原子物理基本演習 (難度:45~55)

原子物理学基本演習
磁場中の放射線の性質と原子核崩壊
elementary case 01
Ⅰ
三種類の放射性元素,原子番号 Z A ,質量数 M A の X A ,原子番
号 Z B ,質量数 M B の X B ,および,原子番号 Z C ,質量数 M C の X C
がある.これを鉛の容器に入れて,容器の上面の小穴から鉛直
上方にのみ放射線が出るようにした.いま,この容器を真空に
した箱の中に入れ,図のように水平に蛍光板 DE を置き,紙面に
垂直に表側から裏側に向かう磁束密度 B の一様な磁場を加えた.小穴から飛び出した
放射線は X A から出たものは図のように左の方に弧を描き蛍光板と小穴から距離 ℓ の
ところで衝突した. X B から出た放射線は右の方に弧を描いた. X C から出た放射線は
直進した.ただし,重力および地磁気の影響は無視できるものとする.
(1) 放射性元素 X A , X B , X C から出た三種類の放射線の名前をそれぞれ答えよ.ま
た,各々の元素の原子核が崩壊をした後の原子番号 Z A ′ ,Z B ′ ,Z C ′ ,質量数 M A ′ ,
M B ′ , M C ′ を元の原子の原子番号,質量数を用いて表せ.
(2) X A から出た粒子の質量を mA として,この粒子が小穴を出るときの速さ v を,ℓ ,
B , e , mA を用いて表せ.ただし, e は電気素量とする.
Ⅱ
ポロニウム 210
Po はα 崩壊し鉛 Pb の同位体になる.
84 (1) 次の式の四角内の a , b , c , d には数値を, e には元素記号を入れて,このとき
の崩壊の式を完成せよ.
210
84 Po →
a
b
Pb +
c
d
e
(2) 静止していたポロニウム原子から放出される α 粒子のエネルギーを測定すると,
5.3MeVであった.このとき原子核 Pb の運動エネルギーはいくらか.ただし,粒
子の質量は質量数に比例するものとして計算し,有効数字 2 桁で答えよ.
1
原子物理学基本演習
Ⅲ
ラジウム 226
88 Ra の原子核はα 崩壊してラドン Rn の原子核になる.これは,さらに崩
壊を続けて,最後に鉛 Pb の原子核になって安定する.この崩壊系列について,次の各
問いに答えよ.
(1) ラドンの原子番号 Z と質量数 A はそれぞれいくつか.
207
208
(2) 最後に安定する鉛は 206
82 Pb , 82 Pb , 82 Pb のうちのどれか.
(3) ラジウムから安定な鉛になるまでにα 崩壊, β 崩壊をそれぞれ a , b 回行う. a ,
b を答えよ.
2
原子物理学基本演習
elementary case 02
X線の発生と電子線の干渉
電子の質量を m ,電荷を − e ( e は電気素量),プランク定数を h ,および真空中の光速
を c として,次の各問いに答えよ.
Ⅰ
図は, X 線発生装置の原理を示している.この装置において,陰極から出た電子が
電圧 V で加速され,陽極に衝突して X 線が発生した.陰極から出た電子の初速度は 0
とする.
(1) 陽極に衝突する直前では,電子の速さはいくらか.
(2) 陽極に衝突する直前では,電子の物質波の波長はいくらか.
(3) 発生する X 線の最短波長 λ 0 はいくらか.
3
原子物理学基本演習
Ⅱ
図のように,原子が規則的に並んでいる間隔 d の原子配列面に対し,角度 θ をなす
ように電圧 V で加速された電子線を入射し,同じ角度 θ で反射した電子線の強度を検
出器で測定した.加速前の電子は静止していたものとする.
(1) 原子配列面に入射する電子線の入射角度 θ を 0° から少しずつ大きくしていくと,
反射した電子線の強度には極大と極小が交互にみられる.強度が最初の極大を示
すときに, d , m , e , V , h , θ の間に成り立つ関係式を求めよ.
