毎年、寒くなってくると「RSウイルス」が テレビや新聞で話題になります

毎年、寒くなってくると「RSウイルス」が
テレビや新聞で話題になります。
「RSウイルスに感染する子どもが今年は多
い!」とか、「RSウイルスに感染すると大
変!」とか聞きますが、RSウイルスってどう
いうものなんでしょう?
RSウイルスというのは冬の「かぜ」の原因ウ
イルスのひとつです。このRSウイルスにかか
っても、たいていは咳と鼻水くらいですんでし
まいます。2歳までに誰でも一度は、知らない
うちにRSウイルスに感染して「かぜ」をひい
ているのです。
そんな軽いかぜのウイルスなのにどうして大
騒ぎをするかというと、赤ちゃんがRSウイル
スに感染すると、ときに細気管支炎という状態
になることがあるからです。
細気管支炎というのは喘息のようにゼイゼイ
苦しくなる病気で、とくに6か月以下の赤ちゃ
んでは重症になって入院することもあります。
このように細気管支炎が重症になると大変な
ので警戒しなくてはいけないのですが、細気管
支炎になるのはRSウイルスにかかった子の
一部(主に1歳以下の赤ちゃん)だけなのです。
ほとんどの子は軽いかぜ症状だけで、他のかぜ
ウイルスにかかったのと変わりはありません。
RSウイルスにかかったかどうかは検査でわ
かります。インフルエンザと似た方法で15分
くらいでわかります。3年前から外来でも 1 歳
以下なら検査してもよい(保険がきく)となっ
たので、検査をする医院が増えました。
でもRSウイルスの検査で陽性(かかってい
る)とわかったところで、症状が軽いかぜなら
とくに心配はないし、RSウイルスに効く薬は
ないので治療はそのまま変わりません。逆に、
咳やゼイゼイなどの症状が強くて細気管支炎
が疑われるときは、RS検査で陽性であろうが
なかろうが、入院も考えて細心の注意が必要に
なります。
私ども小児科医にとっては、RSの検査をする
ことが大切なのではなくて、症状をよく見て、
軽い風邪なのか、細気管支炎で苦しそうなのか
を見分けることが大切なのです。
そのあたりをマスコミは勉強不足のまま「RS
がふえている!」「RSにかかったらたいへん
だ!」と、まるで猛毒ウイルスがこの世に出現
したかのような報道をするので、お母さんたち
は怖くなってしまいますね。
私のクリニックに来るお母さんの中にも「RS
ですか?」と心配そうに聞かれる方があります。
最近では保育所から「RSかどうか、調べても
らって下さい!」と言われることもあるようで、
橋本先生は困っています。
まとめますと、RSウイルスは赤ちゃんがかか
ったときに、(まれに)重症の細気管支炎にな
るので気をつけなくてはいけない病気です。で
も大半の子どもたちにとっては、冬のかぜの原
因ウイルスの一つにすぎません。このあたりを
皆さんはよく理解していただいて、マスコミの
過熱報道にあおられないようにしましょう。