道 元 と スピ ノザ の ﹁自 己 ﹂ に つい て (笠 井) 道 元 と ス ピ ノ ザ の ﹁自 己 ﹂ に つ い て 八四 貞 が 自 己 の内 に あ り、 自 己 と世 界 の事 物 と は別 物 で は な い。 一 井 道 元 (1200-1と 2ス 5ピ 3) ノザ (1632-1 と6は 7、 7時 ) ・処 ・ 切 は縁 起 と し て存 在 し、 一即 一切 ・ 一切 即 一であ る。 依 正 不 笠 思 想 基 盤 等 が 異 な る が、 ﹁自 己 ﹂ の 問 題 の対 比 を 中 核 に し 存 在 し、 自 己 も時 を離 れ て は あ り 得 な い。 そ れ故 に自 己 即時 二 であ り、 自 己 即世 界 で あ る。 世 界 の 一切 の事物 は時 と共 に 道 元 に お い て、 人 間 の 構 成 は 五纏 に よ り、 人 間存 在 は 六 であ る。道 元 に お い て、 存 在 と時 と 自 己 と は 一如 であ る。 自 て、 両 思 想 家 の特 徴 を検 尋 し た いと 思 う。 根 ・六境 ・六 識 の十 八界 に よ る の で あ り、 これ ら は 無 自 性 で る。 行 仏 た る仏 が、 道 元 に お け る 自 己 そ のも のであ る。 行 仏 己 は 行 仏 と し て、 仏 と し て の行 を 日 常 の行 為 ・行 動 に実 現 す の威 儀 は、 人 法 不 二 であ る か ら、 独 立 無 伴 ・無磯 自 在 の境 涯 あ る。 そ れ故、 自 己 は不 変 の実 体 で は なく、 縁 起 によ って存 に反 対 し て、 肉 体 と精 神 と の 不 二、 即 ち 身 心 一如 を 主 張 す 在 す る。 五纏 は刹 那 生 滅 ・刹 那無 常 であ る。 心 常 身 滅 の見 解 で あ り、 そ こで自 己 と法 と 仏 と は 一如 であ る。 証 に即 す る修 ﹃正法 眼 蔵 ﹄ の ﹁三 十 七 品 菩 提 分 法 ﹂ に お い て、 七 等 覚 が現 わ れ て、 行 じら れ る 所 に、 生 仏 一如 ・仏性 が現 成 す る。 す。 自 己 は自 己、 他 己 は 他 己 であ るが、 自 他 は 相依 相 関 に お 支、﹂即 ち菩 提 の成 就 へと 導 く 七 種 の法 を、 道 元 は次 のよ う に る。 この身 心 一如 と し て の自 己 が、 個 別 的 自 己 で あ り、 慮 知 い てあ る。 自 他 を 対 立 さ せ て、 自 己 だ け に執 著 す る の が、 道 説 く。 慧 によ って法 の真 偽 を 択 ぶ ﹁択 法 覚 支 ﹂ は、 毫 驚 も 差 本 来 的自 己、 真 実 の自 己 た る仏 性 は行 仏 に顕 わ れ る。 元 の言 う 吾 我 であ る。 悪 の根 源 た る我 執 か ら の離 脱 に よ り、 あ れ ば天 地 懸 隔 と な る か ら、 至 道 は難 易 を 超 え た も の で あ を用 い て、 感 応 道 交 に よ り、 自 未 得 度先 度 佗 の 菩 提 心 を 発 自 他 一如 が 成 立 す る。 ま た 自 己 は尽 天 地 ・尽 十 方 界 であ る。 り、 定 慧 均 等 の慧 で棟 択 す る こ と が 必要 な だ け で あ る と 言 念 覚 を持 って い る。 慮 知 心 が 即 ち菩 提 心 では な いが、 慮 知 心 世 界 は自 己 の対 象 と し て対 立 し てあ る ので なく、 世 界 の 一切 -569- 擬 自 在 な救 度 衆 生 は、 臓 雪 梅 花先 漏泄、 来 春消 息 大家 寒 で あ く な り、 歓 喜 す る こと に な る。 千 手観 音 は 甚 だ 忙 し いが、 無 は、 老 婆 心 切、 血 滴 滴 な り、 と す る。 菩 提 心 に よ り 吾我 が な く 修 行 精 進 す る。 し か も 常 住 無 間断 の精 進 で あ る。 ﹁喜 覚 支 ﹂ にあ る無 理 な 売 買 のよ う な 無 理 な精 進 で な く、 各 人 に 相応 し う。 ﹁精 進 覚 支 ﹂ を、 不 曾 擁 奪 行 市 と響 え る。 こ の 玄 沙 の 話 あ る。 更 に そ れ は 真 実 の自 己 に と って離 れ る こと ので き な い事 柄 で は 菩提 資 糧、 即 ち 真実 の自 己 に 目覚 め る 要件 に 外 な ら な い。 