筋胃びらんを特徴とする若齢鶏の鶏アデノウイルス感染症

〈研究報告〉
筋胃びらんを特徴とする若齢鶏の鶏アデノウイルス感染症
豊 嶋 愛 , 佐 々 木 淳 , 倉 持 好 , 川 崎 武 志 1) 御領政信十
岩手大学農学部獣医病理学研究室,〒 0
2
0
8
5
5
0盛岡市上回 3
1
8
8
1)人と烏の健康研究所,干 0
9
9
3
1
1
9網走市鱒補 2
7
1
要 約
封入体肝炎 (
I
B
H
) により 1
0日齢ごろから死亡率が増加(約 0
.
2
%
) し,約 1週間で終息した鶏群の
うち重度の筋胃びらんを示した症例から鶏アデノウイルス (
5
3
0
2
0株と命名)を分離し,ひなに対する
病原'性について実験的に検討した。筋胃の 10%乳剤を作製,その上清を鶏腎 (CK) 細胞に接種し,細
胞変性効果 (CPE) を検索, 3代継代しその培養上清を実験鶏へのウイルスの接種材料とした。 P2
0
.
1ml/羽)を接種した。さらに,臓器親和性を検討す
系 SPF鶏由来初生ひなを供試鶏としてこの株 (
るために,初代筋胃乳剤をひなに経口接種後,そのひなの肝臓,豚臓,筋胃乳剤を各々別のひなで継代
した。肝臓乳剤由来ウイルス,豚臓乳剤由来ウイルスは筋肉内接種,筋胃乳剤由来ウイルスは経口接種
で各々 3代
, 4代
, 3代継代した。しかし肝臓継代群では 3代継代するうちに病変形成が認められなくなっ
た為,勝臓継代株と筋胃継代株接種群の体重,肝臓,卵黄嚢,および勝臓の重量測定と全身諸臓器の病
理組織学的検索を行った。
CK細胞での培養は重度の CPEを示し, CK細胞への親和性が高いことが示唆され,電子顕微鏡検索
にて培養細胞内にアデノウイルス粒子が確認された。接種実験で、は全群において,死亡率は非常に低かっ
た。接種鶏の剖検では 7日目から筋胃びらんが目立ち始め,特に経口接種群および、筋胃継代株接種群の
1
4日目では重度に発現していたが,その後は軽度となった。病理組織学的検索では 7日目に筋胃の腺
上皮細胞や勝臓の腺房細胞に好塩基性核内封入体が多数認められた。これらのことから,最近のアデノ
ウイルス感染症でも, IBHだけでなく筋胃びらんを起こすトリアデノウイルスが存在すること,野外
材料中には単一臓器に対してだけでなく,筋胃あるいは隣臓にも親和性を示す鶏アデノウイルスが存在
することが明らかになった。
キーワード:鶏アデノウイルス感染症,筋胃びらん,封入体肝炎,封入体豚炎,若齢鶏
緒
脆弱化,および点状出血が認められ,病理組織学的には
百
核内封入体を伴う壊死性肝炎を特徴としている。接種実
o
w
la
d
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n
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v
i
r
u
si
n
f
e
c
t
i
o
n
s
鶏アデノウイルス感染症 f
(
FAI
)5.6.13) はグループ Iトリアデノウイルスに起因し.
験により野外発生例と類似の肝病変が再現されている
n
c
l
u
s
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nbodyh
e
p
a
t
i
t
i
s(
I
B
H
),筋胃びらん,
封入体肝炎 i
IBDV) や鶏貧血ウイ
性ファブリキウス嚢病ウイルス (
心膜水腫症候群,壊死性降炎8) および呼吸器病といった
多様な病態を発現することが報告されており,産卵低下,
ルス (CAV) との混合感染に起因する免疫抑制あるい
は増強作用が示唆されている 6.18.19.23)0 IBHは一時その発
増体抑制および呼吸器症状の一因ともなる可能性が示唆
0
0
9から 2010年にかけ
生が減少傾向にあったが1.9.13) 2
されている。
て,東北,関東,東海,関西,四国,九州のブロイラー
が,野外例と同程度の病変の再現は容易ではなく,伝染
IBHは主に 3から 7週齢のブロイラー鶏に発生する
ひなにおいて,急死が 1
0日齢頃から始まり, 1
4日齢頃
致死率 1
0から 30%の感染症であり,感染 3から 4日後
までに終息する IBHの発生3.9)がしばしばみられており,
に死亡率のピークを迎える 6)。肉眼的には肝臓の腫大,
注目を集めている。発生率は1.2から 17%と様々である
qJ
qG
ハ
u
可EA
善一一回目U
付吹 l
受領ロホ
日御 2
月巴ω
m h巻
刈
L+l 草
の
74到報
年名研
山連輔
が
, 3%程度の発生が多かった 9)。このような近年の発
生例は,幼若ひなに発生がみられること 14.9.11
.
17
.
