レポート課題 (12 月 4 日出題) の解答例とコメント 【問題 2.14 の解答例】 左の行列(A とおく)について,固有多項式は x+1 |xE − A| = −1 −4 −1 x+4 1 −1 −2 = x3 + 3x2 − 9x − 27 = (x − 3)(x + 3)2 x−2 である.固有値 −3 に対する固有空間は 2 1 1 1 0 A + 3E = 1 −1 2 −→ 0 1 4 −1 5 0 0 1 −1 0 より次元は 1 なので,固有値 −3 に対するジョルダン細胞は 1 つである.よってジョルダンの標準形は J(3, 1) ⊕ J(−3, 2) である. ジョルダンの標準形にする行列は p ∈ Ker(A − 3E) \ {0} と q ∈ Ker(A + 3E)2 \ Ker(A + 3E) をとって ( P = p (A + 3E)q ) q と置けばよい.具体的には 1 −4 1 1 A − 3E = 1 −7 2 −→ 0 0 4 −1 −1 −1 −3 0 0 1 0 2 1 9 0 9 2 1 1 (A + 3E)2 = 1 −1 2 = 9 0 9 −→ 0 0 27 0 27 4 −1 5 などと置いて ( P = p (A + 3E)q 1 1 0 q = 1 −1 1 , 3 −1 0 ) より 0 0 0 1 0 0 1 p = 1 3 より 0 q = 1 0 3 0 0 P AP = 0 −3 1 0 0 −3 −1 右の行列( B とおく)について,固有多項式は |xE − B| = x−4 2 6 1 x−3 −3 −1 1 = (x − 2)3 x+1 なので固有値は 2 のみである.その固有空間は 2 −1 1 2 −1 1 B − 2E = −2 1 −1 −→ 0 0 0 0 0 0 −6 3 −3 より次元はであり,固有値 2 に対するジョルダン細胞は 2 つである.よってジョルダンの標準形は J(2, 1) ⊕ J(2, 2) である. このジョルダンの標準形を与える行列を作るには次のようにする.まず Ker(B − 2E)2 \ Ker(B − 2E) からベク トル q をとる.(A − 2E)q ∈ Ker(B − 2E) = V(2), (B − 2E)q 0 と dim V(2) = 2 より p ∈ V(2) を {p, (B − 2E)q} ) が V(2) の基底になるようにとる.すると P = p (B − 2E)q q によって P−1 BP = J(2, 1) ⊕ J(2, 2) となる. ( 具体的には 1 q = 0 , 0 2 (B − 2E)q = −2 , −6 0 p = 1 , 1 0 2 1 P = 1 −2 0 1 −6 0 【コメント】 • 固有値を求めること,固有空間を求めることは 1 年次の線形代数で学習済みだ.拡大固有空間の次元は 固有値の重複度なのでこれも固有値を求めた時点で決定できる.3 次の場合は命題 2.9 によってジョル ダンの標準形が決定される.重複固有値を α として,この事情を表にまとめておく.重複度が 2 の時 はもう一つの固有値を β とする. α の重複度 V(α) の次元 ジョルダンの標準形 3 1 J(α, 3) 3 2 J(α, 1) ⊕ J(α, 2) 問題 2.14 の右 3 3 J(α, 1) ⊕ J(α, 1) ⊕ J(α, 1) 対角化可能 2 1 J(β, 1) ⊕ J(α, 2) 問題 2.14 の左 2 2 J(β, 1) ⊕ J(α, 1) ⊕ J(α, 1) 対角化可能 備考 ジョルダン細胞の次数がすべて 1 の時が対角化である.対角化でないジョルダンの標準形が 3 種類ある が,そのうち二つについては問題 2.14 で出題した.ジョルダン標準形にする行列の求め方は,解答例に記 述した.ジョルダンの標準形が J(α, 3) になる場合が残されたが,これは p ∈ Ker(A−αE)3 \Ker(A−αE)2 ( をとって P = (A − αE)2 p (A − αE) p ) p とすればよい. • B では Ker(B − 2E)2 = KerO = C3 なので q ∈ Ker(B − 2E)2 \ Ker(B − 2E) は q ある.しかし A では Ker(A + 3E) は 2 次元なので q 2 Ker(B − 2E) と同値で Ker(A + 3E) と取るだけではだめだ. • p の取り方について A では固有値 3 に対する固有ベクトルを取ればよい. B では V(2) の次元が 2 次元 なので単に基底を取るではいけない.(B − 2E)q ∈ Ker(B − 2E) = V(2) と合わせて V(2) の基底になるよ うに選ぶこと. 【問題 2.16 の解答例】 表現行列 A = (ai j ) は f (⃗p j ) = m ∑ ak j ⃗qk k=1 によって定義される.よって m m ∑ ( ) ∑ φi f (⃗p j ) = ak j φi (⃗qk ) = ak j δik = ai j k=1 k=1 【コメント】 • 表現行列の定義と双対基底の定義を組み合わせるだけの問題,易しいと感じてほしい.
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