基礎物理学A(建築1)第9回 配付資料

第9回
§質点系の力学
質点の力学では,一つの質点と,それに力を及ぼす外界とを考え,質点が外界に与える影響は無視し
てきた。たとえば,テニスボールが地球上で運動する場合には,ボールが地球の運動に与える影響は非
常に小さいためふつうは無視できる。
しかし,月が地球から力をうけながら運動するような場合には,月が地球の運動に与える影響は無視
できないから,月と地球を一緒にした質点の集まり(質点系)として取り扱わねばならない。
さらに,月や地球それ自身にも形や大きさがあり,これらの回転や変形を考える場合には,月や地球
自身も質点系として取り扱う必要がある。
2つの質点からなる質点系(2質点系)
f21 m2
F2
f12
m1
F1
外力: F1 , F2
r2
r1
O 内力: f12 , f21
慣性系の原点
m2
f21
・(ニュートンの)運動の第3法則(作用反作用の法則)
m1
2質点の間の相互作用は,それらを結ぶ直線上に働き,
f12
r2
大きさは等しく向きは反対である。
数式で表現すると, f12 = − f21 ,かつ (r2 − r1 ) × f12 = 0
r1
r2 - r1
O
N 個の質点からなる一般の質点系( N 質点系)において,質点 i ( i 番目の質点)に対して別の質点
j から働く内力を fi j で表せば, fi j = − f j i ,かつ (rj − ri ) × fi j = 0
(i, j = 1, 2, ! , N; i ≠ j)
○ 質点系の運動量
定義: P ≡
N
N
N
i=1
i=1
i=1
∑ p i = ∑ miv i = ∑ mi r!i
一番簡単な2質点系( N = 2 )の場合,それぞれの質点の運動方程式は以下のように表される。
r1 = F1 + f12
p! 1 = m1!!
(1)
r2 = F2 + f21
p! 2 = m2 !!
(2)
(1) 式と(2)式を辺々たし合わせ,第3法則を利用すると次の関係式が得られる。
P! = p! 1 + p! 2 = F1 + F2 + f12 + f21 = F1 + F2
(3)
一般の N 質点系では,(3)式に対応して次式が成り立つ。
N
N
N
N
N
N
N
N
N
1
P! = ∑ p! i = ∑ mi !!
ri = ∑ Fi + ∑ ∑ fi j = ∑ Fi + ∑ ∑ ( fi j + f j i ) = ∑ Fi
2 i=1 j≠i
i=1
i=1
i=1
i=1
i=1
i=1 j≠i
すなわち「質点系の運動量が時間変化する割合は,質点系に働く外力の総和に等しい」
(4)
外力の総和を F =
N
∑ F とおけば,(4)式は
i
i=1
dP
= F と表せる。
dt
○質点系の運動量保存則
とくに, Fi = 0 (i = 1, 2, ! , N )
ならば,
dP
= 0 すなわち P は一定
dt
「外力の作用しない質点系では,運動量が時間変化しない(保存される)」
例)球の衝突,ロケットの運動
○ 球の衝突
衝突前後の質点系の運動量変化は ΔP = (dP dt)Δt = F Δt のように外力の力積で表せるが,衝突は
極めて短い時間間隔 Δt の間におきるから,外力の力積はゼロとみなせる。
したがって衝突の前後で2球の運動量の和が保存される。
○ロケットの運動
他の物体から十分離れた宇宙空間では外力の影響が無視できるから,ロケット本体と噴出したガスの
運動量の総和が一定に保たれる。
t +Δt 秒後
t 秒後
【 演 習 】 ロケット本体に対して一定の速さ
u ( u > 0 )でガスを後ろに噴射しながら,
ロケットが宇宙空間を進行している。
最初静止していたときのロケットの質量を
M とする。ガスを噴射し続けてロケットの質量が
質量: µ (t)
m にまで減少したときのロケットの速度 v を,
速度: v(t)
M , m , u を用いて表しなさい
M −m
u という解答は正しくないことに注意)。
( v=
M
− Δµ
µ (t + Δt) = µ (t) + Δ µ
v(t) +eΔv − u v(t + Δt) =v(t) +Δv
0 < e<1
○質量中心(重心)の運動
次の位置ベクトルで与えられる点を質点系の質量中心と定義する:
N
r=
∑m r
i i
i=1
M
N
(5)
ただし,
M = ∑ mi
(6)
i=1
(5)式の定義式の両辺を時間について2 回微分し, (4) 式の結果を一緒に考慮すると次式が得られる。,
M !!
r =F
ただし, F は質点系に働く外力の総和(合力): F =
(7)
N
∑ F である。
i
i=1
(7) 式から分かるように
「質量中心は,そこに全質量が集中したと考えた仮想的な質点として運動する」
例)ボールの軌跡 ・・・ 質量中心の軌道
質量中心(重心)の位置ベクトルを(5)式のように定義する理由は,後で剛体の運動を学習すると,
より一層明確になる