2
2
) 同じ
鶏種由来のひなで発症していること.原因ウイルスは近
1
0
1ー
鶏病研究会報
縁であったことなどから,鶏アデノウイルスに対する移
臓,勝臓,あるいは筋胃感染臓器乳剤による鶏継代を行
行抗体価の低下などといった何らかの共通の疫学的要因
い,その病原性についても検討した。
があった可能性が示唆されている 3)。また最近の FAIの
材料と方法
病理学的特徴として筋胃びらんや封入体勝炎といった
IBH以外の病変を主徴とすること1.4.13.日.16.20.ι1)も挙げら
1.供試鶏
れている。
感染実験鶏および組織培養には,当研究室で維持して
561
3
筋胃びらん g
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z
a
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de
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.
I.. ) は
, 日本では T
a
r
由n
u
r
a
2系 SPF鶏由来有精卵を勝化して
いる白色レグホン種 P
1
9
9
3年に採卵鶏で初めて報告加)され. 1
9
9
8
用いた。実験鶏群は雌雄鑑別を行わず,水道水を給水し,
年頃からブロイラーで多発した。さらに 2
0
0
1年には 1
7
育雛用市販飼料を給餌して飼養した。実験は岩手大学動
日齢のブロイラ}ひなでの発生が報告され1)現在若齢
物実験委員会の承認を得て実施し,ひなは炭酸ガス殺後
ブロイラーの死亡率の増加の原因として1.4.5.13)問題となっ
に剖検した。
らによって
2
. 野外発生例の病歴
ている。筋胃びらんは肉眼的には筋胃粘膜におけるびら
んと出血が,組織学的には筋胃粘膜の腺上皮細胞におけ
あるブロイラー鶏農場において,発病は 1
0日齢頃よ
る好塩基性核内封入体形成が特徴的に認められる。原因
.
2
%
) としてみられ,その後 1週
り死亡率の増加(約 0
ウイルスの血清型は lもしくは 8裂に分類されることが
間程度で終息した(図 1
)。死亡鶏では封入体肝炎が多
多く
5
.
1
2
)
一般的に他の臓器・組織の病変は軽度もしく
く認められたが,なかには顕著な筋胃びらんを示す症例
はほとんど認められない 13)。
が含まれており,この中の
1例の筋胃の凍結材料とホル
マリン固定材料を採取した。
われわれはこれまでに,従来報告されている臓器・組
織の他に卵黄嚢上皮細胞にも親和性を示し,核内封入体
3
. 接種材料の調整
を形成する鶏アデノウイルス感染を報告することでに卵
野外例の凍結筋胃材料から,ガラスホモゲナイザーに
黄嚢上皮細胞もトリアデノウイルスの標的細胞となるこ
よる摩砕と凍結融解法にて 10%乳 剤 を 作 製 し そ の 遠
とを明らかにしてきた 2.11)。一方,これまで勝臓に親和
心上清 (
3
.
0
0
0r
p
m
. 5分間)をウイルス分離材料とし
性を示す封入体勝炎についても報告し発育不良との関
て用いた。
連性について示唆してきた 19.22)。
4
. ウイルス分離方法
今回.最近の野外若齢ブロイラーひなにおける封入体
鶏腎 (CK) 細胞の調製は常法に従い初生ひなの腎臓
肝炎発症群のうち,顕著な筋胃びらんを示す症例に遭遇
を無菌的に採材し. 0
.
25%トリプシン液消化にて細胞を
し病理学的に検索をするとともに筋胃より鶏アデノウ
分 散 し 10%牛胎子血清加イーグル MEM培 地 に 浮 遊
イルスの分離・同定を行い.分離ウイルスを用いた感染
させて細胞液とし,細胞懸濁液を 60mmシャーレに入
実験を行った。さらに臓器親和性を検討するために,肝
7C
. 5%炭酸ガス濃度環境下で培養した。 7
2時間
れ. 3
0
自.
2
5
死亡率%
0
.
2
司1
5
ーー当該群
0
.
1
畑一発症群平均
一一非発症群平均
0
.
0
5
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4
量発令今
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群
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率
亡
沼一
畑一
野
ム
噌E
図
第
4
9巻 2013 年
後にウイルス分離用乳剤の遠心上清を CK細胞に接種
3羽を用いて,実験 2
.5
.7
.1
4
.2
1日目 (4-7
ひな 2
し,細胞変性効果 (
CPE) の発現をもって分離を確認し
羽ずつ)に剖検に供した。
た。今回分離されたウイルス株を 5
3
0
2
0株と命名した。
7
. 病理組織学的検索
5
3
0
2
0株および対照として最近分離されひなに対して
感染実験群および未接種対照群の主要臓器,ファブリ
強い病原性を持ち .IBHを起こす鶏アデノウイルス (
8
7
5
4
キウス嚢および卵黄嚢を採材後. 10%ホルマリン液にて
株)2
) を CK細胞に接種し実体顕微鏡にて 2
4時間ごと
固定を行い,常法に従いパラフィン包埋フ辛口ックを作製
に CPEの有無を観察した。さらにカバースリップ培養
した。これをミクロトームにて 4μmに薄切し.
