乗算と仮数部のシフトから導かれる[1,2)上 の変換の - MIUSE

Master's Thesis / 修士論文
乗算と仮数部のシフトから導かれる[1,2)上
の変換の不変測度の研究
山口, 知也
三重大学, 2014.
三重大学大学院教育学研究科 理数生活系教育領域
http://hdl.handle.net/10076/14046
乗算と仮数部のシフトから導かれる [1, 2) 上の
変換の不変測度の研究
三重大学大学院教育学研究科 理数生活系教育領域
212M045 山口 知也
2014 年 2 月 13 日 提出
目次
1
はじめに
1
2
不変測度と Perron-Frobenius 作用素
2
3
マルコフ変換 (I)
3.1 極限関数を求める方法 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
3.2 マルコフ過程を用いる方法 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
4
5
8
4
マルコフ変換 (II)
10
4.1 極限関数を求める方法 (1) . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 10
4.2 極限関数を求める方法 (2) . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 16
4.3 マルコフ過程を用いる方法 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 20
5
マルコフ変換 (III)
5.1 マルコフ過程を用いる方法 (1) . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
5.2 マルコフ過程を用いる方法 (2) . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
5.3 マルコフ過程を用いる方法 (3) . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
20
22
28
34
1
はじめに
本論文に現れる写像 Ψx : [1, 2) −→ [1, 2), Φx : [1, 2) −→ [1, 2), x ∈ [1, 2) は次の
式とともに現れる.
(1) t ∈ [1, 2) に対し xt を
xt = 1.b1 b2 b3 · · · × 2m
と 2 進浮動小数点形式で表す (m = 0 または 1).このとき Ψx (t) = 1.b1 b2 b3 · · ·
である; すなわち,Ψx (t) は xt の仮数部である.
(2) t ∈ [1, 2) に対し xt を
xt = 1.b1 b2 b3 · · · bs bs+1 bs+2 · · · × 2m
と表す (m = 0 または 1).このとき Φx (t) = 1.bs+1 bs+2 · · · である; すなわち
Φx (t) は xt の仮数部の 1. 以下を s ビット左にシフトした数である.
表面的には,Ψx は Φx の特殊な場合 (s = 0) のように見えるが Φ′x ≥ c > 1(expanding)
であるのに対し Ψ′x はそのような性質を持たないので,n = 0, 1, 2, · · · と変化させた
ときの Ψnx と Φnx の性質は大きく異なる.本研究の目標は Ψx , Φx の不変測度 ( 定義は
次節 ) を与える L1 関数の一般形を,β 変換 Tβ : [0, 1) −→ [0, 1), Tβ (t) = βt − ⌊βt⌋
∑
の不変測度を与える関数 hβ (y) = y<T n (1) β1n のように写像 Ψx , Φx を用いて具体
β
的に求めることである.しかしながら Ψx , Φx では Ψ′x , Φ′x が 2 値であるため,単値
の Tβ の場合と異なり解析が難しい.本論文では Ψx , Φx および Φx を一般化した変
換がマルコフ変換になる場合について解析を行い不変測度を求めている.
本論文の作成にあたっては熱心かつ丁寧に指導してくださった谷口礼偉特任教
授および 6 年間多くの困難をともに乗り越えた研究仲間の西村美穂氏に深く感謝
する次第である.
1
2
不変測度と Perron-Frobenius 作用素
X を集合,T を写像とする.T が
∀
x ∈ X ; T (x) ∈ X
を満たすとき T を変換という.以下 T : X → X は変換とする.T が全単射である
とき T を可逆変換という.また (X, S, µ) を測度空間とする.T が
∀
A ∈ S(X) ; T −1 (A) ∈ S(X)
を満たすとき T を可測変換という.可逆変換 T に対して T と T −1 が可測であると
き T を可逆可測変換という.T が可測で
∀
A ∈ S(X) ; µ(T −1 (A)) = µ(A)
(1)
が成り立つとき T を保測という.この場合 µ を T に対する不変測度という.µ が
T に対する不変測度であるための条件 (1) は
∫
∫
∀
g(有界かつ可測);
g(T (x))dµ(x) =
g(x)dµ(x)
(2)
X
X
と同等であることに注意しておく.( 実際 (2) で g(x) = IA (x) とおけば (1) が得ら
れ,g を単関数列で近似していけば (1) から (2) が得られる.) 保測であり可逆変
換である変換を可逆保測変換という.A ⊂ X が
∀
x ∈ A ; T (x) ∈ A (すなわち,
T (A) ⊂ A)
を満たすとき A を正不変集合という.特に T −1 (A) = A すなわち
x ∈ A ⇔ T (x) ∈ A
が成り立つとき集合 A を狭義 T 不変という.エルゴード理論において,狭義不変
集合を不変あるいは T 不変と呼ぶ.保測変換 T に対して A が狭義 T 不変集合な
らば,µ(A) = 0 あるいは µ(Ac ) = 0 が成り立つとき T はエルゴード的であると
いう.X = [a, b) (0 ≤ a < b < ∞) として X 上の Borel 集合族を B,(X, B) 上
の Lebesgue 測度を λ,測度空間 (X, B, λ) 上の可積分関数全体のなす集合を L1 と
する.
定義 1. X 上の区分的に単調な C 1 級の写像 φ に対して Perron-Frobenius 作用素
L : L1 −→ L1 を,
∑
1
f (y)
(Lf )(x) =
|φ′ (y)|
φ(y)=x
で定義する.ただし,φ は各区間 Ji = ⟨bi , bi+1 ⟩ で単調でありその内点で微分可能
∪
かつ X = i Ji とする.(⟨bi , bi+1 ⟩ は bi , bi+1 を端点とする区間であり,各端点は区
間に属することも属さないこともある.)
2
Perron-Frobenius 作用素に関する以下の命題の (ii) は本論文でしばしば使うので
証明とともに記しておく [4].φi を φ の各 Ji に制限した写像と定義する.
命題 1.
(i) 可積分関数 f と有界可測関数 g に対して
∫
∫
g(φ(x))f (x)dx =
g(y)(Lf )(y)dy
X
(3)
X
(ii) φ が ρ を密度にもつ確率測度 µ を不変測度にもつための必要十分条件は
Lρ(x) = ρ(x)
が殆ど全ての x で成り立つことである.
証明. (i) を示す.(3) の左辺は
∫
∑∫
g(φ(x))f (x)dx =
g(φ(x))f (x)dx
X
Ji
i
となる.ここで y = φi (x) と変数変換すると dy = φ′i (x)dx であるから
dx =
=
であるので
∑∫
i
g(φ(x))f (x)dx =
Ji
1
=
g(y)f (φ−1
i (y))
φi (Ji )
∑∫
∫i
dy
dy
φ′i (φ−1
i (y))
∑∫
i
=
1
φ′i (x)
Iφi (Ji ) g(y)f (φ−1
i (y))
X
1
dy
|φ′i (φ−1
i (y))|
g(y)(Lf )(y)dy.
X
よって (i) が示された.
(ii) を示す.(i) において f (x) = ρ(x) とする.
Lρ(x) = ρ(x)
が殆ど全ての x について成り立つとすると
∫
∫
g(φ(x))ρ(x)dx =
g(y) (Lρ) (y)dy
X
X
∫
=
g(y)ρ(y)dy
X
3
1
dy
|φ′i (φ−1
i (y))|
となるので dµ(x) = ρ(x)dx は不変測度である.次に µ が ρ(x) を密度にもつ不変測
度とすると任意の有界可測関数 g に対して
∫
∫
g(φ(x))ρ(x)dx =
g(x)ρ(x)dx
X
X
が成り立つ.ここで上式左辺は (1) より
∫
∫
g(y) (Lρ) (y)dy
g(φ(x))ρ(x)dx =
X
X
であるので
∫
∫
g(x)ρ(x)dx
g(y) (Lρ) (y)dy =
X
X
となる.上式で y を x と書き直して左辺に移項すると
∫
g(x)((Lρ)(x) − ρ(x))dx = 0
X
が任意の有界可測関数 g に対して成り立つことがわかる.よって
Lρ(x) = ρ(x)
が殆ど全ての x について成り立つ.したがって (ii) が成り立つ.
この命題の (ii) は関数 φ の Perron-Frobenius 作用素 L の不動点 (Lh = h を満たす h)
は不変測度 µ を与えることを示している.一般に不動点関数 h を数式で直接表す
ことは困難であるので,適当な関数 g を選び,数列
{ n−1
}
1∑ k
Lx g
n
k=0
の極限関数を h とする [1].以下では g(t) = 1(t) として計算を行う.ただし,1(t)
は恒等的に 1 をとる関数である.
3
マルコフ変換 (I)
区間 X = [1, 2) 上の写像 f : X → X が以下の性質を持つとき,f はマルコフ変
換であるという.
区間 X = [1, 2) のある分割 ∆
∆ : a0 = 1 < a1 < a2 < · · · < an = 2
があり f は各区間 Ii = (ai−1 , ai ) をある区間 (aj(i) , ak(i) ) 上に 1 対 1 かつ
連続に写像し,またその逆写像も連続である.
4
写像 Ψx : [1, 2) → [1, 2), x ∈ [1, 2) を次で定義する.
{
xt (1 ≤ t < x2 )
Ψx (t) =
1
xt ( x2 ≤ t < 2)
2
2
I1
x
I0
1
2
x
I0
I1
2
Ψx (t) の定義において,1 ≤ t < x2 の場合は,xt = 1.b1 b2 b3 · · · × 2m で m = 0 の場
合に相当し,また x2 ≤ t < 2 の場合は,m = 1 の場合に相当する.この写像が導く
Perron-Frobenius 作用素 Lx : L1 → L1 は
( )
( )
2t
t
2
1
(Lx h)(t) = I[1,Ψx (1)) (t) h
+ I[Ψx (1),2) (t) h
x
x
x
x
( )
( )
2
2t
t
1
= I[1,x) (t) h
+ I[x,2) (t) h
x
x
x
x
となる.ただし,I[a,b) は区間 [a, b) で 1 をとり,その他では 0 をとる関数である.この
写像 Ψx は x が特別な値をとるときマルコフ変換になる.実際 I0 = [1, x2 ), I1 = [ x2 , 2)
であるので
Ψx (I0 ) = I1 , Ψx (I1 ) = I0
となるためには,Ψx (1) = x2 が成り立てばよいが,Ψx (1) = x であるので, x2 = x
√
すなわち x = 2 であればマルコフ変換になる.
不変測度を求める方法はたくさん持っていた方がよいので,以下の 2 つの方法
で求める.
3.1
極限関数を求める方法
まず
{
lim
n→∞
}
n−1
1 ∑ k√
L 1 (t)
n k=0 2
5
を求めることによって,Ψ√2 の不変測度を求めてみる.([1] では inf |Ψ′x | > 1 を仮
定しているが Ψ√2 では特にこの仮定が必要ない.)
Lk√2 1, k = 1, 2 を求めてみる.
(i) k = 1 のとき
(
√
)
1
L√2 1 (t) = I[1,√2) (t) 2 + I[√2,2) (t) √
2
(ii) k = 2 のとき
(
)
(
))
(
L2√2 1 (t) = L√2 L√2 1 (t)
)
(
√
√
1
t
= I[1,√2) (t) 2(L√2 1)( 2 t) + I[√2,2) (t) √ (L√2 1) √
2
2
(
)
√
√ √
√
1
= I[1,√2) (t) 2 I[1,√2) ( 2 t) 2 + I[√2,2) ( 2 t) √
2
(
)
)
)
(
(
√
1
t
t
1
√
√
√
√
2 + I[ 2,2) √
+ I[ 2,2) (t) √ I[1, 2) √
2
2
2
2
(4)
また
√
√
1 ≤ 2t < 2
√
√
2 ≤ 2t < 2
√
t
1≤ √ < 2
2
√
t
2≤ √ <2
2
1
⇔ √ ≤t<1
2
√
⇔ 1≤t< 2
√
⇔
2≤t<2
√
⇔ 2≤t<2 2
より (4) の式は以下のようになる.
(
)
(
)
√
√
√
1
1
1
I[1,√2) (t) 2 I[ √1 ,1) (t) 2 + I[1,√2) (t) √
+ I[√2,2) (t) √ I[√2,2) (t) 2 + I[1,√2) (t) √
2
2
2
2
√
√
= I[1, 2) (t) + I[ 2,2) (t) = 1(t)
したがって
(
)
Lk√2 1 (t) =
となる.これより
{
√
I[1,√2) (t) 2 + I[√2,2) (t) √12
1(t)

n




2


n

{ n−1
}


∑
2
Lk√2 1 (t) = n


k=0


2


n



2
(k = 2l + 1)
(k = 2l)
n √
· 2
2
n 1
+ ·√
2
2
n−1 √
+
· 2
2
n−1 1
+
·√
2
2
+
6
√
(1 ≤ t < 2,
√
( 2 ≤ t < 2,
√
(1 ≤ t < 2,
√
( 2 ≤ t < 2,
n = 2m)
n = 2m)
n = 2m + 1)
n = 2m + 1)
(5)
となるので

