線形数学 II A 組–2 C 組–2 質問: (1) 部分空間でないときの解答の書き方が分かりません.部分空間であることを示すと きのプロセスに従ってしめしていこうとして,途中で部分空間でないことに気付いた ら,その後の手順は省略してもいいんですか?あと,反例の書き方も分かりません. (回答):もちろん省略してください.部分空間でないことを示すためには,反例をあ げるだけで証明になります.反例をあげるということは,ノート例 2.5 でやったよう に,具体的にベクトルを書いて,和やスカラー倍をしたときに W の元でないことを 見てやればよいです. (2) W1 ∩ W2 と W1 + W2 が Rn の部分空間であることの証明をやってみようと思いまし たが出来ませんでした. (回答):自分で証明を試みようとしたことは,とても素晴らしいことだと思います. W1 ∩ W2 が部分空間になることを証明してみましょう.定義を復習します:W1 ∩ W2 = {x | x ∈ W1 かつ x ∈ W2 }.まず,o ∈ W1 ∩ W2 を示します.これは,何を示せばよ いかというと,o が W1 ∩ W2 の元である条件 (集合の記述の中の { | } の右側) を満たしているかどうか調べればよいです.W1 は部分空間なので,部分空間の定義 から o ∈ W1 .同様に,o ∈ W2 でもあります.つまり,o ∈ W1 かつ o ∈ W2 が言え ました.よって,o ∈ W1 ∩ W2 .次に加法について閉じていることを示してみます. まず,W1 ∩ W2 から任意に二つの元をとってきます.それを a, b ∈ W1 ∩ W2 としま しょう.a, b ∈ W1 ∩ W2 なのですから,a ∈ W1 かつ a ∈ W2 , b ∈ W1 かつ b ∈ W2 を満たしています.示すべきことは,a + b ∈ W1 ∩ W2 (これが,加法について閉 じていることの定義)です.つまり,a + b ∈ W1 かつ a + b ∈ W2 を示せばよいで す.W1 も部分空間であり,加法について閉じていますから,a ∈ W1 ,b ∈ W1 つい て a + b ∈ W1 が成り立っています.同様に,W2 についても,a + b ∈ W2 です.よっ て,a + b ∈ W1 ∩ W2 が言えました.スカラー倍について閉じていることも同様に考 えてみてください.見やすく版書風にまとめると 定理 1. W1 , W2 を Rn の部分空間であるとする.そのとき,W1 ∩ W2 は Rn の部分空 間である. 証明. (1) 0 ∈ W1 ∩ W2 . ∵ W1 , W2 は Rn の部分空間であるから,0 ∈ W1 かつ 0 ∈ W2 . (2) ∀a, b ∈ W1 ∩ W2 , (a ∈ W1 かつ a ∈ W2 , b ∈ W1 かつ b ∈ W2 ) に対して, a + b ∈ W1 ∩ W2 . ∵ W1 , W2 は Rn の部分空間であるから,それぞれ和について閉じている.よって, a + b ∈ W1 かつ a + b ∈ W2 . (3) スカラー倍も同様に示してみてください. 和空間も同様に証明できます.和空間については教科書 [1]89 ページにも証明が載っ ています. (3) 宿題 2 の 1.(3) が難しかった. (回答) 定義を直接,確認するという方法もありますが,和空間の考え方で解く方法も 1 あります. x1 + x2 x + y + 2z = 0, 1 1 1 W = y1 + y2 z + z 2y2 + 3z2 = 0 1 2 が R3 の部分空間であることを示せという問題でした. x 1 W1 = y1 x1 + y1 + 2z1 = 0 z 1 x 2 W2 = y2 2y2 + 3z2 = 0 z 2 として, x1 + x2 x + y + 2z = 0, 1 1 1 W = y1 + y2 z + z 2y2 + 3z2 = 0 1 2 x x 2 1 x1 + y1 + 2z1 = 0, = y1 + y2 2y2 + 3z2 = 0 z z2 1 = W1 + W2 . W1 , W2 が部分空間であることは示せると思いますし,解空間だから部分空間と言っ てしまって構いません.部分空間の和空間は部分空間であることを使えばすぐに示 せます。 感想: (1) 分からないことがあれば,その度に定義や定理を確認することの大切さが分かって きました! ! (この姿勢が,とても大切です.大学での数学は,この繰り返しによって世界が広がっ ていくと思ってください.この先,かなり抽象的な対象も沢山あらわれてきます.そ のたびに確認することが非常に大切です.友達に聞く前に教科書を開きましょう.) 参考文献 [1] 村上正康,佐藤恒雄,野澤宗平,稲葉尚志, 「教養の線形代数」,培風館,1977 年. 2
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