
400.0
600.0
S6
S14
S16
- 200.0
- 400.0
- 600.0
-
S2
S4
生徒密度 (1/km2)
S5
S10
S11
0.0
200.0
400.0
600.0
占有率
S7
S9
S15
S3
生徒密度 (1/km2)
0.00
0.10
0.20
0.30
0.45
0.50
S8
-
0.10
0.20
0.30
0.40
0.50
S12
S13
S6
S14
S16
接近要請度
0.000 - 0.250
0.250 - 0.500
0.500 - 0.750
0.750 - 1.000
S7
S9
S8
S15
- 200.0
- 400.0
- 600.0
-
図 3 2050 年における各小学校の占有率.
図 5 2050 年における各小学校の接近要請度
図 4 は 2050 年時点での各小学校の平均通学距離
を表す.北部の郊外地域で通学距離が短い(S1 や
図 6 は 2050 年時点での各小学校の容量要請度を
S3)のはやや直感に反するが,これも等確率な小
表す.北部では生徒が学校近隣に稠密に分布してお
学校選択モデルの仮定に起因している.北部では生
り,S1 ~ S3 の各校とも容量要請度が高い.一方中
徒が小学校近辺に集中しているのに対し,中央部や
央部では,生徒と学校の双方とも高密であるが,相
南部の市街地では生徒が比較的広範に分散している
対的に前者の方が多く,S4,S5,S10,S12 などの容
ことから,前者の小学校の方が通学距離が短くなる.
量要請度も高い値を示している.また南部では,小
学校が生徒に比して過剰なために,各校の容量要請
度も低くなっている.
0
1
5 km
N
S1
0
1
5 km
N
S3
S1
S2
S4
S11
S5
S10
S12
S13
0.0
200.0
400.0
600.0
S6
S14
S7
S9
S16
S15
S8
生徒密度 (1/km2)
S3
- 200.0
- 400.0
- 600.0
-
0
900
1000
1100
1200
1300
S2
S4
S11
平均通学距離 (m)
- 900
-1000
- 1100
-1200
-1300
-
S10
S5
S12
S13
0.0
200.0
400.0
600.0
S6
S14
S7
S9
S16
図 4 2050 年における各小学校の平均通学距離.
図 5 は 2050 年時点での各小学校の接近要請度を
S15
S8
生徒密度 (1/km2)
- 200.0
- 400.0
- 600.0
-
容量要請度
0.000
0.100
0.200
0.300
0.400
0.500
-
0.100
0.200
0.300
0.400
0.500
図 6 2050 年における各小学校の容量要請度
表す.北部の生徒は通学可能な小学校が少なく,接
近要請度が必然的に高くなっている.反対に,中央
上記分析の結果,2050 年の時点において学校の
部や南部の市街地に居住する生徒は多くの選択肢を
最大生徒数を 720 人,最大通学距離を 2km とした
- 43 -
場合,稲毛区では施設接近性が小学校配置を強く規
化の一手法であり,検討に値する施策と言える.
定する一方,施設容量は基礎要件としてはそれほど
規定的ではないことが明らかになった.これは即ち,
10
施設接近性の改善で配置案の選択肢が増加する可能
9
性も示唆している.そこで次に,施設接近性と施設
8
配置柔軟度との関係を見る(図 7).
施設配置柔軟度
7
12
11
10
5
2010
2030
4
2050
3
9
2
8
施設配置柔軟度
6
1
7
0
6
200
400
600
800
1000
1200
小学校の最大生徒数
5
2010
図 8 施設容量と施設配置柔軟度との関係
2030
4
2050
3
4.2 最適化法による暫定配置案群の分析
2
次に,最適化法を用いて暫定配置案群を導出する.
1
表 2 より,最小学校数の減少に伴い,計画案数及び
0
0
2000
4000
6000
施設配置柔軟度は低下し,平均通学距離と接近要請
8000
最大通学距離
度は増加することが分かる.平均占有率と容量要請
図 7 施設接近性と施設配置柔軟度との関係
度の変化は小さいが,これは生徒数に応じて学校数
も減少していることによる.
最大通学距離は施設近接性と等価と見なして良
表 2 最適化法による暫定配置案群の各指標値
い.これらが増加すると,施設配置柔軟度も単調に
増加し,最終的に最大値に達している.年度間でや
や相違はあるものの,全体的には類似した傾向を持
つ.
図 7 より,最大通学距離を 2000m から 4000m に
緩和することで,施設配置柔軟度が 9.5 から 11.0 へ
と大きく改善することが分かる.この緩和は,スクー
ルバスやその他の公共交通機関の導入によって実現
可能であり,実際の検討に値する施策と言える.
