PZT 圧電セラミックスの繰返し疲労と機械的特性 北川賀津一 * 山本孝 ** 北川和夫 *** 研究の背景 チ タ ン 酸 ジ ル コ ン 酸 鉛 (以 下 PZTと 略 す )圧 電 セ ラ ミ ッ ク ス に は 機 械 的 品 質 係 数 (Q m )が 小 さ い low-Q m PZTと , Q m が 大 き い high-Q m PZTが あ る 。 最 近 は high-Q m PZT の 需 要 が 増 加 し て い る 。 high-Q m PZT は 連 続 的 に 伸 縮 運 動を行うので,疲労特性も含めた機械的特性に優れている必要がある。本研究では静的な機械特性と繰返し 応力を印加した疲労特性について検討した。 研究内容 100 セ ラ ミ ッ ク ス は 脆 性 材 料 で ,破 壊 靭 性 値 が 小 さ く 破 壊 源 の 欠 れ て い る 。し か し 最 近 は セ ラ ミ ッ ク ス も 微 小 な 欠 陥 か ら の ゆ っ く り し た 亀 裂 の 成 長 ( ス ロ ー ク ラ ッ ク グ ロ ー ス :slow crack growth)に よ る 疲 労 破 壊 が 観 測 さ れ て い る 。 セ ラ ミ ッ ク ス の 疲 労 は 次 の 2 式 で 規 定 さ れ る 。 式 (1)は 破 壊 靱性値が亀裂長さに依存することを示す。 K Ιc = σ f Y a Peak applied stress (MPa) 陥寸法が焼結粒子径にほぼ等しいので疲労破壊はないと言わ 90 High-Qm PZT Strength 70 60 50 Low-Qm PZT Strength 40 0 10 1 10 2 10 3 10 4 10 5 10 6 10 7 10 Number of Cycles (1) K Ι c は 破 壊 靱 性 値 , σ f は 応 力 , aは 亀 裂 長 さ , Yは 定 数 で あ る 。 High-Qm PZT Low-Qm PZT 80 図 1.最 大 負 荷 応 力 と 破 壊 ま で の 回 数 一 方 , 亀 裂 進 展 速 度 は 式 (2)で 表 さ れ る 。 ⎛ K da = ν 0 ⎜⎜ Ι dt ⎝ K ΙC ⎞ ⎟⎟ ⎠ n (2) aは 亀 裂 長 さ , tは 時 間 , ν 0 は 材 料 定 数 , K Ι は 応 力 拡 大 係 数 , K Ι c は 破 壊 靱 性 値 で あ る 。 こ の 2 式 か ら lnt を ln σ に 対 し て プ ロ ッ ト す る と 右 下 が り の 直 線 関 係 が 得 ら れ る 。 図 1 に high-Q m PZT と low-Q m PZTの 最 大 負 荷 応 力 と 破 壊 ま で の 回 数 を 測 定 し た 結 果 を 示 す 。 繰 返 し 応 力 の 印 加 回 数 が 多 い ほ ど 最 大 負荷応力が小さくなること,最大負荷応力と破壊までの回数の対数に右下がりの直線関係が成立することか ら 疲 労 破 壊 の 可 能 性 が 高 い こ と が わ か っ た 。 high-Q m PZT と low-Q m PZTは い ず れ も 50MPaの 最 大 負 荷 応 力 を 印 加 し た 場 合 は ,繰 返 し 回 数 が 10 6 回 で も 破 壊 し な か っ た 。直 線 の 傾 き の 大 き さ は high-Q m PZT が low-Q m PZT よ り も 大 き く な っ た 。こ れ よ り high-Q m PZTの 場 合 は 繰 返 し 応 力 に よ る 疲 労 損 傷 が 大 き い と 考 え ら れ る 。破 断 面 観 察 か ら high-Q m PZTは 粒 界 破 壊 が 顕 著 で あ っ た 。 研究成果 3 点 曲 げ 試 験 の 治 具 を 使 用 し て ,正 弦 波 の 繰 返 し 応 力 を 印 加 す る 方 法 で PZT圧 電 セ ラ ミ ッ ク ス の 疲 労 特 性 を 測 定 評 価 し た 。 静 的 機 械 特 性 ( ヤ ン グ 率 , 曲 げ 強 さ , 破 壊 靱 性 , ビ ッ カ ー ス 硬 さ )は い ず れ も high-Q m PZT が low-Q m PZTよ り も 大 き く な っ た 。 初 期 の 疲 労 特 性 は high-Q m PZT が 大 き い が , 繰 返 し 回 数 が 増 え る に つ れ て high-Q m PZTの 最 大 応 力 は low-Q m PZTよ り も 大 き く 低 下 し た 。こ の 原 因 と し て high-Q m PZTの 場 合 は 疲 労 に よ る 損傷が大きく,繰返し応力により亀裂の成長速度が速くなることが考えられる。 論文投稿 粉 体 お よ び 粉 末 冶 金 Vol. 52, No. 1, 2005. p.16-21. * 化学食品部 ** 防衛大学校 *** 金沢大学
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