非可換岩澤主予想の証明の方針: Burns

第 22 回整数論サマースクール『非可換岩澤理論』
非可換岩澤主予想の証明の方針: Burns-加藤の手法
演習問題
■ 1. K1 群のノルム写像
以下、G を p 進リー群とし、U を G の開部分群とする (特に G に於ける U の位数は有限である
ことに注意)。また、O を Qp の有限次拡大の整数環とする (岩澤代数の係数環)。
問題 1-1. 岩澤代数 O[[G]] を、左からの O[[U ]] の掛け算によって自然に左 O[[U ]]-加群と見做すと
き、O[[G]] は階数 (G : U ) の自由左 O[[U ]]-加群となることを確認しなさい。
問題 1-2. (K1 群のノルム写像)
O[[G]] が半局所環であることから、自然な写像
[
]
×x
O[[G]]× → K1 (O[[G]]) ; x → O[[G]] −−→ O[[G]]
が全射となることに注意しよう (ここで “×x” は右からの x の掛け算)。このとき、ノルム
写像
NrO[[G]]/O[[U ]] : K1 (O[[G]]) → K1 (O[[U ]])
を
✓
✏
[
]
[
]
×x
×x
O[[G]] −−→ O[[G]] → O[[U ]] O[[G]] −−→O[[U ]] O[[G]]
✒
✑
で定義する。ここで
O[[U ]] O[[G]]
O[[U ]]-加群と見做したもの。
さて、G の左剰余類分解 G =
は 問題 1-1. の方法 (係数制限) によって O[[G]] を自然に左
⊔s
j=1
U gj (但し s = (G : U )) を固定し、
gi x = xi,1 g1 + xi,2 g2 + . . . + xi,s gs ,
xi,j ∈ O[[U ]]
と表すとき、
([
NrO[[G]]/O[[U ]]
×x
O[[G]] −−→ O[[G]]
])
[
= O[[U ]]
⊕s ×(xi,j )1≤i,j≤s
⊕s
]
−−−−−−−−−→ O[[U ]]
となることを示しなさい。但し、ここでは O[[U ]]⊕s を 行ベクトル (α1 , . . . , αs ) 達がなす 左
O[[U ]]-加群と見做しており、“×(xi,j )1≤i,j≤s ” は行列 (xi,j )1≤i,j≤s を 右から 掛けるという
左 O[[U ]]-加群の準同型を表すものとする。
問題 1-3. 群 U のアーベル化 U ab を商 U/[U, U ] で定める (但し [U, U ] は 交換子群 [U, U ] の U に於
ける位相的閉包とする)。また、自然な商写像 O[[U ]] ↠ O[[U ab ]] が K1 -群に誘導する写像を
ab
ab ×
∼
deflU
U ab : K1 (O[[U ]]) → K1 (O[[U ]]) = O[[U ]]
–1–
非可換岩澤主予想の証明の方針: Burns-加藤の手法
で表すこととする (収縮写像 deflation map とも呼ばれる)。このとき、問題 1-2. の記号の
下で
deflU
U ab
◦ NrO[[G]]/O[[U ]]
([
×x
O[[G]] −−→ O[[G]]
])
= det ((¯
xi,j )1≤i,j≤s )
と計算出来ることを示しなさい。但し、x
¯i,j は O[[U ]] の元 xi,j の O[[U ab ]] での像を表すも
のとする。
∼
[ヒント (2014 年 9 月 5 日追記): 同型 K1 (O[[U ab ]]) −
→ O[[U ab ]]× が det で与えられること
を思い出そう]
問題 1-4. (標準オーレ局所化とノルム写像)
以下、G は Zp と同型な商 Γ を持つとし、H を自然な全射 G ↠ Γ の核とする。O[[G]]S
を O[[G]] の標準オーレ局所化とする*1 。また、G の開部分群 U の岩澤代数についても標準
オーレ局所化 O[[U ]]S を考えよう。
