2014年度数学IB演習第4回

2014 年度数学 IB 演習第 4 回
理 I 24, 29, 30, 31, 35, 36 組
6 月 10 日 清野和彦
数理科学研究科棟 5 階 524 号室 (03-5465-7040)
[email protected]
http://lecture.ecc.u-tokyo.ac.jp/~nkiyono/index.html
問題 1. 2 変数関数 f を
f (x, y) = x3 y + xy 3 − xy
とする。
(1) f の二つの偏導関数を計算せよ。(計算結果だけ書け。)
(2) f の臨界点をすべて求めよ。(答だけ書け。)
(3) f のヘッセ行列を計算せよ。(計算結果だけ書け。)
(4) (2) で求めた臨界点がそれぞれ極大点か極小点か鞍点かどれでもないかを判定
せよ。(判定の手続きも書け。)
問題 2. 2 変数関数 g を
g(x, y) = (x2 + y 2 )ex
2 −y 2
とする。
(1) g の二つの偏導関数を計算せよ。(計算結果だけ書け。)
(2) g の臨界点をすべて求めよ。(答だけ書け。)
(3) g のヘッセ行列を計算せよ。(計算結果だけ書け。)
(4) (2) で求めた臨界点がそれぞれ極大点か極小点か鞍点かどれでもないかを判定
せよ。(判定の手続きも書け。)
● 定義域内の a で n 回以上微分可能な関数 f に対し、n 次以下の多項式
n
∑
f (k) (a)
k=0
k!
(x − a)k
= f (a) + f ′ (a)(x − a) +
f ′′ (a)
f (n) (a)
(x − a)2 + · · · +
(x − a)n
2
n!
を、この演習では f の a における n 次のテイラー近似多項式と呼ぶことにして
いました。
問題 3. f の導関数 f ′ の a における n 次のテイラー近似多項式は、f の a にお
ける n + 1 次のテイラー近似多項式の導関数と一致することを示せ。
問題 4. f (−x) = f (x) を満たす関数を偶関数、f (−x) = −f (x) を満たす関数を奇
関数という。例えば cos x は偶関数、sin x や tan x は奇関数である。
(0) f が奇関数ならば f (0) = 0 であることを示せ。
(1) 偶関数の導関数は奇関数、奇関数の導関数は偶関数であることを示せ。
(2) 偶関数の 0 におけるテイラー近似多項式は偶数次の項だけからなり(つまり奇
数次の項の係数はすべて 0 であり)、奇関数の 0 におけるテイラー近似多項式は奇
数次の項だけからなることを証明せよ。
問題 5. f を C ∞ 級関数とし、pn (x) を f の a における n 次のテイラー近似多項
式とする。
(1) テイラーの定理を使って
f (x) − pn (x)
=0
x→a
(x − a)n
lim
が成り立つことを示せ。
(2) n 次以下の多項式 qn (x) で
f (x) − qn (x)
=0
x→a
(x − a)n
lim
を満たすものは pn (x) しかないことを証明せよ。
1
(3) 多項式 1 + x + x2 + · · · + xn が関数 1−x
の 0 における n 次のテイラー近似多項
1
式であることを、 1−x を微分するのではなく、(2) で証明したことを使って示せ。
(4) g(x) = f (x2 ) によって関数 g を定義する。また、a = 0 とし、q2n (x) = pn (x2 )
で 2n 次以下の多項式 q2n (x) を定義する。すると、q2n は g の 0 における 2n 次の
テイラー近似多項式になることを証明せよ。
2014 年度数学 IB 演習第 4 回解答
理 I 24, 29, 30, 31, 35, 36 組
6 月 10 日 清野和彦
数理科学研究科棟 5 階 524 号室 (03-5465-7040)
[email protected]
http://lecture.ecc.u-tokyo.ac.jp/~nkiyono/index.html
問題 1
(1)
∂f
(x, y) = ∇1 f (x, y) = 3x2 y + y 3 − y = y(3x2 + y 2 − 1)
∂x
∂f
(x, y) = ∇2 f (x, y) = x3 + 3xy 2 − x = x(x2 + 3y 2 − 1)
∂y
