Title 銅耐性酵母の銅メタロチオネイン II : メタロチオネイン の末端基 Author(s) 内貴, 信夫 Citation [岐阜大学教養部研究報告] vol.[23] p.[31]-[37] Issue Date 1987 Rights Version 岐阜大学教養部生物学教室 (Department of Biology, Faculty of General Education, Gifu University) URL http://repository.lib.gifu-u.ac.jp/handle/123456789/47611 ※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。 31 銅耐性酵母 の銅 メ タ ロ チ オ ネ イ ン II メ タ ロチ オネ イ ソ の末端基 内 貴 信 夫 岐阜大学教養部生物学教室 ( 1987年10月 8 日受理) Copper- M etallothioneins in a Copper- R esistant Y east Strain I I . T erminal Residues of M etallothionein N obuo N A I K I Department of Biology, F aculty of General E ducation, Gifu U niversity SUmmary Purification of Cu-thionein I I , a m ajor component among the Cu-thioneins of yeast cultuerd in the medium containing lmM Cu, w as achieved by repetition of gel filtration ( Sephadex G50) and anion exchange chromatography ( DE A E - Sephadeχ A 25) . T he component w as electrophoretically pure on acryl amide ge1. ` W hen intact thionein ( Cu-M T ) or performic oχidized thionein ( O-M T ) reacted w ith dinitonuorobenzene or dansyl chloride in alkaline buffer, no N H 2-terminal amino acid w as detected. Gas-liquid chrom atographic analysis of thehydrolyzate of this component indicated that aceticacid w as produced from the component by the hydrolysis. T hen, N -terminus of this component is assumed to beblocked by an acetyl residue. 0 n the other hand, hydrazinolysisof O-M T suggested that COOH -terminal amino acid is lysine. T he same result w as obtained from the digestion experiments of O-M T with the carboχypeptidase ( CP-A or CP-Y ) . ln theseenzymatic experiments, the secondary amino acid from C-terminus was also supposed to be glycine. は じ め に 有害な濃度の重金属 イ オ ン環境下に生体がおかれ る と, そ の毒性を軽減す るため生体は多量の金 属 と強い結合をす る タ ンパ ク質 ゛ メ タ ロチ オネイ ソ″を生産す る。 現在 まで に脊椎動物, 無脊椎動 物, 植物及 び微生物等多 く の生物種で こ の生産が報告 さ れて い る。 植物 の メ タ ロチ オ ネイ ソ に関 し て は, ア ミ ノ 酸配列 まで の解析は進 んで い な いが, 動物や微生物 で はそ の全 ア ミ ノ 酸配列や, チ オネ イ ソ を コ ー ドす る遺伝子の塩基配列の決定が行われて い る。 一 般的 に哺乳類 よ り得 られる メ タ ロチ オネ イ ソ は, そ の起源や種類の違 いにかかわ らずそ の構造は非 常に類似 し , 61ヶ のア ミ ノ 酸 よ り構成 さ れN 末端 はアセ チル化 さ れた メ チ オエ ンで 始ま り, C末端 はア ラ ニ ン で終 る。 