2014 年 11 月 19 日 「経済の好循環実現に向けた政労使会議」情報 第3号 発行:日本労働組合総連合会総合労働局 TEL: 03-5295-0517 FAX: 03-5295-0545 E-MAIL: [email protected] 経済の好循環実現に向けた政労使会議(第3回)が開催される 11 月 19 日(水)8:30 より、第3回「経済の好循環実現に向けた政労使会議」が開 催された。以下の出席者により、経済の好循環に向けた取り組みと課題について意見 交換を行った。 政 府: 安倍晋三内閣総理大臣、麻生太郎副総理兼財務大臣、菅義偉内閣官房 長官、甘利明内閣府特命担当大臣(経済財政政策)兼経済再生担当大 臣、塩崎恭久厚生労働大臣、宮沢洋一経済産業大臣 経済界: 榊原定征日本経済団体連合会会長、鶴田欣也全国中小企業団体中央会 会長、三村明夫日本商工会議所会頭 労働界: 古賀伸明連合会長、逢見直人UAゼンセン会長、相原康伸自動車総連 会長 ゲストスピーカー: 星野佳路星野リゾート 代表 八野正一全国労働組合生産性会議 副議長(UAゼンセン副会長) 松岡勇樹株式会社アキ工作社 代表取締役社長 有識者: 高橋進日本総合研究所理事長、樋口美雄慶應義塾大学教授、吉川洋東 京大学大学院教授 議事(それぞれが報告した資料は首相官邸ホームページにて公開しています。) (1)取組事例についてのヒアリング ゲストスピーカー3名から資料に基づき説明あり ①星野リゾートの取り組み(星野佳路氏) ②サービス分野の生産性向上と労働組合の役割(八野正一氏) ③アキ工作社「国東時間(くにさきじかん)」の取り組み(松岡勇樹氏) (2)休み方改革ワーキンググループの報告 ワーキンググループの座長である高橋進日本総合研究所理事長より、資料に 基づき報告があった。 (3)意見交換 ○古賀会長発言(要旨) 3点申し上げたい。1点目は、経済の好循環実現には、月例賃金の継続的 かつ安定的な引き上げを今年度以上にひろげていく必要があるということで ある。とりわけ、地域の中小企業や非正規で働く仲間たちへの波及が課題で ある。働く者にとって、月例賃金は、言うまでもなく生活費に直結し、将来 設計を考える根幹である。正社員・非正社員にかかわらず結婚し子どもを育 てていくことができるよう、社会保障制度の維持・強化と適正な賃金水準の 実現をめざし、政労使がそれぞれの役割を果たす必要がある。 2点目は、長時間労働の是正が、働き方改革の最優先課題であるというこ とである。政府の統計(「労働力調査」)によれば、約 500 万人の雇用労働者、 自営業も含めれば約 600 万人の働く者が週 60 時間以上、つまり、8時に出勤 し夜の9時以降まで毎日働いているという実態にある。6月には「過労死等 防止対策推進法」も成立したが、働き方改革は、まず長時間労働の是正から はじめるべきである。 3点目は、第1回の会合で提起のあった課題についてである。働く者はみ んな生活を背負った生身の人間であり、労働は商品ではない。わが国の労使 は、これまでも企業を取り巻く環境の変化に、賃金・人事処遇制度も含め柔 軟に対応してきた。また、大きな産業構造の変化に対しては、政府も含め雇 用最優先で取り組んできた。人の移動・雇用の流動化に当たっては、まず、 良質な雇用の創出、ディーセントワークの実現、社会的セーフティネットの 整備・強化が必要であることをあらためて申し上げておきたい。 最後に、今後のとりまとめにあたっては、これまでの議論を踏まえつつ、 丁寧に進めていくことをお願いし、意見とする。 ○UAゼンセン 逢見会長発言(要旨) 非正規雇用が雇用労働者の約4割を占めるという仕組みが前提となったま までは、日本経済全体の生産性低下の一因になると懸念している。賃金カー ブは生産性と一定の相関があるが、非正規雇用では一般に能力や経験を高め ても、それに応じて賃金が上昇する形になっていない。UAゼンセンの 2014 賃金闘争の集計では、正社員 60 万人弱の賃上げは 1.97%に対し、パートタ イマー約 51 万人の賃上げは 1.34%となっている。この差の一部は能力育成 とそれを評価する制度の違いによるとみている。