このとき、G の中心にも U にも含まれる様な開部分群 Z で Zp と同型なものを一つ選ぶ
と、以下の同型が成り立つことが知られている ([SV10, Proposition 4.5] 参照);
✓
O[[G]]S ∼
= O[[Z]]S ⊗O[[Z]] O[[G]],
✏
O[[U ]]S = O[[Z]]S ⊗O[[Z]] O[[U ]]
✒
✑
この事実を用いて、O[[G]]S が左からの O[[U ]]S の元の掛け算による作用に関して階数
(G : U ) の左自由 O[[U ]]S 加群となることを確認しなさい。また、ノルム写像 NrO[[G]]/O[[U ]]
が自然に標準オーレ局所化
NrO[[G]]S /O[[U ]]S : K1 (O[[G]]S ) → K1 (O[[U ]]S )
に拡張されることを示しなさい。
■ 2. 非可換 p 進ゼータ関数の補間性質
設定を思い出そう。F を総実代数体とし、Σ を F の有限素点の有限集合とする。F∞ /F を Σ の
外で不分岐な (1 次元)*2 p 進リー拡大とし、F の円分 Zp 拡大 F cyc を含むものとする。また、拡大
F∞ /F に対して仮定 (Hyp µ = 0) が成り立つとしよう (森澤貴之さんの講演参照)。
G = Gal(F∞ /F ),
H = Gal(F∞ /F cyc ),
Γ = Gal(F cyc /F )
と定める。また、群の対の族
open
open
F = {(U, V ) | U ⊂ G, V ⊂ H, V
closed
◁ U, U/V : アーベル}
を考える。各対 (U, V ) ∈ F に対し、写像 θS,U,V : K1 (Λ(G)S ) → Λ(U/V )×
S を合成
deflU
Nr
Λ(G)S /Λ(U )S
U/V
K1 (Λ(G)S ) −−−−−−
−−−−→ K1 (Λ(U )S ) −−−−−→ K1 (Λ(U/V )S ) ∼
= Λ(U/V )×
S
即ち、完備群環 O[[G]] のオーレ集合 S = {f ∈ O[[G]] | O[[G]]/O[[G]]f は有限生成左 O[[H]]-加群 } による局所
化。森澤貴之さんの講演参照。なお、本当は考えている群ごとに標準オーレ集合は勿論異なるものとなりますので、
SG , SU などと書いた方が良いかもしれませんが、以降慣習で全て同じ記号 S で書くことにしています。
*2 講演では村上和明さんの講演内容を踏まえて「1 次元 p 進リー拡大」であることを仮定して話を進めましたが (結局仮
定しませんでしたね [2014 年 9 月 5 日追記])、実は以下の設問では 1 次元性を仮定する必要はありません。1 次元性
の仮定は、ノルム写像の像の計算 (北島孝浩さんの講演参照) などで用いられます。
*1
–2–
第 22 回整数論サマースクール『非可換岩澤理論』
で定める。また、θS,U,V を束ねた写像 θS = (θS,U,V )F : K1 (Λ(G)S ) →
∏
(U,V )∈F
Λ(U/V )×
S を考
える。
問題 2-1. (ブラウアーの誘導定理の応用)
ガロワ群 G = Gal(F∞ /F ) の任意のアルティン表現 ρ は、仮想表現として
ρ=
∑
Ui
ni IndG
Ui inflUi /Vi χi
(Ui ,Vi )∈F
という有限 Z-線形和で表されることを、ブラウアーの誘導定理を用いて確認しなさい。但し
F の元 (Ui , Vi ) に対して χi : Ui /Vi → Q
×
はアーベル群 Ui /Vi
Ui
表現であり、inflUi /Vi χi は自然な全射 Ui ↠ Ui /Vi を通じて χi
のを表す。また IndG
Ui は誘導表現を表すものとする。
の 1 次元 (既約) アルティン
を Ui 上の指標と見做したも
問題 2-2. (ノルム写像と誘導表現)
×
F の元 (U, V ) に対し、χ : U/V → Qp を U/V の連続指標とする。このとき、K1 (Λ(G)S ) の
元 x に対して
