工府博甲第 411 号

別紙様式第2号
横浜国立大学
学位論文及び審査結果の要旨
氏
名
Rajan Thapa Chhetri
学 位 の 種 類
博士(工学)
学 位 記 番 号
工府博甲第 411 号
学位授与年月日
平成26年3月26日
学位授与の根拠
学位規則(昭和28年4月1日文部省令第9号)第4条第1項及び横浜国立
大学学位規則第5条第1項
学 府 ・ 専 攻 名
工学府
機能発現工学
専攻
学 位 論 文 題 目
Analyses of the diversities of bacterial consortia involved in the
biological removal of arsenic, iron and manganese from water using
molecular biological methods.
(水中のヒ素,鉄およびマンガンの生物学的除去に関与する細菌群集構
造の分子生物学的手法を用いた解析)
論 文 審 査 委 員
主査
横浜国立大学
教授
小泉淳一
横浜国立大学
教授
伊藤公紀
横浜国立大学
教授
板垣
宏
横浜国立大学
准教授
武田
穣
横浜国立大学
准教授
中村一穂
論文及び審査結果の要旨
ヒ素(As)による飲用地下水の汚染はバングラディシュ・インドやネパールなどアジア
各地をはじめ世界的な問題となっている。この As 汚染は地質的要因による恒常的なもので
あり,従って安全・安心かつ簡便・低コストな As 除去法が求められている。As を含む地
下水は同時に鉄(Fe)やマンガン(Mn)を含むことが多く,この Fe や Mn の微生物によ
る酸化物を利用して As を吸着,除去する「生物ろ過」の機構と,そこでの微生物複合系の
構成の解明が,この除去法の確立に必要であった。
本研究ではこの生物学的 Fe・Mn および As 除去法にについて,環境微生物学ならびに分
子生物学的手法で得た研究成果が博士学位論文にまとめられている。まず,生物ろ過によ
る As・Fe・Mn の同時除去に関与する細菌群集を,各細菌の遺伝子を指標とした分子生物
学的手法を用いて解析し,その構成を明らかにし,変化を追跡した。その結果,これまで
一般的に生物ろ過に関与する Fe・Mn 酸化細菌(MnOB)であると信じられていた
別紙様式第2号
横浜国立大学
Leptothrix 属の存在は普遍的ではないなどの環境微生物学的知見を得た。PCR-DGGE やク
ローン解析,リアルタイム PCR などを用いた微生物群集解析法により,純粋培養では調べ
ることが困難であった生物ろ過槽内の浄化にかかわる細菌群の組成を明らかにした。実稼
働する Fe・Mn を除去する生物ろ過槽と,As・Fe・Mn 同時除去を行う試験プラントでは,
どちらも Fe 酸化細菌(FeOB),MnOB が浄化に関与する一方,As を含む地下水でも亜ヒ
酸酸化細菌は浄化の主役ではないことが明らかとなった。この事実は,一般的に困難な亜
ヒ酸の除去を,微生物による Fe・Mn 酸化物への吸着のみで行えることを示している。さ
らに,生物ろ過槽から採取したろ材より Mn 酸化能を有する微生物複合系を培養し,生じ
た Mn 酸化物による As の吸着除去を試みた。培養条件などの浄化への影響を細菌群集の構
成と関連して評価し,細菌群集構造の解析が生物的 Fe・Mn および As 除去法の開発におい
て重要な情報を与えることを裏付けることができている。
以上のことから,本論文は博士(工学)の学位論文として充分な価値があるものと認められ
る。