る と 言 う。 仏 祖 と は、 仏 道 修 行 中 の 人 間 で あ る。 菩提 分 法 と 七 品 菩提 分 法 は、 仏 祖 の眼晴 鼻 孔、 皮 肉 骨髄、 手足 面 目 で あ し、 獅 子 窟 中 に獅 子 吼 す る と言 う。 以 上 の 七覚 支 を含 む 三 十 ま り無 功 用 の功用 で あ る。 そ れ で も な お、 栴 檀 林 裏 に栴 檀 熱 スピ ノ ザ る が、 活 鰹 鰻 だ か ら 笑呵 呵 で あ る。 鑛 重 を 断 除 し て、 身 心 の 軽 安 を得 る こと故、 軽 安覚 支 と も 称 す る ﹁除 覚 支 ﹂ を 次 のよ にお け る個 物 と し て の人 間 の自 己 とは 何 う に 言 う。 自 己 は 自 已 に非 ず と 脱落 し、 ま た 人 に 群 せ ず、 他 己 を脱 落 す る。 そ れ故 に我 得 爾 不得、 つま り 我 得 の時 は禰 不 か。 人 間 は 精 神 と 身 体 か ら 成 る。 そ し て人 間 の身体 は、 我 々 観 念 の対 象 は 身 体 であ り、 現 実 に存 在 す る 身 体 で あ る。 身 体 が 感 知 す る通 り に 存 在 し て いる と言 う。 人 間 精 神 を構 成 す る の存 在 を 離 れ て精 神 は 存 在 す る こと が で き な い。 ス ピ ノ ザ る。 灼 然 と道 著 す る な ら ば、 異 類 中 行 で あ る、 と。 一切 の執 著 を捨 て、 固 定 観 念 を離 れ る ﹁捨 覚 支 ﹂ を、 道 元 は、 た と え は、 諸 観 念 の秩 序 及 び 連 結 は、 諸 物 の秩 序 及 び連 結 と 同 じ で 得 で、 禰 得 の時 は 我 不 得 で、 自 己 と 他 己 と は 一法究 尽 で あ 己 の歩 き 方 を 学 び、 ま た ペ ル シア 人 は 自 己 の国 に あ る 象 牙 を あ る と し て、 精 神 と 身 体 の 関 係 に つ い て、 心身 平 行 論 を と 将 来 す とも ま た 受 け じ、 で あ る と説 く。 唐 人 は 自 己 の足 で 自 求 め て使 う。 即 ち有 る も の を外 に求 め よ う は し な いと 言 う の 一定 の仕 方 で存 在 し 作 用 す る よ う決 定 さ れ、 そ し て こ の原 因 る。 さ て 一切 の個 物 は、 人 間 の身 体 と 同様 に、 他 の個 物 か ら も 同 様 に 有 限 で定 ま った存 在 を持 つ他 の 原因 か ら存 在 し 作 用 であ る。 禅定 に よ り、 心を 集 中 さ せ て平 静 に な る ﹁定 覚 支 ﹂ す る。 従 っ て自 家 鼻 孔 自 家 穿 で、 自 家 把 索 自 家 牽 で あ る。 に て無 限 に 至 る。 要 す る に、 一切 の個 物 は偶 然 的 で 可滅 的 な の す る よ う に 決定 さ れ る の でな け れ ば な ら な い。 この よ う に し を、 本 来 の面 目 を 保 ち、 真 実 の自 己 が出 現 す る状 態 で あ る と も拘 ら ず、 そ れ は 牧 得 一頭 水 枯 牛 で、 本 来 の自 己 を自 在 に活 八五 であ る。 可滅 的 で あ る と いう こと は、 有 限 な存 在 であ る と い か す こと が で き る と 言 う。 ﹁念 覚 支 ﹂ は、 露 柱 歩 空 行 であ る。 井) 即 ち 有 相無 相 を 離 れ た 悟 境 であ る が 故 に、 口似 椎 眼 如眉、 つ 道 元 と スピ ノザ の ﹁自 己﹂ に つい て (笠 -570- は無 限 な神 だ け とす る。 スピ ノザ の神 と は、 絶対 無 限 な 存 在 あ る限 り 無 限 の内 に吸 収 さ れ、 存 在 す るも の、 自 存 的 な 実 在 なも の に よ って与 え ら れね ば な ら な い。有 限 な も のは有 限 で う こと であ る。 有 限 な も のた る個 物 の存 在 そ のも のは、 無 限 質 と し て認 識 作 用 を 表 す 観 念 の別 名 であ り、 結 局、 意 志 と知 は 意 志 と 名 付 け ら れ る。 スピ ノザ に よ れ ば、 意 志 は精 神 の本 伴 った 衝 動 で あ る。 