U
(θS,U,V (x))(χ) = x(IndG
U inflU/V χ)
が成り立つことを示しなさい。
[ヒント: ノルム写像の定義 (問題 1-2. 参照)、誘導表現の定義並びに値写像 (evaluation map)
の定義を思い出そう]
問題 2-3. (p 進ゼータ関数の補間性質)
×
V
U
V /F U ∈ Λ(U/V )
F の元 (U, V ) に対し、ζF∞
S を アーベル拡大 F∞ /F∞ に付随する p 進
∞
ゼータ関数とする (三浦崇さん、岡野恵司さんの講演参照)*3 。
V /F U )(U,V )∈F を満たすものが存
このとき、K1 (Λ(G)S ) の元 ζF∞ /F で、θS (ζF∞ /F ) = (ζF∞
∞
在するならば、ζF∞ /F は G = Gal(F∞ /F ) のアルティン表現 ρ 及び [F (µp ) : F ] で割り切れ
る自然数 n に対して補間公式
ζF∞ /F (ρκncyc ) = LΣ (ρ, 1 − n)
を 満 た す こ と (即 ち ζF∞ /F
κcyc : Gal(F (µp∞ )/F ) →
Z×
p
が p 進ゼータ関数となること) を 示 し な さ い 。但 し
は (p 進) 円 分 指 標 で あ り 、LΣ (ρ, s) は ρ の ア ル テ ィ ン
L 関数から、Σ に属する素点に於けるオイラー因子を除いたものを表すものとする。
V
U
V /F U の補間公
[ヒント: 問題 2-1. の結果、アーベル拡大 F∞
/F∞
に付随する p 進 L 関数 ζF∞
∞
式、及びアルティン L 関数の誘導表現に関する不変性等を用いて示しなさい]
■ 3.∗ アンドレアス・ドレスの誘導理論 (参考資料)
村上和明さんの講演で、非可換岩澤主予想の証明が 1 次元 p 進リー群の場合に帰着されました。
ここでは、主予想の証明をさらに G が 1 次元 副 p p 進リー群 の場合に帰着させるために用いられ
*3
×
p 進ゼータ関数 ζF V /F U が (Λ(UV )×
S ∗ ではなく) Λ(U/V )S の元となることには実は仮定 (Hyp µ = 0) を用いて
∪ ∞ n∞
∗
います (S = n≥0 p S と定義されていたことを思い出そう)。
–3–
非可換岩澤主予想の証明の方針: Burns-加藤の手法
る アンドレアス・ドレスの誘導理論 induction theory of Andreas Dress について簡単に紹介しま
す。ドレスの誘導理論は、その名の表す通りアルティンの誘導定理やブラウアーの誘導定理など古典
的な誘導表現の理論をより一般的かつ抽象的な対象に拡張したものであり、群論的にも表現論的にも
非常に重要な理論です。詳細は [Oli88, Section 11.a] をご覧下さい。
★ マッキー関手,グリーン加群,ドレスの基本定理
✓
✏
定義. 単射準同型を射とする有限群のなす圏からアーベル群の圏への関手の組 M = (M∗ , M ∗ )
が マッキー関手 Mackey functor であるとは、以下を満たすこととする;
(M1) M∗ は共変関手, M ∗ は反変関手で、対象の対応は同じ; つまり、任意の有限群 G に
対して M∗ (G) = M ∗ (G) (= M (G) と書く)。
(M2) M∗ , M ∗ は内部自己同型を恒等写像に移す;
∼
(M3) 同型 α : G −
→ G に対し、M∗ (α) = M ∗ (α)−1 ;
(M4) (マッキー部分群性質) 任意の部分群 H, K ⊆ G に対し、合成
M ∗ (K →G)
M∗ (H →G)
M (H) −−−−−−−→ M (G) −−−−−−−→ M (K)
は以下の準同型写像の和として表される;
M ∗ (ιg,H )
M∗ (cg )
M∗ (ιg,K )
M (H) −−−−−−→ M (g −1 Kg ∩ H) −−−−−→ M (K ∩ gHg −1 ) −−−−−−→ M (K).
