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Udanavarga諸
本 と雑 阿 含 経
別 訳 雑 阿含 経, 中阿 含経 の部 派 帰属
榎
本
文
雄
こ れ ま で の 諸 学 者 の 研 究 と 多 少 の 知 見 を 総 合 す る と, 有 部,
伝 のU[dana]v[arga](正
し くはUdana)の
成 立 過 程 は 次 の よ うな も の と 考 え ら
れ る。 ま ず, 有 部 内 の 法 救 と 伝 承 さ れ る 人 物 が,
rmapadaの
ma]の
る)か
並びに根本有部所
自 派 の *Udanaの
大 部 分 を 合 成 し, さ ら に 自 派 の 諸Agama,
全 体 と *Dha-
特 に *S[arpyukta]A[ga-
*Sarpgitavargal)(PaliのS[alpyutta]N[ikaya]のSagathavaggaに
ら 多 くの 詩 句 を 取 り 入 れ2), UVを
〔
経 〕(後 に論 ず る如 く根 本 有 部 系 のSAの
編 纂 し た ら し い。UVと,
漢 訳)と
の 間 に は140偶
詩 頽 が 存 在 す る。 こ う し て3), そ の 原 型 が 成 立 し たUvは,
られ て い た で あ ろ う が, 徐 々 にSkt.
相 当す
雑
〔阿 〕 含
以 上 の パ ラ レル な
本 来Prakrtで
化 さ れ て い つ た。 Schmithausen教
伝 え
授 は この
Skt. 化 の 最 初 期 の も の を 古 写 本 と 呼 ぶ。 こ れ 以 後, 古 写 本 を 伝 え て い た 古 い 有 部
が, 少 な く と も二 つ の 教 団 に 分 化 し, そ れ ぞ れ の 教 団 に お い てSkt.
化な どに よ
る テ キ ス トの 変 化 が 進 ん だ た め, 二 つ の 写 本 系 列 が 成 立 し た。 一 方 は, 東 トル キ
ス タ ン有 部 に 伝 承 さ れ た も の で,
同 教 授 はRez[ension]1と
[ibetan]UvやY[ogacara]bh[umi]所
部 で 伝 承 さ れ た も の で,
と こ ろ で,
引 のUvの
同 教 授 はRez.
化 は,
Uvの
み な ら ず,
パ ラ レ ル 部 分 に 関 し て は,
と考 え られ る。 ま た, 他 部 派 に お い て も,
さ れ た で あ ろ う。 し た が つ て, UVの
パ ラ レル に 一 致 し, 根 本 有
2と 呼 ぶ。
こ の 有 部 系 各 教 団 に お け るSkt.
経 典 に つ い て も行 な わ れ た は ず で,
呼 ぶ。 他 方 は, T
他 の 阿含
同一 化 が な され た
自派 の 聖 典 内 の パ ラ レ ル 部 分 は 同 一 化
新 旧 三 本 と 種 々 の 仏 教 文 献 に お け るUVの
パ ラ レル 部 分 を 比 較 検 討 す る こ と に よ つ て, Uvの
三 本 を伝 え て い た教 団 と そ れ
ら の 文 献 を 伝 え て い た 教 団 と の 相 互 関 係 が 明 ら か に な る と考 え ら れ る。 以 下,
の方 法 に よつ て雑 含 と中
さ らに別
〔
訳〕雑
〔阿 〕 含
こ
〔
経 〕(そ れ ぞ れ 系統 の 異 な る有 部 の所 伝 と さ れ る),
〔
阿 含 経 〕(飲 光 部 や化 地 部 や法 蔵 部 に所 属 部 派 が推 定 され た り, 雑
含 の別 生 経 典 で は な い か と論 じ られ て い る)の 所 属 部 派 教 団 の 解 明 を 試 み た 結 果 を 報
告 し て み よ う。
-933-
Udanavarga諸
A
雑 含,
本 と 雑 阿 含 経,
Pali(SN
別 訳 雑 阿 含 経,
別 雑 は 古 写 本 系Uvと
I. 2.7)
古 写 本(Uv
pade
11.7cd,
pade
本)
(56)
は 異 な る テ キ ス トを 伝 え る。
visideyya
P. H. Ms.)pade
Rez. 1 (Uv 11. 7cd)
中 阿 含 経 の 部 派 帰 属(榎
sahk: appanalp
pade
vasanugoll
vildantah
sarpkalpanam vadalp
gatah//
punch punar visidet sa saxpkalpanam vasam gatah//
Rez. 2 (T. Uv 11. 7ab)
yan dan yan du hgyod pa yi// kun rtog dban du hgro ba
yi//
別 雑(大 正2. 437c8∼9)数
雑 含(大 正2.160c4)
生不歓喜
心 随 覚 自在
想 欲 得 自在
数数溺沈没
冒頭 の, Pali, 古 写 本 に共 通 す るpade
punah
punarに
padeと
い う本 来 形 が, Rez. 1やRez.