3
0
2
0株では 7
2時間. 8754
を行い,ウイルス接種後. 5
色標本を作製,病理組織学的に検索した。
株では 9
6時間でカバースリップを回収しブアン固定
後,ヘマトキシリン・エオジン
成
(
H
E
)染色を施した。
HE染
績
5
. 電子顕微鏡検索
1.野外例筋胃の肉眼所見および病理組織学的所見
5
3
0
2
0株を接種した CK細胞をトリプシンーEDTA液
肉眼的には,筋胃粘膜面に重度の出血を伴ったびらん
で剥がし. PBSで 3回 洗 浄 し 遠 心 に よ っ て 細 胞 を 集
)。
が認められ,黒色で水腫性に肥厚していた(写真 1
めた。これらの細胞塊を 5%グルタールアルデヒドで前
病理組織学的には,びらん部ではケラチノイド層の棚状
固定. 1%オスミウム酸で後固定した。固定,脱水.脱
肥厚,粗事長化,剥離および筋胃腺上皮細胞の変性・壊死
脂および包埋の操作は 1
.5mlエッペンドルフ内で,作業
が重度で、あった。腺上皮細胞では,核の膨化および好塩
段階ごとに遠心分離 (
3
.
0
0
0rpm. 1
0分間)によって材
基性核内封入体の形成が認められた(写真 2
)。核内封
料を沈下させて行った。定法に従いエポン 8
1
2で包埋し,
入体は核全体を占め. CowdryA型と F
u
l
l型の両方が
ウルトラミクロトームにて 100nmの超薄切切片を作製
みられた。粘膜固有層から筋層にかけては,偽好酸球,
した。酢酸ウラニル・鉛の二重染色を施し,透過型電子
リンパ球およびマクロファージの重度な浸潤と筋線維の
M
2
1
0
0
. JEOL製)にて観察した。
顕微鏡(JS
萎縮および頼粒状変性が認められた。
6
. 感染実験
2
. ウイルス接種した CK細胞の所見
1
) 実験 1 (野外例筋胃乳剤接種実験)
1
) CK培養細胞所見
5
3
0
2
0株の CK培養上清を,初生ひなに 0
.
1mlずつ大
実体顕微鏡下において,臓器乳剤の遠心上清を接種し
1
2~~)および経口接種 (52 羽)した。
腿筋肉内接種 (
た初代培養の CK細胞に円形化の CPEが認められた。
死亡雛は随時,生残雛のうち大腿筋肉内接種群は接種 2
.
4時間目から観察された CPEは. 8
7
5
4株よりも
接種 2
5
. 7日目 (3-6羽ずつ)に,経口接種群は接種 2
.5
.7
.
5
3
0
2
0株を接種した細胞でより重度であり,ほとんどの
1
4
.2
1日目 (5-13羽ずつ)に剖検に供した。また経口
細胞が剥離して浮遊していた。
接種群については,剖検時に体重,肝臓,卵黄嚢の重量
測定を行った。
カバースリップの
HE染色標本では,
どちらの株を接
種した CK細胞にも核内に多数の好塩基性封入体が形成
2
) 実験 2 (組織親和性継代実験)
されていた(写真 3
)
05
3
0
2
0株では .72時間で多くの
ウイルスの臓器親和性を明らかにするために,初代筋
細胞が剥離し白く抜けた部分が広く確認できたのに対
胃乳剤をひなに経口接種後,そのひなの肝臓.勝臓,筋
し 8
7
5
4株では 9
6時間後も CK細胞の剥離はほとんど
胃乳剤を各々別のひなで継代した。肝臓乳剤由来ウイル
認められなかった(写真 3
)。
ス,勝臓乳剤由来ウイルスは筋肉内接種,筋胃乳剤由来
2
) 電子顕微鏡学的検索
ウイルスは経口接種で各々 3代. 4代. 3代継代した。
5
3
0
2
0株接種培養細胞の電子顕微鏡による観察では,
しかし肝臓継代株では 1代目からほとんど病変を形成
CK細胞の核内に結晶状配列を示すウイルス粒子の集積
せず,継代するうちに病変が全く形成されなくなったた
と高電子密度物質(写真 4
) が認められた。ウイルス粒
め,勝臓および筋胃継代株接種を実験の対象とすること
子は直径約 70nm. 円形から六角形を呈し,コアとカプ
織継代株接種群 (
2
0羽)は筋肉内投与,
とした。 4代目勝l
シドから形成されていた。コアの電子密度が低い未熟な
3代目筋胃継代株接種群 (
1
7羽)は経口接種とした。死
粒子から,電子密度の高い成熟粒子までが認められた。
亡したひなは随時,生残雛は接種後 4
.7
.1
4日目 (5-
7羽ずつ)に剖検に供した。また,体重,肝臓,卵黄嚢
および、勝臓の重量測定を行った。
対照群として P2系 SPF鶏由来のウイルス未接種初生
-103一
3
. 分離ウイルスを用いた感染実験
1
) 実験 I
a
. 臨床経過
大腿筋肉内接種群および経口接種群ともに,接種後 3
鶏病研究会報
写 J~
1.野外例の筋目肉眼写真。重度の 出J
l
(
1とびらん
がみられ.黒色水)j直様を呈している 。
写真会 2
. 野外例筋 ¥
'
:
70HE染色。腺上皮細I
I
I
J
包の核は腫大
し,核内に好塩基性封入体 (
矢印)が認めら
れる 。
、
~~- 京、“ k、
町
-U
写真 3 従来の 8
2
5
4株 (左. 9
6
1
時間後)および 5
3
0
2
0
株 (
右.7
2
1
時間後 )のカパースリップ標本。
HE染色。 それぞれ上が弱拡大.下が強拡大。
5
3
0
2
0株では培養細胞の剥離が 目立つ。矢印
は核内封入体。
. 経口投与一
群。接種後 1
4日目 (
左 )および 2
1
写真 5
日目 (
右)の肝臓肉 1
艮写真。緑色肝, 出政l
:
l
i
H
白
矢印). J
肥大が認められる 。
写真 4
.5
3
0
2
0株接種 CK細胞の電子顕微鏡像。酢 酸
ウラニル・鉛三重染色。核内に結晶状配列を
是す.ウイルス粒子の集積が認められる 。
写真;6
. 経口投与群。接種後 7日 E
I(
左)および 21日
目 (右) の筋目 肉Il
良写真。 7日目の広範なび
らんに対し.2
1日目は軽度である。
-1
0
4一
第 49:&
'J-J~l
7 大腿筋 肉内接種群。接 種 後 7十1
1
1
の肝臓。 HE
染色。 限局性の細胞浸濯!