但し、g ∈ G は両側剰余類 H\G/K の代表系を渡り、cg は g による共役を表す。また、
ιg,K 及び ιg,H はそれぞれ自然な包含写像 g −1 Kg ∩ H → H, K ∩ gHg −1 → K を表す。
✒
✑
∗
∗
包含写像 i : H → G に対し、i := M (i) を
た i∗ := M∗ (i) を
✓
IndG
H
ResG
H
と書き 制限写像 restriction map と呼ぶ。ま
と書き 誘導写像 induced map と呼ぶ。
✏
定義. 単射準同型を射とする有限群のなす圏から可換環の圏への関手の組 G = (G∗ , G ∗ ) が グ
リーン環 Green ring (または フロベニウス関手 Frobenius functor) であるとは、以下を満
たすこと;
(G1) G はアーベル群の圏への関手としてマッキー関手;*4
(G2) (制限写像の環準同型性) 射 i : H → G 及び x, y ∈ G (G) に対して i∗ (xy) = (i∗ x)(i∗ y)
が成立;
(G3) (フロベニウス相互律 / 射影公式) 射 i : H → G 及び x ∈ G (H), y ∈ G (G) に対して
(i∗ x)y = i∗ (x(i∗ y)) が成立。
また、マッキー関手 M がグリーン環 G 上の グリーン加群 Green module (または フロベ
ニウス加群 Frobenius module) であるとは、各 M (G) が G (G)-加群構造を持ち、G (G) と
M (G) との間に (G2), (G3) と同様の関係式が成り立つこととする。
✒
*4
つまり忘却関手を合成したものがマッキー関手となると言うこと。
–4–
✑
第 22 回整数論サマースクール『非可換岩澤理論』
問題 3-1. (マッキー関手の例)
有限群 G の群コホモロジー及びホモロジー H n (G, A), Hn (G, A) がマッキー関手であるこ
とを確認しなさい。また、有限群 G の バーンサイド環 Burnside ring Ω(G) の定義を調べ、
それがマッキー関手となっていることを確認しなさい。
C を有限群の類とし、有限群 G に対し C (G) を G の部分群で C に属するもののなす (有限) 集
合とする。
- マッキー関手 M が C -生成 C -generated とは、各有限群 G に対して
⊕
⊕
IndG
:
M (H) → M (G)
H
H∈C (G)
が全射となること。
- マッキー関手 M が 制限写像に関して C -計算可能 C -computable with respect to restrictions とは、各有限群 G に対して
(ResG
H )H∈C (G ) : M (G) →
lim
←−
M (H)
H∈C (G), 制限
が同型となること。
- マッキー関手 M が 誘導写像に関して C -計算可能 C -computable with respect to inductions とは、各有限群 G に対して
∑
IndG
H:
H∈C (G)
lim
−→
M (H) → M (G)
H∈C (G), 誘導
が同型となること。
定理 (ドレスの基本定理). グリーン環 G が有限群の類 C に対して C -生成とするとき、G 上
のグリーン加群 M は制限写像、誘導写像の何れに関しても C -計算可能。
(証明はマッキー部分群性質とフロベニウス相互律に根ざした非常に形式的かつ抽象的なアブスト
ラクト・ナンセンス。詳細は [Oli88, Theorem 11.1] を参照)
★ ドレスの誘導理論の応用
以下の様に記号を定める。
F : 代数体または Qp の有限次拡大,
G: 有限群,
✓
R: F の整数環
G (G) = G0 (R[G]): 群環 R[G] のグロタンディーク群
✏
V : R[G]-格子 (即ち有限生成 R[G]-加群で R 上自由なもの) は関手
V ⊗R − : Proj(R[G]) → Proj(R[G])
を誘導 ⇝ M (G) := Kn (R[G]) にグリーン G -加群構造が入る (!!!)
