薬剤適正使用 血液透析患者 における 第10回日本腎臓病薬物療法学会学術集会・総会2016 ランチョンセミナー6 ∼リン吸着薬処方と服薬に潜むピットホール∼ 座長 平田 純生 先生 熊本大学薬学部附属育薬フロンティアセンター長 熊本大学薬学部臨床薬理学分野 教授 演者 永野 伸郎 先生 医療法人 社団日高会 腎臓病治療センター 研究統括部長 東京女子医科大学 客員教授 日 時 11月20日(日) 2016年 [ 12:30∼13:30 ] 会 場 第2会場 パシフィコ横浜 アネックスホール F203+F204 〒220-0012 神奈川県横浜市西区みなとみらい1-1-1 共催:第10回日本腎臓病薬物療法学会学術集会・総会2016/鳥居薬品株式会社 第10回日本腎臓病薬物療法学会学術集会・総会2016 ランチョンセミナー6 血液透析患者における 薬剤適正使用 ∼リン吸着薬処方と服薬に潜むピットホール∼ 医療法人 社団日高会 腎臓病治療センター 研究統括部長 東京女子医科大学 客員教授 永野 伸郎 先生 リン吸着薬(PB)に対する服薬アドヒアランス低下は、血清 ある。㋓コロイド状の高粘度の媒体中では、 カット時に混入し リン高値、副甲状腺ホルモン(PTH)高値、生活の質(QOL) たガラス片の沈降に10分以上を要するものの、投与までに十 低下、医療費増加と関連する。そこで、当院の経口薬剤処方記 分な静置時間が設けられていない場合がある。㋔フィルター 録および定期採血結果を解析するとともに、 アンケート調査を を通すことは推奨されていない。㋕一部の製剤が二価鉄を含 実施し、以下の結果を得た。①経口薬剤の処方実態:透析患 むとする海外報告があり、酸化ストレスにより感染症および心 者520人に対して、計316種類の経口薬剤が、1人あたり1日 血管イベントのリスクが増大する可能性がある。 平均8.6種類、17.8錠処方されていた。②PBの処方実態:1 PBの処方にあたっては、患者の嗜好、ニーズ、 ライフスタイ 日平均6.2錠(経口薬剤の35%)のPBが78%の患者に処方 ルを重視し、個々の患者ごとに服薬アドヒアランスを高める薬 されており、単剤処方者は58%、2剤併用処方者は37%、3剤 剤選択ならびに一包化を含めた投与形態の検討が重要であ 併用処方者は5%であった。③PB処方患者の背景:処方錠数 る。 また、透析医療現場では、種々の制限により静注鉄剤の適 が多くなると、年齢が若く、透析歴が長く、血清リンが高くなり、 正使用がなされていないのが現状である。 クエン酸第二鉄は 2剤以上併用処方されている患者は、年齢が若く、透析歴が リン代謝および鉄代謝に介入するPBであるため、薬物療法に 長く、糖尿病が少なく、血清リンおよびPTHが高値であった。 おけるピットホール回避の観点からも重要な選択肢の一つと ④PBに対する服薬アドヒアランスの実態:229人を対象とし 考えられる。 たアンケートの結果、PBの効果、必要性、副作用の理解に乏 しい患者が3割弱おり、 アドヒアランス不良者は3∼4割であっ た。⑤服薬アドヒアランス不良と関連する因子:アドヒアランス 学歴・職歴 不良者は、処方錠数が多く、血清リンが高値であり、処方錠数 昭 和 57年 京都大学 農学部 卒業 と血清リン値との間に正の単相関関係が認められた。⑥胃酸 昭 和 59年 同上 修士課程修了 分泌抑制薬:63%の患者に何らかの胃酸分泌抑制薬が処方 されており、一部のPBのリン吸着能に影響する懸念がある。 ⑦マグネシウム(Mg):炭酸カルシウム製剤に含まれるMgが 透析患者の血清Mg値に影響する可能性がある。 次に薬剤適正使用の観点から、静注鉄剤使用時のピット ホールを文献情報および当院の現状を踏まえて列挙する。 ㋐添付文書中の用法・用量には、 「 本剤は経口鉄剤の投与が 困難又は不適当な場合に限り使用すること」 とあるものの、現 状はその限りではない。㋑同じく用法・用量には、 「2分以上か けて徐々に静脈内に注射する」 とあるものの、実際には遵守さ れておらず、急速投与されている。㋒イージーカットのアンプル 製剤であっても、 カット時のガラス片微粒子の混入は不可避で 昭 和 59年 東京大学 薬学部 昭 和 62年 キリンビール株式会社 医薬探索研究所 平 成 7年 同上 医薬開発研究所 主任研究員 平 成 21年 協和発酵キリン株式会社 薬理研究所 主任研究員 平 成 23年 医療法人社団日高会 日高学術研究センター 研究部長 平 成 26年 医療法人社団日高会 腎臓病治療センター 研究統括部長 (兼務) 学 位 薬学博士、農学博士 客員教授 東京女子医科大学 東医療センター (平成23年∼) エスポー、 ネスプ (腎性貧血治療薬) 開発薬剤 フォスブロック/レナジェル (高リン血症治療薬) レグパラ、 ロカルトロール (二次性副甲状腺機能亢進症治療薬)
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