√
1


(1
+
2)


2




1
1

{ n−1
}

(1 + √ )

∑
1
2
2
Lk√2 1 (t) =
1 √
1

n k=0

{1 + (1 − ) · 2}



2{

( n )
}


1
1
1


1+ 1−
·√

2
n
2
(1 ≤ t <
√
2, n = 2m)
√
( 2 ≤ t < 2, n = 2m)
(1 ≤ t <
√
2, n = 2m + 1)
√
( 2 ≤ t < 2, n = 2m + 1)
である.したがって
{
lim
n→∞
1
√
√

(1 + 2) (1 ≤ t < 2)

1
2
Lk√ 1 (t) = 1
√
1

n k=0 2
 (1 + √ ) ( 2 ≤ t < 2)
2
2
n−1
∑
}
となる.この関数を改めて h√2 (t) とおくと
(
(
))
√
1
1
h√2 (t) =
I √ (t)(1 + 2) + I[√2,2) (t) 1 + √
2 [1, 2)
2
(
)
√
1
1
1 + I[1,√2) (t) 2 + I[√2,2) (t) √
=
2
2
(6)
と表される.h√2 が L√2 の不動点となることを確認しておく.
(
L√2 h√2
)
(
( {
}))
√
1
1
√
√
√
(t) = (L 2
1(·) + I[1, 2) (·) 2 + I[ 2,2) (·) √
(t)
2
2
))
1( √ (
=
L 2 1(·) + L√2 1(·) (t)
2
)
1 (( √ )
=
L 2 1 (t) + 1(t)
2
= h√2 (t).
この極限による方法は Ψx がマルコフ変換でない場合にも適用可能であるが,一般
には (5) のような周期性がないため計算が難しい.
7
3.2
マルコフ過程を用いる方法
この不動点関数 h√2 は以下のマルコフ過程の概念を用いて導くこともできる.
2
I1
√
2
1
I0
p
I0
I1
q
1
1
I0
√
2
I1
2
I0 にある確率を p,I1 にある確率を q とする.I0 上の点は必ず I1 に行くので I0 から I1
への推移確率は 1 である.同様に I1 から I0 への推移確率は 1 である.p, q をこの
マルコフ過程の定常確率とすると
p = q × 1,
q =p×1
の関係が成り立たなければならない.したがって p = q である.また p + q = 1 な
ので p = q = 21 となる.この確率が I0 , I1 上にそれぞれ密度 d0 , d1 で一様に分布し
ていると考えれば
∫
√
1
p=
d0 dx = ( 2 − 1) × d0 =
2
I0
√
1
1
d0 = √
= (1 + 2),
2
2( 2 − 1)
∫
I1
√
1
2
√
1
2+ 2
1
1
√ =
d1 =
= (1 + √ ).
4
2
2(2 − 2)
2
d1 dx = (2 −
q=
2) × d1 =
このとき [1, 2) 上の関数 d0 I[1,√2) (t) + d1 I[√2,2) (t) は (6) により h√2 に等しくなる.
マルコフ過程による方法は,写像 T がマルコフ変換のとき有効である.一般の
写像 T に対しては,マルコフ変換 Tn , n = 1, 2, · · · , で T を近似していく方法が有
効と考えられるが,Tn が T に近づく程計算が複雑になっていくと予想される.
8
√
注意 1. x = 2 のとき,(Lu) = u を満たす密度関数は無限にある.実際,可測集
√
√
合 B ⊂ [1, 2) は Ψ√2 (B) ⊂ [ 2, 2) であり B ∩ Ψ√2 (B) = ϕ となる.このとき,B
と Ψ√2 (B) にそれぞれ確率 12 を与えるような,B およびΨ√2 (B) 上で一様な確率密
度関数
1
1
u(t) =
IB (t) +
IΨ√2 (B) (t)
2|B|
2|Ψ√2 (B)|
は L√2 の不動点関数になる ( ただし |B| は B の Lebesgue 測度である ).以下 L√2 u =
u を示す.
(
)
√
√
2
1
1
(L√2 u)(t) = I[1,√2) (t) √
IB ( 2 t) +
IΨ√2 (B) ( 2t)
2|Ψ√2 (B)|
2 2|B|
(
(
)
(
))
1
1
t
1
t
√
+
.
+ I[ 2,2) (t) √
IB √
IΨ√2 (B) √
2|Ψ√2 (B)|
2 2|B|
2
2
√
√
√
t ∈ [1, 2) のとき 2t = Ψ√2 (t) ∈ [ 2, 2) であるので,上式右辺第 1 項は
2
1
1
1
1
1
I[1,√2) (t) √ ·
IΨ√2 (B) (Ψ√2 (t)) = √ · √
I[1,√2) (t)IB (t) = √ · √
IB (t)
√
2 2|Ψ 2 (B)|
2 |Ψ 2 (B)|
2 |Ψ 2 (B)|
√
√
となる.同様に t ∈ [ 2, 2) のときは √t2 = Ψ√2 (t) ∈ [1, 2) であるので,上式右辺
第 2 項は
1
1
1
1 √
I[√2,2) (t) √ ·
IB (Ψ√2 (t)) = √ ·
I[ 2,2) (t)IΨ−1
√ (B) (t)
2
2 2|B|
2 2|B|
1
1 √
1
1
= √ ·
I[ 2,2) (t)IΨ√2 (B) (t) = √ ·
IΨ√2 (B) (t)
2 2 |B|
2 2 |B|
となる.よって
1
1
1
1
(L√2 u)(t) = √ · √
IB (t) + √ ·
IΨ√2 (B) (t)
2 |Ψ 2 (B)|
2 2 |B|
√
と表される.ここで |Ψ√2 (B)| = 2|B| であるので
1
1
IB (t) +
IΨ√2 (B) (t) = u(t)
√
2|B|
2|Ψ 2 (B)|
√
となる.したがって,B ⊂ [1, 2),|B| < 2 − 1 のとき B ∪ Ψ√2 (B) は,[1, 2) より
測度が小さい不変集合になる.これから Ψ はエルゴード的でないことが分かる.
(L√2 u)(t) =
注意 2. 任意の x ∈ [1, 2) に対して h(t) = 1t は Ψx に対する Perron-Frobenius 作用
素 Lx の不動点関数である.実際
2 x
1 x
(Lx h)(t) = I[1,Ψx (1)) (t) · + I[Ψx (1),2) ·
x 2t
x t
1
1
= I[1,Ψx (1)) (t) + I[Ψx (1),2)
t
t
1
= = h(t).
t
この h(t) は全ての Ψx , x ∈ [1, 2) について共通であるところが興味深い.
9
マルコフ変換 (II)
4
この節では簡単のため Φx (t) = 1.b2 b3 · · · ,すなわち,仮数部の左シフト量が
1(s = 1) の場合を扱う.(s > 1 の場合も同様に扱えるが計算が複雑になる.) 写像
Φx : [1, 2) → [1, 2) を以下で定義する.
(1) 1 ≤ x < 1.5 のとき

3


2xt − 1 (1 ≤ t < 2x )
3
Φx (t) = 2xt − 2 ( 2x
≤ t < x2 )


xt − 1 ( 2 ≤ t < 2)
x
(2) 1.5 ≤ x < 2 のとき

2


2xt − 2 (1 ≤ t < x )
Φx (t) =
xt − 1


xt − 2
( x2 ≤ t < x3 )
( x3 ≤ t < 2)
上の定義で,Φx (t) = 2xt · · · は,xt = 1.b1 b2 b3 · · · × 2m で m = 0 の場合に対応し,
Φx (t) = xt · · · は m = 1 の場合に対応している.
4.1
極限関数を求める方法 (1)
(1) の場合 (1 ≤ x < 1.5) を考える.この写像が導く Perron-Frobenius 作用素は
{
(
)
(
)}
1
t+2
1
t+1
(Lx h)(t) = I[1,2x−1) (t)
h
+ h
2x
2x
x
x
{
(
)
(
)}
1
t+1
1
t+2
+ I[2x−1,2) (t)
h
+ h
2x
2x
2x
2x
3
3 2
である.ここで I0 = [1, 2x
),√ I1 = [ 2x
, x ), I2 = [ x2 , 2) とすると,Φx (2) = 2x − 1 =
であれば (すなわち x = 1+4 17 であれば),