✒
この観察を下に、以下 Kn (R[G]) が誘導写像を用いて表されること をドレスの基本定理から導
き出そう。
–5–
✑
非可換岩澤主予想の証明の方針: Burns-加藤の手法
✓
✏
定義 (K-基本群). K を標数 0 の体とする。有限群が ℓ 群 L と位数 n が ℓ と素な巡回群 Cn
との半直積 Cn ⋊ L と同型であるとき ℓ-超基本群 ℓ-hyperelementary group と呼ぶ。ℓ-超基本
群が ℓ-K-基本群 ℓ-K-elementary group であるとは、ℓ 部分群 L の Cn への作用がガロア群
Gal(K(µn )/K) の部分群の作用と一致することとする。ある素数 ℓ に関して ℓ-K-基本群とな
る群を K-基本群 K-elementary group と呼ぶ。
✒
✑
問題 3-2. ℓ-C-基本群の定義はブラウアーの ℓ-基本群の定義と一致することを確認しなさい.
CK-elem を K-基本群のなす類とする。ドレスの誘導理論を K-群に応用するための基本となる定
理は以下のバーマン-ヴィットの誘導定理である;
定理 (バーマン-ヴィットの誘導定理). 有限群 G 及び標数 0 の任意の体 K に対して
⊕
IndG
H:
⊕
G0 (K[H]) → G0 (K[G])
H∈CK-elem (G)
*5
は全射。
さて、我々の設定に戻ろう。G-理論に対する局所化完全系列
(∗) :
G0 (R[G], F [G]) → G0 (R[G]) → G0 (F [G]) → 0
に於いて、G0 (R[G], F [G]) ∼
= ⨿m∈Spm(R) G0 (R/m[G]) ([Bass, Proposition (IX.6.9)] 参照) であっ
たが*6 、分解写像 decomposition morphism
d : G0 (F [G]) → G0 (R/m[G]); [V ] → [L/mL]
(L は V に含まれる R[G]-格子) に依り各 G0 (R/m[G]) は G0 (F [G])-加群構造を持つ。バーマンヴィットの誘導定理とドレスの基本定理に拠り G0 (F [G]) 及び G0 (R[G], F [G]) は CF -elem -生成。
したがって (∗) より G0 (R[G]) も CF -elem -生成。これより (再びドレスの基本定理を用いて) 以下の
定理が得られる;
定理 ([Oli88, Theorem 11.2]). F , G を上記の通りとするとき、制限写像 (またはノルム写像)
Kn (R[G]) →
lim
←−
Kn (R[H])
H∈CF -elem (G), ノルム
が誘導する写像は同型。
※ SK1 (R[G]) についても (したがって K1′ (R[G]) についても) 同様の議論が展開出来る。
■ 4.∗ 非可換岩澤主予想の 1 次元副 p p 進リー群の場合への帰着
以下、第 2 節の設定に戻って考える。また、ここでは Gal(F∞ /F ) が 1 次元 p 進リー群であるこ
とを仮定する。
*5
*6
K = C のときは G0 (C[G]) は G の既約指標のなす群 (G のグロタンディーク群 RG ) と同一視出来るため、この定
理はブラウアーの誘導定理そのものとなる。
Spm(R) は R の極大イデアル全体の成す集合。
–6–
第 22 回整数論サマースクール『非可換岩澤理論』
問題 4-1. (ドレスの定理の副 p 版)
G = Gal(F∞ /F ) の中心に含まれる群 Z で Zp と同型なものを固定する。商群 G/Z の
Qp -超基本群の集合を CQp -elem (G/Z) とし、CQp -elem (G/Z) の元 P の G での逆像を UP と
書くことにする。このとき、ノルム写像が誘導する写像
K1 (Λ(G)) →
lim
←−
P ∈CQp -elem (G/Z),
K1 (Λ(UP ))
ノルム
が同型となることをドレスの誘導定理を用いて証明しなさい。
問題 4-2. (Qp -基本群の場合への帰着)
問題 4-1. の結果を用いて、
• G = Gal(F∞ /F ) が Qp -超基本群;*7
• 自然な写像 K1′ (Λ(G)) → K1′ (Λ(G)S ) が単射
の場合に非可換岩澤主予想が成り立つならば、Gal(F∞ /F ) が 1 次元 p 進リー群の場合 (した
がって任意の p 進リー群の場合) に非可換主予想が成り立つことを証明しなさい。
[ヒント: 問題 4-1. の結果を用いつつ、村上和明さんの講演での「1 次元 p 進リー群への帰
着」と同様の戦略で証明を試みよう]
問題 4-3.
