CO2由来ポリカーボネートとイオン液体を用いてポリプロピレンの性能向上に成功 CO2を原料とするポリプロピレンカーボネートの添加によるポリプロピレンの改質 (住友精化)○西岡聖司、藤本信貴、鈴木正博、 (金沢大院自然)中原槙子、新田晃平 [2PA26] (Tel: 079-235-1305) 住友精化㈱と金沢大学大学院自然科学研究科の新田晃平教授らの研究グループは、二酸化炭素(CO2) を再資源化した樹脂として注目される脂肪族ポリカーボネートと汎用プラスチックとの複合材料におい て、プラスとマイナスのイオンのみからなる液体(イオン液体)をさらに複合化させることで、高速変 形時の脆弱化の抑制と、引張レジリエンスの特性を著しく向上させ、実用化へ大きく近づいた。 脂肪族ポリカーボネートは、CO2 と石油由来のエポキシドという化合物を交互共重合させることによっ て合成できる無色透明の熱可塑性樹脂であり、CO2 が炭素源として再資源化された樹脂として注目されて いる。住友精化㈱では、脂肪族ポリカーボネート樹脂について、様々な用途への適用、高機能化を検討 しており、その中で、成形品として使用するための検討を、金沢大学と共同で行なっている。しかし、 脂肪族ポリカーボネート樹脂は、室温ではゴム状であり、単独では成形品としては使用できない。 汎用プラスチックであるポリプロピレン(PP)は年間 200 万トン以上製造されており、容器、包装材 料、雑貨、繊維、家電、自動車部品、紙幣など幅広い用途で使用されている。このような幅広い用途に 使えるようにするために、PP と他の材料を複合化することが一般に行なわれている。 イオン液体はプラスとマイナスのイオンのみからなる液体の塩で、プラスチックの添加剤としても使 われている。しかし、イオン液体は極性が高いため、PP のような極性のないプラスチックとはうまく混 ぜることはできない。 当研究グループは、脂肪族ポリカーボネートが PP によく分散すること、脂肪族ポリカーボネートとイ オン液体がよく馴染むことに着目し、脂肪族ポリカーボネートと PP との複合材料に、さらにイオン液体 を複合化させることに成功した。この複合材料は、脂肪族ポリカーボネート、イオン液体の添加量が、 (従 来の添加剤は、10%以上は配合する必要があるが、 )どちらもわずか数%と少量でありながら、高速の変 形に弱いという PP の弱点が改善されているとともに、プラスチック材料として使用できる限界を表す降 伏破損が、大幅に改善されている。 開発した複合材料は、脂肪族ポリカーボネートが PP 中に数マイクロメートル以下のサイズで分散して いる。イオン液体を添加した場合、イオン液体は脂肪族ポリカーボネートに取り込まれた状態になって おり、本来は PP へ混ざらないはずのイオン液体が、PP マトリックス中に均一に分散していることが分 かった。機械的な物性は、元の PP の強度は維持しながら、高速延伸での破断ひずみが最大 50%向上し、 さらに降伏破損に必要なエネルギーを表す引張レジリエンスは、最大で 200%向上した。この複合材料は、 ポリエチレンに近い変形挙動を示し、ポリプロピレンとポリエチレンの長所を併せ持つ材料であるとい える。これらのことから、PP の最大の弱点の一つである耐衝撃性の改善が期待され、自動車のバンパー 等への応用が期待される。 当研究グループでは、開発した複合材料のさらなる評価と、イオン液体に由来する機能の付与に関す る検討を進めるとともに、樹脂改質のメカニズムを明らかにし、脂肪族ポリカーボネート樹脂の樹脂改 質剤としての応用を目指している。 <適用分野> フィルム、自動車部材、家電部材など < 開発した複合材料の機械的物性> PE 引張レジリエンス 200% UP !! 元の PP 開発した複合材料 破断ひずみ 50% UP ! < 開発した複合材料の相構造モデル図と成形品 > <開発した複合材料の電子顕微鏡写真> 10µm
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