Φx (I0 ) = I2
Φx (I1 ) = I0 ∪ I1 ∪ I2


Φ (I ) = I ∪ I
x
2
0
1
となり,Φx (t) はマルコフ変換となる.以下
√
1 + 17
xˆ =
4
10
2
x
とする.
2
I2
2x − 1
I1
I0
1 I0
このとき
3
2x
{
lim
n→∞
I1
2
x
I2
2
}
n−1
1∑ k
L 1 (t)
n k=0 xˆ
を求める.Lkxˆ 1, k = 1, 2, 3, 4 を求めてみると
1
1
+ I[1,2ˆx−1) (t)
xˆ 2ˆ
x
( 2 )
3
1
Lxˆ 1 (t) = 2 + 2 I[1,2ˆx−1) (t)
2ˆ
x
4ˆ
x
( 3 )
5
7
Lxˆ 1 (t) = 3 + 3 I[1,2ˆx−1) (t)
4ˆ
x
8ˆ
x
( 4 )
19
9
Lxˆ 1 (t) = 4 +
I[1,2ˆx−1) (t)
8ˆ
x
16ˆ
x4
(Lxˆ 1) (t) =
となる.これから (Lnxˆ 1) (t) = pn + qn I[1,2ˆx−1) (t) とおいたとき,
pn =
1
(pn−1 + qn−1 ),
xˆ
qn =
1
(pn−1 − qn−1 )
2ˆ
x
すなわち
(Lnxˆ 1) (t) =
1
1
(pn−1 + qn−1 ) + (pn−1 − qn−1 )I[1,2ˆx−1) (t)
xˆ
2ˆ
x
の関係があると予想される.実際この関係式は
(
)
1
1
(Lxˆ I[1,2ˆx−1) (·))(t) = I[1,2ˆx−1) (t)
I[2ˆx−2,2) (t) + I[ˆx−1,1) (t)
2ˆ
x
xˆ
(
)
1
1
+ I[2ˆx−1,2) (t)
I[2ˆx−1,3) (t) + I[2ˆx−1,3) (t)
2ˆ
x
2ˆ
x
1
1
1
=
I[1,2ˆx−1) (t) + I[2ˆx−1,2) (t) + I[2ˆx−1,2) (t)
2ˆ
x
2ˆ
x
2ˆ
x
11
=
1
1
+ I[2ˆx−1,2) (t)
2ˆ
x 2ˆ
x
であることに注意すれば
(
)
(Lnxˆ 1) (t) = Lxˆ Ln−1
x
ˆ 1 (t)
(
)
= Lxˆ pn−1 + qn−1 I[1,2ˆx−1) (·) (t)
= pn−1 (Lxˆ 1)(t) + qn−1 (Lxˆ I[1,2ˆx−1) (·))(t)
(
)
(
)
1
1
1
1
= pn−1
+ I[1,2ˆx−1) (t) + qn−1
+ I[2ˆx−1,2) (t)
xˆ 2ˆ
x
2ˆ
x 2ˆ
x
1
1
1
1
= pn−1 + pn−1 I[1,2ˆx−1) (t) + qn−1 + qn−1 I[2ˆx−1,2) (t)
xˆ
x
x
x
2ˆ
2ˆ
(
)2ˆ
1
1
1
1
1
qn−1 + qn−1 I[2ˆx−1,2) (t)
= pn−1 + pn−1 I[1,2ˆx−1) (t) +
−
xˆ
2ˆ
x
xˆ 2ˆ
x
2ˆ
x
1
1
1
1
= (pn−1 + qn−1 ) pn−1 I[1,2ˆx−1) (t) − qn−1 + qn−1 I[2ˆx−1,2) (t)
xˆ
2ˆ
x
2ˆ
x
2ˆ
x
1
1
= (pn−1 + qn−1 ) + (pn−1 − qn−1 )I[1,2ˆx−1) (t)
xˆ
2ˆ
x
により得られる.(pn , qn ) と (pn−1 , qn−1 ) の関係式を行列を用いて表すと
(
) (
)(
)
1
1
pn
pn−1
x
ˆ
x
ˆ
=
1
1
qn
− 2ˆx
qn−1
2ˆ
x
(
)(
) ( ) (
)n (
)
n
1
1
2 2
pn−1
2 2
p1
=
=
2ˆ
x 1 −1
2ˆ
x
qn−1
1 −1
q1
(
を得る.ここで A =
)
2 2
1 −1
とおく.A の固有多項式を gA (λ) とおくと
gA (λ) = |λE − A| = λ2 − λ − 4
となる.gA (λ) = 0 を解くと λ = 2ˆ
x, − x2ˆ を得る.
(i) λ = 2ˆ
x のときの固有空間 W (2ˆ
x; A) は
{ (
W (2ˆ
x; A) =
c
)
2ˆ
x+1
1
}
c∈R
となる.
(ii) λ = − x2ˆ のときの固有空間 W (− x2ˆ ; A) は
) { (
(
2
1−
W − ;A = c
xˆ
1
12
2
x
ˆ
)
}
c∈R
となる.したがって
dim(W (2ˆ
x;)
A)) + dim(W (− x2ˆ ; A)) = (
2 となり A は対角化可能
(
)
2
x
ˆ
2ˆ
x + 1 1 − x2ˆ
1
−
1
x
ˆ
である.P =
とおくと P −1 =
であり,
xˆ + 4 −1 2ˆ
1
1
x+1
(
)
2ˆ
x
0
B ≡ P −1 AP =
より
0 − x2ˆ
An = P B n P −1
(
)(
)
)(
2
(2ˆ
x)n ( 0 )
2ˆ
x + 1 1 − x2ˆ
1
x
ˆ
x
ˆ −1
= xˆ+4
n
−1 2ˆ
x+1
1
1
0
− x2ˆ
(
)
(
)
(
) ( )n
(
) )
(
n
2
2
n
n
(2ˆ
x) (2ˆ
x + 1) − ( − xˆ ) 1 − xˆ
(2ˆ
x) (2ˆ
x + 1) ( 1 − x2ˆ ) + ( − x2ˆ ) (2ˆ
x + 1) 1 − x2ˆ
x
ˆ
= xˆ+4
n
n
(2ˆ
x)n − − x2ˆ
(2ˆ
x)n 1 − x2ˆ + − x2ˆ (2ˆ
x + 1)
となる.したがって
(
(
=
=
pn
qn
)n
1
2ˆ
x
(
x
ˆ
x
ˆ+4
)
( )n (
)
(
) ( )n
(
) )(
(2ˆ
x)n (2ˆ
x + 1) − ( − x2ˆ ) 1 − x2ˆ
(2ˆ
x)n (2ˆ
x + 1) ( 1 − x2ˆ ) + ( − x2ˆ ) (2ˆ
x + 1) 1 − x2ˆ
n
n
(2ˆ
x)n 1 − x2ˆ + − x2ˆ (2ˆ
x + 1)
(2ˆ
x)n − − x2ˆ
{
(
)
(
)}
{
(
)
(
)
(
)} )
n
n
1
1
x + 1) − −1
1(− x2ˆ) }+ 2ˆ
(2ˆ
x + 1)) 1 (− x2ˆ ) + −1
(2ˆ
x + 1) 1 − x2ˆ
x
ˆ (2ˆ
x
ˆ2 {
x {(
x
ˆ2
}
n
n
−1
1
1
+ 2ˆ
1 − x2ˆ + −1
(2ˆ
x + 1)
x
ˆ 1− x
ˆ2
x
x
ˆ2
(
x
ˆ
x
ˆ+4
となるので n → ∞ のとき pn , qn は収束する.その極限をそれぞれ p, q とすると
( ) (
(
) )
1
1
2
p
(2ˆ
x
+
1)
+
(2ˆ
x
+
1)
1
−
x
ˆ
x
ˆ (
x
ˆ
)
=
1
1
2
q
+
1
−
x
ˆ
2ˆ
x
x
ˆ
(
)} )
{1 1 (
(2ˆ
x + 1) xˆ + xˆ 1 − x2ˆ
(
)
=
1
1
2
+
1
−
x
ˆ
2ˆ
x
x
ˆ
となる.特に
1
= 1 : xˆ − 1
2ˆ
x+1
であることが分かる (最後の等号では 2ˆ
x2 = xˆ + 2 を使った).以上の準備のもとで
{ n−1
}
1∑ k
L 1 (t)
n k=0 xˆ
p : q = 2ˆ
x+1:1=1:
を求める.
}
{ n−1
)
n−1 (
∑
∑
1
1
k
(pk + qk ) + (pk − qk )I[1,2ˆx−1) (t)
Lxˆ 1 (t) =
xˆ
2ˆ
x
k=0
k=0
( n−1
)
( n−1
)
n−1
n−1
∑
∑
1 ∑
1 ∑
qk +
qk I[1,2ˆx−1) (t)
=
pk +
pk I[1,2ˆx−1) (t) −
xˆ
2ˆ
x
k=0
k=0
k=0
13
k=0
1
x
ˆ
1
2ˆ
x
)
となるので
{ n−1
}
( n−1
)
( n−1
)
n−1
n−1
1∑ k
1∑
1 1∑
1∑
1 1∑
Lxˆ 1 (t) =
pk +
qk +
pk I[1,2ˆx−1) (t) −
qk I[1,2ˆx−1) (t)
n
xˆ n
n
2ˆ
x n
n
k=0
k=0
よって
{
lim
n→∞
k=0
k=0
}
n−1
1
1
1∑ k
Lxˆ 1 (t) = (p + q) +
(p − q) I[1,2ˆx−1) (t)
n k=0
xˆ
2ˆ
x
となる.
補題 1.
1
1
(p + q) :
(p − q) = 1 : xˆ − 1
xˆ
2ˆ
x
である.
証明. p : q = 1 : x
ˆ − 1 より q = p(ˆ
x − 1) であるので
1
1
1
1
(p + q) :
(p − q) = (p + p(ˆ
x − 1)) :
(p − p(ˆ
x − 1))
xˆ
2ˆ
x
xˆ
2ˆ
x
1
1
= (p + pˆ
x − p) :
(p − pˆ
x + p)
xˆ
2ˆ
x
p
=p:
(2 − xˆ)
2ˆ
x
1
(2 − xˆ)
=1:
2ˆ
x
= 1 : xˆ − 1 (2 = 2ˆ
x2 − xˆを使う).
この補題と次の命題より上述の
{ n−1
}
1∑ k
1
1
lim
Lxˆ 1 (t) = (p + q) +
(p − q) I[1,2ˆx−1) (t)
n→∞
n
xˆ
2ˆ
x
k=0
は (Lxˆ h)(t) の不動点関数であることがわかる.
命題 2. 正数 c, d が c : d = 1 : x
ˆ − 1 を満たしていれば
h(t) = c + dI[1,2ˆx−1) (t)
は Lxˆ の不動点関数である.
証明. c = 1, d = x
ˆ − 1 の場合すなわち
hxˆ (t) = 1 + (ˆ
x − 1)I[1,2ˆx−1) (t)
14
k=0
が Lxˆ の不動点となることを確認すれば十分である.
(
)
(Lxˆ hxˆ ) = Lxˆ 1 + (ˆ
x − 1)I[1,2ˆx−1) (·) (t)
= (Lxˆ 1)(t) + (ˆ
x − 1)(Lxˆ I[1,2ˆx−1) (·))(t)
(
)
1
1
1
1
= + I[1,2ˆx−1) (t) + (ˆ
x − 1)
+ I[2ˆx−1,2) (t)
xˆ 2x
2ˆ
x 2ˆ
x
1
1
1
1
= + I[1,2ˆx−1) (t) + (ˆ
x − 1) + (ˆ
x − 1) I[2ˆx−1,2) (t)
xˆ 2ˆ
x
2ˆ
x
2ˆ
x
1
1
1
1
1
1
= + I[1,2ˆx−1) (t) + −
+ I[2ˆx−1,2) (t) − I[2ˆx−1,2) (t)
xˆ 2ˆ
x
2 2ˆ
x 2
2ˆ
x
)
)
1
1
1
1
1(
1 (
1(t) − I[1,2ˆx−1) (t) −
1(t) − I[1,2ˆx−1) (t)
= + I[1,2ˆx−1) (t) + −
+
xˆ 2ˆ
x
2 2ˆ
2ˆ
x
(x 2
)
1 1
1
1
1
1
1
1
= + −
+ −
+
− +
I[1,2ˆx−1) (t)
xˆ 2 2ˆ
x 2 2ˆ
x
2ˆ
x 2 2ˆ
x
)
(
1 1
=1+
−
I[1,2ˆx−1) (t)
xˆ 2
ここで
4
1 1
1
√ − =
− =
xˆ 2
1 + 17 2
√
17 − 3
= xˆ − 1
4
となるので hxˆ は Lxˆ の不動点となる.
)(
)
(
) (
1
1
p
pn
n−1
x
ˆ
x
ˆ
注意 3.
において pn , qn がそれぞれ p, q に収束
=
1
1
−
q
qn
n−1
2ˆ
x
2ˆ
x
することを仮定すれば p : q = 1 : x
ˆ − 1 となることは容易に計算される.実際上式
で pn → p, qn → q とすれば
( ) (
)( )
(
)( )
(
)
1
1
1
1
p
p
2 2
p
2p + 2q
x
ˆ
x
ˆ
=
=
=
1
1
2ˆ
x 1 −1
2ˆ
x
q
− 2ˆx
q
q
p−q
2ˆ
x
となるので p, q に関する連立一次方程式
{
(1 − x1ˆ )p − x1ˆ q = 0
(
)
1
− 2ˆ
p + 1 + x1ˆ q = 0
x
すなわち
{
(ˆ
x − 1)p − q = 0
−p + (2ˆ
x + 1)q = 0
を得る.x
ˆ=
なる.
√
1+ 17
4
なのでこの連立方程式は非自明解を持ち p : q = 1 : x
ˆ−1と
15
4.2
極限関数を求める方法 (2)
次に (2) の場合 (1.5 ≤ x < 2) を考える.

