Title Author(s) Citation Issue Date URL Publisher Rights 4拍語における外来語アクセント規則と連母音( fulltext ) 白勢,彩子 東京学芸大学紀要. 人文社会科学系. I, 65: 1-7 2014-01-31 http://hdl.handle.net/2309/134536 東京学芸大学学術情報委員会 東京学芸大学紀要 人文社会科学系Ⅰ 65: 1 - 7,2014. 4 拍語における外来語アクセント規則と連母音 白 勢 彩 子* 日本語・日本文学研究講座 (2013 年 8 月 30 日受理) 要 旨 日本語では,複合語や外来語,無意味な音列などを発音する際,構成要素の拍数などに応じ,規則的にアクセン トが生成される。例えば,外来語では,語末から数えて 3 拍目にアクセントの下がり目(アクセント核)が置かれる。 従来,アクセント規則は,かなりの程度,明らかとされてきているものの,4 拍の外来語・無意味音列に対する規 則は明確でない点がある。本稿では,2 拍目もしくは 3 拍目に母音イ,ウ,エのいずれかがあり,連母音が含まれ ている語彙に焦点を当て,4 拍語の外来語のアクセントの決まり方に連母音がどのように関連しているかを整理し た。母音が連鎖すると 2 拍目の母音が前の拍に従属的となり, アクセントの決まり方に影響する可能性が考えられる。 分析の結果,母音が従属的になるかどうかは,語中位置により異なっており,2 拍目の場合には自立的であり,3 拍 目の場合には従属的だと捉えられた。この結果に基づき,4 拍の外来語にアクセント規則を再適用したところ,規 則から外れる語彙が見られたものの,語の音韻構造等の特性が規則外の要因であると特定できた。 キーワード 日本語,外来語,アクセント規則,4 拍語,連母音 1.はじめに 181 語の 4 拍の外国地名について検討を行っている。 特殊拍に加え,母音の連鎖(本稿では「連母音」とす 日本語では,複合語や外来語,無意味な音列などを る)についても,アクセント規則に関与することが指 発音する際,構成要素の拍数などに応じ,規則的にア 摘されてきている。例えば,複合語のアクセント規則 クセントが生成される。例えば,外来語あるいは無意 と連母音の関係については,以下のように示されてい 味な音列では,語末から数えて 3 拍目にアクセントの る。 下がり目(アクセント核)が置かれる。従来,アクセ ント規則は,かなりの程度,明瞭とされてきている(例 前の拍の母音といっしょになって,二重母音の えば,佐藤,1993;秋永,2011b)ものの,4 拍の外 ように発音される,イ,ウ,エのような拍は,ア 来語・無意味音列に対する規則は明確でない点がある。 クセントの頂点がおきにくい。そのため,アクセ そこで,現在,4 拍の外来語をアクセント辞典から抽 ントの高さの切れめがそこにくると,その位置が 出し,アクセントを整理し,規則の再検討を進めてい 原則として前にずれる。 る(Shirose and Kiritani, in preparation)。 例えば, 「記憶」+「力」は(中略) ,キオクリョク アクセントの決まり方には,引き音,撥音,促音の のように前部の最後の拍まで高い型になる。同じ 特殊拍が関係することが指摘され,窪薗(1996)が く「経済」+「力」はケイザイリョクとなるべきも ──﹁ * 東京学芸大学(184-8501 小金井市貫井北町 4-1-1) - 1 - ─﹁ 東 京 学 芸 大 学 紀 要 人文社会科学系Ⅰ 第 65 集(2014) のだが,前部の語の最後の拍が前の母音といっ が得られた。ア辞典において,外来語は原語のつづり しょになって二重母音のように発音されるため, が示されている。抽出された語彙には,「アカシア」 アクセントの高さの切れ目がおきにくく,前の拍 と「アカシヤ」のように,同一の語に対する複数の発 にずれてケイザ イリョクとなってしまう。 