第4章 「画像の性質を表す諸量」

第4章
「画像の性質を表す諸量」
コントラストが高くピントが合っていて鮮明な画像、暗く
て不鮮明な画像、など画像の性質を定量的に表す方
法を説明する。
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画像のヒストグラム
—  デジタル画像を構成する画素集合の、画素値に対する度
数(頻度)分布を画像のヒストグラムとよぶ。これを用いると、
どの範囲に画素値が多い/少ないを判断することができる。
図4.1
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画像の統計量
—  代表的な統計量に画素値の最小値(minimum)、最大値
(maximum)、平均値(mean, average)、分散
(variance)、中央値(median)、最頻値(mode)がある。
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画像の階調
—  階調性、階調数、階調再現性:階調(tone)という言葉は濃
淡変化とほぼ同じ意味である。階調性が良いとは、明暗の
広い範囲にわたって、濃淡変化が均一(直線的)であること
を意味する。
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画像のコントラスト・明るさ
—  コントラスト:表現可能な濃淡の最大範囲に対する、実際に
表現されている濃淡範囲の比率。例えば、8ビットの濃淡画
像で、画素値の最小値が57、最大値が174であれば、コン
トラストは(174-57)/255=0.459となる。
—  明るさ:画像全体の明るさは、画素値の平均値で表す。
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画像のノイズ
—  画像に含まれるノイズに以下のようなものがある。
—  デジカメやスキャナーなど入力装置のセンサー特性に依存す
る暗電流によるノイズや電荷転送時のノイズ、標本化におけ
るサンプリング位置のずれ(ジッタ)など。
—  デジタル化における量子化ノイズ、エイリアス歪み、デジタル
処理における計算誤差など。
—  ノイズの種類:不規則性(ランダム)ノイズ、周期性ノイズ、
固定パターンノイズなど。
図4.6
—  ノイズ量の尺度:信号対雑音比(SN比)。通常、下式により
デシベル(dB)単位で表す。
SN
画素値の分散
= 10log10 ノイズの分散 =
画素値の標準偏差
20log10 ノイズの標準偏差
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画像のノイズの例
圧縮で情報が失われたことにより、原画像との
誤差がノイズになったもの
Jpeg圧縮あり
Jpeg圧縮なし
ISO200
大
光量
小
ISO6400
カメラの光量を絞って撮影した
場合、撮像素子にランダムノイ
ズが発生する
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白色ガウス雑音
—  画像に加えるノイズを模擬する場合に、しばしば、白色ガウ
ス雑音を用いる。ここで、白色とは全ての周波数を均等に
含むという意味であり、ガウスとはノイズ成分の振幅がガウ
ス分布(正規分布)に従うという意味である。
—  通常、正規乱数を白色ガウス雑音として扱う。
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ノイズ評価の例
—  OpenCVの画像保存関数cvSaveImage
を用いてJPEG画像を保存するときの圧
縮率とノイズの関係を評価した。
0.25
50
45
パラメータ値=50
0.2
40
0.15
35
0.1
30
SN比(dB)
ファイルサイズ
パラメータ値=2
パラメータ値=100
0.05
25
0
0
10
20
30
40
50
60
70
80
圧縮率を制御するパラメータ
90
20
100
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画像の鮮鋭度
—  画像の鮮鋭感を尺度化する一つの方法は、理想エッジに対
する実画像のプロファイル(信号変化)を調べることである。
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画像の振幅伝達関数(MTF)
—  より、厳密な方法として、さまざまな周波数の正弦波チャート
の入出力プロファイルを調べることで、横軸を周波数、縦軸
をコントラスト比とする振幅伝達関数(MTF: Modulation
Transfer Function)を求める方法がある。
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画像の解像力
—  解像力は画像上にどの程度の細かいものが再現されている
かを示す尺度である。図4.9のような解像力チャートを撮影
した出力画像で、線が分離して観察できる位置を評価する。
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撮影パラメータ(1/2)
—  画角(視野角):撮影できる範囲を角度で表したもの。
—  焦点距離:おおむねレンズと撮像素子の距離。焦点距離50mm
のレンズを標準レンズ、それよりも短いものを広角レンズ、長い
ものを望遠レンズとよぶ。
—  絞り:レンズの有効口径を調節する絞りとよぶ。有効口径の大小
により、光量と被写界深度を制御できる。
—  シャッタ速度:光を蓄積する時間を調節する。暗い場所での撮影
は、シャッタ速度が遅くなり、画像にぶれが生じやすい。
—  IOS感度、ゲイン:もともとは、写真フィルムの感度を意味したが、
デジタルカメラでは信号の増幅率を意味する。
図4.11 15
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撮影パラメータ(2/2)
—  ホワイトバランス:人間の視覚は光源色の影響をあまり受
けない(色の恒常性)が、カメラには光源色が強く影響する。
カメラ内部で光源色の影響を補正する処理をホワイトバラ
ンスとよぶ。
—  色温度:照明光源の色を、黒体輻射の絶対温度で表したも
の。白熱燈が2,856K、太陽光が5,500K程度である。
—  フレームレート:動画像を撮影するための、時間軸方向に
標本化する周波数をフレームレートとよぶ。
図4.20 22
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