2


2xt − 2 (1 ≤ t < x )
Φx (t) =
xt − 1


xt − 2
( x2 ≤ t < x3 )
( x3 ≤ t < 2)
この写像が導く Perron-Frobenius 作用素は
)
)}
{ (
(
1
t+1
1
t+2
(Lx h)(t) = I[1,2x−2) (t)
h
+ h
x
x
x
x
{
(
)
(
)}
1
t+2
1
t+1
+ I[2x−2,2) (t)
+ h
h
2x
2x
x
x
である.ここで I0 = [1, x2 ),√I1 = [ x2 , x3 ), I2 = [ x3 , 2) とすると,Φx (2) = 2x − 2 =
であれば (すなわち x = 1+2 5 であれば),



Φx (I0 ) = I1 ∪ I2
Φx (I1 ) = I0 ∪ I1 ∪ I2


Φ (I ) = I
x
2
0
となり,Φx (t) はマルコフ変換となる.以下
√
1+ 5
x˜ =
2
とする.
2
I2
I1
2
x
˜
I0
このとき
1 I0
lim
n→∞
2
x
˜
{
I1
}
n−1
1∑ k
L 1 (t)
n k=0 x˜
16
3
x
˜
I2
2
2
x
を求める.Lkx˜ 1, k = 1, 2, 3, 4 を求めてみると
3
1
+ I[1,2˜x−2) (t)
2˜
x 2˜
x
( 2 )
5
1
Lx˜ 1 (t) = 2 + 2 I[1,2˜x−2) (t)
2˜
x
2˜
x
( 3 )
4
1
Lx˜ 1 (t) = 3 + 3 I[1,2˜x−2) (t)
x˜
x˜
( 4 )
3
13
Lx˜ 1 (t) = 4 + 4 I[1,2˜x−2) (t)
2˜
x
2˜
x
(Lx˜ 1) (t) =
となる.これから (Lnx˜ 1) (t) = pn + qn I[1,2˜x−2) (t) とおいたとき,
pn =
1
(3pn−1 + qn−1 ),
2˜
x
qn =
1
(pn−1 − qn−1 )
2˜
x
すなわち
(Lnxˆ 1) (t) =
1
1
(3pn−1 + qn−1 ) + (pn−1 − qn−1 )I[1,2˜x−2) (t)
2˜
x
2˜
x
の関係があると予想される.実際この関係式は 4.1 節と同様に計算して
(Lx˜ I[1,2˜x−2) (·))(t) =
1
I[2˜x−2,2) (t)
2˜
x
であることに注意すれば
(
)
(Lnxˆ 1) (t) = Lx˜ Ln−1
x
˜ 1 (t)
(
)
= Lx˜ pn−1 + qn−1 I[1,2˜x−2) (·) (t)
= pn−1 (Lx˜ 1)(t) + qn−1 (Lx˜ I[1,2˜x−2) (·))(t)
)
)
(
(
3
1
1
= pn−1
+ I[1,2˜x−2) (t) + qn−1
I[2˜x−2,2) (t)
2˜
x 2˜
x
2˜
x
1
1
=
(3pn−1 + qn−1 ) + (pn−1 − qn−1 )I[1,2˜x−2) (t)
2˜
x
2˜
x
により得られる.(pn , qn ) と (pn−1 , qn−1 ) の関係式を行列を用いて表すと
)
(
) (
)(
3
1
pn−1
pn
x
˜
2˜
x
=
1
1
qn−1
qn
− 2˜x
2˜
x
) ( ) (
)
(
)(
)n (
n
1
1
3 1
pn−1
3 1
p1
=
=
2˜
x 1 −1
2˜
x
qn−1
q1
1 −1
(
)
3 1
を得る.ここで C =
とおく.C の固有多項式を gC (λ) とおくと
1 −1
gC (λ) = |λE − C| = λ2 − 2λ − 4
となる.gC (λ) = 0 を解くと λ = 2˜
x, − x2˜ を得る.
17
i) λ = 2˜
x のときの固有空間 W (2˜
x; C) は
{ (
W (2˜
x; C) =
c
)
2˜
x+1
1
}
c∈R
となる.
2
のときの固有空間 W (− x2˜ ; C) は
ii) λ = − 2˜
x
(
) { (
2
1−
W − ;C = c
x˜
1
2
x
˜
)
}
c∈R
となる.したがって
dim(W (2˜
x;)
C)) + dim(W (− x2˜ ; C)) = (
2 となり C は対角化可能
)
(
2
x
˜
2˜
x + 1 1 − x2˜
1
−
1
x
˜
である.Q =
とおくと Q−1 =
であり,
x˜ + 4 −1 2˜
1
1
x+1
(
)
2˜
x
0
D ≡ Q−1 CQ =
より
0 − x2˜
C n = QDn Q−1
(
)(
)(
)
2
(2˜
x)n ( 0 )
2˜
x + 1 1 − x2˜
1
x
˜
x
˜ −1
= x˜+4
n
1
1
−1 2˜
x+1
0
− x2˜
(
)
(
)
(
) ( )n
(
) )
(
n
2
2
n
n
(2˜
x) (2˜
x + 1) − ( − x˜ ) 1 − x˜
(2˜
x) (2˜
x + 1) ( 1 − x2˜ ) + ( − x2˜ ) (2˜
x + 1) 1 − x2˜
x
˜
= x˜+4
n
n
(2˜
x)n 1 − x2˜ + − x2˜ (2˜
x + 1)
(2˜
x)n − − x2˜
となる.したがって
(
(
=
=
pn
qn
)n
1
2˜
x
(
x
˜
x
˜+4
)
( )n (
)
(
) ( )n
(
) )(
(2˜
x)n (2˜
x + 1) ( 1 − x2˜ ) + ( − x2˜ ) (2˜
x + 1) 1 − x2˜
(2˜
x)n (2˜
x + 1) − ( − x2˜ ) 1 − x2˜
n
n
(2˜
x)n − − x2˜
(2˜
x)n 1 − x2˜ + − x2˜ (2˜
x + 1)
{
( −1 )n (
)}
{
(
) ( −1 )n
(
)} )
1
2
1
2
x + 1) − x˜2 { 1(− x˜) }+ 2˜x {(
(2˜
x + 1)) 1 (− x˜ ) + x˜2 (2˜
x + 1) 1 − x2˜
x
˜ (2˜
}
n
n
−1
1
1
+ 2˜
1 − x2˜ + −1
(2˜
x + 1)
x
˜ 1− x
˜2
x
x
˜2
(
x
˜
x
˜+4
となるので n → ∞ のとき pn , qn は収束する.その極限をそれぞれ p, q とすると
( ) (
(
) )
1
1
2
p
(2˜
x
+
1)
+
(2˜
x
+
1)
1
−
x
˜
x
˜ (
x
˜
)
=
1
1
2
q
+
1
−
x
˜
2˜
x
x
˜
(
)} )
{1 1 (
(2˜
x + 1) x˜ + x˜ 1 − x2˜
(
)
=
1
1
+ 2˜
1 − x2˜
x
˜
x
となる.特に
p : q = 2˜
x+1:1=1:
18
1
= 1 : 2˜
x−3
2˜
x+1
1
x
˜
1
2˜
x
)
であることが分かる (最後の等号では x
˜2 = x˜ + 1 を使った).以上の準備のもとで
{ n−1
}
1∑ k
Lx˜ 1 (t)
n
k=0
を求める.
{ n−1
}
)
n−1 (
∑
∑
1
1
k
Lx˜ 1 (t) =
(3pk + qk ) + (pk − qk )I[1,2˜x−2) (t)
2˜
x
2˜
x
k=0
k=0
( n−1
( n−1
)
)
n−1
n−1
∑
∑
1 ∑
1 ∑
=
3pk +
qk +
pk I[1,2˜x−2) (t) −
qk I[1,2˜x−2) (t)
2˜
x
2˜
x
k=0
k=0
k=0
k=0
となるので
( n−1
( n−1
{ n−1
}
)
)
n−1
n−1
1 1∑
1∑
1 1∑
1∑
1∑ k
Lx˜ 1 (t) =
3pk +
qk +
pk I[1,2˜x−2) (t) −
qk I[1,2˜x−2) (t)
n
2˜
x n
n
2˜
x n
n
k=0
k=0
よって
{
lim
n→∞
k=0
k=0
}
n−1
1
1
1∑ k
Lx˜ 1 (t) =
(3p + q) + (p − q)I[1,2˜x−2) (t)
n k=0
2˜
x
2˜
x
となる.
補題 2.
1
1
(3p + q) :
(p − q) = 1 : 2˜
x−3
2˜
x
2˜
x
である.
証明. p : q = 1 : 2˜
x − 3 より q = p(2˜
x − 3) であるので
1
1
1
1
(3p + q) :
(p − q) =
(p + p(2˜
x − 3)) :
(p − p(2˜
x − 3))
2˜
x
2˜
x
2˜
x
2˜
x
= 2p˜
x : −2p˜
x + 4p
= 2˜
x : −2˜
x+4
2
= 1 : −1 +
x˜
= 1 : 2˜
x − 3 (1 = x˜2 − x˜を使う).
この補題と次の命題より上述の
{ n−1
}
1
1∑ k
1
(3p + q) + (p − q)I[1,2˜x−2) (t)
lim
Lx˜ 1 (t) =
n→∞
n
2˜
x
2˜
x
k=0
は (Lx˜ h)(t) の不動点関数であることがわかる.
19
k=0
命題 3. 正数 m, n が m : n = 1 : 2˜
x − 3 を満たしていれば
hx˜ (t) = m + nI[1,2˜x−2) (t)
は Lx˜ の不動点関数である.
証明. m = 1, n = 2˜
x − 3 の場合すなわち
hx˜ (t) = 1 + (2˜
x − 3)I[1,2˜x−2) (t)
が Lx˜ の不動点となることを確認すれば十分である.
(
)
(Lx˜ hx˜ ) = Lx˜ 1 + (2˜
x − 3)I[1,2˜x−2) (·) (t)
= (Lx˜ 1)(t) + (2˜
x − 3)(Lx˜ I[1,2˜x−2) (·))(t)
3
1
1
+ I[1,2˜x−2) (t) + (2˜
x − 3) I[2˜x−2,2) (t)
=
2˜
x 2˜
x
2˜
x
3
1
3
=
+ I[1,2˜x−2) (t) + I[2˜x−2,2) (t) − I[2˜x−2,2) (t)
2˜
x 2˜
x
2˜
x
(
)
)
3
1
3 (
=
+ I[1,2˜x−2) (t) + 1 − I[2˜x−2,2) (t) −
1 − I[2˜x−2,2) (t)
2˜
x ( 2˜
x )
2˜
x
2
=1+
− 1 I[2˜x−2,2) (t)
x˜
ここで
√
4
2
√ − 1 = 5 − 2 = 2˜
−1=
x−3
x˜
1+ 5
となるので hx˜ (t) は Lx˜ の不動点となる.
4.3
マルコフ過程を用いる方法
マルコフ過程の定常測度の概念を用いて hxˆ , hx˜ を求める方法 (3.2 節の方法) につ
いては,次節で Φx を一般化した変換 T について解析を行うので,ここでは省略
する.
5
マルコフ変換 (III)
本節では写像 Φx を一般化した写像 T について考える.一般性を考慮して X =
[0, 1) とする.区間 X = [0, 1) のある分割 ∆
∆ : a0 = 0 < a1 < a2 < · · · < an+1 = 1
20
に対し,区間を I0 = [a0 , a1 ), I1 = [a1 , a2 ), · · · , In = [an , an+1 ) とする.写像 T (x)
を以下のように定義する.