∗
(ℓ-Qp -超基本群 (ℓ ̸= p) の場合)
以下、ℓ を p と異なる素数とし、Gal(F∞ /F ) が ℓ-Qp -基本群であると仮定しよう。
(1) Gal(F∞ /F ) が H と Γ の直積と同型となることを証明しなさい*8 。
(2) (1) より H は ℓ-Qp -超基本群である。H = C ⋊ L (但し C は位数が ℓ と素な巡回群、
L は有限 ℓ-群) と書き、A = C × Ker(L → Aut(C)) × Γ とする (A はアーベル群となる
ことに注意しなさい)。このとき、
deflG
Gab ζF∞ /F = ζF [G,G] /F ,
∞
A
NrΛ(G)S /Λ(A)S ζF∞ /F = ζF∞ /F∞
となるような K1 (Λ(G)S ) の元 ζF∞ /F を Burns-加藤の手法と同様の戦略で構成するこ
とによって、Gal(F∞ /F ) が ℓ-Qp -超基本群の場合に非可換岩澤主予想が成立することを
証明しなさい*9 。
※ 以上より、主予想の証明は Gal(F∞ /F ) が p-Qp -超基本群の場合,つまり G = ∆n × G (但
し ∆n は位数が p と素な有限巡回群で、G は 1 次元 副 p p-進リー群) の場合に帰着されま
す。∆n の部分については “指標分解” してしまえば比較的簡単に処理出来るので、最終的に
考えているガロワ群 G = Gal(F∞ /F ) が 1 次元 副 p p 進リー群の場合が本質的であること
が分かります。
8 月 30 日の北島孝浩さん、大下達也さんの講演では、技術的な繁雑さを減らすために、考
えているガロワ群 G = Gal(F∞ /F ) が 1 次元 副 p p 進リー群の場合を主に扱います。
*7
*8
*9
即ち、G の中心に含まれる Zp と同型な任意の部分群 Z に対し、有限群 G/Z が Qp -超基本群になるということ。
[CSSV12] のスジャータの稿の Lemma 4.2. の証明は誤っているので注意。
[Kak13] の論文での ℓ-Qp -超基本群の場合の証明は若干ギャップが有るので、興味のある人はギャップを埋めることに
挑戦してみて下さい。
–7–
非可換岩澤主予想の証明の方針: Burns-加藤の手法
参考文献
[Bass] Hyman Bass, Algebraic K-theory, Benjamin (1968).
[CSSV12] John Henry Coates, Peter Schneider, Ramdorai Sujatha and Otmar Venjakob
edt., Noncommutative Iwasawa Main Conjectures over Totally Real Fields, Springer Verlag
(2012).
[Kak13] Mahesh Ramesh Kakde, The main conjecture of Iwasawa theory for totally real fields,
Invent. Math., 193, no. 3, 539–626 (2013).
[Oli88] Robert Oliver, Whitehead groups of finite groups, London Mathematical Society Lecture Note Series, 132 (1988) Cambridge Univ. Press.
[SV10] Peter Schneider and Otmar Venjakob, Localizations and completions of skew power
series rings, Am. J. Math. 132, 1–36 (2010)
–8–