これに対 し て無脊椎動物以下で は, そ の構成 ア ミ ノ 酸数や両末端 は種 々で N 末 32 内 貴 信 夫 端は修飾を受けて いない。 こ の報告は銅 イ オ ン に よ り誘導 さ れた酵母 メ タ ロチ オネ イ ソ の末端基に関す る も ので, C末端は すで に報告 さ れた酵母 の メ タ ロチ オネイ ソ と 同 じ 結果 と な っ た が, N 末端がアセ チル基で ブ ロ ッ ク さ れてい る可能性を指摘 し た も ので あ る。 材 料 と 方 法 銅ヂオ ネ イ ン の精製 と銅 の除去- 1mM 含銅液体培地で増殖 し た Sacck yomyces ceyelX isiae の 生重量約180g を 80℃ 3 分熱処理 し て得た抽 出液 よ り, セ フ ァ デ ッ ク ス G50と DEAE- セ フ ァ デ ッ ク スA 25カ ラ ムを 交互 に く り かめ し通過 さ せ る こ と に よ り酵母 メ タ ロチ オネ イ ソ の主成分で あ る Cu -MT II B ( 以下 Cu-MT とす る) を約35m9分取 し た1)。 等電点電気泳動に よ る精製法はアソ ホ ラ イ ソ担体 と Cu-M T の分離が困難なため今回の標品の精製過程で は使用 し なかっ た。 し か し 分画 した Cu-MT はア ク リルア ミ ド ゲル電気泳動的 に単一 な バ ン ドを示 し た。 末端 ア ミ ノ 酸 の決定 にはタ ン パク質の立体構造を壊 し変性 させる こ とが必要で あ る。 こ こで は変性に過蟻酸酸化を行い凍結乾燥 後セ フ ァ デ ッ ク ス G25カ ラ ムを通 し て銅を 含む低分子物質を 除 き酸化 さ れた チ オネ イ ソ (O-MT) を集めた。 この O-M T のゲル泳動像は Cu-MT よ り移動速度の減 じた位置に幅の広 い単一バ ン ド と し て行動 し た 1)。 こ の報告で のタ ンパ ク質定量はすべて ロー リ ー法を採用 し た。 揮発性有機酸 の定性 と定量→ -MT 中の有機酸の検 出には, この タ ンパ ク 質の加水分解物を エ ーテルで抽出 し, ガス ク ロマ ト グラ フ ィ ーを用いて測定 し た2・34)。 約4. 5mgの凍結乾燥 し た O-MT に0. 1m1の12N 一硫酸 また は 6 N 一 塩酸を加 え, 窒素 ガス封管中で105℃で 4 時間加水分解を行 った。 これ と は別に加熱操作を省略 した対照を用意 し, 両者の差を加水分解に よ り遊離 した有機酸 と し て 求めた。 加水分解 はエ ーテ ル抽 出に先だ ち 内部標準液 と し て20μg のプ ロ ピ オ ン酸 を 加 え, 0. 5m1の エ ーテ ルで氷冷下 4 回の抽 出を 行 っ た。 抽 出操作毎 に遠心分離機 にかけ上層部 を パス ツ ール ピペ ッ トで一本の共栓試験管 に集め 6 N苛性 ソ ータ ーの微量で アルカ リ性 と し た後, 窒素 ガスを細管 よ り ふきつ けて エ ーテ ルを のぞ き乾 固 し た。 こ の乾燥試料 に10μ1 の12N一 硫酸 と0. 5m1のエ ーテ ル及び 100mgの芒硝を 加 えて抽 出を 行い, ガス ク ロマ ト グ ラ フ ィ ーの試料 と し た。 用いた装置 は島津製 ガス ク ロマ ト グラ フ ィ ーGC-4CM で分析の諸条件は図 2 の説明に詳述 し た。 C末端 ア ミ ノ 酸 の定性 と定量C末端 の検 出には ヒ ド ラ ジ ン分解法及 び カ ーボキ シペ プ チ ダー ゼに よ る消化分解法の両者を 試みた。 i ) ヒ ド ラ ジ ン分解法一 乾燥 し た O-M T の約 3 mgと硫酸 ヒ ド ラ ジ ンの25mgを 分解管 に と り0. 2 m1の ヒ ド ラ ジ ン (b.p., 113.5℃ ; m.p., 14℃) を加 えて減圧下60℃で16時間の加水分解を行 った。 そ の後分解管 は濃硫酸を設置 した真空デシ ケータ ーに入れ水流 ポン プ減圧下に 4 時間た も ち大部 分の ヒ ド ラ ジ ンを 除去 した。 シ ロ ッ プ状の残澄 は凍結乾燥に よ り乾固 し , 2 m1の水に と か し てベ ソ チルアルデハイ ドで大部分のア ミ ノ 酸 ヒ ド ラ ジ ッ ドを抽出除去 し て水層部を 集め ク ェ ソ酸緩衝 液 ( pH2.8) で希釈 し て ア ミ ノ 酸分折機で分折 し た。 ii) 酵素消化法- -C末端検出に用いた カ ーボキシペ プ チ ダーゼは牛のす い臓か ら精製 さ れた CP -AnErと酵母 よ り精製 さ れた CP-Y で と も にシ ダマ ー社の製品で あ る。 