αx + (1 − αa1 ) (x ∈ I0 )




β1 (x − a1 )
(x ∈ I1 )




.

.


.
T (x) = βi (x − ai )
(x ∈ Ii )


..


.






βn−1 (x − an−1 ) (x ∈ In−1 )




γ(x − an )
(x ∈ In )
1
Ik
···
Ij−1
0 I0 I1
In−1
In 1
T (x) のグラフ
ただし
α<
1
,
|I0 |
βi =
1
(i = 1, 2, · · · n − 1),
|Ii |
γ<
1
|In |
である.変換 T では,直線部分の傾きに自由度があることを注意しておく.この
写像が導く Perron-Frobenius 作用素は,y ∈ [0, 1) に対して T (xi ) = y, xi ∈ Ii , と
すれば
(Lh)(y) = α1 h(x0 )I[T (0),1) (y) +
1
h(x1 )
β1
+ ··· +
1
h(xn−1 )
βn−1
+ γ1 h(xn )I[0,T (1)) (7)
である.T (x) が
T (I0 ) = Ik ∪ · · · ∪ In ,
T (In ) = I0 ∪ · · · ∪ Ij−1
を満たすとき T (x) はマルコフ変換となる.以下,マルコフ過程の概念を用いて不
動点関数を求める.I0 にある確率を p0 ,I1 にある確率を p1 ,· · · ,In−1 にある確率
を pn−1 ,In にある確率を pn とする.
21
5.1
マルコフ過程を用いる方法 (1)
まず j < k のときを考える.Is (1 ≤ s ≤ n−1) から It (1 ≤ t ≤ n−1) への推移確
率は |It | である.I0 から It (k ≤ t ≤ n) への推移確率は |T|I(It0| )| であり,In から It (0 ≤
t ≤ j−1) への推移確率は |T|I(Itn| )| である.このとき p0 , p1 , · · · pj−1 , pj , · · · , pk−1 , pk , · · · , pn
をマルコフ過程の定常確率とすると以下の等式が成り立つ.
In
I0
.....................
..................
..................
...........................
......
...
...
.......
..
...
...
... ............. ... .............................. ......................... .. .............
...
..
..... ... .
.
.
.
.
.
.
.
.
...
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
......... ......................... .... ...... ...... ......................................... .........
...
...
.
.
.
.
.
.
.......
. . .... .. .. .. ...... .. .. ......
.
.....
.......
.......................................................................................
...........
. .. ... ...... .. ...
.
.
.
......... .. .. ....
.... .. .......
. .. ...................... ... ........ ... ..... ... ..................... .. .
.................... .......... .................... .... .... .................. ..............................
... .. ...... ........... ... .. ....... ..... .... ..... ...
.
.
.
.
.
.
.
... .. .. .... ..... .................. ........... .... ...
........
.......... ...... ..
... ...... ........ ..
.. . . . .
.................
...
................ ..... ......... ...... .................... .... .... ..................... .......... .... .....
.
.
.
.
.
.
.
.......... .. ..... .......... .. ... ... ....... ....... ......... ......................
....
.
.
.
.
....
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
... . .. ......... ..... .. .... .. ... .. .. ........... ......... ...........
...
.
.
...
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
......... ........ .. ....... ...... .... ................. . ....
...
.. . . ... .. . . .
..
.......
......
.
.......
........................................................................................................... ....
.....
...........
................ ... ... ..... ..... ... ... ... ............
......... ......................... ............ ................... .........
............ ... .. ..................... ......................... .. ..............
.
........
..
......................
. .........................
.
......
.......... . ..........
..........
.....
.. ..
..
....
. .
.
...
... .......
...
......
......................
.....................
♣
♣
♣
I1
In−1
Ij−1
Ik+1
Ij
♣ ♣♣
♣
♣
♣
Ik
|I0 |
pn ,
|T (In )|
|I1 |
pn ,
p1 = |I1 |p1 + |I1 |p2 + · · · + |I1 |pn−1 +
|T (In )|
..
.
|Ij−1 |
pj−1 = |Ij−1 |p1 + |Ij−1 |p2 + · · · + |Ij−1 |pn−1 +
pn ,
|T (In )|
p0 = |I0 |p1 + |I0 |p2 + · · · + |I0 |pn−1 +
pj = |Ij |p1 + |Ij |p2 + · · · + |Ij |pn−1 ,
..
.
pk−1 = |Ik−1 |p1 + |Ik−1 |p2 + · · · + |Ik−1 |pn−1 ,
|Ik |
pk =
p0 + |Ik |p1 + |Ik |p2 + · · · + |Ik |pn−1 ,
|T (I0 )|
..
.
|In |
p0 + |In |p1 + |In |p2 + · · · + |In |pn−1 .
pn =
|T (I0 )|
p1 , · · · , pn の式に対しそれぞれ |I0 |, |I1 |, · · · , |Ij−1 |, |Ij |, · · · , |Ik−1 |, |Ik |, · · · , |In | で
両辺割ると
p0
pn
= p1 + p2 + · · · + pn−1 +
,
|I0 |
|T (In )|
pn
p1
= p1 + p2 + · · · + pn−1 +
,
|I1 |
|T (In )|
..
.
22
(8)
pn
pj−1
= p1 + p2 + · · · + pn−1 +
,
|Ij−1 |
|T (In )|
pj
= p1 + p2 + · · · + pn−1 ,
|Ij |
..
.
pk−1
= p1 + p2 + · · · + pn−1 ,
|Ik−1 |
pk
p0
=
+ p1 + p2 + · · · + pn−1 ,
|Ik |
|T (I0 )|
..
.
p0
pn
=
+ p1 + p2 + · · · + pn−1
|In |
|T (I0 )|
(9)
(10)
となる.これより
p0
p1
pj−1
=
= ··· =
,
|I0 |
|I1 |
|Ij−1 |
pj
pk−1
= ··· =
,
|Ij |
|Ik−1 |
pk
pn
= ··· =
|Ik |
|In |
がわかる.ここで
A=
p0
p1
pj−1
=
= ··· =
,
|I0 |
|I1 |
|Ij−1 |
B=
pj
pk−1
= ··· =
,
|Ij |
|Ik−1 |
C=
pk
pn
= ··· =
|Ik |
|In |
とおくと (8)(9)(10) より
pn
|In |
pn
|In |
=
·
=
C
|T (In )|
|T (In )| |In |
|T (In )|
p0
|I0 |
p0
|I0 |
C −B =
=
·
=
A
|T (I0 )|
|T (I0 )| |I0 |
|T (I0 )|
|I0 |
C=
A+B
|T (I0 )|
A−B =
(11)
(12)
となる.(12) を (11) に代入すると
|In |
A−B =
|T (In )|
(
|I0 |
A+B
|T (I0 )|
)
となる.この式を変形すると
(
)
(
)
|In ||I0 |
|In |
1−
A= 1+
B
|T (In )||T (I0 )|
|T (In )|
|In |
|T (In )|
B
|In ||I0 |
|T (In )||T (I0 )|
1+
A=
1−
=
|T (I0 )|(|T (In )| + |In |)
|T (In )||T (I0 )| + |T (I0 )||In |
B=
B
|T (In )||T (I0 )| − |In ||I0 |
|T (In )||T (I0 )| − |In ||I0 |
23
を得る.この式を (12) に代入すると
|I0 |
|T (I0 )|(|T (In )| + |In |)
·
B
C=B+
|T (I0 )| |T (In )||T (I0 )| − |In ||I0 |
(
)
|I0 |(|T (In )| + |In |)
= 1+
B
|T (In )||T (I0 )| − |In ||I0 |
|T (In )|(|T (I0 )| + |I0 |)
=
B
|T (In )||T (I0 )| − |In ||I0 |
となるので
A:B:C=
|T (I0 )|(|T (In )| + |In |)
|T (In )|(|T (I0 )| + |I0 |)
:1:
.
|T (In )||T (I0 )| − |In ||I0 |
|T (In )||T (I0 )| − |In ||I0 |
ここで
h(y) =
|T (I0 )|(|T (In )|+|In |)
I
(y)
|T (In )||T (I0 )|−|In ||I0 | I0 ∪···∪Ij−1
+ IIj ∪···∪Ik−1 (y) +
|T (In )|(|T (I0 )|+|I0 |)
I
(y)
|T (In )||T (I0 )|−|In ||I0 | Ik ∪···∪In
(13)
と定める.
命題 4. h(y) は T (x) に対する Perron-Frobenius 作用素 L の不動点関数である.
証明. 簡単のため
Aˆ =
|T (I0 )|(|T (In )|+|In |)
,
|T (In )||T (I0 )|−|In ||I0 |
Cˆ =
とおく.さらに関数 G(x) を G(x) = T (x) +
は次に示す.
24
|T (In )|(|T (I0 )|+|I0 |)
|T (In )||T (I0 )|−|In ||I0 |
∑n
i=0
(14)
iIIi (x) と定める.G(x) のグラフ
n + T (1)
n
n−1
···
2
1
T (0)
In−1 In1
0 I0 I1
G(x) のグラフ
(7) に (13) を代入すると
1
(Lh)(y) = α1 h(x0 )I[T (0),1) (y) + β11 h(x1 ) + · · · + βn−1
h(xn−1 ) + γ1 h(xn )I[0,T (1)) (y)
)
(
= α1 Aˆ · II0 ∪···∪Ij−1 (x0 ) + IIj ∪···∪Ik−1 (x0 ) + Cˆ · IIk ∪···∪In (x0 ) I[T (0),1) (y)
)
(
+ 1 Aˆ · II0 ∪···∪I (x1 ) + II ∪···∪I (x1 ) + Cˆ · II ∪···∪In (x1 )
β1
1
γ
..
.
(
j−1
j
k−1
k
)
ˆ
ˆ
A · II0 ∪···∪Ij−1 (xn ) + IIj ∪···∪Ik−1 (xn ) + C · IIk ∪···∪In (xn ) I[0,T (1)) (y)
+
(
)
= α1 Aˆ · I[G(0),G(aj )) (0 + y) + I[G(aj ),G(ak )) (0 + y) + Cˆ · I[G(ak ),G(an+1 )) (0 + y) I[T (0),1) (y)
(
)
+ β11 Aˆ · I[G(0),G(aj )) (1 + y) + I[G(aj ),G(ak )) (1 + y) + Cˆ · I[G(ak ),G(an+1 )) (1 + y)
..
.
25
(
)
+ γ1 Aˆ · I[G(0),G(aj )) (n + y) + I[G(aj ),G(ak )) (n + y) + Cˆ · I[G(ak ),G(an+1 )) (n + y) I[0,T (1)) (y)
(
)
1
ˆ
ˆ
= α A · I[T (0),j)) (0 + y) + I[j,k) (0 + y) + C · I[k,n+T (1))) (0 + y) I[T (0),1) (y)
(
)
+ β11 Aˆ · I[T (0),j) (1 + y) + I[j,k) (1 + y) + Cˆ · I[k,n+T (1)) (1 + y)
= Aˆ
(
+
1
γ
..
.
(
)
Aˆ · I[T (0),j) (n + y) + I[j,k) (n + y) + Cˆ · I[k,n+T (1)) (n + y) I[0,T (1)) (y)
1
I
(0
α [T (0),j))
(
+
1
I
(0
α [j,k))
+ y)I[T (0),1) (y) +
1
I
(1
β1 [T (0),j)
+ y)I[T (0),1) (y) +
1
I (1
β1 [j,k)
+ y) + · · ·
)
1
+ βn−1
I[T (0),j) (n − 1 + y) + γ1 I[T (0),j) (n + y)I[0,T (1)) (y)
+ y) + · · ·
+ βn−1 I[j,k) (n − 1 + y) +
1
+ Cˆ
(
1
I
(0
α [k,n+T (1))
+ y)I[T (0),1) (y) +
1
I
(1
β1 [k,n+T (1))
1
I (n
γ [j,k)
+ y) + · · ·
+ βn−1 I[k,n+T (1)) (n − 1 + y) +
1
)
+ y)I[0,T (1)) (y)
1
I
(n
γ [k,n+T (1))
)
+ y)I[0,T (1)) (y) .
第 1 項において T (0) ≤ y < 1 ≤ j より
I[T (0),j)) (0 + y)I[T (0),1) (y) = I[T (0),1) (y).
j < n より I[T (0),j) (n + y) = 0 である.0 ≤ l + y < j を満たす整数 l は l =
0, 1, · · · , j − 1 である.よって第 1 項は
(
)
1
1
1
Aˆ
I[T (0),1) (y) +
+ ··· +
α
β1
βj−1
となる.第 2 項においては 0+y < j より I[j,k) (0+y) = 0,k < n より I[j,k) (n+y) = 0
である.よって第 2 項は
1
1
+ ··· +
βj
βk−1
となる.第 3 項では l = k, · · · , n − 1 について I[k,n+T (1)) (l + y) = 1 である.また
I[k,n+T (1)) (n+y) = 1 ⇔ I[0,T (1)) (y) = 1 である.(証明.