(2) 入射角度 θ をさらに増大させると,反射した電子線の強度は θ = 30° で 2 回目の極
大を示した.原子配列面の間隔 d を有効数字 2 桁で求めよ.ただし,V = 2.42 × 10 3
V, e = 1.6 × 10 −19 C, m = 9.00 × 10 −31 kg, h = 6.60 × 10 −34 J・s とする.
(3) 入射角度を θ = 30° に固定し,電子の加速電圧の値を V = 2.42 × 10 3 Vから少しず
つ大きくしていった.反射した電子線の強度が次に極大値を示す加速電圧を有効
数字 2 桁で求めよ.
4
原子物理学基本演習
ボーアモデルとエネルギー準位
elementary case 03
水素原子は, + e の電荷をもった陽子とそのまわりをまわる − e の電荷をもった電子か
らできており,定常状態では電子は等速円運動をする.このとき,電子の質量を m ,速
さを v ,円軌道の半径を r とすると,次の量子条件を満足する.ただし,h はプランク定
数である.
2π r = n
h
(n = 1 ,2 ,3 ,⋯)
mv
正の整数 n を量子数, n に対応する状態を量子数 n の状態という.陽子と電子の間に
は電気力のみが向心力として働くと仮定し,クーロンの法則の比例定数を k0 ,真空中の
光速度を c として,以下の問いに答えよ.
(1) 電子の等速円運動の方程式を記せ.
(2) 前の量子条件と電子の等速円運動の方程式から速さ v を消去して,量子数 n の状態
の軌道半径 rn が n 2 に比例することを示せ.
(3) 電子の運動エネルギーと電気力による位置エネルギーの和をエネルギー準位という.
1
量子数 n の状態のエネルギー準位 E n が 2 に比例することを示せ.ただし,電気力
n
による位置エネルギーの基準は無限遠にとるものとする.
(4) 水素原子が,量子数 n の状態から量子数 n′ の状態に移るとき 2 つの状態のエネル
ギー準位の差 E n − E n ′ を光のエネルギーとして放出する.放出される光の波長を λ
とするとき,次の式が成り立つ.
 1
1
1
= R  2 − 2
 n′
λ
n


ここで定数 R はリュードベリ定数とよばれ,原子の発光,吸収スペクトルの指標と
なる物理定数である.リュードベリ定数 R を求めよ.
5
原子物理学基本演習
6
原子物理学基本演習
elementary case 04
アインシュタインの光電効果
光の粒子性を示す現象として,光電効果が知られている.
図 1 は,光電効果を調べる実験装置の概略図である.図の左方から入射した光は,光
電管中の金属板 K に当たり,電子を放出させる.電極 P と金属板 K の間には電位差 V の
電圧がかけられており,放出された電子は P に集まる.PK 間の電位差は変化させること
ができ,その値は電圧計によって測ることができる.このようにして生じた光電流の強
さ I は,図中の電流計によって測られる.
図 2 は,入射光の強さと振動数を一定にして,電位差 V を変化させたとき,光電流の
強さ I が変化する様子を示している. P の電位を正にして, V を大きくしていくと,電
流の強さは一定値 I m に近づく.逆に, PK 間の電位差を −V 0 にすると光電流は流れなく
なる.
図 3 は,図 2 の実験における入射光の振動数ν を変化させたときの V 0 の大きさの変化
を示している.ν が小さくなり,ある値に達すると V 0 はゼロになる.図中のグラフは
V 0 = aν − b ( a , b は正の定数)という式で表される直線である.
電子の電荷の大きさを e として,次の問に答えよ.
7
原子物理学基本演習
(1) 図 2 の実験結果から得られる量 I m と V 0 ,および e のうちのいくつかを用いて次の量
を表せ.