反応液 に使用 した緩衝液 は CP-AE rは0. 2Mエチルモルフ ォ リソー酢酸液 (pH8. 5) で CP-Y は0. 1M リソ酸緩衝液 (pH 6. 5) で ある。 約4. 5mgの O-MT と0. 2% ラ ウ リル硫酸を含む3. 5m1の緩衝液を30℃に保温 し なが ら, 200μg/m1のカ ーボキシペ プチ ダーゼを 含む緩衝液の0. 5m1( CP-AI)Erは約5. 3U , CP-Y は約 9 U) を 加 えて反応 を 開始 し た。 0. 5, 1, 2 , 4 , 8 時間の間隔で反応液 の0. 6m1を取 り 出 し , 100℃ 3 分の熱処理で 反応 を と め, 遠心分離 し た上清液 に同量 の ク ェ ソ酸緩衝液 ( pH2. 8) を 加 えて ア ミ ノ 酸分折の試料 と し た。 銅耐性酵母 の銅 メ タ ロチ オネ イ ソ II 結 N末端 ア ミ ノ 酸 の検 出- 33 果 N 末端 ア ミ ノ 酸 を検 出す るた め ジ ェ ト ロ フ ル オ ロペ ッ セ ッ 法6)及 びダ ソ シル ク ロ リ ッ ド法6)の両者を CU-M T 及 び O-M T のそれぞれ に用いてみた が, いずれの場合 も リ シ ソ のε- ア ミ ノ 基誘導体が多量 に検 出さ れ末端 ア ミ ノ 酸 は確認 で き なか っ た。 即 ち FDNB 法で は塩酸加水分解後の試料 を エ ーテ ル抽出す る と, 黄色の大部分は水層部 に残 り, こ の分画は炉紙 ク ロマ ト グ ラ ムの結果 ε-DNP リ シ ソ が検 出 さ れた。 一方 エ ーテ ル 可溶 分画の ク ロマ ト グ ラ ムで は DNP- グルタ ミ ン酸の位置に痕跡量のスポ ッ トを観察 した が, 用 い た タ ンパ ク質 ( 分子量5, 000と し て) のモル量 に比 し て極 めて少 く , これが N 末端を形成 し て い る と は考 え に く い。 また ダ ッ シル化 した タ タ ロチ オネイ ソ の加水分解物のポ リ アマイ ド薄層 ク ロマ ト グ ラ ムの結果はε-DNSづ シ ッ 以 外に紫外線下で黄色けい光を示す も のはみ られなかっ た ( 図 1) 。 した がっ て N一末端 のア ミ ノ 基は ブ ロ ッ ク さ れて い る可能性が強い。 Fig. 1. Chromatograms of dansyl- amino acids on Polygram thinlayer sheet ( P olyam ide-6U V 254) . A bout 0.25mg of protein ( Cu-M T or O -M T ) wasdissolved in 0.5ml of 0.5M NaHC0 3 containing 1% SD S, successively added 0.5ml of acetone solution contained dansyl chloride ( 20mg/ml) . The solution was allowed to stand ovem ight at room temperature. A fter this period the dansylation protein w as collected by passing the solution through a Sephadex G 25 column, and hydrolyzed with 6N H Cl at 105℃ for 18hrs. T hespotsweredetected under U . V . irradiation. M obile phase : A , benzene/ acetic acid= 9/ 1 ; B, 2% formicacid ; C, ethylacetate/methanol/ acetic acid二 20/ 1/ 1 ; D, 0.05M N a3P0 4/ eth- ano1= 3/1. 1, hydrolysis of DNS-Cu-MT ; 2, hydrolysis of D N S-O- M T ; 3, ε-D N S-lysine ; 4, di-D N S-lysine ; 5, DN S- serine ; 6, D N S -glutam ic acid ; 7, D N S-aspartic acid. A uthentic samples ( from 3 to 7) were products of the Sigma ChemicaI Co. 有機酸 の検 出べ )-M T を 12N硫酸 また は 6 N 塩酸 と と も に105℃ 4 時間加水分解 した も の と, 加熱操作を し なかっ た試料のガス ク ロマ ト グ ラ フ ィ ーの典型的な結果は図 2 で見 られ る。 