2で は
改 め られ て い る。 別 雑, 雑 含 と も, 古 写 本 に見 られ る古 い テ キ ス トで は
な く, 新 しい テ キ ス トを伝 え てい る。 この 他, Uv
11.6a:
省 略 し, Uvは
350c21:
太 字, 別 雑 は斜 字 で表 示), 28.9d:
雑 含160c2(以
下, 文 献 名 は
469b19, 11.3d:
364b2:
482
b3な どで 雑 含 や 別 雑 は古 写 本 とは 異 な る読 み を 示 す。
B
Pali
雑 含, 別 雑 は, Uv
Rez. 2に 一 致 し, Rez. 1と は系 統 を異 にす る。
subhasitam uttamam......,dhammam......nadhammam
(SN VIII. 5, Sn 450)
Rez. 1 (Uv
8. 11)
piyam......tam
subhasitam
tatiyam,
by
tam
saccam......tam
uttamam.......
dutiyam/
catutthan//
dharmam...... nadharmam
tad
dvitiyam/
priyam......tat
trtiyam, satyam......tac
caturtham//
Rez. 2 (Ybh)4) subhasitam by uttamam.......priyam......tad
satyam......tat
Rez. 2 (Uv
trtiyam,
8. 111.LB)5)
別 雑(462b23ff.)養
是名為第三
雑 含(332a11ff.)
是則第三説
説最為上
説法不非法
dharmam......nadharmam
(abc)
仏聖之所説
tac
caturtham//
vaden netarat tac caturtham//
愛語非鹿語
是 名 為 第二
塞語 非妄語
是 則 為 第二
諦説 非虚妄
是名為第 四
賢聖善説法
法説不異言
dharmmam
dvitiyam/
是則為最上
愛語非不愛
是則為第 四
四 分 律(大 正22.952b10ff.)善
説者近勝
法説無非法
愛語真実語
利益無有損
Pali, Rez. 1, 四分 律(法 蔵 部 所 伝)の 異 な る三 部 派 の 文 献 間 で 一 致 す るsubhasita,
dharma,
Uv
priya, satyaの 項 目順 が本 来 の もの で あ ろ う。 と ころ が, 直 後 のSn
8.12∼15な
どに おい て はsubhasita,
た め に, これ に 従 つ てRez.
前 者 はYbhに
PaliやRez.
1と 等 し く, LB写
2に,
-932-
後 者 はLB写
線部に着
本 やT.
り古 い 形 を残 して い る とみ られ る。 以 上, 別 雑, 雑 含 はRez.
おけ る比 較 的 古 いRez.
451∼454,
順 に詳 説 さ れ て い る
2で は改 め られ た もの と考 え られ る。 ま た,
目す る と, Rez. 2の 中 で はYbhが,
文 省 略)よ
priya, satya, dharmaの
Uv(原
2に 一 致 し,
本 な どに お け る よ り新 しい
(57)Udanavarga諸
本 と雑 阿 含 経, 別 訳 雑 阿含 経, 中 阿含 経 の部 派 帰属(榎
Rez. 2に 一 致 して い る。 さ らに, 次 の 如 き 箇所 で, 雑 含 や別 雑 はRez.
Rez. 2と 一 致 す る。 Uv 2.5c: 雑 含338b24(以
∼21:
437b23,
15ac:
10, 6d:
322b25∼26,
265a
27:
20.6bc;
149b9,
27.34d:
328b8な
34d:
201b8,
29.43d:
319b10,
482b5:
C
ど:
30.32b:
四 分 律882c9な
Rez.