(ア) 金属板 K から単位時間に放出される電子の個数
(イ) 金属板 K から放出された電子 1 個の運動エネルギーの最大値
(2) 図 3 の実験結果から得られる量 a と b ,および e のうちのいくつかを用いて次の量を
表せ.
(ウ) 金属板 K の仕事関数
(エ) プランク定数の値
(3) ある振動数の光を入射させて光電効果を生じさせたとき,その入射光子 1 個のエネ
ルギーはどれだけか. I m , V 0 , a , b および e のうちのいくつかを用いて表せ.
8
原子物理学基本演習
elementary case 05
X線の粒子性とコンプトン散乱
図のように,波長 λ の X 線を静止した電子に照射したところ,X 線入射方向と角度 θ を
なす方向で, λ より長い波長 λ′ の散乱 X 線が観測された.X 線との散乱によって,電子
は X 線の入射方向と角度 ϕ をなす方向に速さ v で跳ね飛ばされた.この現象はコンプト
ン効果と呼ばれ,X 線を波動と考えたのでは説明がつかない.X 線をエネルギーと運動
量をもつ粒子と考え,以下の問に答えよ.ただし,光の速さを c ,電子の質量を m ,プ
ランク定数を h とする.
(1) 散乱前後のエネルギー保存はどのような式で表されるか.
(2) X 線入射方向およびこれに垂直な方向での運動量保存はどのような式で表されるか.
(3) λ ′ = λ (1 + δ ) とおく.δ が 1 に比べて十分小さいとき,設問(1)のエネルギー保存か
ら, δ は λ , m , v , c , h を使ってどう表されるか.ただし, (1 + δ ) −1 ≒ 1 − δ と
近似できるものとする.
(4) 設問(2)の運動量保存の式と設問(3)の結果を合わせることで,δ を λ ,m ,θ ,c ,
h で表せ.ただし,散乱前後の X 線の運動量変化は,波長の変化による部分よりも
方向の変化による部分が支配的であり,運動量保存の式においては λ ′ = λ と近似し
てよいとする.
9
原子物理学基本演習
10
原子物理学基本演習(解答)
elementary case 01
MA ′ = MA − 4 , MB ′ = MB , MC ′ = MC .
Ⅰ(1) X A から出た放射線: α 線
[参考] ν は反電子ニュートリノという素粒子.
X B から出た放射線: β 線
崩壊において原子番号と質量数には変化を与
X C から出た放射線: γ 線
えない. β 線の軌道が実験によって大きく異
Z A ′ = Z A − 2 , ZB ′ = Z B + 1 , Z C ′ = Z C
なることからその存在が確認された.
MA ′ = MA − 4 , MB ′ = MB , MC ′ = MC
本問で言う β 崩壊とは β − 崩壊のことであり,
(2) v =
厳密には, β 崩壊には β + 崩壊と β − 崩壊があ
eB ℓ
mA
Ⅱ(1) (a) 206
る. β + 線の正体は速い陽電子であり,電子の
(b) 82
(c) 4
(d) 2
(e) He
反粒子である.β + 崩壊では電子ニュートリノ
(2) 0.10 [MeV]
( ν )が同時に発生する.
Ⅲ(1) Z = 86 , A = 222
(2)
206
82 Pb
(2) 磁場中の荷電粒子は円運動をする.α 粒子の電
(3) a = 5 , b = 4
解
ℓ
気量は 2e ,軌道半径は
2
説
Ⅰ(1) 三種類の放射線とは α 線, β 線, γ 線のこ
円運動の方程式より,
mA
とである.それぞれが生じる核崩壊を α 崩壊,β
崩壊, γ 崩壊という.
であることに注意して,
v2
= 2evB
ℓ/2
⇔
v=
eBℓ
mA
Ⅱ(1) α 崩壊だから α 粒子 42 He を放出する.