いずれ も 酢酸以外 には内部標準液 と し て加 えた プ ロ ピ オ ン酸のみが検 出さ れ た。 2 回の実験 よ り得 られた酢 酸の定量値 は表 1 に示 し た。 12N 一 硫酸に よ る加水分解は分解液が淡黄色を呈 し分解物 の一部 が炭化 し て い る事 を う かがわせ るが, 定量値 は塩酸 に よ る加水分解 よ りやや高い値を示 し てい る。 分解 に使用 し た O-MT は約4. 5 m gで0. 9μmoleに相当す る。酢酸の定量値 よ り求め られる値は約0. 7μmoleで モル比で は酢酸がい く ぶん少いが, タ ンパ ク質の定量値やエ ーテ ル抽出操作に よ る誤差を 考慮すれば, やむを得 ない値 と 思わ れ る。 C末端 ア ミ ノ 酸 の検 出 る消化分解法を採用 した。 i ) ・ヒ ド ラ ジ ン分解法- C末端の検出には ヒ ド ラ ジ ン分解法 と カ ーボキシペ プ チ ダーゼを用1, ● 。 ・ 3mgの O-MT を ヒ ド ラ ジ ン分解 し, ア ミ ノ 酸分折機に よ り検 出さ れる ニ ン ヒ ド リ ソ 陽性物質 の最 も顕著 な ピ ー ク は ヒ スチ ジ ン, ・ リ シ ソ と ア ソ モ・ニ ア の位置 の も ので 内 34 貢 1言 夫 Fig. 2. Gas chromatography of volatile organic acids extracted into ethylether from O-M T esuodseS ﹂のでOUΦぼ hydrolyzate. Shimadzu gas chromatography GC-4CM apparatuswasused under the following operating conditions : injection tempera- ture, 150℃ ; column temperature 120° C ; nitro, gen flow rate 60ml/min. extrad column. Two μl of the w as injected onto a glass precoiled T he column ( 0. 5 × 180cm) w as packed w ith U nisole F -200 ( Gasukuro K ogyo I NC.) . Propionic acid as a internal standard was added to;the sample before ether extractions. Solid line ; hydrolyzed w ith 12N H 28 0 4 at 105℃ for 4hrs. , broken line ; hydrolysis omitted. T able 1 Determination of acetic acid in O- M T hydrolyzate by the gas liquid chromatography・ T reatment ln 6N H CI , 4hrs at 105℃ A cetic acid A cetic acid obtained observed ( μmoles) by hydrolysis ( μmoles) 0 . 83 0 . 69 ln 6N H C1, hydro】ysis omitted ln 12N H 28 0 4, 4hrs at 105℃ 0 . 14 0 . 92 0 . 77 ln 12N H 28 0 4, hydrolysis omitted 0 . 15 あ っ た。 ヒ ス チ ジ ンの位置 に見 られ る ピ ーク は正規の ピ ー ク と く らべ る と 幅の広 い かな り変形 し た も ので, おそ ら く 処理中の副産物 に よ る可能性が強い。 ヒ スチ ジ ン, リ シ ソ の両 ピー ク は定量 的にほぼ等 し い モル量を示す が, こ のモル量 は分解 に用いた O-MT のモル量 と比較 し て お よそ 半量 の値で あ っ た。 酸性及び中性 ア ミ ノ 酸領域に も特定で きない不明の ピーク を 含めて約12ヶ の起伏が見 られ る。 この中で比較的明瞭な も のはセ リ ソ と グ リ シ ンで あ るが, 共 に使用 し た O-M T のモル量 に く ら べて 1/ 5 ~ 1/ 8 のモル量で あ っ た。 ii ) 消化分解法-- 0 -MT や カ ーボキシペ プ チ ダーゼを 含む 4 m1の反応液 か ら各時間毎 に一定量 を取 り遊離す る ア ミ ノ 酸を 分析 し た結果は図 3 の よ う にな っ た。 