計算の仕方: x で偏微分するときは y を定数と思い込んで x の 1 変数関数として微分し、y で偏
微分するときは x を定数と思い込んで y の 1 変数関数として微分するだけです。
(
) (
) (
) (
)
1 1
1 1
1 1
1 1
(2) (0, 0) (1, 0) (−1, 0) (0, 1) (0, −1)
,
− ,
,−
− ,−
2 2
2 2
2 2
2 2
求め方: (1) で計算した ∇1 f (x, y) と ∇2 f (x, y) が同時に 0 になる点、すなわち ∇1 f (x, y) = 0 か
つ ∇2 f (x, y) = 0 という連立方程式の解が臨界点です。
∇1 f (x, y) = y(3x2 +y 2 −1) ですので、∇1 f (x, y) = 0 を満たす (x, y) は y = 0 または 3x2 +y 2 = 1
を満たす点です。同様に ∇2 f (x, y) = 0 を満たす点は x = 0 または x2 + 3y 2 = 1 を満たす点です。
よって、臨界点は
「y = 0 かつ x = 0」または「y = 0 かつ x2 + 3y 2 = 1」または
「3x2 + y 2 = 1 かつ x = 0」または「3x2 + y 2 = 1 かつ x2 + 3y 2 = 1」
を満たす点となります。
「y = 0 かつ x = 0」を満たす点は (0, 0) のみです。
「y = 0 かつ x2 + 3y 2 = 1」を満たす点は、x2 + 3y 2 = 1 に y = 0 を代入すると x2 = 1 となる
ので (1, 0) と (−1, 0) の 2 点です。
「3x2 + y 2 = 1 かつ x = 0」を満たす点は、同様にして (0, 1) と (0, −1) の 2 点です。
「3x2 + y 2 = 1 かつ x2 + 3y 2 = 1」を満たす点は、x2 と y 2 を未知数と見た連立一次方程式を
解くと x2 = y 2 = 1/4 となることから、(1/2, 1/2), (−1/2, 1/2), (1/2, −1/2), (−1/2, −1/2) であ
るとわかります。
なお、この連立方程式を xy 平面上の図形で表すと、∇1 f (x, y) = 0 を満たす点は y = 0 すなわ
ち x 軸と 3x2 + y 2 = 1 という楕円を合わせた図形、∇2 f (x, y) = 0 を満たす点は x = 0 すなわち
y 軸と x2 + 3y 2 = 1 という楕円を合わせた図形であり、これら二つの図形の交点が上の 9 点とい
うことになります。
2
第 4 回解答
(3)
(
∇ f (x, y) =
2
∇211 f (x, y) ∇212 f (x, y)
∇221 f (x, y) ∇222 f (x, y)
)
(
=
6xy
3x2 + 3y 2 − 1
3x2 + 3y 2 − 1
6xy
)
計算の仕方: ∇2ij f = ∇i (∇j f ) です。(1) で計算した偏導関数を x や y で偏微分したものを上の
ような順番に並べてできる行列がヘッセ行列です。講義で証明されたように、C 2 級(すべての 2
階偏導関数が連続)ならば ∇212 f = ∇221 f が成り立ち、ヘッセ行列は対称行列になります。普通に
式で書ける関数は C 2 級なので、この問題や問題 2 の関数ではヘッセ行列は対称行列になってい
ます。
(4) ∇211 f (0, 0) = ∇222 f (0, 0) = 0, ∇221 f (0, 0) = −1 ですから
(
)
(
)2
det ∇2 f (0, 0) = ∇211 f (0, 0)∇222 f (0, 0) − ∇221 f (0, 0) = −1 < 0
となり、(0, 0) は鞍点です。
(±1, 0), (0, ±1) の 4 点ではすべて ∇211 f = ∇222 f = 0, ∇221 f = 2 ですから、やはり
(
)
(
)2
det ∇2 f = ∇211 f ∇222 f − ∇221 f = −4 < 0
となり鞍点です。
±(1/2, 1/2) では ∇211 f = ∇222 f = 3/2, ∇221 f = 1/2 ですので、
(
)
(
)2
det ∇2 f = ∇211 f ∇222 f − ∇221 f = 2 > 0
∇211 f > 0
となり極小です。