J(
矢印)
.I
J
干細胞の宅
胞変性および核内封入体が認められる。
/
'
丸'
!9 ち~n8 の強拡大{象。 HE 染色。 l腺上皮細胞に好
2
0
1
3年
写真 8
. 経口投与群筋 円。援 組 後 7U 1 (
た )および
2
1日目 (右 )0HE染色。7L
I1ではケラチノ
民務およ
イド層の剥離.目以上皮細胞の広範な l
び粘膜国有層での細胞況判がみられる。 2
1
f'Iでは軽度の炎症および線維化がみられる 。
n
写
nlO
経 口投与群。鍍極後 7i
=
1Uの脈臓。 HE染 色。
残存した腺房調111胞に ~(' ~ J在住4室内対人体 ( 矢
~"主性4案 内 封入体 (矢 印 ) が多数認められる 。
印)が多数認められる。
11から軽度の i
i
欝が認められた。大腿筋肉 l
勾接 樋l
作で
は按純 後 4
.6日日 に l羽ずつ.経口接極 1
洋では後初l後 2
.
3.4f
ll
lに l羽ずつ. 5R目に 5羽が死亡した。
んが認められ. 2 1 日目では筋\'] 宇;~i IJ~交の鍛鋭 化 がみ ら れ
た (
写真 6)。
1
3く.腕
肝臓および卵黄滋の対体重比は対照群に比べ l
b . 肉 IU~病変
大および卵黄滋の残存傾 向がみられた (
ぷ 1)
。 その他
大腿筋肉 l
勾援組幹の生残鶏では. 接組後 7HIに '
1
別立
抜荷
の臓燃における病変は認められなか った。 また. 毛
tI
陀l
j
i
)化およ
から ;f(J立の肝臓の服大. 総 色 斑 状変色:li
A
対m
q
作では者:
変は認めら れなかった。
び I lI lfllよ~がみられた(写真 5) 。 卵貨 滋は桜純後 4 から 7
C
. 病理組織学的
!反対i
11において.死亡苅.生残鶏ともに例体 により!f1i,
t
の
病理組織学的検査では肝臓. I
f
j
l
'
lおよび1革│嫌において
mにおける肝臓では,
ばらつ きが大きかった。筋胃ではびらんが認められたの
病変が認められた (
表2
.3
)
。生残
は後 Hi
7
F
I日に 1
1
5羽のみであった。
封人体肝炎が大腿筋肉内接秘幹および絞 n ~妥倣併の按 Hi
経,
-,接種鮮の生残郊の肝臓および卵黄嚢における
m比
後 7日 1
=
1
に各 2羽でのみ認められた。 I
J
l;
J
.
f
1
'
lの病
'
f
i
.
.
は
軽
t5)。筋
は大lIi1l筋肉内接税群と同様であ った (
表l
. 写J
度から l
r'
程度で.r
浪局性のリン パ球およ び形質調I
J
抱反応
,
¥
'
/では接組後 5から
多発性の壊死巣形成
2
1日目の幅広い J
V
J
I
剖でびらんが観
察さ れた。特に接極後 7お よ び 1
4日日では l
l
i皮の びら
びi蛇性の線維~析出.
1
1
I1
f
l
1巣およ
び肝細胞の空胞変性などが様々な程度で認められた (
写
-105-
鶏病研究会報
表1. 実験 1における平均臓器重量および体重比
2日目
群
経口投与群
(N=52)
31
.6:
t4
.
0
.
)
体重 (g)
肝臓 (g)
1
.5:
t0
.
3
4
.
6
0
%
肝臓/体重
卵黄嚢 (g)
1
.8士0
.
8
5
.
8
0
%
卵黄嚢/体重
n数
対照群
(N=23)
n=l
O
体重 (g)
肝臓 (g)
5日目
4日目
3
6
.7
:
t
1
.8
2
.