多様な働き方により労働力 率を高めると同時に、労働の質も高めていかなくてはならない。 非正規雇用の増大と正社員の加重労働が日本の人口減少を助長しているの ではないかと懸念している。男性の場合、非正規雇用ほど未婚率が高く、一 方で、女性加重労働が結婚や子育ての障害になっている現実がある。長時間 労働の規制と均等待遇を進めていく必要がある。 政労使が、短期的な経済効率よりも厚みのある人的資源の育成と能力発揮 こそが日本にとって重要な課題であるとの共通認識にたつことが重要である。 平成 19 年にはワークライフバランス憲章が制定されたが、この意義を再認識 することが必要であり、正規、非正規という働き方の2極化問題の根本的な 解決をはかっていく必要がある。 ○自動車総連 相原会長発言(要旨) 今日の議論を通じて、サービス産業、中小、地場企業がその土地の雇用と 生活、経済を支える担い手であることを再認識した。一方で、その地場に根 付く企業を元気にしてこそ、初めて好循環が実現できると考える。地域の消 費者であり、その地域社会の担い手である人への投資を通じ、生産性の向上 と所得の向上、その歯車をしっかり回していくことの必要性、重要性につい て、政労使会議としてクリアな指針を示していく必要がある。政府としても、 中小企業対策や公正取引の実現などにも引き続き取り組みをお願いしたい。 地域の人材をフルに活用し、そのうえで生産を高めていく必要性が多く発 信されたが、言い換えれば、地元の学校を出て、地元の職に就いて、家庭を 築くという、当たり前の生活かもしれないが、今後は都市部から地方に対し て多くの若者が動いていくことを期待している。この地域で暮らすことに喜 びを感じ、将来への見通しがある程度立つという前提を日本全体でつくって いけるかが大事であり、キーワードはワーク・ライフ・バランスだと思う。 ワーク・ライフ・バランスは仕事と生活を高い次元でバランスをとらせる ことに意味があり、ややもすると小さなものに収まりがちだが、周りの皆さ んの能力を最大限に引き出す、個人と他人、国と地方、大手と中小の関係な ど、相手の能力を最大減引き出すために自らの働き方をどうすればいいのか、 そんな価値観ができる社会にしていくことが必要である。 前回この場においても生産性運動を国民運動として発信していくべきだと 話したが、もう一つ、ワーク・ライフ・バランス社会をプラットフォームと して築いていくべきだということも提言させていただく。 安倍総理大臣締めくくり挨拶 第一に、サービス業・中小企業の生産性改善について、景気回復で労働需 給がタイトになった今こそ、サービス業がしっかり賃金を引き上げられる環 境をつくる一番の好機であり、労使双方の一致協力による取り組みを期待す る。今年の年末についても賃金が上がっていくという展望を示せれば、好循 環の2巡目は大きく前に進んでいく。私自身も記者会見で来年、再来年、そ の翌年の春も賃金が上昇していく環境をつくっていくことを約束した。政労 使会議を活かして進めていきたいし、円安のメリットを受けて高収益の輸出 型大企業には、賃金支給総額の増額や設備投資、協力企業のコスト上昇の価 格転嫁といった積極的な対応が求められているので、よろしくお願いしたい。 第二に、働き方の改革である。一日8時間、週5日という従来の働き方に 縛られず、個々の従業員の創造性発揮のためにも、様々な働き方があってし かるべきである。今日の話を聞いて、地域の特性を活かした働き方というア プローチも必要であるということを感じたので、労使で引き続き議論してい ただきたい。他方、長時間労働を美徳とする文化は変革すべき。休み方につ いては、ワーキンググループの提言を踏まえて、意識改革を進めていきたい。 第三に、ノウハウを有する熟年層の再トレーニングと、地域の企業に対す る人材の供給の問題である。熟年層の方々の地域への円滑な労働移動が進む よう、まち・ひと・しごと創生本部を中心に具体策を検討していきたい。 最後に、本日まで、本会議で、多くの有意義な議論をいただいた。年内に、 とりまとめをお願いしたい。 以 上 経営者側・労働者側・有識者の発言内容については、内閣府が議事録要旨を発行することとし ています。
© Copyright 2024 ExpyDoc