生徒数
最小学校数
平均通学距離
平均占有率
接近要請度
容量要請度
学校配置案数
施設配置柔軟度
2010
6984
11
1316
0.882
0.392
0.836
521
2.717
2030
5224
9
1498
0.806
0.471
0.788
179
2.253
2050
4022
7
1658
0.799
0.558
0.788
85
1.930
図 8 は,施設容量と施設配置柔軟度との関係を表
表 1 と 2 を比較すると,配置計画の基礎要件の規
す.施設容量の増加に伴い,施設配置柔軟度も当初
定性が評価できる.施設配置柔軟度を見ると,全体
は急激に増加し,やがて減少に転ずる.図 8 より,
的に表 2 の方が表 1 よりも小さな値を示しているが,
2050 年には,施設配置柔軟度を保持しつつ,小学
これは最適化法が基礎要件を必須条件として捉える
校の最大生徒数を 720 人から 400 人まで削減できる
ため,配置計画の柔軟性を低下させることによる.
ことが分かる.施設縮小は施設廃止と並ぶ運営効率
- 44 -
4.3 施設状態の持続条件
以上の議論では,施設状態の持続条件については
0
1
5 km
N
特に考慮していない.しかしながら,小学校の臨機
S1
応変な開閉校は現実的には不可能であり,持続条件
S3
は考慮すべき重要な基礎要件である.そこで次に,
一旦閉校した学校は再度開校できないという持続条
S2
S4
S11
件を加えた上で,再度,最適化法により暫定配置案
群を導出した.
S5
S12
S13
この結果,持続条件を考慮しない配置案(表 2 に
S10
0.0
200.0
400.0
600.0
S6
S14
S7
S9
おける各年の学校配置案数の積,即ち,521 × 179
S16
× 85=7927015 通り)のうち,持続条件を満たすの
S15
S8
は 2762 通りであった.このとき,施設配置柔軟度
は 6.899 から 3.441 と大きく低下しており,2050 年
生徒密度 1 (1/km2)
- 200.0
- 400.0
- 600.0
-
絶対要請度
0.000
0.250
0.400
0.550
0.700
0.850
-
0.250
0.400
0.550
0.700
0.850
図 9 2050 年における各小学校の絶対要請度
時点での学校配置が,それ以前の配置を強く規定す
ることがわかる.必要に応じて,プレハブ校舎など
中央部と南部では,施設接近性と施設容量のいず
による一時的な教室の確保,汎用設計の校舎導入な
れも規定性が低く,柔軟な施設配置が可能である.
ど,持続条件の緩和施策を検討すべきである.
そこでここでは,13 の既存小学校を空間的近接性
に基づいて 4 群に分類し,それぞれ個別に配置計画
4.4 小学校再配置計画立案へ向けて
を検討する.
最後に,2050 年時点における最終配置案決定へ
群 2={S4, S5},群 3={S6, S7, S8},群 4={S9, S15,
向けた具体的な議論を行う.施設配置の基礎要件と
S16} では,学校は互いに近接しており,それぞれ 1
しては.施設接近性が重要であり,施設容量はそれ
校で全生徒が収容可能である.また群 5={S10, S11,
ほど大きな影響力を持たない.また,施設状態の持
S12, S13, S14} については,2 校で全生徒を収容で
続条件については,2050 年での学校配置によって
きる.群 1 を含め各群とも,どの学校を存続しても
ほぼ自ずと途中時点での配置も定まることから,主
2 つの基礎要件は満たされることから,各学校群か
として 2050 年時点での施設接近性に着目して再配
らそれぞれ 1 及び 2 校を存続するという案を,最終
置計画を立案し,必要に応じて施設容量を考慮する
配置案決定のための配置案群とすれば良い.
と良いと思われる.
配置案群に基づいた最終配置案の決定では,交通
図 9 は,2050 年における各小学校の絶対要請度
条件や周辺土地利用,既存コミュニティとの関係な
を表す.絶対要請度は,各小学校の総合的な必要性
ど,多様な拡張要件を考慮した議論が必要である.
を表す指標である.この図より,S1 と S3 が最も必
但しここでは,現実をふまえた詳細な検討は困難で
要度の高い学校であることが分かる.中間に位置す
あることから,平均通学距離をできるだけ小さくす
る S2 を含めた予測生徒数は合計 837 人であり,小
る方法として,各群で比較的中心に位置するという
学校の最大生徒数 720 人をやや上回る.しかしなが
方法を例示するにとどめたい.