0土0
.
2
5
.
3
0
%
2
.
5土2
.
7
7
.
0
0
%
n=5
.2土2
.
0
31
1
.
4
8:
t0
.
3
4
.
7
0
%
0
.
8
5:
t0
.
2
2
.
7
0
%
n=4
肝臓/体重
卵黄嚢 (g)
卵黄嚢/体重
日数
1
4日目
7日目
4
4
.
5:
t4
.
1
2
.
4:
t0
.
2
5
.
5
0
%
1
.3士1.3
3
.
0
0
%
n=5
4
2
.
0:
t6
.
7
2
.
5土0
.
3
6
.
0
0
%
1
.4土1.1
3
.
4
0
%
n=10
5
9
.
2:
t1
7
.
8
3
.
6:
t0
.
8
6
.
6
0
%
0
.
8士0
.
6
1
.40%
n=8
9
6.
2
:
t1
4
.
6
4
.
7:
t0
.
7
5
.
0
0
%
0
.
6:
t0
.
3
0
.
7
0
%
n=7
3
5
.7
:
t2
.
3
1
.
9土0
.
3
5
.
2
0
%
2
.
5:
t0
.
9
5
.
3
0
%
n=4
.
1
土4
.
6
5
4
2
.
7:
t0
.
3
4
.
9
0
%
0
.
8
8士0
.
7
1
.60%
n=4
1
:
t8
.
2
8
2.
2
.
7土0
.
2
3
.
3
0
%
0
.
3
3:
t0
.
1
0
.
4
0%
n=4
1
2
5
.
0士1
5
.
3
3
.
5士0
.
5
2
.
8
0
%
0
.
9土1.
0
0
.
7
0
%
n=7
.)平均土標準偏差
表 2
. 大腿筋肉内接種群における組織学的病変 (n=12b))
接種目数
病変
部位
肝臓
筋胃
勝臓
卵黄嚢
2
5
7
核内封入体
0
/
4
0
/
3
2
/
5
核内封入体
0
/
4
0
/
3
0
/
5
筋胃びらん
0
/
4
0
/
3
1/5
核内封入体
0
/
4
2
/
3
5
/
5
炎症・液胞形成
0
/
4
2
/
3
5
/
5
0
/
1
0
/
0
.
)
0
/
0
.
)
核内封入体
.)細菌'性炎症反応の激しいもの,卵黄嚢が消失したものは除く
b
) 死後変化の激しいものは除く
b
表 3
. 経口投与群における組織学的病変 (n=48
))
接種後日数
部位
肝臓
筋胃
勝臓
卵黄嚢
病変
2
1日目
2
5
7
1
4
2
1
核内封入体
0
/
8
0
/
1
0
2
/
1
5
0
/
8
0
/7
核内封入体
0
/
8
2
/
1
0
8
/
1
5
2
/
8
/7
0
筋胃びらん
0
/
8
1/1
0
9
/
1
5
7
/
8
5
/7
核内封入体
0
/
8
0
/
1
0
6
/
1
5
0
/
8
0/7
炎症 .i
慮胞形成
0
/
8
0
/
1
0
6
/
1
5
8
/
8
7/7
核内封入体
0
/
8
0
/
0
.
)
0
/
1
0
.
)
0
/
6
.
)
0/7
.)細菌性炎症の激しいもの,卵黄嚢が消失したものは除く
b
) 死後変化の激しいものは除く
-106一
第 4
9巻
2
0
1
3 年
表 4
. 実験 2における平均臓器重量および体重比
体重 (g)
肝臓 (g)
肝臓/体重
卵黄嚢(g)
卵黄嚢/体重
勝臓 (g)
筋胃継代株接種群
(
n
=
1
7
)
n=l
肝臓/体重
卵黄嚢(g)
卵黄嚢/体重
目
撃
臓 (g)
勝臓/体重
n数
対照群
体重 (g)
肝臓(g)
肝臓/体重
卵黄嚢 (g)
卵黄嚢/体重
勝臓 (g)
勝臓/体重
n数
a
)
6日目
2
9
.
3
2
9
2
6
.
8
0
%
0
.
7
2
.
4
0
%
0
.
1
0
%
0
.
3
0
%
n=l
3
2
.
2土 2
.
8
.
2
2
.
3土 0
7
.
10%
1
.7
土0
.
7
5
.
40%
.
1
7
:
t0
.
0
3
0
0
.
5
0
%
n=5
体重 (g)
肝臓 (g)
(
n
=
2
0
)
山一円
2
9
.
7:
t3
.
9
1
.
8:
t0
.
5
6
.
10%
1
.
4士0
.
8
4
.
6
0
%
.
12:
t0
.
0
4
0
0
.
4
0%
n=5
2
6.
1
1
3
.
8
0
%
1
.8
6
.
9
0
%
勝臓/体重
n数
5日目
a
l
L009dnunur
(
n
=
2
0
)
4日目
,
-
勝臓継代株接種群
2日目
%%%l
ー
u
m%
初日開 m
m
1日目
群
1
.2:
t2
.
