早稲田大学環境総合研究センター 最終更新日時:2014 年 7 月 1 日 拡張型地域電力供給システムの包括的研究 題目 風力発電大量導入が想定される地域における電力供給システムの新設計画手法の開発 横山隆一、紙屋雄史、草鹿仁、大聖泰弘 1.研究背景・目的 昨今再生可能エネルギーへの注目の高まりから、風力発電大 量導入の検討および計画が行われている。 風力発電は風況の良い地域にウィンドファーム(WF)として集 中導入することが一般的であるが、該当地域は、系統末端に分 布していることが多く送電線も脆弱であり、実際に各電力会社 において系統連系制約地区として指定された地域と重なる事が 多い。このため、このような風力ポテンシャル地域の風力発電 を消費地あるいは適切な変電所まで送るため、風力発電に特化 した送電線を建設する事業として特別目的会社(SPC)が企画 されている。従来の電源開発では需要に合致する発電計画を行 い、新規電源を連系する送電計画が行われてきたのに対し、新 設送電線計画では風力発電ポテンシャルに応じた WF 候補地と 既存系統とを、環境及び経済性を考慮し、適切な送電線容量/電 圧階級の送電設備を構築する計画となる。 また、WF 新設においても SPC の経済的負担を考慮する観点 における適地選定問題を考える必要がある。この問題は各ポテ ンシャルが持つ風力発電容量と既存系統からの距離という 2 つ のパラメーターを加味した多目的問題となる。 本論文では、SPC の経済的負担を考慮した新設送電線計画手 法を提案し、さらに本新設送電線計画手法を適用することで SPC の観点における WF 適地となるポテンシャル群の選定手法 について提案し検討を行った。 2.研究成果 (i) 新設送電線計画および WF 適地選定手法の開発 新設送電線計画は該当箇所固有のパラメーターとして亘長・ 地理条件、システム構成に依存したパラメーターとして確保す べき送電容量を持つ計画問題となり膨大な解空間を持つ。そこ で本研究ではタブー探索により新設送電線計画に取り組んだ。 また、WF 適地選定は各 WF において固有のパラメーターと して発電容量、システム構成に依存したパラメーターとして既 存設備への連系にかかるコストがあり、これらを考慮して選定 を行うものとした。そのために WF 候補地に対し新設送電線計 画を適用、その際のシステム構成における深さ探索を行い、選 定を行っていくこととした。新設送電線計画と深さ探索を繰り 返し往復・反復することで新設送電線計画および WF 適地選定 双方についての計画を行うものとした。 図 1 に本計画問題のイメージ図を示す。 WF2 WF4 WF1 WF5 WF3 WF6 WF7 WF10 WF12 WF8 WF11 WF9 図 1 新設送電線計画および WF 適地選定のイメージ (ii) 現実の風力導入を想定したモデルに対する本手法の適用 風力発電大量導入が想定される地域の 1 つを想定し解析対象 モデルを作成した。風力ポテンシャルは、5km 四方のメッシュ において 1 メッシュあたり 250MW を最大とし、導入ポテンシ ャルに応じて、相当容量の WF が建設されると想定した。 新設風力電源が連系される既存系統には 5 箇所のアクセスポ イントがあり、各 WF がいずれかのアクセスポイントに直接な いし他の WF を経由して連系されることを考える。 解析対象モデルに対し、本手法を適用したほか、従来手法と して、WF 適地選定はシステム構成を考慮せずに容量の大きい もののみを選定したものにおいて新設送電線計画手法のみを適 用したものと比較を行った。図 2 に両手法における適用結果、 図 3 に風力発電導入容量と建設コストの比較を示す。 :既存系統 :選定されたWF :除外された ポテンシャル :風力線 図 2 適用結果(左図:従来手法、右図:本手法) 2000 100 1750 90 風力線建設費 [%] 早稲田大学 風力発電導入容量 [MW] 著者 1500 1250 1000 750 500 250 80 70 60 50 40 30 20 10 0 0 従来手法 本手法 従来手法 本手法 図 3 適用結果比較 従来手法と本手法を比べると、同程度の風力発電が導入され た場合に、長距離に亘る新設送電線や送電線同士の交差が避け ることができ、建設費が 30%以上軽減できることがわかった。 3.まとめ 本研究では、既存の電力系統が脆弱である地域において分散 して存在している風力発電ポテンシャルをどのように既存電力 供給システムに連系するかについて取り扱った。内包する問題 として、新設する送電線の構成と WF 適地の選定があり、これ らについて計画を行う手法を確立した。 また、解析対象モデルを設計し従来手法と本手法を比較し、 建設費の観点から本手法の有用性を確認した。
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