DNA ナノワイヤトランジスタに関する研究

ZE25B-9
DNA ナノワイヤトランジスタに関する研究
(兵庫県立大・院工)
高田忠雄,松尾直人,山名一成
(京大・エネ研)
森井 孝
DNA は、遺伝情報の根幹を担う生体高分子であるとともに、相補的な塩基認識に基づく自己集合に
より複数の核酸塩基対がπスタックナノワイヤ構造を形成する分子材料として有望である。このよう
なユニークな構造をもつ DNA の電子・ホール輸送および電気伝導の検討から、DNA は分子半導体の
性質を示すことが明らかにされてきた。DNA 分子が電子・ホールキャリヤとして働く超低消費電力ト
ランジスタの創成が期待される。
いままでに、シリコン基盤3端子電極を用いて DNA ナノワイヤトランジスタを作成し FET 動作特
性を調べた。DNA デバイスにおいて、DNA は半導体(ホール電導)ナノワイヤであり、低ゲート電
位でドレイン電流の ON/OFF スイッチが可能であることを明らかにした。また、作成した DNA デバイ
スのメモリー特性を明らかにした。
AGE 1nm
Vg = 0V
Vg = -1V
Vg = -2V
Vg = -3V
Vg = -4V
Vg = -5V
-5
dID/dVD
2.0x10
-5
1.5x10
1.0x10-5
6.0
4.0
2.0
0.0
-2.0
-4.0
Drain current (A)
2.5x10-5
-1
0
Drain voltage (V)
1
5.0x10-6
0.0
-1.0
-0.5
0.0
0.5
Drain voltage (V)
1.0
Drain current (μA)
シリコン3端子電極を基盤とした DNA デバイスの構造は、
すでに報告した(Fig.1)1,2。ドレイン電流のドレイン電圧に対
する変化率、(dID/dVD)測定の結果、負電圧印加の場合は
VD=0.3V 付近においてドレイン電流変化率が極値を示した
(Fig.2 Left)。DNA を構成する 4 塩基中でグアニンが最もイオン
化ポテンシャルが小さいため正孔を作りやすい。グアニンに電
子がトラップされることによりグアニンで生じた正孔がグア
ニン間を伝導することが DNA 内の電気伝導の因子のひとつと
なっている。ドレイン電流変化率に極値が観測される理由は、
DNA にトラップされた電子がチャネル中の電界によりデトラ
ップされ電子と正孔の再結合を生じ、質量作用の法則により n+
型 Si から過剰なホールがチャネルに注入された為と考えられ
る。一方、正電圧印加の場合、極値は見られなかった。 2.6
2.5
2.4
2.3
2.2
2.1
2.0
1.9
1.8
H
Si
C
H
C
H
C
H
H
H
H
H
C
O
H
C
H
C
H
C
H
H
OH
(Gate)
Fig. 1. Structure of DNA nanowire
transistor.
VD = 1V
‐50V
Refresh
voltage
‐30V
0V
‐40V
‐20V
‐10V
‐5V
2
4
6
8
10
Repetition number
12
14
Fig. 2. Left: dID/dVD versus VD at various gate voltages. Right: Drain currents dependent on refresh
voltages.
− 94 −
DNA
AGE
VG = 0V
0
S
ZE25B-9
Fig. 2 Right に、ドレイン電流のリフレッシュ電圧依存性を示した。-20V までの Refresh では、電流値
増加にはあまり影響はなかった。-30V では電流増加が無くなり、-40V、-50V では電流値の減少が見ら
れた。これは、DNA 内にトラップされた電子が VG=-30V より大きいゲート電圧を印加することにより
デトラップしたため電界効果の増幅が抑制されたと考えられる。これらの結果は、DNA 内部に電子の
トラップが多数存在することを反映していると考えられる。 References
(1)
S. Takagi, T. Takada, N. Matsuo, S. Yokoyama, M. Nakamura and K. Yamana, Gating Electrical
Transport through DNA Molecules That Bridge Between Silicon Nanogaps, Nanoscale, 4, 1975-1977
(2012).
(2)
N. Matsuo, S. Takagi, K. Yamana, A. Heya, T. Takada and S. Yokoyama, Electrical Property of DNA
Field-Effect Transistor: Charge Retention Property, J. J. Applied Phys., 51, 04DD13 (2012).
− 95 −