音形とみなされるものもあったが,いずれも分析対象 ─﹁ (秋永,2011a.p.(6);引き音を示す記号「★」は に含めた。 省略した。) 抽出された 1320 語から,本稿では,2 および 3 拍 目に,母音イ,ウ,エを含む語を検討対象とする。2 前述にあるように,複合語においては,連母音の二 拍目がイの語は 74,ウの語は 8,エの語は 9 で,合計 拍目の母音は,前の拍に従属的になり,アクセントの 91 語であった。3 拍目がイの語は 30,ウの語は 11, 頂点(本稿では「アクセント核」)が置かれにくいこ エの語は 11 で, 合計 52 語であった。アクセント型は, とが示されている。 見出しの第一にあるものを分析対象とした。 外来語のアクセントにおいても同様に,連母音では 4.分析 後続する母音が従属的となり,アクセントの決まり方 に影響する要素であるとも考えられるが,従来,十分 に議論されたとはいいがたく,検討の余地が残されて 表 1 の a.~f. に,母音ごとのアクセントの生起頻度 いる。例えば,ナ イーブ,ウ イルスなどの語では「イ」 を示す。前述の 2.で述べたように,特殊拍の位置に にアクセント核が置かれ,後続の母音が前の拍に従属 より,アクセント型が決まることから,表は,語の音 的であるとはいえないが,リ タイヤ,モザ イクなど 韻構造のタイプ別に生起頻度を示した。表中,「ア」 では「イ」の前の拍にアクセント核が置かれ,従属的 の欄にアクセント型を示し, 「0」~「4」の数字はアク であると捉えられる。現在進めている,4 拍の外来語 セント核の位置を示している。例えば, 「0」は平板型, ﹁ ﹁ ﹁ ﹁ のアクセントの整理にあたり,詳細な検討が必要と考 「1」は頭高型である。以降,0 型,1 型などとも記述 えられ,本稿では,具体的な語例を示して,外来語に する。「ア」欄以外の数値は,生起頻度(実数)を示 おけるアクセントと母音の関係を考えたい。 している。 表中の記号については, 「v」は母音を示す。特殊拍 2.4 拍の外来語のアクセント が含まれない場合は「φ」とし, 「vφ」は,特殊拍を 含まない音韻列の語を意味する。例えば「ダイナモ」 4 拍の外来語のアクセントについて,簡潔に示す。 などである。引き音,撥音,促音は,それぞれ, 「R」 , 佐藤(1989),窪薗(1996)および Shirose and Kiritani 「N」,「Q」で示し,例えば「vN」は 2 拍目あるいは 3 (in preparation)によると,以下のようにまとめられる。 拍目の母音に撥音が後続することを意味する。具体的 詳細は別稿に委ねたい。 な語としては, 「ジョイント」 , 「ヒロイン」である。母 音が 2 拍目の場合,4 拍目が特殊拍となる語もあり, (1)自立拍のみから成る語は平板型になる。 これらは「v_R」のように,アンダーバーを挿入して (2)3 拍目以外に特殊拍を含む語は頭高型になる。 示した。 「v_R」の語例としては, 「タイマー」となる。 (3)3 拍目に特殊拍を持つ場合は語頭から 2 拍目にア まず,表 1a. に示した,2 拍目が母音イの場合の結 クセント核が置かれる型(以降, 「2 型」)となる。 果を検討する。特殊拍を含まない vφ型は 24 例あり, うち,平板型が 11,頭高型が 8,3 拍目にアクセント 但し,2 拍目,3 拍目ともに特殊拍である場合の決 核がある中高型(以降,「3 型」)が 4 との結果となっ まり方については未整理であり,上記のアクセントの ている。規則(1)および(2)から,4 拍すべてが自 決まり方に含まれていない。なお,以降,本稿で上記 立拍で構成されている場合,平板型となり,頭高型と の規則を参照する場合, 「規則(1)」のように記述する。 なるのは,2 拍目,4 拍目が特殊拍の場合である。母 音イが前の拍に従属的で,特殊拍と同様のふるまいと 3.分析資料 なると仮定すると,頭高型を示すと考えられ,これに 相当する生起数は 8 である。