Doc.No.A3-13160C カーボン分散型バインダレス超硬合金「PS-RCCL」 1. 概要 超硬合金は優れたトライボマテリアルとしてメカニカルシール、軸受け、金型等に用いられ ています。近年、耐摩耗性の向上や、高速化のニーズに合わせて、しゅう動特性に関する研 究が材料開発上重要になっております。当社では、バインダレス超硬合金に球状カーボンを 分散させた新材料「PS-RCCL」を開発いたしました。同合金をメカニカルシールリングに適用 した場合の効果について、しゅう動特性を評価した結果、カーボン添加による表面形状効果 および自己潤滑の効果により、しゅう動特性が向上する事を確認できました。 2. 材料特性 当社のバインダレス超硬合金「RCCL」 は耐食性・耐摩耗性に優れており、メカニカ ルシールリング用材料として、これまで多く のお客様より高いご評価をいただいており ます。「PS-RCCL」は、本バインダレス超硬 合金「RCCL」に球状カーボンを分散添加し、 高いトライボ特性を得ることを目的として商 50 microns 品化されました。 Table1 に 「 PS-RCCL 」 の 機 械 特 性 を 、 Fig.1 「PS-RCCL」の合金組織写真 Fig.1 に同合金の組織写真をそれぞれ示し ます。 Table1 「PS-RCCL」の機械特性と他材料との比較 当社材質名 硬さ [HRA] 密度 抗折力 3 [kg/m ] [GPa] 3 0.73 カーボン分散超硬合金 PS-RCCL 88.5 12.74×10 バインダレス超硬合金 RCCL 93.5 14.72×103 1.34 86.7 3 0.71 ポア分散超硬合金 比較材 13.20×10 3. トライボ特性評価 純水環境におけるメカニカルシールリングを模した実験装置にて、「PS-RCCL」のトライボ 特性を評価いたしました。その結果を Fig.2 に示します。メカニカルシールリングは、通常(し ゅう動速度)×(リングを押し付ける応力)より与えられる PV 値で評価されるため、Fig.2 の横 軸はこの PV 値を示しております。 Page 1/2 Doc.No.A3-13160C Fig.2 より、カーボン分散超硬合金「PS-RCCL」は、他の供試材より高い PV 値においても、 低いしゅう動トルクを維持していることがわかります。さらに、いったんトルク上昇しても、カー ボンの有する自己潤滑作用により、他の供試材のように急激なトルク変化はなく、緩やかに 上昇していることがわかります。 4. まとめ 以上の実験結果より、カーボン分散超硬合金「PS-RCCL」をメカニカルシールリングとし て使用した場合、以下の特徴を有することが期待されます。 1. 高い面圧が作用する環境においても、低トルク状態を維持することができる。 2. 「かじり」が生じても、カーボン自身が有する自己潤滑作用によって、トルクの急上昇を 抑える事ができる。 Page 2/2
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