CP-Ar)Erを 加 えた直後 ( O時間) の分析で は カ ラ ムに吸着 さ れず に流 出す る シ ス テ イ ン酸の位置 と ア ン モ ニ アの位置 に高 い ピ ーク が観察 さ れ る。 シ ス テ イ ン酸 の位置 に溶 出す る分画は多量 のシ ステ イ ン酸残基を 含む非吸着性の O-MT と思われる。 このピークは反応の進行 と と もに減少す る傾向を示 した。 また アンモニアの ピ ーク は CP-A 標 品か ら の持 ち込 みに よ る も ので あ る。 定量値 の顕著 な上昇を 示 し た も のは リ シ ッ で あ り グ リ シ ンが これに続 く ( 図 3 A ) 。 図で は示 さ なか っ た が22時間後検 出 さ れ る ア ミ ノ 酸 は 銅耐性酵母 の銅 メ タ ロチ オネ イ ソ II リシ ソ, グ リ シ ン, セ リ ソ, ス レオ エ ン, 35 p イ シ ソ, イ ソ ロイ シ ン, ヒ ス チ ジ ン, グル タ ミ ン酸 で ロ イ シ ン以下 は量的に極 めて 少 い。 22時間後 に生産 さ れ る リ シ ソ のモ ル量 は使用 し た O-M T のモル量の半量以下で あ っ た。 実験前の CP-A の活性はベ ソ ゾイ ルーフ ェ ニルア ラ ニ ソ を 用いて テ ス ト さ れ, 十分な活性を検 出 し て い る ので, 0 -M T に対 し こ の酵素は極めて ゆ るやかに反応す る も め と 思わ れ る。 (selouJ y f E ) pesDeleU pl oV ou一 Eく 2 4 6 8 1ncub【】↑lon Time( h「 」 lncubQ↑ion Tlme ( hr) Fig. 3. D etermination curves of amino acidsreleased from O-M T w ith the digestion of carboxypeptidases. T o 4ml of the reaction miχture w ere contained about 4.5mg of O- M T , 0.2% SDS and 200μg of the carboχype- ptidase. A t appropriate intervals, the reaction mixture of 0.6ml w as remo、 ved, and the reaction w as stopped by boiling for 3min. A fter centrifugation, the samples were diluted with a citrate buffer ( pH 2.8) and analyzed. A ; used carboχypeptidase-A ( from bovine pancreas) w ith 0.2M ethylmorpholin-acetate buffer ( pH 8.5) , B ; used carboxypeptidase-Y ( from bakeres yeast) with 0. 1M phosphate buffer ( pH 6.5) . CP-A のかわ り に CP-Y を 用 いて 同様 の実験 を 行 っ た結果 は図 3 B で示 さ れ る。 リ シ ッ の定量値 が最初 に上昇す るのは CP-A の場合 と 同様 で あ るが, グ リ シ ン と セ リ ソ はほぼ同様の勾配で上昇 し た。 いず れ も遊離 さ れ る C末端 ア ミ ノ 酸は CP-A の時 よ り一層量的 に少い結果 と な っ た。 考 察 種 々の哺乳類 よ・り分離 さ れた カ ド ミ ウムチ オネ イ ソ はそ の種間や抽出臓器の差違, また チ オネ イ ソ の種類 ( M T-I, M T-II) の違 い にかかわ らず, ア ミ ノ 酸配列は よ く 類似 し20シ ス テ イ ン残基を 含 む61~ 62のア ミ ノ 酸 よ りつ く られて い る。 いずれ も N 末端 はアセ チル化 さ れた メ チ オ ユンで始 ま り C末端 は ア ラ ニ ンで 終 っ て い る7・8・9・lo)。 ネ ズ ミ肝の Cd-M T の DNA レベルの研究で も, そ の塩基 配列 よ り推定 さ れる ア ミ ノ 酸配列はN 末端 が メ チ オ ユン, 61番 目のC末端 はア ラ ニ ンで, 上記 タ ン パク質のア ミ ノ 酸配列から求め られた結果 と一致す る11・12・13)。 一方無脊椎動物や微生物か ら得 られる Cd-MT や Cu-MT は構成す る ア ミ ノ 酸の数や末端基に 大 き な違 いがある。 