わずかな差ではあるもの 『新明解日本語アクセント辞典』(三省堂,2011;以 の,すべての拍が自立拍である場合に生じる平板型の 降, 「ア辞典」 )を資料として用いた。本辞典より,4 生起数の方が多く,ここにおいては,2 拍目の母音イ 拍の外来語と,そのアクセント型を抽出し,1320 語 は, 従属的というよりも自立的な傾向があるといえる。 - 2 - 白勢 : 4 拍語における外来語アクセント規則と連母音 表 1 音韻構造によるアクセント型の生起頻度 特殊拍を含む語の結果を見ると,母音に特殊拍が後 ある場合と一致するアクセント型が見られている。 続する,vR,vQ,vN の各型で,2 型が優勢に生じて 以上,母音イ,ウ,エが自立的であるか,従属的で いる。規則(3)の,2 拍目が自立拍で 3 拍目が特殊 あるか,4 拍の外来語のアクセント規則に対応させて 拍の語構造で予想されるアクセント型に一致する。2 検討を行なった。2 拍目に母音がある場合は自立的な 拍目,3 拍目ともに特殊拍である場合のアクセント型 傾向が強く,一方,3 拍目に母音がある場合は従属的 はまだ明確でないが,従属的な拍にアクセント核が置 である傾向も見られ,一様な結果は得られなかった。 かれることはなく,従って,2 型のアクセントとはな この問題に対し,特殊拍の位置からの検討だけでは不 らない。ここにおいても,2 拍目の母音イは,自立的 十分であり,他の音韻環境や語彙それぞれの特性など である傾向が見られるといえる。 を考慮することにより,より詳細を議論できると考え 2 拍目がウ(表 1b.),エ(表 2c.)の場合では,該 られる。そこで,以下,語彙の実例に基づいて,考察 当の語彙の生起数が少なく,傾向を把握しがたい。詳 を深めたい。 しくは後述する。 表 2 の a.~f. に,母音種別に,アクセント型ごとの 表 1d.~f. は,3 拍目に母音イ,ウ,エがある場合 語彙を,音韻構造の別に示した。各表の「0」~「4」は の結果を示している。表 1d.,e. を見ると,母音がイ, アクセント型を示している。以下,詳細を検討してい ウの vφ型において,2 型が多く生起している。規則 (3) く。 から,2 型は 3 拍目が特殊拍である場合に生じるもの 2 拍目がイである場合について,述べていく(表 であり,3 拍目の母音が従属的である可能性を示して 2a.)。0 型になるもののうち,vφ型は,前述のように いる。しかしながら,イ,エでは,vφ型において 0 11 語ある。繰り返しになるが,イが従属的なら 1 型 型も生起しており(表 1d.,f.),全ての拍が自立拍で になると考えられ,0 型はすべての拍が自立拍である - 3 - 東 京 学 芸 大 学 紀 要 人文社会科学系Ⅰ 第 65 集(2014) 表 2 語彙一覧 場合に生じるアクセントである。これらのことから, ている。語彙のうち,タイピン,マイコンは,タイ/ 0 型のアクセントは,母音が自立的であることを示唆 ピン,マイ/コンのような語構成である。○○ピンは するのではないかと考えられる。vN 型は 4 語ある。 「押しピン」などの例から,○○コンは「リモコン」 vN 型がどのアクセントになるか,現段階では未確定 などの例から平板型を示す後部要素であり,このため であるものの,語彙はいずれも 4 拍目がトまたはドで に 0 型になっていると考えられる。アイロン,セイロ あるという共通性を有しており,この場合,0 型にな ン,ライオンは,古い語彙であることによるか(秋永, ると考えられる。v_N 型は 5 語である。v_N 型は本来 2011b.p.(18) ) 。 1 型になるはずであるが,これらの 5 語は 0 型を示し 2 拍目がイである場合,1 型になるもののうち,vφ - 4 - 白勢 : 4 拍語における外来語アクセント規則と連母音 型は,前述のように 8 語ある。