±(1/2, −1/2) では ∇211 f = ∇222 f = −3/2, ∇221 f = 1/2 ですので、
(
)
(
)2
det ∇2 f = ∇211 f ∇222 f − ∇221 f = 2 > 0
∇211 f < 0
となり極大です。
以上より
(
)
(
)
(
)
(
)
1 1
1 1
1 1
1 1
,
と − ,−
で極小、 − ,
と
,−
で極大、
2 2
2 2
2 2
2 2
(0, 0), (1, 0), (−1, 0), (0, 1), (0, −1) は鞍点
となります。
問題 2
(1)
(2)
2
2
∂g
(x, y) = ∇1 g(x, y) = 2x(1 + x2 + y 2 )ex −y
∂x
2
2
∂g
(x, y) = ∇2 g(x, y) = 2y(1 − x2 − y 2 )ex −y
∂y
(0, 0)
2
求め方 ex
−y
2
(0, 1)
(0, −1)
は 0 にならないので、∇1 g(x, y) = 0 を満たす (x, y) は 2x(1 + x2 + y 2 ) = 0、すな
わち x = 0 を満たす点です。同様に ∇2 g(x, y) = 0 を満たす点は 2y(1 − x2 − y 2 ) = 0、すなわち
y = 0 または x2 + y 2 = 1 を満たす点です。よって、臨界点は
3
第 4 回解答
「x = 0 かつ y = 0」または「x = 0 かつ x2 + y 2 = 1」
を満たす点、すなわち (0, 0), (0, 1), (0, −1) の 3 点です。
(3)
(
∇ g(x, y) =
2
(
=
∇211 g(x, y) ∇212 g(x, y)
)
∇221 g(x, y) ∇222 g(x, y)
2(1 + 5x2 + y 2 + 2x4 + 2x2 y 2 )ex −y
2
2
−4xy(x2 + y 2 )ex −y
2
2
−4xy(x2 + y 2 )ex −y
2
2
2(1 − x2 − 5y 2 + 2x2 y 2 + 2y 4 )ex −y
2
2
)
(4) (0, 0) では ∇211 g(0, 0) = ∇222 g(0, 0) = 2, ∇221 g(0, 0) = 0 なので、
(
)
(
)2
det ∇2 g(0, 0) = ∇211 g(0, 0)∇222 g(0, 0) − ∇221 g(0, 0) = 4 > 0
∇211 g(0, 0) > 0
となり (0, 0) は極小点です。
(0, ±1) ではどちらにおいても ∇211 g = 4/e, ∇221 g = 0, ∇222 g = −4/e なので、
(
)
(
)2
16
det ∇2 g = ∇211 g∇222 g − ∇221 g = − 2 < 0
e
より鞍点です。
以上より
(0, 0) で極小、(0, 1), (0, −1) は鞍点
となります。
問題 3
見やすくなるように f ′ を g と書くことにします。g の a における n 次のテイラー近似多項式は
g(a) + g ′ (a)(x − a) +
=
n
∑
g (k) (a)
k=0
k!
g ′′′ (a)
g (n) (a)
g ′′ (a)
(x − a)2 +
(x − a)3 + · · · +
(x − a)n
2
3!
n!
(x − a)k
です。ここに g = f ′ を代入すると、g (k) = (f ′ )(k) = f (k+1) なので、
n
∑
g (k) (a)
k=0
k!
(x − a) =
k
n
∑
f (k+1) (a)
k=0
k!
(x − a)k
となります。
一方、f の a における n + 1 次のテイラー近似多項式は
f (a) + f ′ (a)(x − a) +
=
n+1
∑
k=0
f ′′ (a)
f ′′′ (a)
f (n+1) (a)
(x − a)2 +
(x − a)3 + · · · +
(x − a)n+1
2
3!
(n + 1)!
f (k) (a)
(x − a)k
k!
4
第 4 回解答
です。これを微分すると、
n+1
n+1
n+1
∑ f (k) (a) d
∑ f (k) (a)
d ∑ f (k) (a)
(x − a)k =
(x − a)k =
k(x − a)k−1
dx
k!
k! dx
k!
k=0
k=0
=
n+1
∑
k=1
k=1
f (k) (a)
(x − a)k−1
(k − 1)!