た と えばカ ニの M T-1 は58残基, MT-2 は57残基で N 末端は と も に修飾を受 けな い プ ロ リ ンで あ るが, C末端 は前者 はス レオ エ ン, 後者 は プ ロ リ ンで あ る14)。 ウェ 15)や シ ョ ウ ジ ョ ウバエ16)では MT 遺伝子の塩基配列 よ り推定される構成ア ミ ノ酸数は, ウユで64, シ 日ウジ ョ ウバエ40で N 末端 は塩基配列か ら の推定 のた め共 に メ チ オ ユン ( 翻訳開始 コ ド ソ ) で あ る が C末端 は ウユで はシ ステ イツ , ハエで はグル タ ミ ン酸で あ る。 微生物のア カ パ ン カ ビの Cu-M T は構成 ア ミ ノ 酸数 は25残基で極端 に短 く N 末端 はグ リ シ ン, C末端 は リ シ ソ で あ る。 こ れ等無脊椎動物及び 微生物 にみ ら れ る M T は長 さ や末端 ア ミ ノ 酸 に差異があ る が, M T の特徴的 な配列で あ る-CyS- χ 内 36 貴 信 夫 -CyS, や-CyS-CyS一 配列は哺乳類の MT と 同様高い頻度で含 まれて い る。 酵母Cu-MT の全 ア ミ ノ 酸配列は木村18)及び W inge等19)に よ り報告 さ れ, また こ の遺伝子で あ る CUP-1 の塩基配列 もKarin等20)に よ り報告 さ れて い る。 構成 ア ミ ノ 酸数は木村 は42, W inge等は53 で あ り, この間n ケのア ミ ノ 酸の違いがあ る。 一方塩基配列か ら推定 さ れる ア ミ ノ 酸数は61ケで あ るが W inge 等 に よ る と メ チ オ ユンか ら始 ま る N 末端 8 ヶ のア ミ ノ 酸が切断 さ れて機能す る と考 え てい る。 この 8 ケがのぞかれ る と W inge 等 とKarin 等のア ミ ノ 酸配列はみご と に一致 し て い る。 また塩基配列か ら推定 さ れ る N 末端 は 8 ケがのぞかれ る と グル タ ミ ン と な り, 木村及 び W inge 等 のN 末端のグル タ ミ ン と一致す る。 この報告で はN 末端 ア ミ ノ 酸の同定に DNFB 法 と ダ ソ シルク ロ リ ッ ド法が用い られた が, いず れ も N 末端を 特定で き な か っ た。 も し グル タ ミ ンがN 末端 を形成す るな ら加水分解 の結果 はグルタ ミ ン酸誘導体が得 られ るはずで あ る。 そ こで タ ンパ ク質の加水分解に よ り遊離す る有機酸を ガス ク ロマ ト グラ フ ィ ーで求めた結果使用 し た タ ンパク 分子の約 3 / 4 の酢酸を検出 した。し た が っ て N 末 端は哺乳類の M T と 同様 アセ チル基 と結合 し て い る も の と考 え られ る。 アセ チル基の結合 し て い る ア ミ ノ 酸の種類 は, こ の実験で は求め られな い。 C末端 の同定 は ヒ ド ラ ジ ン分解法 と カ ーボキシペ プ チ ダーゼに よ る消化法を 用いた。 いず れの場 合 も C末端は リ シ ッ が検 出さ れた。 特に消化法で はC末端 よ り 2 番 目のア ミ ノ 酸がグ リ シ ンで あ る 可能性が指示 さ れた。 C末端が リ シ ソ で あ る点は木村, W inge等及び Karin等の結果 と一致す る。 C末端よ り 2 番 目のア ミ ノ 酸は木村で はス レオエ ン と報告 さ れて い るが, 後者二人の報告はグ リシ ンで こ こで報告 し た結果 と一致 し て い る○ 。 要 旨 1mM の含銅培地で生長 した酵母 よ り電気泳動的に均一な酵母銅チオネイ ソ を精製 し た。 ジ ェ ト ロ フ ルオ ロベ ソ ゼ ソ法や ダ ソ シル法や ダソ シル ク ロ リ ッ ド法で N 末端 ア ミ ノ 酸を 求めた が, 検 出で きなかった。 こ のタ ンパ ク質の加水分解物のガス ク ロマ ト グ ラ フ ィ ーか ら酢酸の存在を確認 し た。 し た が っ て N 末端 はアセ チル基で ブ ロ ッ ク さ れて い る と思われ る。 C末端 のア ミ ノ 酸を ヒ ド ラ ジ ン 分解や カ ーボキ シペ プ チ ダ ーゼの消化分解法で し らべ た と こ ろ , リ シ ソ で あ る こ と がわかっ た。 ま た C末端 よ り二番 目のア ミ ノ 酸 はグ リ シ ンで あ る可能性が同 じ 消化分解法の結果か ら類推 さ れた。 引 (1) 用 内貴信夫 ( 1987) 銅耐性酵母の銅 y タ ロチ オネ イ ソー 文 献 精製 と ア ミ ノ 酸組成一 岐阜大学教養部研究報告, 22 ; 117- 132. 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