平板型になるものがあ の語彙を『日本国語大辞典』で調べると, チャイルド, る一方,従属的である場合の 1 型も生起しているとい ボイルド,ワイルドの 3 語があり,全て 1 型であった。 える。1 型の語彙をよく見ると,傾向性が見られ,4 「イルド」の系列が頭高型にさせるのか,どれか特定 拍目がス,ルのものが 6 語ある。佐藤(1989)および の音によるものかはわからないものの,音韻列に 1 型 李(1992)では,2 拍目,4 拍目に「ル」または「ス」 になる要因が含まれていると考えられる。 がある語は 1 型になることが示されている。但し,4 2 拍目がイで 1 型になるもののうち,vN 型は 2 語 拍目が「ス」の語は 0 型も生じており,4 拍目が「ス」 ある。ケインズは人名であり,外国人の 4 拍語の姓は である語のアクセントについては対象を広げて検討す 「原則として頭高型」 (秋永,2011b.p.(31) )になる。 る必要がある。残りはバイバイ,マイルドの 2 語であ ペイントについては,母音が従属的とした場合のアク る。バイバイは「畳語・対立語の形をとった副詞類」 (秋 セントに一致する。ペイント以外の,4 拍目が「ト」 永,2011b.p.(69))に含まれ,この場合,感動詞な の語は 0 型を示している。但し,ペイントの語につい どはすべて頭高型になる。マイルドが 1 型になる理由 ても,ア辞典に,新しいアクセントとして 0 型が示さ ははっきりしないが,ア辞典に出現しない「○イルド」 れている。v_R 型,v_N 型は,いずれもイが従属的で - 5 - 東 京 学 芸 大 学 紀 要 人文社会科学系Ⅰ 第 65 集(2014) も自立的でも 1 型であり,詳細な検討は省く。 2 拍目がエである場合(表 2c.),0 型になるものは, 2 拍目がイで 2 型になる語彙は 13 語ある。これら vR 型の 2 語である。これらも,イの 0-vN 型と同じく, では,イにアクセント核があることから,イが自立的 4 拍目がトかドであり,この語末音により,0 型のア にはたらいていることを示す語彙と考えられる。 但し, クセントがもたらされていると考えられる。1 型にな vφ型のウイルスが 2 型になる理由は明確でない。4 るものは,vQ 型のデュエット,v_R 型のジュエリー 拍すべてが自立拍としてはたらくのであれば 0 型にな である。ジュエリーでは,母音が従属的でも自立的で り,母音が従属的であれば 1 型になるが,どちらのア も 1 型となる。デュエットの語では,母音が従属的と クセントでもない。語末に「ルス」が連鎖することが なり,1 型を示している可能性がある。2 型になるも 要因だろうか。vR 型,vN 型は,母音が自立的とした のは,vφ型のウエスト,パエリアの 2 語と,vR 型, 場合のアクセントに一致し,規則通りといえる。 vQ 型各 1 語,v_N 型のイエメンである。これらのうち, 2 拍目がイで 3 型になる語彙は 8 語ある。アイディ vR 型,vQ 型は,エが自立的である場合のアクセント アの語を除き,すべて○○/○○の語構成の語彙であ に一致する。イエメンは,原語のアクセント[jeʼmen] り,複合語の規則がはたらいているのではないかと考 に従ったものかと考えられる。ウエスト,パエリアの えられる。アイディアが 3 型になる理由も明確でない 語は,2 型になる要因が不明であるが,原語のアクセ が,原語のアクセントに従った可能性がある。 ントに従ったとも考えられる。 以上,母音イが 2 拍目にある語彙を検討したところ, 母音 3 種を通じて,2 拍目の母音は自立拍として機 母音が自立拍とした場合の規則に準じているといえそ 能していると捉える方が,規則性の把握が容易である うである。このように仮定すると,規則(1)~(3) ように考えられる。母音イの 0-vφ型および 2 型の生 のアクセントから外れるのは,0-vN 型(数字はアク 起がその大きな根拠である。母音が従属的にはたらい セ ン ト 型 を 示 す。 