となります。これを l = k − 1 と置いて l についての和で表すと
n+1
∑
k=1
∑ f (l+1) (a)
f (k) (a)
(x − a)k−1 =
(x − a)l
(k − 1)!
l!
n
l=0
となります。これは前段落で計算した f ′ の a における n 次のテイラー近似多項式と一致してい
ます。 □
前回の解答で紹介した log(1 + x) や Arctan x の 0 におけるテイラー近似多項式の計算ではこの
ことを使っています。
例えば log(1 + x) の場合、導関数は
1
1+x
で、これの 0 における n − 1 次のテイラー近似多項
式が
1 − x + x2 − x3 + · · · + (−1)n−1 xn−1
(1)
であることは事前に示してありました。そこで、log(1 + x) の 0 における n 次のテイラー近似多
項式を
a0 + a1 x + a2 x2 + · · · + an xn
(2)
と置くと、問題 3 で示したことから多項式 (2) を微分すると多項式 (1) になるのですから、
a1 + 2a2 x + 3a3 x2 + 4an x3 − · · · + nan xn−1 = 1 − x + x2 − x3 + · · · + (−1)n−1 xn−1
が成り立っています。係数を比較すると、
kak = (−1)k−1
すなわち
ak =
(−1)k−1
k
が得られます。
(ただし k = 1, 2, . . . , n です。)a0 = log(1 + 0) = 0 ですので、これらを多項式 (2)
に戻して、log(1 + x) の 0 における n 次のテイラー近似多項式が
x−
x2
x3
xn
+
− · · · + (−1)n−1
2
3
n
とわかる、というわけです。
なお、問題 3 では「微分すると云々」という形で述べましたが、積分は微分の逆演算なのです
から積分で述べることも可能です。例えば、f の a における n + 1 次のテイラー近似多項式を
pn+1 (x)、f ′ の a における n 次のテイラー近似多項式を qn (x) と書くことにすると、
∫ x
pn+1 (x) = f (a) +
qn (t)dt
a
が成り立つ、と言い表せます。
5
第 4 回解答
問題 4
(0) f が奇関数であることの定義式 f (−x) = −f (x) に x = 0 を入れると f (0) = −f (0) となり、
f (0) = 0 です。 □
(1) g(x) = f (−x) とおくと、合成関数の微分公式により g ′ (x) = f ′ (−x)(−x)′ = −f ′ (−x) となり
ます。
f が偶関数ならば g(x) = f (x) なのですから g ′ (x) = f ′ (x) です。よって、−f ′ (−x) = f ′ (x) す
なわち f ′ (−x) = −f ′ (x) となり、f ′ は奇関数です。
f が奇関数ならば g(x) = −f (x) なのですから g ′ (x) = −f ′ (x) です。よって −f ′ (−x) = −f ′ (x)
すなわち f ′ (−x) = f ′ (x) となり、f ′ は偶関数です。 □
(2) (1) の結果から、f が偶関数のとき f (k) は k が偶数なら偶関数、k が奇数なら奇関数です。
よって、(0) で示したことより、f の 0 におけるテイラー近似多項式の奇数次の項の係数 f (k) (0)/k!
はすべて 0 です。
同様に、f が奇関数のときは f (k) は k が偶数なら奇関数、k が奇数なら偶関数なので、f の 0
におけるテイラー近似多項式の偶数次の項の係数はすべて 0 です。 □
2
1
例えば、前回計算してもらった関数では、sin x、Arctan x、tan x が奇関数、cos x、ex 、 1+x
2
が偶関数でした。
問題 5
(1) テイラーの定理とは
f (x) − pn (x) =
f (n+1) (c)
(x − a)n+1
(n + 1)!
の成り立つ c が a と x の間に存在する、という定理です。両辺を (x − a)n で割ると
f (x) − pn (x)
f (n+1) (c)
=
(x − a)
(x − a)n
(n + 1)!
(3)
となる c が a と x の間にある、となります。
さて、x → a とすると、c は a と x の間にあるので c → a となります。今 f は C ∞ 級と仮定
しているので、f (n+1) は連続関数です。よって、c → a としたとき f (n+1) (c) → f (n+1) (a) となり
ます。以上より、式 (3) で x → a とすると、
f (x) − pn (x)
f (n+1) (c)
f (n+1) (a)
=
lim
(x
−
a)
=
(a − a) = 0
x→a
x→a (n + 1)!
