ビタミンD 最新の話題

ビタミンD 最新の話題
活性型ビタミンDだけではビタミンD不足は分からない
◎荻原 貴裕 1)
シーメンスヘルスケア・ダイアグノスティクス株式会社 CAI 事業部 ケンタウルス製品グループ 1)
現在ビタミンD の不足・欠乏は様々な疾患のリス 治療においても、ビタミンDや関連類似物質は,乾
クファクターであることが報告されており、近年社会 癬,副甲状腺機能低下症,腎性骨ジストロフィ,そし
問題化となりつつあります。慢性的なビタミン D 不 て中には白血病,乳癌,前立腺癌,大腸癌に使用され
足によって、高齢期に骨粗鬆症の発症リスクが高まる ることがあり,免疫抑制にも使用されています。
事は多く報告されております。また、近年では、循環 一方でビタミン D の充足状況ですが、欧米において
器系、消化器系、内分泌・代謝系、泌尿器系、皮膚、 は約 70%前後がビタミン D 不足と報告されており、
成長、癌、歯等実に様々な疾患との関連性が次々と報 日本人においても成人で 70-80%もの人がビタミン
D 不足の可能性があるとの報告もあります。
告されてきております。
このビタミン D は、血中では様々なビタミンD代 この様なビタミン D は、海外では既に測定法の標
謝物が存在し、現在このうちの 25(OH)D(=トータ 準化整備されてきており、近い将来日本国内において
ルビタミン D)と 1,25(OH)2D(活性型ビタミン D) も、日常的に欠かすことのできない測定項目になるも
はキット測定が可能であり、この両者を測定すれば、 のと思われる。今回はその様なビタミン D に関して
臨床的にビタミンD代謝評価がほぼ可能になります。 の、国内外の最新の知見を紹介させて頂きます。
しかしながら、今回ご紹介させて頂く 25(OH)D は
日本国内ではまだ保険適用がされておらず、現在国内
で保険適用されている血中 1,25(OH)2D 濃度の測定
では、ビタミンD代謝の評価ができず、ビタミン
D 欠乏・不足症の診断ができないというのが実情です。
例えば重症ビタミン D 欠乏は、くる病・骨軟化症
をもたらしますが、必ずしも血中 1,25(OH)2D が低
下するわけではありません。むしろ高いことも左程稀
なことではないのです。国際的な診療指針においては、
続発性副甲状腺機能亢進症で最も頻度の高い原因がビ
タミン D 欠乏・不足であるため、副甲状腺機能亢進
症においては 25(OH)D 測定は必須であり、
25(OH)D が低値の場合は、ビタミン D 不足是正後
に、PTH 分泌を再評価すべきであることが明記され
ています。
このほか、低 Ca 血症の鑑別診断、くる病・骨軟化症
の鑑別診断においても、1,25(OH)2D とともに
25(OH)D を評価することが必要不可欠と考えられ
ております。
この様に、ビタミンD不足・欠乏の診断は、血清
25(OH)D を測定しない限り、不可能に近いのが現状
です。一方で、ビタミンDは多くの臓器系に影響を与
えており、主に小腸からのカルシウムやリン酸吸収を
高め,正常な骨形成や石灰化を促進していることが明
らかとなっています。