❏ α 線: α 粒子,ヘリウムの原子核(
4
2 He
)
❏ β 線: β 粒子,電子( e )
−
210
Po
84 →
206
82 Pb
+ 42 He
(2) α 崩壊は運動量の保存する散乱現象とみなせ
❏ γ 線:光子, 波長の非常に短い電磁波
る. α 粒子と Pb の質量比は 2 : 103 .よって,運
磁場中で直進するのは,電荷を持たない γ 線,
動量保存則より,速さの比は 103 : 2 である.これ
図で左向きに曲がるのは正の電荷を持つ α 線,
らの結果から, α 粒子と Pb の質量をそれぞれ,
右向きに曲がるのは負の電荷を持つ β 線である.
よって各元素から出た放射線の名前はそれぞれ,
X A : α 線,
X B : β 線,
2m , 103m ,速さをそれぞれ, 103v , 2v と置
く.
XC : γ 線
γ 崩壊では元素は変わらないので, X A , X B の
Pb
α
2v
103v
2m
崩壊後の元素を各々 X A ′ , X B ′ とすれば,
MA
ZA
XA →
MA′
ZA ′
MB
ZB
XB →
MB′
ZB ′
X B ′ + e − (β ) + ν
XC →
MC′
ZC ′
XC + γ
MC
ZC
X A ′ + 42 He (α )
103m
α 粒子と Pb の運動エネルギー Kα , K Pb は,そ
れぞれ
1
2m(103v ) 2 = 1032 mv 2
2
1
= 103m(2v) 2 = 2 ⋅ 103mv 2
2
Kα =
電子は非常に軽く,元素の原子番号を 1 つ増やす.
(崩壊式が分かりにくければ −01 e と書けばよい)
γ 線は電磁波であるため,エネルギーを奪い,
元素を励起状態から基底状態へ移すだけである.
K Pb
だから,
K Pb =
2
2
Kα =
× 5.3 MeV ≐ 0.10 MeV
103
103
[参考] eV (エレクトロンボルト)は電子に 1 V
つまり,原子番号も質量数も変えない.
以上より,
Z A ′ = Z A − 2 , ZB ′ = Z B + 1 , Z C ′ = Z C ,
11
印加したとき生じるエネルギー.電気素量は
e ≐ 1.6 × 10 −19 C であるから,
1 eV ≐ 1.6 × 10 −19 J
原子物理学基本演習(解答)
接頭辞 M (メガ)は 10 6 である.
2d sin θ = k
Ⅲ(1) α 崩壊は原子番号を 2 ,質量数を 4 だけ下げ
るから,
自然数 k のうち,θ が最小となる k は 1 .よって,
2d sin θ =
(2) 原子核崩壊において質量数を下げるのは α 崩
壊のみである.ラジウムの質量数は 226 であり,
ここから 4 の倍数だけ下がることを考慮すれば,
質量数 206 の鉛が選ばれる.
d=
から原子番号についての式を作れば,
206
82 Pb
+ 5 42 He + b e −
88 = 82 + 5 × 2 + b × ( −1)
⇔
=
b=4
=
elementary case 02
2eV
m
Ⅰ(1)
(2)
Ⅱ(1) 2d sin θ =
h
2meV
h
2meV
(3)
hc
eV
(2) 5.0 × 10 −11 m
(3) 5.4 × 103 V
解
h
2meV
(2) 前問の式*において, θ = 30° で k = 2 として
h
2h
⇔ d=
2d sin 30° = 2
2meV
2meV
(3) (2)より α 崩壊は 5 回.よって a = 5 .崩壊式
→
…*
求める関係式は,
Z = 86 , A = 222
226
88 Ra
h
2meV
2 × 6.6 × 10 −34
2 × 9 × 10 −31 × 1.6 × 10 −19 × 2.42 × 10 3
2 × 6.6 × 10 −34
4 × 9 × 16 × 121 × 10 −50
2 × 66 × 10 −35
= 5.0 × 10 −11 m
2 × 3 × 4 × 11 × 10 −25
(3) 加速電圧を大きくする前の状態での V を
V = V 2 ( = 2.42 × 10 3 V )
とおくと,式※において k = 2 ,θ = 30° だから,
h
2d sin 30° = 2
2meV 2
次に電子線の強度が最大となる加速電圧を V 3 と
説
Ⅰ(1) 求める速さを v とすると,エネルギー保存則
から,
1
mv 2 = eV
2
2eV
m
h
(2) ド・ブロイの物質波波長は λ =
で表され
mv
⇔
v=
すると,このとき,式※の k は 3 であるから,
h
2d sin 30° = 3
2meV 3
よって,
9
9
V3 = V2 =
× 2.42 × 10 3 = 5.445 × 10 3 V
4
4
= 5.4 × 103 V
るから,
λ =
h
2eV
m
m
=
h
2meV
elementary case 03
(1) m
v2
k0e 2
=
r
r2
(3) 電磁波は波長が短いほどエネルギーが高い.