以 下 同 じ。),0-v_N 型,1-vφ 型, ていると捉えると,これらを説明するような特性を検 1-vN 型,2-vφ型のウイルス,3-vφ型となる。これら 証する必要があるが,共通の特性は見当たらないよう のうち,ペイント,ウイルス,アイディアの 4 語を除 である。母音を自立的と捉えると,一見,1-vφ型の き,以下のような性質により規則から外れていること 説明がつかないが,これらは,語末音から推測するこ が確認できた。 とができる。 以上のように,2 拍目の母音が自立的であると仮定 0-vN 型:4 拍目がトかド し,規則(1),(2),(3)を適用すると,いくつかの 0-v_N 型:2 要素から成る語 語は規則から外れることになる。外れているもののう 古い語彙 ち,多くの語が,これまで説明したように,音の配列 1-vφ型:4 拍目がスかル 等から説明できる。音の配列等から説明ができない語 畳語の構成を持つ語 彙として,ウイルス,アイディア,ウエスト,パエリ ○イルドの系列を持つ語 ア,イエメンがある。いずれも原語のアクセントの影 1-vN 型:人名 響が考えられるが,定かではない。ウイルスについて 3-vφ型:2 要素から成る語 は 1 型でウィールス,アイディアについても,1 型の アクセントがア辞典に記載されている。さらに,ペイ 2 拍目がウである場合について検討していく(表 ント,サウンド,ラウンジ,ラウンド,デュエットに 2b.) 。0 型になるものは,vN 型の 3 語である。イの ついては,0 型になる根拠として 2 拍目の母音が従属 0-vN 型と同じく,4 拍目がトかドであり,この語末 的であることが挙げられる。しかしながら,デュエッ 音により,0 型のアクセントがもたらされていると考 トの語を除く 4 語は,ア辞典に新しいアクセントとし えられる。1 型になるもののうち,v φ型はファウス て 0 型が記載されている。1 型が古く,0 型が新しい トの 1 語である。この語は人名であり,外国人の 4 拍 といえ,すなわち,母音が従属的であるのが古く,自 語の姓は「原則として頭高型」 (秋永,2011b.p.(31) ) 立的であるのが新しいことも考えられる。この点につ とされる。vN 型が 3 語あり,これらでは母音が従属 いては, 「新しい傾向として,複合語の場合に高さの山 的となり,1 型を示している可能性がある。但し,3 が前にずれることの少ない人もいる。例えば,ヤト イ 語とも,ア辞典に新しいアクセントとして 0 が記載さ ヌシ(雇い主)といわずにヤトイヌシのように発音す れている。v_R 型は母音が従属的でも自立的でも 1 型 る。 」 (秋永,2011a.p.(7))とあるように,母音が となる。 従属的に発音されない傾向が新しい傾向であるとの指 ﹁ ─﹁ - 6 - 白勢 : 4 拍語における外来語アクセント規則と連母音 摘と関連しているのかもしれない。 の生起理由が不明であるが,原語のアクセントに従っ 次いで,3 拍目が母音である場合について検討を進 た可能性がある。他の語彙については,以下のような める。3 拍目がイの場合(表 2d.),0 型になるものは 性質により規則から外れていることが確認できた。 すべて vφ型である。4 拍すべてが自立拍である場合 のアクセントに一致しており,母音が自立的であると イの 0 型:4 拍目がトかド 考えられる。しかし,いずれの語彙も 4 拍目がトまた ウの 1 型:畳語の構成を持つ語 はドであり,2 拍目の例から考えると,語末音により エの 0 および 3 型:略英字 0 型がもたらされているとも捉えられ,この場合,母 エの 1 型:人名 音が従属的である可能性も考えられる。2 型になるも 4 拍目がスかル のは 24 語あり,これらは,イが従属的である場合の アクセントに一致している。