中 含(大
正1.535c12)如
MN
cf.
23, Dhp
14. 14d)
四 分 律(882c22)無
19a26。
20.12cd:
292c22,
29.1lab:
ま た,
322b23:
8.15c:
12.
307b3,
27.
20.20d:
306a13∼14:
462c7:
160b20
410c13,
399b18∼19,
29.
四 分 律952b19,
11.
2に 一 致 す る。
一 致 す る。
vol. III, p. 154.
1, Rez.2(Uv
ど,
12.14d:
ど に お い て も 別 雑 は 四 分 律 と 異 な り, Rez.
中 含 は 古 写 本 系Uvと
Pali(MN
356a19,
386b11,
455d5な
1と は 異 な り,
下, 先 の 如 く略 して 表 示)6.8ac:
10.11e:
292c13∼14:
30d:
5d:
460b5,
本)
ekas
329d)
caren
eko
na
care
matang'aranne
ca papani
va
nago//
kuryat//
象独 在野
事如野象
vol. III,p. 154.26, Dhp 330c: eko care na ca papani kayiral
し中含(535c13):
独 行莫為悪
Pali, 中 含, 四 分 律 に 共 通 す る 「象 」 に た とえ た 本 来 の 伝 承 が 直 後 の 詩 句(cf.と
掲 げ た もの)の 影 響 を 受 け て, Rez. 1やRez.
に, 中 含 は, Rez. 1, Rez. 2成 立 以 前 の 形 を 伝 え て い る。 他, Uv
(以 下, 文献 名 は 省 略), 2. 18d: 495c27, 4.25b;
な どで, 申 含 は, Rez. 1へ の一 致 とRez.
して
2の 形 が 成 立 した もの と見 ら れ る。 ゆ え
2. 17c: 申 含495c23
648a8, 2l. 1c: 777b17, 21.6b:
777b26
2へ の 不 一 致, Rez. 2へ の一 致 とRez.
1へ
の 不 一 致 を繰 り返 す が, 古 写 本 に は全 体 的 に一 致 す る。
〔結 論 〕a)雑
含 は, Rez.
も の で あ ろ う。b)別
雑 は,
2を 伝 え て い た 根 本 有 部 系 の 教 団 に 伝 承 さ れ て い た
四 分 律 を 伝 え た 法 蔵 部 に は 属 し て い な い。 し か し,
化 地 部 所 伝 と さ れ る五 分 律 や 飲 光 部 所 伝 と さ れ る 解 脱 戒 経 と の 比 較 か ら は,
目下
の 所 明 確 な 結 論 が 出 な い の で, 別 雑 の 所 属 部 派 に 関 し て は 一 層 の 検 討 が 必 要 と な
る。 ま た,
雑 含 に 似 てRez.
も存 在 す る。C)中
2と の 一 致 が 多 く, 根 本 有 部 系 の 所 伝 で あ る 可 能 性
含 は, 古 写 本 系 のUVを
伝 え て い た部 派 教 団 に伝 承 され て い
た も の と考 え て よ い で あ ろ う。 こ の こ と は, 古 写 本 系 のUvを
引 用 す る韓 婆 沙 論
や 阿 毘 曇 毘 婆 沙 論 が カ シ ュ ミ ー ル 有 部 の 所 伝 で あ り, 中 含 の 原 本 招 来 者,
訳者 が
い つ れ も カ シ ュ ミ ー ル 出 身 で あ る と い う点 に も 合 致 す る。(注 は 大 部 分 省略)
1)
「僧 省 多 」(雑 阿 含
2)
同 様 の こ と は,
3)
以 下,
大 正2.143a9),「
Gandhari
L. Schmithausen,
Zu
den
大 正30.
772c22)。
つ い て も 言 え る。
Rezensionen
des
Udanavargah,
WZKSO
pp.
4)
47∼124.,
Ibid., pp. 50∼51に
結 集 品 」(喩 伽 論
Dharmapadaに
よ る。5)
Ibid., p. 75
-931-
Fuβnote
94eに
よ る。
XIV,