(x − a)n
(n + 1)!
lim
となります。これで示せました。 □
なお、「テイラーの定理を使って」という条件がついているので以下の解答は想定されていない
ものの、次のようにロピタルの定理を使って証明することもできます。
f の a における n 次のテイラー近似多項式 pn は
f (k) (a) = p(k)
n (a)
k = 0, 1, 2, . . . , n
6
第 4 回解答
を満たしています。(f (0) は f そのものを意味するものとします。)
さて、計算したい極限は
f (x) − pn (x)
x→a
(x − a)n
lim
でした。これは 0/0 の不定形なのでロピタルの定理で計算できる可能性があります。分子分母を
微分すると
f ′ (x) − p′n (x)
x→a n(x − a)n−1
lim
となりますが、これも 0/0 の不定形です。そこでもう一度ロピタルの定理を使ってみましょう。分
子分母を微分すると
f ′′ (x) − p′′n (x)
x→a n(n − 1)(x − a)n−2
lim
となります。しかし、これも 0/0 の不定形です。
以上の手続きを n 回繰り返すと
(n)
f (n) (x) − pn (x)
=0
x→a
n!
lim
となって、やっと極限の存在がわかりました。これで、ここまで保留になっていた n 回のロピタ
ルの定理がすべて機能し、元の極限の極限値が 0 であることがわかりました。
(2) qn (x) に対する仮定と (1) で証明したことから
lim
x→a
qn (x) − pn (x)
f (x) − pn (x)
f (x) − qn (x)
= lim
− lim
=0
x→a
x→a
(x − a)n
(x − a)n
(x − a)n
が成り立っています。これを使って qn (x) = pn (x) を示しましょう。
x → a としたときを考察するので、qn (x) を x − a の多項式として整理したものを
qn (x) = b0 + b1 (x − a) + b2 (x − a)2 + · · · + bn (x − a)n
と書くことにします。また、見た目がゴチャゴチャするのを避けるために、pn (x) も f の微分係数
を使って書かずに
pn (x) = a0 + a1 (x − a) + a2 (x − a)2 + · · · + an (x − a)n
と書くことにします。
さて、関数 h(x) が
lim
x→a
h(x)
=0
(x − a)n
を満たしているなら、n 以下の任意の負でない整数 k に対し
lim
x→a
h(x)
=0
(x − a)k
が成り立っています。なぜなら、n − k は負でないので、
lim
x→a
h(x)
h(x)
= lim
(x − a)n−k = 0 × 0 = 0
x→a (x − a)n
(x − a)k
となるからです。この h(x) のところに qn (x) − pn (x) を当てはめましょう。
qn (x) − pn (x) = (b0 − a0 ) + (b1 − a1 )(x − a) + (b2 − a2 )(x − a)2 + · · · + (bn − an )(x − a)n
7
第 4 回解答
です。
まず k = 0 として
lim (qn (x) − pn (x)) = 0
x→a
から b0 − a0 = 0、すなわち b0 = a0 が得られます。また、このことから
qn (x) − pn (x) = (b1 − a1 )(x − a) + (b2 − a2 )(x − a)2 + · · · + (bn − an )(x − a)n
であることもわかります。
次に k = 1 とすると
lim
x→a
qn (x) − pn (x)
=0
x−a
となります。
qn (x) − pn (x)
= (b1 − a1 ) + (b2 − a2 )(x − a) + · · · + (bn − an )(x − a)n−1
x−a
ですので、これは b1 − a1 = 0 すなわち b1 = a1 を意味します。また、これによって、
qn (x) − pn (x) = (b2 − a2 )(x − a)2 + · · · + (bn − an )(x − a)n
であることもわかりました。
この手続きを n + 1 回繰り返すことにより、すべての k について bk = ak の成り立っているこ
とが示せます。これで qn (x) = pn (x) が証明できました。 □
これもロピタルの定理で証明することもできます。
関数 h(x) が lim
x→a
lim
x→a
h(x)
= 0 を満たしているなら、n 以下の任意の負でない整数 k に対し
(x − a)n
h(x)
= 0 が成り立っています。なぜなら、n − k は負でないので、
(x − a)k
lim
x→a
h(x)
h(x)
= lim
(x − a)n−k = 0 × 0 = 0
k
x→a
(x − a)
(x − a)n
となるからです。この h(x) のところに f (x) − qn (x) を当てはめましょう。