0
3
1
.4
8:
t0
.
3
4
.
7
0
%
.
2
0
.
8
5土 0
2
.
7
0
%
.
0
1
0
.
0
7土 0
.
20%
0
n=4
.
3
3
5
.
7土 2
1
.9:
t0
.
3
5
.
2
0
%
.
9
2
.
5士0
5
.
3
0
%
.
1
:
t0
.
0
3
0
0
.
3
0
%
n=4
7日目
1
4日目
41
.6
士3
.
2 6
2
.
8:
t1
0
.
7
.
2 3
2
.
3士0
t0.
4
.
5:
5
.
40%
5
.
6
0
%
t0
.
4 0
.
4
0
.
5
8:
.
7士0
1
.50%
1
.
10%
.
0
4 0
.
4
士0
.
1
0
.
2
8土0
0
.
7
0
%
0
.
6
0
%
n=5
n=7
1
土6
.
2
4
2.
.
4
2
.
5土 0
5
.
9
0
%
t0
.
3
0
.
7
2:
1
.
80%
t0.
1
0
.
3
0:
0
.
7
0
%
n=6
6
7
.
8:
t1
3
.
8
3
.
6:
t0
.
7
5
.
40%
0
.
5
8:
t0
.
2
0
.
9
0
%
t0
.
2
0
.
4
5:
0
.
6
0
%
n=6
.
1
:
t4
.
6
5
4
.
3
2
.
7士0
4
.
9
0
%
0
.
8
8土 0
.
7
1
.60%
t0
.
1
0
.
2
9:
0
.
5
0
%
n=4
8
2.
1
:
t8
.
2
t0
.
2
2
.
7:
3
.
3
0
%
t0
.
1
0
.
3
3:
0
.
4
0
%
t0
.
0
2
0
.
4
9:
0
.
6
0
%
n=4
平均±標準偏差
真7
)。死亡鶏では大腿筋肉内接種群および経口接種群
の重度な浸i
関と筋線維の萎縮および頼粒状変性が認めら
ともに肝細胞の空胞変性および軽度から中程度のうっ血
れた。
勝臓では死亡例を除いて,大腿筋肉内接種群の接種後 5
.
が観察された。
.7
.1
4日
生残鶏の筋胃では,経口接種群の接種後 5
目において,腺上皮細胞に好塩基性核内封入体が個体に
7日目および経口接種群の接種後 7日目で,腺房細胞に
おける好塩基性核内封入体が認められた。接種後 7-14
.9
)。封入体が認
より様々な頻度で認められた(写真 8
日目では勝臓実質の多発性壊死が.接種後 1
4-21日目
められた核は通常の 2ないし 3倍に腫大し封入体は核
では勝臓間質の線維増生
u
l
l型の
全体を均一に満たしており. CowdryA型と F
質細胞および組織球浸潤がみられた(写真 1
0
)。
i
慮胞形成を伴うリンパ球,形
両方が観察された。大腿筋肉内接種群では筋胃粘膜に核
大腿筋肉内接種群・経口接種群とも卵黄嚢では,細菌
内封入体は認められなかった。筋胃びらんは,特に経口
集塊および肉芽腫の形成などがみられたが,卵黄嚢上皮
接種群の接種後 5
.7
.1
4
.2
1日目の多くの個体でみられ,
細胞に好塩基性核内封入体は認められなかった。
その程度は接種後 1
4日目をピークとして日数の経過と
その他の臓器で著変は認められなかった。また,未接
ともに軽度なものとなり. 2
1日目には粘膜固有層にお
種対照群で著変は認められなかった。
)。びらん部ではケラ
ける線維化が認められた(写真 8
2
) 実験 2 (臓器幸財日性継代実験)
チノイド層の棚状肥厚,粗繋化,剥離および筋胃腺上皮
a
. 臨床経過
細胞の変性・壊死が重度であった。粘膜固有層から筋層
全実験群において.接種後 3日目から軽度な沈欝が認
にかけては,偽好酸球, リンパ球およびマクロファージ
められた。勝臓継代株接種群では接種後1. 5
. 6日目に
-107
鶏病研究会報
表 5
. 勝臓継代株接種群における組織学的病変 (
n
=
1
9b))
接種後日数
部位
病変
4
5
6
7
1
4
5
/
5
1
1
1
1
1
1
5
/
5
7
1
7
核内封入体
0
/
5
0
1
1
0
/
1
0
/
5
0
1
7
筋胃びらん
1
1
5
0
/
1
1
1
1
4
/
5
6
1
7
核内封入体
0
/
5
0
/
1
1
/
1
4
/
5
0
1
7
炎症 .i
慮胞形成
2
/
5
0
/
1
2
/
3
4
/
5
7
1
7
核内封入体
0
/
2
'
)
0
/
1
%a)
0
/
0
%a)
肝臓
筋胃
勝臓
卵黄嚢
a
)
細菌性炎症の激しいもの,卵黄嚢が消失したものは除く
死後変化の激しいものは除く
b
)
. 筋胃継代株接稜群における組織学的病変 (
n
=
1
7
)
表 6
接種後日数
部位
病変
肝臓
筋胃
H
卒臓
卵黄嚢
4
7
1
4
空胞変性,
細胞浸潤など
5
/
5
4
/