自 存 力 が 精 神 だ け に 関 係 づ け ら れ る際 に 動 と呼 ば れ る。 欲 望 は 多 く は 人 間 に 対 し て用 いら れ、 意 識 を あ る。 自 存 力 が 精 神 と 身 体 に 同時 と 関係 づ け ら れ る 際 には 衝 本 質 に 外 な ら な いと す る。 物 体 の 場 合、 そ れ は 慣 性 の法 則 で 八六 者、 即 ち各 々が 永 遠 ・無 限 の本 質 を 表 し て い る無 限 の諸 属 性 性 は 同 一な の であ る。 そ れが な け れば 人 間 は自 己 の存 在 を 維 井) から 成 り 立 つ実 体 であ る。 神 は唯 一不 可 分 であ り、 必 然 的 に 持 でき な い自 存 力 は、 神 か ら 与 え ら れた も の であ る。 スピ ノ 道 元 と スピ ノ ザ の ﹁自 己﹂ に つ いて (笠 の本 質 が存 在 を 包 含 す る自 己原 因 た る神 は、 万 物 の動 力 因、 ザは欲望 存 在 す る。 神 は そ の本 性 の必 然 性 だ け か ら 存 在 し、 働 く。 そ 動、 意 志 の働 き を 理 解 し て い る。 この欲 望 が各 人 の本 性 ( na- (cupid のi 名t称aで s、 )人 間 の あ ら ゆ る 自 存 力、 衝 第 一原 因、 自 由 原 因、 存 在 の原 因、 内 在 的 原 因 であ る。 在 る t ur a)或 は 本 質 (esseそ nの tも iの a) で あ る と す る。 自 存 力 は いて、 そ れは 自 由 意 志 とか 絶 対 の恩 恵 か ら で なく、 神 の絶 対 も の はす べ て神 の内 に在 る。 一切 の事 物 は神 から 予 定 さ れ て 神 な し には 何 も の の在 り 得 な い し、 ま た考 えら れ も でき な 考 え ら れ な い と し て、 これを スピ ノザ は 倫 理 学 の原 理 と し て 原 理 も 考 え ら れず、 又 この原 理 な しに は 如 何 な る原 理 も徳 も 徳 の第 一で唯 一の基 礎 であ り、 こ の原 理 よ り 先 に は 如何 な る いとす る スピ ノザ にお い て、 個 物 た る 人 間 は、 実 体 (神) の い る。 主 知 主 義 ・理 性 論 の立 場 を と る スピ ノ ザ に に お け る 自 的本 性 或 は無 限 の能 力 か ら であ る と言 う。 有 限 な様 態 と さ れ る。 個 物 は、 神 の属 性 の変 容、 或 は神 の属 存 力 の純 化 は 即 ち自 存 力 の理 性 化 に外 な ら な い。 自 己 の感 情 又 は意 見 だ け に導 か れ て い る人 間 を スピ ノザ は 性 を 或 る定 ま った 仕 方 で表 さ れ る様 態 に外 なら な い。 従 って 奴 隷 と呼 び、 理 性 の導 き によ ってだ け 生 き る者 を自 由 人 ( ho- 神 自 身 及 び万 物 が、 そ れ によ って存 在 し、 働 き を す る神 の能 力 は、 神 の本 質 そ のも の であ る。 存 在 す る 一切 のも の は、 神 い て は、 本 性 で 一致 す る と言 わ れ 得 な いと す る。 統 御 ・抑 制 mol i ber ) と 呼 ぶ。 人 間 が 受 動 感情 に屈 従 し て い る 限 り に お さ れ る べき 自 己 の受 動 感 情 を 支 配 でき な い人 は、 感 覚 的或 は の本 性、 或 は 神 の本 質 を 一定 の仕 方 で表 し て い る の であ る。 執 す る こと に 努 力 す る。 一切 の事 物 が 自 己 の存 在 に固 執 し ょ 漠 然 と した 経 験 の認 識 た る ﹁想 像 知 ﹂ ( i magi nat i o) で 物 を 見 と こ ろ で個 物 は、 それ 自 体 の力 の及 ぶ限 り、 自 己 の存 在 に固 うと 努 め る ﹁自 存 力 ﹂ (conatはu、s事 )物 そ の も の の 現 実 的 -571- て い る の であ る。 そ れ に 対 し て、 自由 人、 即 ち ﹁理 性 ﹂ (r a- 一切 の事 物 を 道 元 は、 ﹁法 の相 の下 で ﹂ 観 る。 法 は 空 ・縁 る。 