ポスターⅡ- 4 キセノン光の星状神経節近傍照射と骨格筋直接照射が 骨格筋血流動態に与える影響に関する検討 前田貴哉 1、2、吉田英樹 2、照井駿明 3、2 1 医療法人整友会弘前記念病院、2 弘前大学大学院保健学研究科、3 秋田県立脳血管研究センター キーワード;キセノン光・照射方法・骨格筋血流量 【目的】キセノン光(以下、Xe 光)の星状神経節近傍照射 (以下、 Xe-LISG)は交感神経活動の抑制に伴い上肢骨格筋 血流量が増加するという報告がなされている。また、Xe 光を骨格筋に直接照射(以下、骨格筋照射)した場合にも 骨格筋血流量が増加したという報告がされている。この ように Xe-LISG と骨格筋照射の両方法において骨格筋血 流量の増加を示唆する報告がなされているが、両者の骨 格筋血流動態に及ぼす影響について、その効果の比較は これまでされていない。そこで本研究では Xe-LISG と骨 格筋照射が骨格筋血流動態に与える影響について比較・ 検討することとした。 【方法】対象は健常成人 3 名(男 2 名、女 1 名)とした。 被験者は自律神経活動動態の安定化のために 15 分間の 安静背臥位保持(以下、馴化)の後に、実施順序をランダ ムにして以下の 3 つの介入を一日以上の間隔を開けて実 施する。 1.Xe-LISG Xe光の照射プローブを両鎖骨の上2.5cmの位置に設置し、 10 分間の Xe-LISG を行う。 2.骨格筋照射 両側の上腕二頭筋筋腹に Xe 光の照射プローブを設置し、 10 分間の骨格筋照射を行う。 3.コントロール Xe 光照射を伴わない安静背臥位保持を 10 分間行う。 各介入において、自律神経活動動態の指標として両側 の手指皮膚温を第 3 指遠位指節間関節中央で測定した。 馴化終了時の測定値をベースラインとし、その後 2 分毎 に測定された手指皮膚温の経時的な変化を検討した。骨 格筋血流動態として両側上腕二頭筋血流動態を測定した。 評価指標として酸化ヘモグロビン(以下、oxy-Hb)を採用 し、 各実験とも馴化終了前 2 分間の oxy-Hb の平均値をベ ースラインとし、Xe-LISG 及びコントロール実施中の oxy-Hb の 2 分毎(0~2 分、2~4 分、4~6 分、6~8 分、 8~10 分)の平均値のベースラインからの経時的変化を 検討した。 倫理的配慮はヘルシンキ宣言に則り、対象者に対して口 頭と書面にて説明を行い、同意を得た。 【結果】 手指皮膚温について、Xe-LISG、骨格筋照射では比較的 手指皮膚温が維持されているのに対し、コントロールで 36 は経時的に手指皮膚温が低下する傾向にあった。 筋血流動態について、Xe-LISG、骨格筋照射では経時的 な上腕二頭筋血流量の増加傾向を認めているが、コント ロールでは一定の傾向を持った変化は認められてない。 【考察】手指皮膚温はコントロールを実施した場合は経 時的に低下したのに対し、Xe-LISG と骨格筋照射では比 較的維持されていた。また、骨格筋血流動態に関しては コントロールでは一定の傾向を持った変化が見られなか ったのに対し、Xe-LISG・骨格筋照射では上腕二頭筋血流 量が増加する傾向が見られた。 一般的に、ヒトは安静を保った場合には放散熱により末 梢皮膚温は低下するといわれている。Xe-LISG は主に交 感神経活動の抑制と副交感神経活動の亢進をもたらすと されており、本研究でも交感神経活動の抑制に伴い皮膚 細動脈が拡張し、末梢循環が促進されたために手指皮膚 温が維持されたと考えられる。皮膚や骨格筋の細動脈に 対するカテコラミン交感神経を介した活動の影響は、2 種類(α、 β)の受容器を通して伝えられる。ノルアドレ ナリンとの親和性が高い α 受容器を介して交感神経活 動が亢進した場合には皮膚・骨格筋の細動脈は収縮し、 アドレナリンとの親和性が高い β 受容器を介した交感 神経活動の亢進では骨格筋細動脈が拡張する。ここで α 受容器を介した影響に注目すると、交感神経活動が抑制 された場合には安静時であっても皮膚・骨格筋動脈が拡 張し、血流が増加し得ると考えられた。また、Xe 光は温 熱作用と光作用を持つとされている。温熱作用では血管 平滑筋の弛緩に伴う血管拡張や、血液粘性の低下により 血流が増加するとされ、光作用では血液粘性の低下に伴 う組織血流量が増加するとの報告がある。骨格筋照射で は、骨格筋に対して Xe 光が温熱作用・光作用を及ぼし、 骨格筋を含む末梢循環動態に影響を与えたのではないか と考える。 【まとめ】 本研究はXe光治療における2つの照射方法が骨格筋血 流動態に与える影響を検討した。両方法において骨格筋 血流量は増加するという結果が得られた。今後は被験者 数を増やし、照射方法の違いが骨格筋血流動態に与える 違いについても検討していく。
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