6
2
/
6
核内封入体
0
/
5
1
1
6
1
1
6
筋胃びらん
0
/
5
5
/
6
5
/
6
核内封入体
0
/
5
3
/
6
0
/
6
炎症 .i
慮胞形成
0
/
5
4
/
6
0
/
6
0
/
5
0
/
1
'
)
0
/
4
核内封入体
,)細菌性炎症の激しいもの,卵黄嚢が消失したものは除く
l羽ずつ死亡例がみられたが,その他の群では死亡はみ
れ,特に接種後 7日目では重度であった。肝臓,卵黄嚢
られなかった。
および勝臓の対体重比の推移は勝臓継代株接種群と同様
b
. 肉眼病変
の傾向を示した(表 4
)。
肝臓継代株接種群では,継代した lから 3代まで封入
その他の臓器では,全実験群において著変は認められ
体肝炎は認められず,筋胃と勝臓にも病変は認められな
なかった。また,未接種対照群で著変は認められなかっ
かった。
た
。
C
. 病理組織学的成績
勝臓継代株接種群では対照群と比較して,勝臓の対体
重比が接種後 7日目で顕著に高く,臆大傾向を示してい
実験 2における病理組織学的成績は,表 5
.6に示す通
)。肝臓の対体重比は 7および 1
4日目に,卵黄
た(表 4
りである。肝臓継代株接種群は. 1から 3代まで継代し
嚢の対体重比は 1
4日目に対照群よりも高くなり,腫大
たが IBHは認められなかった。筋胃と勝臓にも病変は
)。この傾向は特に死亡
および残存傾向を示した(表 4
認められなかった。豚臓継代株接種群では,剖検した全
鶏で顕著で,接種後 1
4日目では 2
1
7羽で勝臓に微小白
例の肝臓において空胞変性と細胞浸潤が認められた。核
斑が認められた。
内封入体はどの症例にも検出されなかった。筋胃では
筋胃継代株接種群では,接種後 7日目に 5
/
6羽. 1
4
日目に 5
/
6羽で中程度から高度の筋胃びらんが認めら
4
.
6
.7
.1
4日目に筋胃びらんが認められたが,核内封入体
は認められなかった。また膝臓では接種後 7日日で勝臓
-108
第
実質の散発性壊死を伴う好塩基性核内封入体が腺房細胞
4
9巻 2013 年
な病態は作出されなかった。
に認められた。接種後 1
4日目では,勝臓間質の線維増生,
肝臓 •
n
率臓および筋胃を出発材料とした継代実験にお
i
慮胞形成を伴うリンパ球,形質細胞および組織球浸i
閏が
いて,肝臓継代株では
高度にみられた。
ものの,勝臓および筋胃継代株では,封入体目撃炎や封入
筋胃継代株接種群では,接種後 7
.1
4日目に認められ
I
B
Hの病変は形成されなかった
体性筋胃びらんを再現することができた。グループ Iト
た筋胃びらんの領域で,腺上皮細胞核内における封入体
)で
は,
リアデノウイルスに起因する疾患として総説6
形成が認められた。封入体の出現は接種 7
.1
4日目とも
I
B
H
. 呼吸器病,心膜水腫症候群,筋胃びらん.封入体
に1
1
6羽であった。びらん部ではケラチノイド層の剥離
勝炎と多様な病態があげられているが,実験成績から今
および筋胃腺上皮細胞の変性・壊死が重度に認められた。
回の野外例から分離されたウイルス株は筋胃びらんと封
粘膜固有層から筋層にかけては,偽好酸球. リンパ球お
入体牒炎を惹起する病原体ではないかと考えられた。こ
よびマクロファージの重度な浸潤と筋線維の萎縮および
れらの結果は,野外材料中には単一な起病性の病原体だ
頼粒状変性が認められた。
けでなく,異なる臓器に親和性を示す複数のトリアデノ
ウイルスが存在する可能性8.12.21)を示唆するとともに,
J
率臓継代株接種群および筋胃継代株接種群において,
の臓器では全実験群において著変は認められなかった。
B
Hの病変は軽
筋胃びらんもしくは封入体膝炎では. I
微または伴わないという過去の報告 13,
1
5
.
2
0
) に一致するも
また,未接種対照群で著変は認められなかった。
ので、あった。また幼雛では原因不明の筋胃びらんが存在13)
病変がみられた臓器の組織像はほぼ同様で、あり,その他
考
するが,ウイルス性のびらんは飼料中の有害化学物質に
察
起因するびらんと比較して,重度の炎症反応がみられる
I
B
Hにより死亡率が上昇した野外例ブロイラー鶏群
という報告 16) がある。本実験でびらんを形成した症例
に含まれていた,顕著な筋胃びらんを示す症例の筋胃を
では組織学的に粘膜固有層から個体によっては筋層に至
病理組織学的に検索したところ,腺上皮細胞に核内封入
るまで炎症が波及しており,この報告を支持するものと
体形成が認められた。したがって過去に報告されている
アデノウイルスに起因する筋胃びらん1.5.7,
1
4
) に一致する
思われた。
ものと考えられた。従来アデノウイルスに起因する筋胃
6
.
