OIEのと畜規約並びに疾病制御目的の殺処分福祉規約

5.OIE のと畜福祉規約並びに疾病制御目的の殺処分福祉規約
と畜福祉規約の1条は、一般原則規定である。本規定が、と畜前処置と死に至るまでの
と畜中処置のための規約であることがまず述べられている。そして、降載、移動、一時保
管、世話、保定、気絶、と殺、及び放血に携わる者が、家畜の福祉に強く関わることから、
本規約に精通し、寛容で、思いやりがあり、有資格者であるべきであるとされる。輸送規
約と同様に、彼らは正規の訓練を受け、資格を得ることが期待される。次いで、輸送規約
の2条と同様の規約が続く。2条は、移動及び取扱い規約である。一時保管施設への移出
入、と畜場所への移動に際する規定は以下のとおりである。まず、家畜の健康・福祉状態
の確認、傷病家畜の緊急殺処分の規定、そして通常家畜は、滑落やスリップによる損傷を
最小にするため、移動速度を速めないことが要請される。移動方法や移動設備の評価のた
め、滑落・スリップ率の基準を設定すべきであるとし、1%以下を提示している。他の家畜
の上に乗る群がりを起こすような急き立てはしない。ストレスや損傷が起こらないように
取り扱う。どのような状況下でも、取扱者は、尾を折り曲げ、骨折させたり、目を鷲づか
みにしたり、耳を持って引っ張ったりすることで、家畜を移動させる粗暴な行為をすべき
ではない。家畜に対し、特に、目、口、耳、外陰部、あるいは腹のような敏感な部分に損
傷を与える物や刺激性の物質を使ってはならない。家畜を放り投げ、落としたり、尾、頭、
角、四肢、羊毛、毛や羽のような体の一部を持って吊り上げ、引きずることは許可されな
い。突き棒や他の誘導器具の使用に際する規定は以下のとおりである。電気鞭は、日常的
には使用せず、緊急時のみ、前方に空いた場所がある場合のみ使用する。家畜が反応でき
ず、動かないときには、繰り返して使わない。移動しない原因を精査すべきとする。この
ような器具は、バッテリー式に限定し、ブタや大家畜の後駆への使用に限定する。決して、
目、口、耳、外陰部、腹部のような敏感な部分へは使用しない。ウマ、ヒツジ、ヤギ、子
牛、子豚には使用しない。板、旗、プラスチックパドル、鞭(皮紐や布紐の付いた長い棒)
、
プラスチック袋、金属のガラガラなどが有効で、それらは誘導器具として許可できる。痛
みを伴う取扱い(強い鞭打ち、尾捻転、鼻もじり、目・耳・外陰部押さえ)や苦痛を起こ
す器具の使用(太い棒、鋭利な先を持つ棒、金属製パイプ、柵用の針金、硬い皮製ベルト)
は行うべきではない。過度の罵声や大騒音は家畜を興奮させ、群がりや滑落を誘発するの
で発生させるべきではない。家畜を、苦痛、苦悩、損傷(打撲、骨折、脱臼)に曝さない
方法で保定し、吊り上げる。手での釣り上げは、四肢家畜では子畜や小動物の場合のみ許
可する。このような誘導器具の使用に関して、誘導に電気鞭を使用した家畜頭数割合や滑
落やスリップの割合の数値目標を定めるべきとする。家畜を輸送する容器は、投げたり、
落としたり、強打しないように取り扱う。水平に移動し、換気を考慮して積み上げる。決
して、逆さにしない。穴開き床や柔軟性の高い床からなる容器の場合は、損傷を与えない
ように特に注意が必要である。容器で搬入された家畜は、できるだけ早くと畜する。即座
にと畜場所に向かえない場合は、常時飲水できるようにする。ニワトリの場合は、12 時間
以上飲水できない状況は作らない。と場への到着後、12 時間以内にと畜されないならば給
餌し、さらに適切な間隔で適量の飼料を給与する。加えて、気絶処置のための保定や気絶
させないと畜のための規約が提起されている。スリップしない床、保定の強さ、施設の音、
保定器具の鋭利部分の排除などの施設整備を行う。まだ意識のある家畜を肢でもって吊り
下げたり(ニワトリを除く)
、動けなくするために骨折させたり、腱を切ったり、盲目にし
たり、は許可しない。3 条は、一時保管施設の設計と構造に関する規約である。4 条は、
一時保管施設での家畜の世話に関する規約である。5 条は、妊娠家畜をと畜する場合の胎