ら,北部に位置するこれら 3 校(以下,群 1)の統
この場合,群 1 では S2,群 3 では S7,群 4 では
合は,学校運営を大きく効率化することから,一時
S15,群 5 では S11 と S12 が適切と思われる.群 1
的な教室の増設とスクールバスの導入により,3 校
では接近要請度の高い S1 と S3 を廃校とするが,中
を 1 校に統合する計画を検討すべきであろう.
間地点に位置する S2 を存続することで,全体的な
施設接近性は確保できるものと想定される.また群
2 では,S5 よりも S4 の方が地域の中心に位置して
- 45 -
いることから,より適切な立地であると考えられる.
ある.これらの課題を解決し,手法の精度をさらに
高める必要がある.
5.おわりに
本論文では,参加型計画立案を念頭に置き,新た
参考文献
な施設配置計画立案支援手法を開発した.特に施設
安田隆子(2009)
「学校統廃合 -公立小中学校に関
配置の規定要因に焦点を当て,施設配置規定性分析,
わる諸問題-」,国立国会図書館 調査と情報,第
配置案群導出,最終配置案決定,の 3 段階から構成
640 号.
される手法を提案,千葉市稲毛区における小学校再
葉養正明(2009)
「教育条件整備に関する総合的研究
配置計画に適用した.
(学校配置研究分野)」,国立教育政策研究所 平成
この手法では,施設配置計画に対する規定要因の
21 年度プロジェクト研究報告書.
影響を,規定性の地域的分布,配置案全体の柔軟性
Current, J., Min, H., & Schilling, D.(1990)Multiob-
などの観点から評価する.そのため適用例で見たと
jective analysis of facility location decisions, European
おり,配置計画の前提の見直しを含めた計画立案を,
Journal of Operational Research, 49, 295-307.
地域毎に柔軟に行うことが可能となる.
Drezner, Z.(1995)Facility Location: A Survey of Appli-
最後に,研究上の今後の課題をまとめる.
cations and Methods. Berlin: Springer.
まず第 1 に,各施設の重要性や施設配置案の適切
Drezner, Z. and Hamacher, H. W.(2004)Facility Loca-
性の評価方法と,それらの依拠する暫定施設配置案
tion: Applications and Theory. Springer.
群導出手法の再検討がある.本論文では確率法と最
Mirchandani, P. B. and Francis, R. L.(1990)Discrete
適化法という 2 つの手法を取り上げて論じたが,そ
Location Theory. New York: Wiley.
れらの改良や,新たな手法の開発によって,より多
Melachrinoudis, E., Min, H., and Wu, X.(1995)A mul-
様な価値観を反映できるようにする必要がある.
tiobjective model for the dynamic location of landfills,
第 2 に,最終的な施設配置案へ向けた議論の自動
Location Science, 3, 143-166.
化を含む,計画立案支援手法のシステム化がある.
Ross, G. T.(1980)A multicriteria approach to the loca-
通常の参加型計画立案では,一定程度の専門的知識
tion of public facilities, European Journal of Operational
を持つ参加者が加わることが多い.本手法もそうし
Research, 4, 307-321.
た状況を想定しており,分析結果の解釈やそれに基
Sadahiro, Y. and Sadahiro, S.(2009)A Decision Support
づく計画立案の先導は,そうした専門家に委ねられ
Method for Facility Location Planning in Population De-
ている.しかしながら,より汎用性の高い計画立案
crease. Discussion Paper Series, No. 100, Department of
支援には,結果の解釈や政策提言なども系統的に行
Urban Engineering, University of Tokyo.
われることが望ましい.本手法では,地図を多用し
Saaty, T. L. and Peniwati, K.(2007)Group Decision
た分析を行うことから,GIS を基盤とした統合的な
Making: Drawing Out and Reconciling Differences.
施設配置計画支援システムの開発を検討したい.
Pittsburgh, PA: RWS Publications.
第 3 に,本論文では各施設の機能は同等であり,
Sadahiro, Y.(2010)Decision Support of Dynamic Facil-
また,利用者は利用可能な施設を等確率で選択する
ity Location in Population Decrease. Discussion Paper
と仮定している.この仮定により,配置案導出や計
Series, No. 103R, Department of Urban Engineering,
画評価が容易になる反面,現実からややかけ離れて
University of Tokyo.
いることは否定できない.施設機能の異質性につい
Shannon, C. E.(1951)Prediction and entropy of printed
ては,特に,機能構成が階層性を有する場合の取り
English, The Bell System Technical Journal, 30, 50-64.
扱いが重要である.また施設選択行動モデルについ
(2010 年 10 月 7 日原稿受理,2011 年 5 月 31 日採用
ては,実際の選択データを利用した精緻化が必要で
決定,2011 年 6 月 23 日デジタルライブラリ掲載)
- 46 -