(⇒) k ≤ n+y < n+T (1) ⇔
k − n ≤ 0 ≤ y < T (1). (⇐) 0 ≤ y < T (1) ⇔ k ≤ n ≤ n + y < n + T (1)) よっ
て第 3 項は
(
)
1
1
1
ˆ
C
+ ··· +
+ I[0,T (1)) (y)
βk
βn−1 γ
となる.したがって (Lh)(y) は
(
)
1
1
1
(Lh)(y) = Aˆ
I[T (0),1) (y) +
+ ··· +
α
β1
βj−1
26
(
+
1
1
+ ··· +
βj
βk−1
)
(
+ Cˆ
)
1
1
1
+ ··· +
+ I[0,T (1)) (y)
βk
βn−1 γ
(15)
となる.この (Lh)(y) を (i) 0 ≤ y < T (1),(ii) T (1) ≤ y < T (0),(iii) T (0) ≤ y < 1
の 3 つの場合に分けて考える.(ii) の結果を用いて (i),(iii) を示すので (ii) を先に
示しておく.
(ii) T (1) ≤ y < T (0) のとき (15) は I[T (0),1) (y) = 0,I[0,T (1)) (y) = 0 より
(
) (
)
(
)
1
1
1
1
1
1
ˆ
ˆ
(Lh)(y) = A
+ ··· +
+
+ ··· +
+C
+ ··· +
β1
βj−1
βj
βk−1
βk
βn−1
ˆ 1 | + · · · |Ij−1 |) + (|Ij | + · · · + |Ik−1 |) + C(|I
ˆ k | + · · · + |In |)
= A(|I
ˆ (In )| − |I0 |) + (1 − |T (I0 )| − |T (In )|) + C(|T
ˆ (I0 )| − |In−1 |)
= A(|T
ˆ n | + (Cˆ − 1)|T (I0 )| − A|I
ˆ 0|
= 1 + (Aˆ − 1)|T (In )| − C|I
)
(
)|(|T (I0 )|+|I0 |)
)|(|T (In )|+|In |)
− 1 |T (In )| − |T|T(I(Inn)||T
|I |
= 1 + |T|T(I(In0)||T
(I0 )|−|In ||I0 |
(I0 )|−|In ||I0 | n
(
)
)|(|T (I0 )|+|I0 |)
)|(|T (In )|+|In |)
+ |T|T(I(Inn)||T
− 1 |T (I0 )| − |T|T(I(In0)||T
|I | ((14) より)
(I0 )|−|In ||I0 |
(I0 )|−|In ||I0 | 0
=1+
|T (In )||In |(|T (I0 )|+|I0 |)
n |(|T (I0 )|+|I0 |)
− |T|T(I(Inn)||I
|T (In )||T (I0 )|−|In ||I0 |
)||T (I0 )|−|In ||I0 |
0 |(|T (In )|+|In |)
0 |(|T (In )|+|In |)
+ |T|T(I(I0n)||I
− |T|T(I(I0n)||I
)||T (I0 )|−|In ||I0 |
)||T (I0 )|−|In ||I0 |
=1
(16)
= h(y).
(i) 0 ≤ y < T (1) のとき (15) は I[T (0),1) (y) = 0,I[0,T (1)) (y) = 1 より
(
) (
)
(
)
1
1
1
1
1
1
1
ˆ
ˆ
(Lh)(y) = A
+ ··· +
+
+ ··· +
+C
+ ··· +
+
β1
βj−1
βj
βk−1
βk
βn−1 γ
(
) (
)
(
)
1
1
1
1
1
1
Cˆ
ˆ
ˆ
=A
+ ··· +
+
+ ··· +
+C
+ ··· +
+
β1
βj−1
βj
βk−1
βk
βn−1
γ
Cˆ
=1+
((16) より)
γ
|T (In )|(|T (I0 )| + |I0 |)
|T (In )|
|In |
·
(γ =
および (14) より)
=1+
|T (In )| |T (In )||T (I0 )| − |In ||I0 |
|In |
|In |(|I0 + T (I0 )|)
=1+
|T (In )||T (I0 )| − |In ||I0 |
|T (I0 )|(|T (In )| + |In |)
=
|T (In )||T (I0 )| − |In ||I0 |
= h(y)
27
(iii) T (0) ≤ y < 1 のとき (15) は I[T (0),1) (y) = 1,I[0,T (1)) (y) = 0 より
(
) (
)
(
)
1
1
1
1
1
1
1
(Lh)(y) = Aˆ
+
+ ··· +
+
+ ··· +
+ Cˆ
+ ··· +
α β1
βj−1
βj
βk−1
βk
βn−1
(
) (
)
(
)
1
1
1
Aˆ
1
1
1
= Aˆ
+ ··· +
+
+ ··· +
+ Cˆ
+ ··· +
+
β1
βj−1
βj
βk−1
βk
βn−1
α
Aˆ
=1+
((16) より)
α
|T (I0 )|(|T (In )| + |In |)
|T (I0 )|
|I0 |
·
(α =
および (14) より)
=1+
|T (I0 )| |T (In )||T (I0 )| − |In ||I0 |
|I0 |
|T (In )|(|T (I0 )| + |I0 |)
=
|T (In )||T (I0 )| − |In ||I0 |
= h(y)
となる.以上より任意の y ∈ [0, 1) について
(Lh)(y) = h(y)
となる.よって h(y) は不動点関数である.
5.2
マルコフ過程を用いる方法 (2)
次に j > k の場合を考える.この場合
T (I0 ) ∩ T (In ) = Ik ∪ · · · ∪ Ij−1
(17)
であることに注意する.Is (1 ≤ s ≤ n − 1) から It (1 ≤ t ≤ n − 1) への推移確率は
|It | である.I0 から It (k ≤ t ≤ n) への推移確率は |T|I(It0| )| であり,In から It (0 ≤ t ≤
j−1) への推移確率は |T|I(Itn| )| である.このとき p0 , p1 , · · · pj−1 , pj , · · · , pk−1 , pk , · · · , pn
をマルコフ過程の定常確率とすると以下の等式が成り立つ.
In
I0
.....................
......................
............................
.....
...
......................
...
.
.....
...
..
.
.... ...
... ............. ....................................... .............................. ..................... .........
....
..
. . ....................... .... ... ....................... ... ...
.
...
.
.
...
.
.
.
.
.
.
.... ........... .. .. ... ... ... .. .. ...........
......
.......
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.........
...................................................................................................
.......... ... ... ......... ........ ... ..........
.. .. ..................... ... ........ ... ..... ... ........................ ..
.............................. .................... ..... .... ................... ...........................
... .. ..... ........... .. .. ...... .... ... .... ...
... ... ... ..... ..... ....................... .......... ..... ...
.. ..... .... ..
... ....... ........ ...
...........
... ...... .... ....... ................................ ......... ........... ..... ....
.......
.......
........ ..................... ... ......... ................... ... .... .................. .......... ............ ........... ...........
.
.
...
....... ... ........... ........... ..... ... ... .... ... ............ ......... ....... ...
....
...... . ........... .. ...
.... .. ............. .. ......
...
.
.
.
.
.
.
.
.
...
.
.
.
.
.
....
....
... .. ...... ...... .. .. . .
......
.
.
. .
.....
.........
...........
.........................................................................................................
................. ... ... ..... ..... .... ... ... ..............
......... ...................... .... .... .............................. ........
............. ... .. .................... ......................... .. .............
.... ...
.
..
..........................
...
.. ...................
..
......
......... . ...........
.
.
.
.
.
.......
..
.. ...
....
... .....
...
......
....................
..
......
.....................
♣
♣
♣
I1
In−1
Ik−1
Ij
Ik
♣ ♣♣
28
Ij−1
♣
♣
♣
|I0 |
pn ,
|T (In )|
|I1 |
p1 = |I1 |p1 + |I1 |p2 + · · · + |I1 |pn−1 +
pn ,
|T (In )|
..
.
|Ik−1 |
pk−1 = |Ik−1 |p1 + |Ik−1 |p2 + · · · + |Ik−1 |pn−1 +
pn ,
|T (In )|
|Ik |
|Ik |
p0 + |Ik |p1 + |Ik |p2 + · · · + |Ik |pn−1 +
pn ,
pk =
|T (I0 )|
|T (In )|
..
.
|Ij−1 |
|Ij−1 |
pj−1 =
p0 + |Ij−1 |p1 + |Ij−1 |p2 + · · · + |Ij−1 |pn−1 +
pn ,
|T (I0 )|
|T (In )|
|Ij |
p0 + |Ij |p1 + |Ij |p2 + · · · + |Ij |pn−1 ,
pj =
|T (I0 )|
..
.
|In |
pn =
p0 + |In |p1 + |In |p2 + · · · + |In |pn−1 .
|T (I0 )|
p0 = |I0 |p1 + |I0 |p2 + · · · + |I0 |pn−1 +
p1 , · · · , pn の式に対しそれぞれ |I0 |, |I1 |, · · · , |Ik−1 |, |Ik |, · · · , |Ij−1 |, |Ij |, · · · , |In | で
両辺割ると
p0
pn
= p1 + p2 + · · · + pn−1 +
,
|I0 |
|T (In )|
p1
pn
= p1 + p2 + · · · + pn−1 +
,
|I1 |
|T (In )|
..
.
pk−1
pn
= p1 + p2 + · · · + pn−1 +
,
|Ik−1 |
|T (In )|
p0
pn
pk
=
+ p1 + p2 + · · · + pn−1 +
,
|Ik |
|T (I0 )|
|T (In )|
..
.
pj−1
p0
pn
=
+ p1 + p2 + · · · + pn−1 +
,
|Ij−1 |
|T (I0 )|
|T (In )|
p0
pj
=
+ p1 + p2 + · · · + pn−1 ,
|Ij |
|T (I0 )|
..
.
p0
pn
=
+ p1 + p2 + · · · + pn−1
|In |
|T (I0 )|
29
(18)
(19)
(20)
となる.これより
p1
pk−1
p0
=
= ··· =
,
|I0 |
|I1 |
|Ik−1 |
pk
pj−1
= ··· =
,
|Ik |
|Ij−1 |
pj
pn
= ··· =
|Ij |
|In |
がわかる.ここで
A=
p0
p1
pk−1
=
= ··· =
,
|I0 |
|I1 |
|Ik−1 |
B=
pk
pj−1
= ··· =
,
|Ik |
|Ij−1 |
C=
pj
pn
= ··· =
|Ij |
|In |
とおくと (18)(19)(20) より
|I0 |
p0
|I0 |
p0
=
·
=
A
T (I0 )
|T (I0 )| |I0 |
|T (I0 )|
pn
|In |
pn
|In |
B−C =
=
·
=
C
|T (In )|
|T (In )| |In |
|T (In )|
B−A=
(21)
(22)
となる.
(21),(22) を変形すると
)
(
|T (I0 )| + |I0 |
|I0 |
A=
A
B = 1+
|T (I0 )|
|T (I0 )|
)
(
|T (In )| + |In |
|In |
C=
C
B = 1+
|T (In )|
|T (In )|
となるので
A=
|T (I0 )|
B,
|T (I0 )| + |I0 |
C=
|T (In )|
B
|T (In )| + |In |
と表せる.すなわち
A:B:C=
|T (I0 )|
|T (In )|
:1:
|T (I0 )| + |I0 |
|T (In )| + |In |
を得る.ここで
h(y) =
|T (In )|
|T (I0 )|
II0 ∪···∪Ik−1 (y) + IIk ∪···∪Ij−1 (y) +
II ∪···∪In (y)
|T (I0 )| + |I0 |
|T (In )| + |In | j
(23)
と定める.
命題 5. h(y) は T (x) に対する Perron-Frobenius 作用素 L の不動点関数である.
証明. 簡単のため
A˜ =
|T (I0 )|
,
|T (I0 )| + |I0 |
C˜ =
30
|T (In )|
|T (In )| + |In |
(24)
とおく.さらに G(x) = T (x) +
∑n
i=0
iIIi (x) と定める.
n + T (1)
n
n−1
···
2
1
0
1
I0 I1 In−1In
G(x) のグラフ
(7) に (24) を代入すると
)
(
= α1 A˜ · II0 ∪···∪Ik−1 (x0 ) + IIk ∪···∪Ij−1 (x0 ) + C˜ · IIj ∪···∪In (x0 ) I[T (0),1) (y)
)
(
1
˜
˜
+ β1 A · II0 ∪···∪Ik−1 (x1 ) + IIk ∪···∪Ij−1 (x1 ) + C · IIj ∪···∪In (x1 )
..
.
(
)
+ γ1 A˜ · II0 ∪···∪Ik−1 (xn ) + IIk ∪···∪Ij−1 (xn ) + C˜ · IIj ∪···∪In (xn ) I[0,T (1)) (y)
(
)
= α1 A˜ · I[G(0),G(ak )) (0 + y) + I[G(ak ),G(aj )) (0 + y) + C˜ · I[G(aj ),G(an+1 )) (0 + y) I[T (0),1) (y)
(
)
+ β11 A˜ · I[G(0),G(ak )) (1 + y) + I[G(ak ),G(aj )) (1 + y) + C˜ · I[G(aj ),G(an+1 )) (1 + y)
..
.
31
(
)