仔の管理に関する規約である。と畜場所に降載する時点で受胎期間の最後の 10%期間にあ
る妊娠家畜は、輸送もと畜もすべきでない。そのような状況の場合は、胎仔及び母畜に特
別に配慮する。母畜の頸と胸部が切開された後、5 分以内に胎仔を取り出すべきでない。
その時点では、まだ、胎仔の心臓は動いており、体も動くが、胎仔が空気を十分に吸った
場合のみ福祉問題が生じる。子宮から取り出しても、肺を膨らませて、呼吸させてはいけ
ない。胎仔を、死に至るまで、切開しない子宮内に、少なくとも、15-20 分は留めておく。
死が確認できない場合は、非貫通型ボルトでと畜するか、適切な鈍器で頭部を一撃してと
畜する。6 条は、取扱い・保定方法と関連する家畜福祉問題のまとめである。7 条は、気
絶方法に関する規約である。と畜実施者は、適切な訓練を受け、資格を有し、以下を確認
する。家畜の適切な保定、保定後の直後の気絶、気絶装置の適切な維持と操作、気絶器具
の正しい適用、気絶直後の放血、放血が遅れる場合は気絶させない、気絶器具の予備、で
ある。機械的道具による方法、電気的気絶法、ガス気絶法に関する規約が提示されている。
電気的気絶法では、最低の電流レベルが規定されている。成牛 1.5amp、子牛 1.0amp、ブ
タ 1.25amp、ヒツジとヤギ 1.0amp、子羊 0.7amp、ダチョウ 0.4amp である。ニワトリに
関しては、水浴槽での電気的気絶法の規約があり、1羽当たり、ブロイラー・産卵鶏
50Hz100mA と規定されている。ガス気絶法として、ブタでは CO290%に 3 分間暴露が推
奨されるが、80%を下回らないようにすべきとされる。ブタのイナートガス混合法も規約
にあり、アルゴン、窒素、あるいは他のイナートガス中に最大 2%の酸素、あるいは炭酸
ガス・アルゴン・窒素・あるいは他のイナートガスに最大 30%の炭酸ガスと最大 2%の酸
素、が使われる。ニワトリのガス気絶法としては、最低 2 分間の CO240%・酸素 30%・窒
素 30%ガス暴露の後、最低 1 分間の CO280%ガス暴露などの方法が提示されている。と畜
に関しては、気絶後から放血までの最大時間の設定を求めており、電気的気絶法では 20
秒、CO2 気絶法では 60 秒とされる。放血法は、全ての畜種において両側の頸動脈かその
導管の切断とする。放血後、最低 30 秒間、あるいは全ての脳幹反射が消失するまでは解
体しない。8 条は、気絶法とそれに関連する福祉問題のまとめである。9条は、放血法と
それに関連する福祉問題のまとめである。10条は、禁止されると畜方法の規約である。
疾病制御目的の殺処分福祉規約の1条は、一般原則である。殺処分が決定したら、でき
るだけ早く実行すること、処分される前は、通常の管理を実施することが求められる。殺
処分は、即気絶、即死を旨とし、病畜、接触家畜、その他の順で殺処分する。2条は、組
織に関する規約、3条は組織の責任体制に関する規約、4条は人道的殺処分計画における
配慮事項の規約である。5条が、殺処分方法に関するまとめで、機械的、電気的、そして
ガスによる方法が記載されている。6条は銃弾による方法、7条は非貫通型ボルトによる
方法、8条は貫通型ボルトによる方法、9条は分解法で、回転する刃や突起がある装置に
投入し、瞬間的に破砕する方法で、初生ヒナや発育鶏卵に使う。10条は、電気的2段階
法で、1段目で頭部へ処置し気絶させ、2段目で心臓部へ処置し死に至らしめる。11条
は、電気的1回処置法で、頭部と心臓を同時に処置する方法である。12条は CO2 と空気
混合暴露法、13条は窒素及び CO2 混合イナートガス暴露法、14条は窒素とイナートガ
ス暴露法である。15条は致死薬投与法である。麻酔剤及び鎮静剤の高投与は、中枢神経
系の機能低下、意識喪失、そして死をもたらす。他の薬物とバルビタールの併用が一般的
である。脳幹活動の停止を確認する。16条は、飼料や給水中への麻酔薬の投与法、17
条は頸部脱臼と断頭法、18条はピッシングと放血法である。