まず k = 0 として
lim (f (x) − qn (x)) = 0
x→a
から f (a) − qn (a) = 0、すなわち qn (a) = f (a) が得られます。
次に k = 1 とすると
lim
x→a
f (x) − qn (x)
=0
x−a
となります。上で f (a) = qn (a) なのですから左辺の極限は 0/0 の不定形です。そこでロピタルの
定理を使ってみましょう。分子分母を微分して
lim f ′ (x) − qn′ (x) = f ′ (a) − qn′ (a)
x→a
と極限値が確定します。よって、ロピタルの定理により
lim
x→a
f (x) − qn (x)
= f ′ (a) − qn′ (a)
x−a
8
第 4 回解答
です。一方、この左辺の極限値は 0 であることがわかっているのですから、
0 = f ′ (a) − qn′ (a)
すなわち
f ′ (a) = qn′ (a)
が得られます。
次に k = 2 としてみましょう。
lim
x→a
f (x) − qn (x)
=0
(x − a)2
となります。左辺の極限は 0/0 の不定形なのでロピタルの定理を使ってみましょう。分子分母を
微分すると
f ′ (x) − qn′ (x)
x→a
2(x − a)
lim
となります。上で f ′ (a) = qn′ (a) が得られているので、これも 0/0 の不定形です。そこでもう一度
ロピタルの定理を使ってみましょう。分子分母を微分すると
f ′′ (x) − qn′′ (x)
f ′′ (a) − qn′′ (a)
=
x→a
2
2
lim
となって極限が存在します。よって、ロピタルの定理を 2 回さかのぼって
f ′ (x) − qn′ (x)
f ′′ (a) − qn′′ (a)
f (x) − qn (x)
= lim
=
2
x→a
x→a
(x − a)
2(x − a)
2
lim
となります。ところが、右辺の極限値は 0 だとわかっているのですから、
0=
f ′′ (a) − qn′′ (a)
2
すなわち
f ′′ (a) = qn′′ (a)
となります。
この手続きを n + 1 回繰り返すことにより、
qn(k) (a) = f (k) (a)
k = 0, 1, 2, . . . , n
が得られます。このことから qn (x) の係数はすべて決まり
qn (x) = f (a) + f ′ (a)(x − a) +
f ′′ (a)
f ′′′ (a)
f (n) (a)
(x − a)2 +
(x − a)3 + · · · +
(x − a)n
2
3!
n!
となります。これは f の a における n 次のテイラー近似多項式です。
(3) (2) を使うということは
lim
1
1−x
(
)
− 1 + x + x2 + · · · + xn
xn
x→0
=0
(4)
を示すということです。
分子を計算すると、
(
) 1 − (1 − x)(1 + x + x2 + · · · + xn )
xn+1
1
− 1 + x + x2 + · · · + xn =
=
1−x
1−x
1−x
となりますので、
lim
x→0
1
1−x
(
)n
− 1 + x + x2 + · · · + xn
x
=
xn+1
lim 1−x
x→0 xn
= lim
x→0
x
=0
1−x
9
第 4 回解答
となります。これで式 (4) の成り立つことが示せたので、(2) で証明したことにより、1 + x + x2 +
· · · + xn が
1
1−x
の 0 における n 次のテイラー近似多項式であることが示せたことになります。 □
(4) (1) で成り立つことを示した式
f (y) − pn (y)
=0
y→0
yn
lim
に y = x2 を代入すると、x2 → 0 は x → 0 を意味することから
f (x2 ) − pn (x2 )
=0
x→0
x2n
lim
すなわち
g(x) − q2n (x)
=0
x→0
x2n
lim
が得られます。(2) で証明したことから、この式は q2n が g の 0 における 2n 次のテイラー近似多
項式であることを意味しています。 □
x2 を代入した場合に限らず、cxm (ただし c は 0 でない実数、m は正整数)を代入した場合も
2
(4) にあたることが成り立ちます。前回の問題では、e−x と ex がそれぞれ ex に −x と x2 を代
−x2 を代入したものでした。ですから、
1
(4) にあたることを使えば、これらの関数の 0 におけるテイラー近似多項式は、ex や 1−x
の0に
1
入したもの、 1+x
,
1
1
2−x , 1+x2
がそれぞれ
1
1−x
に −x,
x
2,
おけるテイラー近似多項式さえわかっていれば、あとは代入という操作だけで求まってしまうので
す。(前回配布した解答ではその方法で計算しています。)
それでは、x2 や 2x ではないもっと一般の関数を代入した場合、すなわち合成関数に関しては、
テイラー近似多項式はどのように求められるでしょうか? それについては次回考えてもらう予定
です。