+ γ1 A˜ · I[G(0),G(ak )) (n + y) + I[G(ak ),G(aj )) (n + y) + C˜ · I[G(aj ),G(an+1 )) (n + y) I[0,T (1)) (y)
(
)
1
˜
˜
= α A · I[T (0),k)) (0 + y) + I[k,j) (0 + y) + C · I[j,n+T (1))) (0 + y) I[T (0),1) (y)
(
)
+ β11 A˜ · I[T (0),k) (1 + y) + I[k,j) (1 + y) + C˜ · I[j,n+T (1)) (1 + y)
= A˜
(
+
1
γ
..
.
(
)
A˜ · I[T (0),k) (n + y) + I[k,j) (n + y) + C˜ · I[j,n+T (1)) (n + y) I[0,T (1)) (y)
1
I
(0
α [T (0),k))
(
+
+ y)I[T (0),1) (y) +
1
I
(1
β1 [T (0),k)
+ y) + · · ·
1
+ βn−1
I[T (0),k) (n − 1 + y) + γ1 I[T (0),k) (n + y)I[0,T (1)) (y)
1
I
(0
α [k,j))
+ y)I[T (0),1) (y) +
1
I (1
β1 [k,j)
+ y) + · · ·
+ βn−1 I[k,j) (n − 1 + y) +
1
+ C˜
(
1
I
(0
α [j,n+T (1))
+ y)I[T (0),1) (y) +
1
I
(1
β1 [j,n+T (1))
1
I (n
γ [k,j)
)
+ y)I[0,T (1)) (y)
+ y) + · · ·
+ βn−1 I[j,n+T (1)) (n − 1 + y) +
1
)
1
I
(n
γ [j,n+T (1))
)
+ y)I[0,T (1)) (y) .
第 1 項において T (0) ≤ y < 1 ≤ k より
I[T (0),k)) (0 + y)I[T (0),1) (y) = I[T (0),1) (y).
k < n より I[T (0),k) (n + y) = 0 である.0 ≤ l + y < k を満たす整数 l は l =
0, 1, · · · , k − 1 である.よって第 1 項は
(
)
1
1
1
A˜
I[T (0),1) (y) +
+ ··· +
α
β1
βk−1
となる.第 2 項においては 0+y < k より I[k,j) (0+y) = 0,k < n より I[k,j) (n+y) = 0
である.よって第 2 項は
1
1
+ ··· +
βk
βj−1
となる.第 3 項では l = j, · · · , n − 1 について I[j,n+T (1)) (l + y) = 1 である.また
I[j,n+T (1)) (n+y) = 1 ⇔ I[0,T (1)) (y) = 1 である.(証明.
(⇒) j ≤ n+y < n+T (1) ⇔
j − n ≤ 0 ≤ y < T (1). (⇐) 0 ≤ y < T (1) ⇔ j ≤ n ≤ n + y < n + T (1)) よって
第 3 項は
)
(
1
1
1
˜
+ ··· +
+ I[0,T (1)) (y)
C
βj
βn−1 γ
となる.したがって (Lh)(y) は
(
)
1
1
1
(Lh)(y) = A˜
I[T (0),1) (y) +
+ ··· +
α
β1
βk−1
32
(
+
1
1
+ ··· +
βk
βj−1
)
(
+ C˜
)
1
1
1
+ ··· +
+ I[0,T (1)) (y)
βj
βn−1 γ
(25)
となる.この (Lh)(y) を (i) 0 ≤ y < T (1),(ii) T (0) ≤ y < T (1),(iii) T (0) ≤ y < 1
の 3 つの場合に分けて考える.(ii) の結果を用いて (i),(iii) を示すので (ii) を先に
示しておく.
(ii) T (0) ≤ y < T (1) のとき (25) は I[T (0),1) (y) = 1,I[0,T (1)) (y) = 1 より
)
(
) (
)
(
1
1
1
1
1
1
1
1
(Lh)(y) = A˜
+
+ ··· +
+
+ ··· +
+ C˜
+ ··· +
+
α β1
βk−1
βk
βj−1
βj
βn−1 γ
˜ 1 + |I1 | + · · · |Ik−1 |) + (|Ik | + · · · + |Ij−1 |) + C(|I
˜ j | + · · · + |In−1 | + 1 )
= A(
α
γ
(
)
1
= A˜
+ 1 − |T (I0 )| − |I0 |
α
(
)
1
+ (|T (I0 )| + |T (In )| − 1) + C˜
+ 1 − |T (In )| − |In |
((17) に注意する)
γ
(
)
(
)
1
1
˜
˜
˜ (I0 )| − A|I
˜ 0 | + (1 − C)|T
˜ (In )| − C|I
˜ n|
= −1 + A
+1 +C
+ 1 + (1 − A)|T
α
γ
|T (I0 )|
|T (I0 )| + |I0 |
|T (In )|
|T (In )| + |In |
= −1 +
·
+
·
|T (I0 )| + |I0 |
|T (I0 )|
|T (In )| + |In |
|T (In )|
(
)
|T (I0 )| + |I0 | − |T (I0 )|
|T (I0 )||I0 |
+
|T (I0 )| −
|T (I0 )| + |I0 |
|T (I0 )| + |I0 |
(
)
|T (In )| + |In | − |T (In )|
|T (In )||In |
+
|T (In )| −
|T (In )| + |In |
|T (In )| + |In |
|T (I0 )|
|T (In )|
(α =
,γ =
および (24) より)
|I0 |
|In |
= −1 + 1 + 1 + 0 + 0
=1
(26)
= h(y).
(i) y < T (0) のとき (25) は I[T (0),1) (y) = 0,I[0,T (1)) (y) = 1 より
) (
)
(
(
)
1
1
1
1
1
1
1
+ ··· +
+
+ ··· +
+ C˜
+ ··· +
+
(Lh)(y) = A˜
β1
βk−1
βk
βj−1
βj
βn−1 γ
(
)
A˜
1
1
1
˜
=− +A
+
+ ··· +
α
α β1
β
(
) k−1(
)
1
1
1
1
1
+
+ ··· +
+ C˜
+ ··· +
+
βk
βj−1
βj
βn−1 γ
A˜
=1−
((26) より)
α
33
|I0 |
|T (I0 )|
·
|T (I0 )| |T (I0 )| + |I0 |
|I0 |
=1−
|T (I0 )| + |I0 |
|T (I0 )|
=
|T (I0 )| + |I0 |
=1−
= h(y).
(iii) T (1) < y のとき (25) は I[T (0),1) (y) = 1,I[0,T (1)) (y) = 0 より
(
) (
)
(
)
1
1
1
1
1
1
1
(Lh)(y) = A˜
+
+ ··· +
+
+ ··· +
+ C˜
+ ··· +
α β1
βk−1
βk
βj−1
βj
βn−1
(
)
˜
C
1
1
1
= − + A˜
+
+ ··· +
γ
α β1
β
(
) k−1(
)
1
1
1
1
1
+
+ ··· +
+ C˜
+ ··· +
+
βk
βj−1
βj
βn−1 γ
C˜
=1−
((26) より)
γ
|In |
|T (In )|
=1−
·
|T (In )| |T (In )| + |In |
|In |
=1−
|T (In )| + |In |
|T (In )|
=
|T (In )| + |In |
= h(y)
となる.以上より任意の y ∈ [0, 1) について
(Lh)(y) = h(y)
となる.よって h(y) は不動点関数である.
5.3
マルコフ過程を用いる方法 (3)
最後に j = k の場合を考える.この場合,Lh = h の証明において (16), (26) 式
にある「= 1」の部分がないので,今までの証明を見直す必要がある.命題 4 にお
いて j = k と考えると,p0 , p1 , · · · pk−1 , pk , · · · , pn をマルコフ過程の定常確率とす
るときに成り立つ等式は
p0 = |I0 |p1 + |I0 |p2 + · · · + |I0 |pn−1 +
34
|I0 |
pn ,
|T (In )|
p1 = |I1 |p1 + |I1 |p2 + · · · + |I1 |pn−1 +
|I1 |
pn ,
|T (In )|
..
.
pk−1 = |Ik−1 |p1 + |Ik−1 |p2 + · · · + |Ik−1 |pn−1 +
pk =
|Ik−1 |
pn ,
|T (In )|
|Ik |
p0 + |Ik |p1 + |Ik |p2 + · · · + |Ik |pn−1 ,
|T (I0 )|
..
.
pn =
|In |
p0 + |In |p1 + |In |p2 + · · · + |In |pn−1 ,
|T (I0 )|
である.p1 , · · · , pn の式に対しそれぞれ |I0 |, |I1 |, · · · , |Ik−1 |, |Ik |, · · · , |In | で両辺割
ると
p0
pn
= p1 + p2 + · · · + pn−1 +
,
|I0 |
|T (In )|
p1
pn
= p1 + p2 + · · · + pn−1 +
,
|I1 |
|T (In )|
..
.
pn
pk−1
= p1 + p2 + · · · + pn−1 +
,
|Ik−1 |
|T (In )|
pk
p0
=
+ p1 + p2 + · · · + pn−1 ,
|Ik |
|T (I0 )|
..
.
pn
p0
=
+ p1 + p2 + · · · + pn−1
|In |
|T (I0 )|
となる.これより
p0
p1
pk−1
=
= ··· =
,
|I0 |
|I1 |
|Ik−1 |
pk
pn
= ··· =
|Ik |
|In |
p1
pk−1
p0
=
= ··· =
,
|I0 |
|I1 |
|Ik−1 |
C=
がわかる.ここで
A=
pk
pn
= ··· =
|Ik |
|In |
とおくと (27)(28) より
pn
p0
−
|T (In )| |T (I0 )|
pn
|I0 |
p0
|In |
·
−
·
=
|T (In )| |In | |T (I0 )| |I0 |
|In |
|I0 |
=
C+
A
|T (In )|
|T (I0 )|
A−C =
35
(27)
(28)
となる.この式を変形すると
(
)
(
)
|T (I0 )| + |I0 |
|T (In )| + |In |
A=
C
|T (I0 )|
|T (In )|
となるので
A:C=
h(y) =
|T (In )| + |In | |T (I0 )| + |I0 |
:
.
|T (In )|
|T (I0 )|
|T (In )| + |In |
|T (I0 )| + |I0 |
II0 ∪···∪Ik−1 (y) +
IIk ∪···∪In (y)
|T (In )|
|T (I0 )|
(29)
と定める.
命題 6. h(y) は T (x) に対する Perron-Frobenius 作用素 L の不動点関数である.
証明. 簡単のため
|T (In )| + |In |
Aˇ =
,
|T (In )|
|T (I0 )| + |I0 |
Cˇ =
|T (I0 )|
(30)
とおくと,
(
1
1
1
(Lh)(y) = Aˇ
I[T (0),1) (y) +
+ ··· +
α
β1
βk−1
)
(
+ Cˇ
1
1
1
+ ··· +
+ I[0,T (1)) (y)
βk
βn−1 γ
(31)
)
となる ( この式は (15)(25) 式で右辺の第 2 項を除いた式である ).この Lh を (i) 0 ≤
y < T (1),(ii) T (1) ≤ y < 1 の 2 つの場合に分けて考える.
(i) 0 ≤ y < T (1) のとき (31) は I[T (0),1) (y) = 0,I[0,T (1)) (y) = 1 より
(
)
(
)
1
1
1
1
1
(Lh)(y) = Aˇ
+ ··· +
+ Cˇ
+ ··· +
+
β1
βk−1
βk
βn−1 γ
(
)
1
ˇ
ˇ
= A (|T (In )| − |I0 |) + C |T (I0 )| − |In | +
γ
(
)
|T (I0 )| + |I0 |
|In |
|T (In )| + |In |
(|T (In )| − |I0 |) +
|T (I0 )| − |In | +
=
|T (In )|
|T (I0 )|
|T (In )|
|I0 |(|T (In )| + |In |)
= |T (In )| + |In | −
+ |T (I0 )| + |I0 |
|T (In )|
|In |(|T (I0 )| + |I0 |) |In |(|T (I0 )| + |I0 |)
−
+
|T (I0 )|
|T (In )||T (I0 )|
|I0 |(|T (In )| + |In |) |In |(|T (I0 )| + |I0 |) |In |(|T (I0 )| + |I0 |)
= 1 + (|In | + |I0 |) −
−
+
|T (In )|
|T (I0 )|
|T (In )||T (I0 )|
(|T (In )| + |T (I0 )| = 1 より)
36
|T (In )||T (I0 )|(|In | + |I0 |) |T (I0 )||I0 |(|T (In )| + |In |)
−
|T (In )||T (I0 )|
|T (In )||T (I0 )|
|T (In )||In |(|T (I0 )| + |I0 |) |In |(|T (I0 )| + |I0 |)
−
+
|T (In )||T (I0 )|
|T (In )||T (I0 )|
|In |(|T (I0 )| + |I0 |) − |In ||I0 |(|T (In )| + |T (I0 )|)
=1+
|T (In )||T (I0 )|
|In |
=1+
|T (In )|
|T (In )| + |In |
=
|T (In )|
=1+
= h(y).
(ii) T (1) ≤ y < 1 のとき (31) は I[T (0),1) (y) = 1,I[0,T (1)) (y) = 0 より
(
(
)
)
1
1
1
1
1
ˇ
ˇ
(Lh)(y) = A
+
+ ··· +
+C
+ ··· +
α β1
βk−1
βk
βn−1
)
(
)
(
1
Aˇ Cˇ
1
1
1
1
+ ··· +
+ Cˇ
+ ··· +
+
+ −
= Aˇ
β1
βk−1
βk
βn−1 γ
α
γ
ˇ
ˇ
|T (In )| + |In | C A
=
− +
((32) より)
|T (In )|
γ
α
(
)
|T (In )| + |In |
|In |
|I0 |
|I0 |
|T (In )| + |In |
=
−
1+
+
·
|T (In )|
|T (In )|
|T (I0 )|
|T (I0 )|
|T (In )|
(
)
(
)
|T (In )| + |In |
|I0 |
|In |
|I0 |
= 1+
−
1+
|T (I0 )|
|T (In )|
|T (In )|
|T (I0 )|
|I0 |
=1+
|T (I0 )|
|T (I0 )| + |I0 |
=
|T (I0 )|
= h(y)
となる.以上より任意の y ∈ [0, 1) について
(Lh)(y) = h(y)
となる.よって h(y) は不動点関数である.
以上の結果をまとめれば次の定理を得る.
定理 1. T (x) は,
T (I0 ) = Ik ∪ · · · ∪ In ,
T (In ) = I0 ∪ · · · ∪ Ij−1
37
(32)
を満たすマルコフ変換とする.T に対応する Perron-Frobenius 作用素を L とする
とき以下が成り立つ.
(i) j < k のとき
h(y) =
|T (I0 )|(|T (In )|+|In |)
)|(|T (I0 )|+|I0 |)
I
(y)+IIj ∪···∪Ik−1 (y)+ |T|T(I(Inn)||T
I
(y)
|T (In )||T (I0 )|−|In ||I0 | I0 ∪···∪Ij−1
(I0 )|−|In ||I0 | Ik ∪···∪In
は L の不動点関数である.
(ii) j > k のとき
h(y) =
|T (I0 )|
|T (In )|
II0 ∪···∪Ik−1 (y) + IIk ∪···∪Ij−1 (y) +
II ∪···∪In (y)
|T (I0 )| + |I0 |
|T (In )| + |In | j
は L の不動点関数である.
(iii) j = k のとき
h(y) =
|T (In )| + |In |
|T (I0 )| + |I0 |
II0 ∪···∪Ik−1 (y) +
IIk ∪···∪In (y)
|T (In )|
|T (I0 )|
は L の不動点関数である.
定理 1 の証明を見れば,α, βi , γ は必ずしも正である必要がないことが分かる.す
なわち X = [0, 1) 上の関数 T˜(x) を以下で定める:


αx + (1 − αa1 )





β1 (x − a1 )




..



.
T˜(x) = βi (x − ai )


..


.






βn−1 (x − an−1 )




γ(x − an )
ただし,
|α| <
1
,
|I0 |
|βi | =
(x ∈ I0 )
(x ∈ I1 )
(x ∈ Ii )
(x ∈ In−1 )
(x ∈ In )
1
, i = 1, 2, · · · , n − 1,
|Ii |
である.
38
|γ| <
1
|In |
1
···
0 I
0
In−1
I1
In
1
このとき以下が成り立つ.
系 1. T˜ (x) が T˜(I0 ) = Ik ∪ · · · ∪ In ,
換のとき
T˜(In ) = I0 ∪ · · · ∪ Ij−1 を満たすマルコフ変
(i) j < k のとき
h(y) =
|T (I0 )|(|T (In )|+|In |)
)|(|T (I0 )|+|I0 |)
I
(y)+IIj ∪···∪Ik−1 (y)+ |T|T(I(Inn)||T
I
(y)
|T (In )||T (I0 )|−|In ||I0 | I0 ∪···∪Ij−1
(I0 )|−|In ||I0 | Ik ∪···∪In
は T˜ (x) の不変測度を与える.
(ii) j > k のとき
h(y) =
|T (I0 )|
|T (In )|
II0 ∪···∪Ik−1 (y) + IIk ∪···∪Ij−1 (y) +
II ∪···∪In (y)
|T (I0 )| + |I0 |
|T (In )| + |In | j
は T˜ (x) の不変測度を与える.
(iii) j = k のとき
h(y) =
|T (I0 )| + |I0 |
|T (In )| + |In |
II0 ∪···∪Ik−1 (y) +
IIk ∪···∪In (y)
|T (In )|
|T (I0 )|
は T˜ (x) の不変測度を与える.
39
参考文献
[1] A. Lasota and J. A. Yorke: On the existence of invariant measures for piecewise
monotonic transformations, Trans. Amer. Math. Soc., Vol. 186 (1973), pp. 481488.
[2] C. E. Silva: Invitation to ergodic theory, American Mathematical Society
(2007).
[3] H. Yaguchi and I. Kubo: A new nonrecursive pseudorandom number generator
based on chaos mappings, Monte Carlo Methods Appl., vol. 14 (2008), pp. 8598.
[4] 久保泉, 矢野公一: 力学系, 岩波書店 (2006).
[5] 谷口礼偉, 高嶋恵三, 上田澄江: 新しい非再帰型擬似乱数生成法とその応用, 統
計数理研究所共同リポート 235 (2010).
40