第2章

第2章
マネジメントイノベーションを
実現するマネジメント体系図
企業の各部門でマネジメントイノベーションを
れている内容は、高次元のモノづくり企業として
実現するためには、重要な管理業務について VM
実現すべきマネジメントのあり方を要約したもの
ボードで見える化して、VM の神髄と呼ばれる4
である(図1)
。VM ボードによるマネジメントイ
つのマネジメントの視点からイノベーションを実
ノベーションの推進によりマネジメント力・管理
施する必要があるが、そのためには、各部門の実
技術力・固有技術力の向上やプロダクトイノベー
現すべきマネジメントイノベーションの重点、す
ションなどの各種イノベーションの実現などの定
なわち、変革すべきマネジメントの内容について
性的な目標を達成することができるが、高次元の
明らかにする必要がある。管理技術のイノベーシ
モノづくり企業になるためには、全社的に5S を
ョンの点線で囲まれた8つの部門のところに書か
含 む VM 活 動 を 推 進 し て VM FMS( Visual
図1 VM 導入によるマネジメントイノベーション体系
経営体質の改革・革新
成長力向上
設備・人財投資
の増大
新製品比率
の向上
利益増大
生産性向上
リードタイム
短縮
定性目標
VM F
│ MS
定量目標
OVMS
売上増大
収益力向上
・プロダクトイノベーション、テクノロジーイノベーション、プロセスイノベーション、マーケティングイノベーションの実現
・マネジメント力の向上、管理技術力の向上、固有技術力の向上、人財育成と組織・風土の活性化
営業部門
開発・設計部門
生産管理部門
環境分析と強み
弱みの分析を行
って全体を統括
しながら最適な
経営戦略を策定
する力の強化
顧客開拓のしく
みづくりと製品
提案力と数字の
分析力および戦
略的、戦術的な
営業力の強化
差別化された高
付加価値製品の
開発期間の短縮
を図ることがで
きるプロセス管
理力の向上
生産能力・在庫
の分析力、受注
予測力を高め生
販一体化を推進
するリーダーシ
ップ力の強化
購買 / 外注部門
製造部門
開 発 へ の VE 提 生産現場で発生
案と製造との意 する問題点に対
思疎通 の向 上、 して管理サイク
購買・外注先に ルを迅速かつ確
対する監査能力 実に回す管理力
と指導力の向上 と改善力の強化
生産技術部門
品質管理部門
生産準備期間の
短縮、生産工程
の改革力、製造
の依頼による現
場改善力、設備
保全力の強化
クレーム、不良
の再発防止を図
るための再発防
止対策力・検証
能力、内部品質
監査能力の強化
管理技術のイノベーション
社員の意識改革
問題意識
改善意識
実行力
リーダーシップ
コミュニケーション能力
チームワーク力
5 S・VM の推進
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Vol.60 No.7 工場管理
マネジメント・イノベーション
経営企画部門
特集 “見える経営”VM 手法によるマネジメントイノベーションの進め方
図2 VM の神髄=4つのマネジメントによるマネジメント・イノベーション体系
過去
マネジメント
の基本
現在
将来
結果の管理だけではなく VM ボードで仕事のプロセス
(仕事のやり方や過程・経過)の見える管理を実施し、
マネジメントの基本体系化を図る
プロセスマネジメント
マネジメントのスキルアップ
リアルタイムマネジメント
マネジメント
の先見力
総合的視点から
のマネジメント
マネジメントはスピードである。タイムラグが発生
しないうちに早め早めに応急対策や根本対策を実施
していくマネジメントの習慣化を図る
マネジメント
のスピード力
プリベンティブマネジメント
目標を達成するためには、事後対応ではなく不具合
な事態や悪い結果が生じる前に応急対策や根本対策
を実施していく予防的管理を行うことが必須である。
先の目標、予定を見据え、手遅れにならないように
事前にマネジメントを行う
最適かつ最強のマネジメントとは、過去を振り返り、
過去の情報や状況を踏まえた上で、現在の状況を把
握し、将来における必要なリソースを計画し、マネ
ジメント全体、各部門の業務の相関関係と因果関係
などを見て、総合的観点から重点かつ的確な対策を
早めに指示、フォローアップしていくマネジメント
が必要である
トータルマネジメント
マネジメント・イノベーション
Management Flexible Manufacturing System =
ある。
見 え る フ レ キ シ ブ ル 生 産 シ ス テ ム )と OVMS
(2)
リアルタイムマネジメント
(Office Visual Management System =見えるオフ
早め早めに応急対策や根本対策を実施しないと
ィスマネジメントシステム)
を構築することが必要
計画や目標が達成できない管理業務や早く対処し
であり、これによって全社員の意識改革が図られ、 ないと問題が大きくなって取り返しがつかなくな
定量目標と定性目標が達成されて成長力と収益力
るような管理業務に対してはできるだけ早く
が向上し、終局的に経営体質の改革・革新が実現
PDCA サイクルを回すことが重要である。
される。
(3)
プリベンティブマネジメント
VM には VM の神髄と呼ばれる4つのマネジメ
常に先行きの受注・開発・生産・調達状況など
ントがあり、VM ボードを活用して、重要な管理
に関しては、潜在的な問題点やリスク要因などを
業務について使い分けをしながら以下に示す4つ
クローズアップして今から取るべき対策について
のマネジメントを実施していくことが必要である
立案、実施する。
(図2)。
(4)
トータルマネジメント
(1)プロセスマネジメント
年度および中期の経営戦略計画を策定する場合
マネジメントの基本である PDCA サイクルを的
は、戦略 VM、収益 VM、組織横断 VM などを実
確に回すことによって目標達成率を高めて業績を
施しながら全体最適の視点から戦略、課題、対策
上げることが必要不可欠な重要管理業務に対して
について構築する。
はプロセス管理を徹底的に実施することが管理・
(五十嵐 瞭)
監督者のマネジメント力を高めるためにも必要で
工場管理 2014/06
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