東京で農業がブーム

平成 27 年 7 月
東京で農業がブーム
都会のドまんなか、東京で就農を希望する若者が増えています。いまなぜ、東京で。都
内での就農を支援してきた東京都農業会議の松澤龍人氏にブームのなかみを聞いてみまし
た。
――東京での就農が増え始めたのはいつごろからですか。
2007 年に、東京都で初の新規就農者となる、井垣さん夫妻が誕生してからだんだんと増
え始めました。
――東京都農業会議に東京での就農相談に来る方が増えて
いるのですか。
昨年は、104 人。ひと月 10 人くらいです。
(来るときは)立
て続けに来ます。ここ 2~3 年はそんな感じです。
――東京都内で新規就農をするということはどんなことな
のですか。
もともと東京都内で就農するというのは、ハードルの高いものでした。まず「市街化
区域」であれば、現実的に農地の貸借はできません。それは、農地の持ち主に、相続税
などの面で不都合が生じるからです。そのため、東京都内で貸せる農地は「市街化調整
区域」が中心となります。
そうなると、ある程度の「市街化調整区域」の土地を確保できるのは、東京西部の「青
梅市」
、
「あきる野市」
、
「瑞穂町」
、
「日の出町」
、
「八王子市」
、
「町田市」
、
「武蔵村山市」
の7市町に限られます。そのため、新規就農者は、東京都の西部地区に集中しています。
――東京で就農しようとする人はどんな人が多いのですか。
もともと都内を中心とした首都圏の出身の人が多く占めますね。年齢層は 30 代が最も多
く、既婚者もおり、夫婦で農業をしている人も何人かいます。
ただ、就農間近な 20 歳の若者なんかもいて、実現すれば、東京で過去一番若い新規就農
者になりますね。
――どのように支援しているのですか?
当初は、農業委員会の協力を得て、就農できる農地を探すだけだったのです。それが、
だんだんとひとり、ひとり個別に就農の仕方を考えだしたりして。
それに就農したから終わりでもなくて、東京NEO-FARMERS!という集まりを
つくり、スーパーの販売コーナーを持ったり、農地や販売先を広げる手伝いをしたり。彼
らの情報を発信したり、相談を受けたりと、就農後も、ずっと関係が続いていますね。
――実際、農業をされている方はどのくらいいらっしゃいますか?
現在、農業研修中を含めると「東京 NEO-FARMERS!」には 60 人ほどのメンバーがいます。
奥さんが外で働いて、自分が農業をするというスタイルの人もいます。作っているものは、
果樹・野菜が中心です。
東京という土地柄から、できたものを買いたいというありがたい声は多いのですが、実
際に多くの取引先に少量を配達し、さらに生産物をつくるという作業を一人、またはごく
限られた人数で行わなければなりません。となると、規模をなかなか広げづらいというの
が現状です。そのため、何人かのグループをつくって、配達をするなど、今後展開してい
ければいいなと思います。
――なぜ東京で農業をやりたいという方が増えているのでしょうか?
東京は、ほかの地域に比べて設備投資が少なくてすむという面があります。地方だと、
ブランドを作って大規模に展開していかないといけないのですが、東京だと消費者が近く、
小規模でも、野菜などを多品目栽培し販売することである程度のメドがたちます。ただ、
ほんとのところは、よく、わからないですね。
――東京ならではの企業や、大学との連携などはなさっていますか?
首都圏でスーパーを展開している「いなげや」では、福生銀座店に「東京 NEO-FARMERS!」
の専用のコーナーを作ってくれました。新規就農希望者の中にも、
「いなげや」の関連会社
の「(株)いなげやドリームファーム」で、農業に携わったり、研修を受けている人もいます。
ある時、表参道や代官山などでお店を展開している大手レストランの関連会社が、農地
を借りたいと声をかけてきました。ただ、企業に農地を貸すとなるとかなりの広さになる、
その分、新規就農の人を受けいれられなくなります。そこで、
「東京 NEOーFARMERS!」のメ
ンバーの二人を常務執行役員として、会社に受け入れていただくことにしたのです。その
メンバーは、安定した収入を得ながら、農業ができる環境を手に入れました。
(NewsSocra 編集部
www.socra.net )