d - 自然科学研究機構

NINS 20131217
ビッグデータと仮説形成
澤 博
名古屋大学 工学研究科 応用物理

結晶構造データベース:物質をリスト化する

物質の登録数は7千万件以上、1万4千件/日ずつ増加
⇒
全自動構造解析システム…装置とソフトの開発

結晶構造以外の物性データも膨大に

電子状態の第一原理計算

スパコンの重要課題の一つ
⇒ 測定データ量が膨大になったらどうなるか?

長い歴史の中でのデータベースの洗練化
情報の形式の統一化 ⇒ “.cif” 形式
 新しい情報を追加の容易さ
 データを扱うことによる学術上のメリット


データの扱い方は個人に依存する

特許関係の扱いで全てが公開ではない

膨大なデータをどのように扱うか?


ゲノムと生物の多様性との関係?
データに含まれる情報と含まれない情報



例えば現代のスマートフォンが100年前に送れた
としたら、その原理を解明できるか?
ハードウェアの解明だけでなくソフトウェアの役
割までを明らかにしないとその装置の役割が不明
では?
(実際に使用されている状況観測が必要!?)
…ゲノム解析は生命現象の理解の方向として正しい?

「物理学」と「化学」のアプローチの相異

観測手法と精度の向上によって得られたもの


測定データに含まれている情報を引き出すには?
データが膨大でその精度が上がった時「物性物
理学」の目指すべき方向は?
放射光X線回折における超精密解析の例
結晶構造因子と回折強度の関係
I (K ) ∝ F (K )
2
i ( K ⋅r )
e
dr
(r)
ρ
⋅
∫
F(K ) =
unit cell
結晶構造因子と電子密度の関係
ρ (r ) =
1
V
− 2πi ( K ⋅r )
F
(
K
)
e
∑
K
もし無限のフーリエ係数が観測できるなら
結晶内の完全な電子密度が再構成できる
6
KEK PF
2.5GeV
SPring-8
8GeV
BL02B1
BL-8A/B
d=1Å
d=2Å
利用できる波長は
加速電圧に大きく左右される
Crystal
θ
X-ray
Angle limit of Bragg
λ/2sinθ>d
観測可能な反射数
Siの場合、2θ<70°
λ=0.68Å(PF) ~ 2671
λ=0.35Å(SP8) ~ 18907
50~200µm
SPD @BL1B, PF
波長 : 0.68Å
~200µm
BL02B1, SPring-8
70×35×15μm3
波長 : 0.44Å
~ 90 Mbyte / Frame
~ 10 Gbyte / set
放射光X線回折による精密解析
化学構造式
結晶構造解析
構造モデル近似
分子の持つ電子密度(マキシマムエントロピー法)
分子の結合電子の情報は実験
データから再構築可能に!
見えなかったものを観て
その本質を捉えられるように
なってきた!
0.8 e/A3

明らかにしたい電子の自由度!
⇒ 原子の持つ電子の軌道状態
共有結合電子の状態
 結合していない電子の状態
 自由度を持つ電子の振る舞い!(半導体、磁性)
 特殊な状態の電子の振る舞い(超伝導…)


原子、分子間の相互作用が織りなす物性
電子の空間、時間、波数、エネルギーの情報を
明らかにすることで物質の性質を明らかに
物性物理学:物質の性質を明らかにする
 見えない現象は計算科学で補う
ex. スパコンによる第一原理計算
計算で物質の電子状態を予測!?
⇔ 自然現象を明らかに出来ているのか?
実験データの精度と解析手法は日進月歩!
生物をも物理の立場から明らかに出来る日を夢見て…
“自然”というビッグデータに立ち向かう物理学者!