2
0
,
2)
1
びらんは出荷時期での発生が一般的であったが 5,
取で伝播することが知られているが,近距離の空気感染
や,介卵感染も報告6.13,
1
4
)されている。現在 F
AIの予防対
最近では若齢ブロイラーにおいて死亡を伴う封入体性筋
胃びらんが報告されている1.4.5,
1
4
)。今回の症例は 2週齢
策には,一般的衛生管理の徹底 5) オールイン・オールア
前後のひなで発生していることから,若齢で発症した
重要視される。鶏舎に設置される給水器はウイルスの汚
FAIと診断された。
染源となりやすいため,糞便などに汚染されないような
トリアデノウイルスは主に糞便中に排池され,経口摂
ウト方式の採用 10) ストレス等免疫抑制因子の軽減5,
1
0
)が
野外例の筋胃乳剤を接種した CK細胞では,初代から
工夫および定期的な洗浄が必須となる。自動給水器では
円形化の CPEがみられ,カバースリップの HE染色標
本では従来の染色態度と類似する 7.14,
21)核内封入体が観
経路は経口感染の他,農場に出入りする人や野鳥が持ち
3
0
2
0株は,
察された。しかしながら今回分離された 5
ひなに対して強い病原性をもち
I
B
Hの原因となる 8
7
5
4
ニップル型が有効である 10)。若齢ブロイラーひなの感染
込む可能性が考えられるが,ブロイラー鶏の入雛時には
徹底した消毒や清掃が行われる 10) ことから,これらの
株と比較して,培養細胞が広範に剥離するという非常に
侵入経路は否定的ではないかと思われる。一方,飼料に
強い CPEを示し従来の強毒株とは異なる傾向を示し
混入したウイルスに起因することも考えられる 10) が.
た。電子顕微鏡検索において. CK細胞の核内で認めら
これらについての証明は未だなされてはいない。また
れたウイルス粒子は大きさと形態からアデノウイルス 6)
I
B
H発生がみられる鶏種はトリアデノウイルスに対し
と同定された。
て抗体陰性であることが多く,感染経路のーっとして移
分離ウイルスを用いた接種実験では,経口接種群にお
行抗体のない系統で、の垂直感染が疑われている。しかし
いて野外例の筋胃病変と同様の病変が再現されたが,死
最近の事例では,未発症同居鶏も,病鑑鶏と同様に移行
亡したのは 5
2羽中 8羽のみであった。筋胃びらんの発
現およびその後の経過については,過去の報告 1.13.15却)
抗体を保有していなかった 3
)。また筋胃びらんにおいて
I
B
Hが認められた個体の割
染による再現7.13) が示されている。野外例 FAVのその
合は低く,ほとんどの病変は比較的軽微で、あり,典型的
他の発生要因として. IBDVや CAVに起因する免疫抑
に一致するものであった。
は,移行抗体の高低に関わらず,
-109ー
トリアデノウイルス感
鶏病研究会報
制 あ る い は 混 合 感 染 に よ る 増 強 作 用 が 示 唆6.18.19.23) さ れ
ているが,ブロイラー鶏の革新的な遺伝的改良の結果に
よ る 免 疫 機 能 の 低 下 も 一 因 と し て 指 摘 さ れ て い る 10.18)。
いずれにせよ,野外におけるトリアデノウイルスの鶏群
への侵入経路に関しては,今後詳細に検討していく必要
があるのではないかと思われる。
FAIの 代 表 的 な 病 態 と し て IBHが 従 来 か ら 重 要 視 さ
れ て き た が , 近 年 の FAIで は 筋 胃 び ら ん な ど そ の 他 の
1
)
症状を主徴とするものが増加傾向にあり1.4.5.7.12.13.15.16.ぬ 2
若齢ブロイラーひなの死亡率増加および食烏処理時に本
症が発見され廃棄対象となることで,砂肝(食用筋胃)
の 確 保 に 支 障 を 来 し て い る 4.12)。 様 々 な 臓 器 に 親 和 性 を
示 す6.11) FAIの 病 態 に つ い て の 検 討 は , 養 鶏 に お け る 経
済的損害の低減に有効であり,予防対策を考えるうえで
重要になると思われる。
9
) 中村菊保 最近のトリアデノウイルスによる鶏の病態
鶏病研報(増刊号) 4
6,9
1
4(
2
0
1
0
)
1
0
) 中村政幸:ブロイラーにおける衛生管理. P.
l4
3家禽学,
奥村純市,藤原昇編.朝倉書唐,東京 (
2
0
0
0
)
1
1
) 尾形透ら・封入体肝炎由来トリアデノウイルス 3株の卵
5,3
7
4
1(
2
0
1
2
)
黄嚢上皮細胞への感染性 日獣会誌 6
1
2
) Okuda,Y
.e
ta
l
. :P
a
t
h
o
g
e
n
i
c
i
t
yo
fs
e
r
o
t
y
p
e8f
o
w
l
a
d
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