高リン血症の 病態と治療薬 Up-to-date

第8回日本腎臓病薬物療法学会 学術集会・総会2014
教育講演 4
高リン血症の
病態と治療薬 Up-to-date
医療法人 社団日高会 腎臓病治療センター 研究統括部長
東京女子医科大学 客員教授
永野 伸郎 先生
10月13日(祝・月)
date
2014年
【学術集会2日目】
time
10:00~11:00
place
第 3 会場
(大阪国際交流センター 2 階 さくら西)
〒543 - 0001 大阪市天王寺区上本町8- 2- 6 Tel : 06-6773-8182
chairperson
秋田大学医学部附属病院 教授・薬剤部長
三浦 昌朋 先生
【共 催】第₈回日本腎臓病薬物療法学会学術集会・総会2014/鳥居薬品株式会社
第8 回日本腎臓病薬物療法学会 学術集会・総会
2014年10月13日
(祝・月) 第3会場(大阪国際交流センター 2階 さくら西)
教育講演 4
「高リン血症の病態と治療薬 Up-to-date」
血中リン
(P)
濃度の恒常性は、副甲状腺ホルモン
(PTH)
、
経口P吸着薬の服用を余儀なくされる。かつては、Pと高い
線維芽細胞増殖因子-23
(FGF23)
、活性型ビタミンD
(VD)
結合能を有するアルミニウム
(Al)
製剤が長らく使用されて
により維持されている。摂取P量の7割が腸管より吸収
いたが、一部が吸収・蓄積することにより、脳症および骨
され、骨や臓器での収支がゼロの場合、同量のPが尿中
軟化症の発症や貧血の助長が問題となり、本邦では1992年
へ排泄されるため、腎は最も重要なPの恒常性維持器官
に透析患者への使用が禁忌となっている。
である。従って腎機能が低下すると、P利尿作用を有す
その後に汎用されたカルシウム
(Ca)
製剤は、特にVD製剤
るPTHおよびFGF23が上昇することで、血中Pの上昇が抑
との併用下で高Ca血症の副作用を頻発することに加え、
制される。この2系統の尿中P排泄機構は、残腎機能の
心血管系の石灰化を促進させる可能性も懸念されている。
ある腎不全患者や動物へシナカルセト塩酸塩あるいは
かかる背景のもと、透析医療現場ではCaを含まないP吸着
FGF23中和抗体を投与した場合、血中Pが上昇する現象で
薬が希求されていた。2003年に登場したセベラマー塩酸
検証可能である。
塩は、ポリカチオン性ポリマーであり、消化管内で胆汁酸
しかしながら腎機能が更に低下した場合、高P血症の
を吸着し糞中排泄を増加させることで血清LDL-コレステ
発症は不可避となる。Pは副甲状腺細胞に作用し、二次
ロールを低下させるほか、種々の多面作用を有している。
性副甲状腺機能亢進症
(2HPT)を発症・進展させる。ま
しかしながら、セベラマーはP吸着容量が低く、かつ便秘
た、Pは血管平滑筋細胞に作用し、骨芽細胞様細胞へ形
や腹部膨満感等の副作用を有する。その後、2009年にP吸
質転換させることで血管石灰化をもたらす。血中Pの上
着容量の高い炭酸ランタンが、2012年にはセベラマーよ
昇は独立した死亡リスクとなるため、近年、P管理の重
りも膨潤性が低いポリマーで、アシドーシスを惹起しない
要性が再喚起されている。高P血症の治療は、食事制
ビキサロマーが上市された。そして本年、新たに登場した
限、透析療法、P吸着薬、2HPTの治療が基本となる。残
クエン酸第二鉄は、P吸着容量が高いのみならず、貧血管
念ながら、通常の透析
(4時間/回×3回/週)ではPの除去
理における鉄補充の観点からも期待されている。
は不十分であり、殆どの透析患者がP摂取制限に加え、
医療法人 社団日高会 腎臓病治療センター 研究統括部長 永野 伸郎(ながの のぶお)先生
東京女子医科大学 客員教授 ◆学歴・研究歴
◆学位
昭和57年
京都大学 農学部 卒業
昭和59年
同上 修士課程修了
薬学博士、農学博士
同年
東京大学 薬学部 研究生
昭和62年
キリンビール株式会社 医薬探索研究所
平成 7 年
同上 医薬開発研究所 主任研究員
平成19年
キリンファーマ株式会社 学術部 部長代理
平成21年
協和発酵キリン株式会社 薬理研究所 主任研究員
平成23年
医療法人社団日高会 日高学術研究センター 室長
フォスブロック/レナジェル
(高リン血症治療薬)
平成26年
同上 腎臓病治療センター 研究統括部長
(兼務)
レグパラ、ロカルトロール
(副甲状腺機能亢進症治療薬)
◆客員教授
東京女子医科大学 東医療センター
(平成23年∼)
◆開発薬剤
エスポー、ネスプ
(腎性貧血治療薬)
【共 催】第₈回日本腎臓病薬物療法学会学術集会・総会2014/鳥居薬品株式会社