スピ ノザ に よ れ ば、 我 々は個 物 の本 質 を より 多 く 認 識 す と であ る。 直 観 知 は 理 性 を 基 盤 に し て生 じ、 理 性 を 超 え て い 高 の徳 は ﹁直 観 知 ﹂ ( sci enta mt uitiに vよ a) って 認 識 す る こ れ な い の で、 自 由 であ る。 さ て、 精 神 の最 高 の自 存 力 及 び最 る。 理 性 の立 場 で は、 人 間 精 神 は自 己 以外 の も のか ら 制 約 さ 自 己 は自 己 の理 由、 行 為 の原 因 を知 る こと が でき な い の であ の徳 を知 ら な い。自 存 力 が 想像 知 に お い て肯定 さ れ る限 り、 自 己 を知 ら な い人 は、 一切 の徳 の基 礎 を 知 ら ず、 従 って 一切 導 き に従 って自 己 の存 在 を保 持 す る こと で あ る。 そ れ故 に、 他 人 のた め に も 欲 す る で あ ろ う。 徳 の第 一の基 礎 は、 理 性 の 実 ・高 貴 で あ る。 徳 に従 う 各 人 は、 自 己 のた め に求 め る善 を 成立する知性た る慧 ( 般若) に よ って、 吾 我 を 離 れ、 法 を 得 身 平 行 論 であ る。 道 元 に お け る 自 己 は、 戒 と定 と に基 づ い て て、 道 元 は 身 心 一如、 スピ ノザ は 心身 合 一的 だ が、 一種 の 心 に お い ては 実 体 の様 態 であ る。 精 神 と身 体 と の 関 係 に つ い 性 を 宿 し て いる。 自 己 は、 道 元 に お い て は無 実 体、 スピ ノザ の自 己 を 追 求 し た。 道 元 の自 己 は 仏 性、 スピ ノザ の自 己 は神 スピ ノザ は 日常 生 活 の空 虚、 停 さ の経 験 か ら、 両 者 共 に真 実 の思 想 と は 根 本 が 異 な る。 し か し道 元 は観 無 常 の体 験 から、 論 を 形 成 した。 スピ ノザ は 実 体 と し て の神 を置 く から、 道 元 哲 学 の根 砥 に堅 持 し、 ギ リ シ ア系 哲 学 の自 然 と結 合 し て汎 神 人、 スピ ノザ は、 聖 書 に由 来 す る唯 一の超 越 神 を内 在 化 し て を 認 識 す る の であ る。 真 に神 の存 在 を 確 信 し て い た ユダ ヤ 起 で あ り、 法 を 観 る のは 般 若 に よ る。 スピ ノ ザ は、 ﹁永 遠 の れば、 神 を そ れ だ け 多 く 理 解 す る。 個 物 は 有 限 では あ る が、 て、 仏、 即 ち 本 来 的 自 己、 真 実 の自 己 と成 る。 スピ ノザ に よ t i o) の導 き に 従 って生 き る人 は、 自 己 に 対 す る 他 人 の 憎 し quatで eあ nる u。 s) 無限 であ り、 実 体 ・自 然 であ る。 理 性 ・直 観 知 に よ って永 遠 ・神 神 の様 態 と し て、 ﹁限 り の 神 ﹂ ( De us れ ば、 自 己 の本 質 は 自 存 力 で あ る。 自 存 力 が真 実 の自 己 を 確 相 の下 で﹂ 観 る。 こ こ で永 遠 と は、 自 己原 因 た る非 人 格 的神 な 神 は、 限 り の神 と し て個 物 に顕 現 し、 有 限 な 個 物 は、 限 り 立 す る 力 で あ る。 自 存 力 を 理 性 に 従 って、 自 己及 び他 人 のた み、 怒 り、 軽 蔑 等 を、 愛 又 は 寛 大 な 心 に よ って、 でき る限 り の神 に お い て無 限 な 神 と 結 び付 く。 直 観 知 は、 個 物 を 限 り の 報 い よう と 努 力 す る。 理 性 の 導 き に 従 う 人間 は、 公 正 ・誠 神 と し て把 捉 し て、 個 物 の内 に宿 る神 性 を 認 識 す る。 直 観 知 八七 (群馬大学教授) め に 行 使 す る こと が 善 だ か ら あ る。 井) か ら、 ﹁神 への知 的 愛 ﹂ が 生 じ、 直 観 知 に よ り、 人 間精 神 は 真 実 の自 己 と成 る。 道 元 と スピ ノザ の ﹁自 己 ﹂ に つい て (笠 -572-
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