vφ型 16 語のうち,3 拍 以上,2 拍目もしくは 3 拍目に母音があり,連母音 目が母音アのものが多い(16 語中 14 語)という傾向 が含まれる 4 拍の外来語について, アクセント型から, も観察されている。 母音拍が前の拍に従属的となってアクセントに作用す 3 拍目がウの語では(表 2e.),1 型になるものは v るかどうかを検討した。結果,母音が従属的になるか φ型のブギウギ 1 語である。この語は,畳語のアクセ どうかは,語中の位置により異なっており,2 拍目の ントであることがア辞典に記載されている。2 型にな 場合には自立的であり,3 拍目の場合には従属的だと るものは 10 語あり,ウが従属的である場合のアクセ 考えられた。このように捉えることが適切であるかど ントに一致する。vφ型は,カリウムなどの元素名が うかは,4 拍の外来語や他の語長の語も含めて考える 多く,この場合,4 拍目がムであるという特徴がある。 必要があると考えられ,今後の検討課題としたい。さ 元素名以外は,2 拍目が母音アであることが共通して らに,語中位置によりふるまいが異なると捉えること いる。 が適切である場合,なぜ異なるのかについて考える必 3 拍目がエの場合(表 2f.),0 型になるものには v 要がある。この点についても,今後,検討したい。4 φ型 4 語,Rv 型 1 語の 5 語がある。いずれも,エス 拍の語が 2 拍ごとのフット単位にまとまって○○|○ エフ(SF),オーエル(OL)など,英字の略称の読み ○となり,2 拍目と 3 拍目が構成要素として分離する となっている。後部がローマ字読みのもの(複合語) は, ことが要因などとも推測されるが,現段階では結論づ 「原則として平板型」(秋永,2011b.p.(25))である。 けることは避け,熟慮したい。 1 型になるものは vφ型 4 語,vN 型 1 語である。vφ 型のザビエルは人名で,前述のように,頭高型となる。 参考文献 カリエス,ムニエルは,4 拍目にス,ルがあることから, 1 型になったものと推測される。ソビエトは原語のア 秋永一枝(2011a)音韻とアクセントとの関係の法則,新明解 クセントに従ったか。vN 型の語はトルエンで,エが アクセント辞典,pp.(6) ⊖ 9),三省堂. ( 自立的である場合のアクセントに一致するが,原語の 秋永一枝(2011b)東京アクセントの習得法則,新明解アクセ アクセントに従ったとも考えられる。3 型になるもの ント辞典,pp.(10) ⊖ 106),三省堂. ( は Rv 型のシーエムで,英字の略称の読みである。 Kubozono, Haruo (1996) Syllable and Accent in Japanese: Evidence 3 拍目に母音がある場合,イ,ウ,エの 3 種を通じて, 3 拍目の母音が従属的と捉える方が,規則に混乱がな from Loanword Accentuation, 音声学会会報,211,pp. 71⊖82. 佐藤大和(1989)外来語アクセントの分析と規則化,日本音 いように考えられる。母音イ,ウでの 2 型の生起がそ 響学会講演論文集平成元年春季,pp. 133⊖134. の大きな根拠である。母音が自立的であると考えると, 三省堂(2011)新明解アクセント辞典. これらが説明できない。3 拍目の母音が従属的である Shirose,Ayako and Kiritani,Shigeru (in preparation) Extensive と仮定し,規則(1),(2),(3)を適用すると,0,1, 3 型の生起が規則から外れることになる。外れるもの Analysis of Accent Rule of Loanword in Japanese. 李 香蘭(1992)外来語アクセントの原則にはずれる語の分析, のうち,ソビエト,トルエンについては,アクセント 東北大学言語学論集,1,pp. 109⊖123. - 7 -
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