よって,電子のエネルギーがすべて電磁波の発生
に使われる場合が最短波長である.
hc
1
hc
= mv 2 = eV ⇔ λ0 =
λ0
2
eV
h
Ⅱ(1) Ⅰ(2)より,電子の波長は λ =
.隣
2meV
り合う原子配列面で反射した電子線の経路差は
2d sin θ .よって物質波の強め合う条件は自然数
(2) rn =
h2
n 2 となり n 2 に比例
4π mk0e 2
2
(3) E n = −
(4) R =
解
2π 2mk0 2e 4 1
1
に比例
2
2 となり
h
n
n2
2π 2k0 2me 4
ch 3
説
(1) 電子の向心加速度は a =
v2
,陽子と電子間の
r
k を用いて,
12
原子物理学基本演習(解答)
k0e 2
.ゆえに円軌道
r2
クーロン力の大きさは f =
を描く電子の向心方向の運動方程式は
ma = f
⇔
v=
R=
v2
k0e 2
=
rn
rn 2
⇔
mv 2 =
k0 e 2
rn
⇔
2
Im
e
(イ) eV 0
(2) (ウ)
eb
(エ) ea
の大きな電場により,金属板 K から叩きだされ
た電子はすべて電極 P に入るようになる.このと
きの電流値が I m である.電流定義より,単位時
よって, rn は n 2 に比例する.
間に電極 P に入る電気量が − I m であり,電子の
(3) 量子数 n の状態のエネルギー準位は,
1
k0e 2
mv 2 −
2
rn
設問(2)に変形した円運動の方程式 mv 2 =
k0 e 2
rn
より,
電気量は − e だから,単位時間に電極 P に入る電
Im
子の個数は
.よって,金属板 K から放出さ
e
Im
れる電子の個数も
.
e
(イ) 逆電圧 V = −V 0 のとき,金属板 K から放出さ
2
En =
1 k0 e
k0e
−
2 rn
rn
2
=−
1 k0e
2 rn
2
れる電子はすべて電極 P に入らなくなる.電子の
運動エネルギーは個々に異なるが,その中で最大
h2
設問(2)の結果 rn =
n 2 から,
2
4π mk0e 2
En = −
1
2
のエネルギーを持つ電子が,ちょうど電極 P に届
かなくなるときである.このとき,最大のエネル
k0e 2
h2
n2
2
4π mk0e 2
2
ギーを持つ電子の運動エネルギーは,電極と金属
板間の電場による位置エネルギー eV 0 に等しい.
2 4
1 4π mk0 e 1
2
h2
n2
2
2 4
2π mk0 e 1
=−
h2
n2
1
よって, E n は 2 に比例する.
n
(2) 仕事関数とは電子が金属板を出る際に失うエ
=−
(4) 波長 λ の光の光子のエネルギーは hν = h
あるから, h
ネルギーに等しい.プランク定数を h とおけば,
光子のエネルギーは hν .放出された電子のエネ
c
で
λ
c
= E n − E n ′ が成り立つ.
