チャ生葉保管処理による indole 蓄積に関する研究

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Title
Author(s)
チャ生葉保管処理によるindole蓄積に関する研究
勝野, 剛
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2013-12
http://hdl.handle.net/10297/7983
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(課程博士・様式9)
(1,000 字程度)
字
勝野剛氏の学位論文はチャ生葉低温処理による荒茶香気特性を解明し、併せてそ
審 査 要 旨
の高寄与成分である indole の蓄積機構を明らかにした結果について下記の観点か
らまとめたものである。
1) チャ生葉低温保管処理による荒茶香気特性の解明
官能評価及び分析化学的アプローチにより、生葉保管温度の違いと荒茶香気特性
を検討した。その結果、15℃保管により、花様、果実様の香調が強化され、その香
気成分量が 25℃、緑茶と比較し有意に増加していることを確認した。
2)花様香気寄与成分の探索
15℃保管において強化される花様香気成分に寄与する成分を AEDA (Aroma
Extract Dilution Analysis) 法を用いて探索した。特に寄与程度の高い成分として
7 成分を見出し、GCMS 分析と合わせてこれら成分の同定を進め、6 成分について
決定した。これらは、いずれも花様の香調に対する貢献度の高い成分であることを
確認した。
3)チャ生葉低温保管工程における indole 蓄積機構の解明
生葉低温保管処理により強化される花様香気への寄与程度の高い indole は生葉
低温保管時間中に次第に増加して 16 時間目に最大値を示し、以後漸減するのに対
し、常温下では保管4時間以内にわずかに増加するものの、その後急速に低下する
ことを明らかにした。低温、常温保管期間中の indole の発散量はいずれも蓄積量
の 1%未満であることから、低温保管茶における indole の高い蓄積には生合成、代
謝が重要な役割を果たしていると推察した。Indole は L-tryptophan 生合成経路の
中間体であるとの仮説の基、indole の前駆物質と代謝物を[15N]anthranilic acid 投
与試験により探索した。その結果、indole が anthranilic acid を前駆物質として生
成し、L-tryptophan へ代謝されることを確認した。さらに、LC-HRMS 分析によ
り代謝物として C8H7ON の分子式を有する indole の代謝物と考えられる化合物を
2 種確認し、これらは indole 酸化物である OX-indoles と推定した。さらに、前駆
物質、代謝物である anthranilic acid、L-tryptophan、OX-indoles、および、indole
の生葉保管中の変動を確認することにより、その消長から indole の蓄積には
anthranilic acid、OX-indoles が主要に関与していることを明らかにした。したが
って、生葉低温保管時における indole の高蓄積は、anthranilic acid から indole
への変換、indole から OX-indoles への変換が保管温度に依存し、それぞれの変換
の差異に起因するものであることを明らかにし、さらに、 L-tryptophan による
anthranilic acid 生合成へのフィードバック制御の存在が示唆された。
以上のように、本論文はチャにおける indole 生合成、代謝経路を初めて明らか
にするとともに、チャ生葉低温保管時における高蓄積機構に言及したものであり、
博士(農学)の学位を授与するに値するものと認められる。