λ
設問(3)のエネルギー準位の式を代入すると,
c
2π 2mk0 2e 4  1
1 
h
=
 2 − 2 
 n′
λ
h2
n 
13
説
(1)(ア) V を極端に大きくすると,電極と金属板間
h2
rn =
n2
4π 2mk0e 2
En =
2π 2k0 2me 4
ch 3
(1) (ア)
解
 nh 
ke
 = 0
m 
rn
 2π rnm 



(3) e(V 0 + b )
以上より v を消去すれば,
2
 1
1
 2 − 2
 n′
n
elementary case 04
nh
2π rnm
設問(1)で求めた円運動の方程式より,
m
1
2π 2k0 2me 4
=
λ
ch 3
したがって,求めるリュードベリ定数 R は
v2
k0e 2
m
=
r
r2
⇔
(2) 量子条件より,
h
2π rn = n
mv
⇔
ルギーは eV 0 だから,仕事関数を W とおくと,
h
W
hν = eV 0 + W ⇔ V 0 = ν −
e
e
h
与えられた式 V 0 = aν − b と比較して, a =
,
e
W
b=
となるから,
e
(ウ) W = eb ,
(エ) h = ea
(3) 設問(2)より, hν = eV 0 + W = e(V 0 + b )
原子物理学基本演習(解答)
elementary case 05
 h 2
m 2v 2 =   {(1 − cosθ ) 2 + sin 2 θ }
λ
hc
hc
1
=
+ mv 2
λ
λ′
2
h
h
=
cosθ + mvcosϕ
(2) 入射方向:
λ
λ′
h
垂直方向: 0 =
sin θ − mvsinϕ
λ′
(1)
(3)
解
mv 2λ
2hc
(4)
⇔
 h 2
 (1 − cosθ )
v 2 = 2
 mλ 
設問(3)の結果に代入して,
 h 2
mv 2λ
mλ
 (1 − cosθ )
=
× 2
 mλ 
2hc
2hc
h
(1 − cosθ )
=
mcλ
δ =
h
(1 − cosθ )
mcλ
説
hc
,散乱 X 線
λ
hc
1
で
.散乱電子の運動エネルギーは mv 2 と
2
λ′
(1) 光子のエネルギーは入射 X 線で
表されるから,散乱前後のエネルギー保存則は
hc
hc
1
=
+ mv 2
2
λ
λ′
h
(2) 光子の運動量の大きさは入射 X 線で
,散乱
λ
h
X 線で
.散乱電子の運動量は mv と表される
λ′
から,
h
h
=
cosθ + mvcosϕ
λ
λ′
h
垂直方向: 0 =
sin θ − mvsinϕ
λ′
入射方向:
(3) 設問(1)のエネルギー保存則に λ ′ = λ (1 + δ ) を
代入し,
hc
hc
1
hc
1
(1 + δ ) −1 + mv 2
=
+ mv 2 =
λ
λ (1 + δ )
2
λ
2
与えられた近似式 (1 + δ ) −1 = 1 − δ より,
hc
hc
1
(1 − δ ) + mv 2
≐
λ
λ
2
⇔
δ =
mv 2λ
2hc
(4) 設問(2)の運動量保存則において,近似条件よ
り λ′ を λ に変えてから ϕ を消去し, v について
解いた後,設問(3)の結果の v に代入することで,
求めたい δ を得る.
運動量保存則において, λ ′ = λ より,
h
(1 − cosθ )
入射方向 ⇔ mv cos ϕ =
λ
h
垂直方向 ⇔ mvsinϕ =
sin θ
λ
それぞれ両辺 2 乗して,辺々足しあわせれば,
cos 2 ϕ + sin 2 ϕ = 1 より,
14