特異的IgE抗体の活用法

食物アレルギーの診断:特異的IgE抗体の活用法
第65回日本アレルギー学会学術大会 イブニングシンポジウム9
www.siemens.co.jp/diagnostics
6 18日(土)17:10∼18:30
■ 開催日:2016年 月
■ 会 場:第8会場(東京国際フォーラムD 棟 1F「ホールD1」)
■ 司 会:伊藤 浩明 先生
あいち小児保健医療総合センター
食物アレルギーの診断は、特定の食物摂取に伴う誘発症状の確認と、
それに対する免疫学的機序の証
明によって成立する。
前者は、詳細な問診を基礎として、
必要に応じ食物経口負荷試験で確定する。
即
時型食物アレルギーにおける免疫学的機序の証明は、
特異的IgE抗体の検出といえる。
特異的IgE抗体検査の感度・特異度、
あるいはプロバビリティカーブが大きく問題になるのは、
誘発症状の確認以前に特異的
IgE検査が容易に実施される日本の診療スタイルに、特有のことともいえる。その中で、多くのアレルギー専門医が食物経口
負荷試験を実施するようになり、
特異的IgE検査に関する知見は急速に蓄積されてきた。
さらに、食物アレルゲンをコンポー
ネントから理解することで、食物アレルギーの病型分類そのものが変わろうとしている。
臨床現場においては、
特異的IgE検査方法の選択肢が増えて、
それぞれが特色を競いあうようになった。
これは、医学の発展
として喜ばしいことではあるが、
その使い分けや正しい結果の解釈について、専門医の間でも若干の混乱を生じている現状
がある。
ここに道筋をつけるためにも、
それぞれの検査法について大いに研究を重ね、医学的エビデンスを堂々とぶつけ合う
科学的な議論を期待したい。最終的には、
リスクを伴う食物経口負荷試験に依存せず、
より精度の高い臨床診断を可能とする
検査法を確立し、
それが臨床現場で活用されてこそ、
研究の価値がある。
本シンポジウムで、
この分野のトップリーダーである二人の演者からアップデートな話題が提供されることは、
言うまでもな
い。会場に参加された皆様と、
大いに盛り上がったディスカッションを期待したい。
■ 講演1 食物アレルギー診断:特異的IgE抗体検査を使いこなす
演者:藤澤 隆夫 先生
国立病院機構三重病院アレルギーセンター
■ 講演2 果物アレルギー:各コンポーネントの意義の解明と診断への応用
演者:近藤 康人 先生 藤田保健衛生大学医学部小児科坂文種報徳會病院アレルギーセンター
果物アレルギーコンポーネント研究会
※ 当セミナーは、
整理券はございません。
直接会場にご入場ください。
共催:第65回日本アレルギー学会学術大会
シーメンスヘルスケア・ダイアグノスティクス株式会社
講演1 :
食物アレルギー診断:
特異的IgE抗体検査を使いこなす
藤澤 隆夫 国立病院機構三重病院アレルギーセンター
食物アレルギーの診断は、最終的には経口負荷試験を要するが、臨床の現場では特異的IgE抗体検査が汎用されるのは言うまで
プロバビリティカーブや感度・特異度などを参考にするが、
どのような対象集団
も無い。特異的IgE抗体の結果を評価するために、
で算出されたか、
アウトカムの決定方法は何か、
負荷試験をした場合の食物やその量はどのようなものか、
陽性判定基準は何か、
実際にはそれぞれ
測定法は何か、
など影響を与える因子は多い。
また、
プロバビリティカーブは通常1本の曲線で示されているが、
の値に対して95%信頼区間が存在することにも留意する。症例数が少ない場合にはデータのばらつきが大きくなり、95%信頼区
間は拡大する。
そのため同じ鶏卵のプロバビリティカーブでもあっても上記の条件により異なるものが算出されて報告されてい
る。
日常診療においては、
その対象集団に近いものを当てはめて考えることが多いだろう。
我々は、
様々な背景をもつ食物アレルギー患者を対象として、
プロバビリティカーブ作成の前方視的多施設共同研究を鶏卵、牛
乳、小麦アレルギーの患者に対して行ってきた。
抗原による違い、年齢による違い、
検査法による違い、
コンポーネントによる違い、
対象集団による違いなどにより特徴が異なり、
興味深い結果が得られている。
また、検査法が異なると、
開業医との病診連携などの
際には、別の検査法に結果を換算することが可能であるかどうかが問題となる。同時多項目測定については、使用している抗原や
イムノキャップと3gAllergy
データの定量性、及びクラス表記法がイムノキャップや3gAllergyと異なるため換算は困難であるが、
の比較については、完全ではなくてもある程度の換算の目安が必要であろう。実際、抗原により多少の違いはみられるがイムノ
キャップと3gAllergyの換算について考えてみる。
講演2 :
果物アレルギー:
各コンポーネントの意義の解明と診断への応用
近藤 康人 藤田保健衛生大学医学部小児科坂文種報徳會病院アレルギーセンター
果物アレルギーコンポーネント研究会
果物アレルギーのタイプには大きく分けて2タイプがある。
卵や牛乳アレルギーなど小児期に多くみられる従来の食物アレルギー
と同じ感作経路で発症する果物アレルギーと、花粉による経気道感作の後、花粉アレルゲンとの交差反応性により発症する果物ア
とも呼ばれ、
アレルギー症状は口腔
レルギーである。後者は花粉-食物アレルギー症候群(Pollen-food Allergy Syndrome: PFS)
内に限局する
(口腔アレルギー症候群)。前者も口腔症状で始まることが多く、臨床症状から両者を見分けるのは必ずしも容易で
はない。
しかしアレルゲンコンポーネントを測定することで診断の手助けが得られその後の診療方針を決める際に役立つ。
(Bet v 1
既存の果物のコンポーネントの代表的なものにはシラカンバ花粉アレルゲンであるBet v 1と類似構造をもつグループ
ホモログ)やプロフィリンがあり、
これらのコンポーネントは加熱処理やペプシン処理に弱いことから、関連する症状は缶詰や加熱
された加工食品では起こらないし、
胃液で容易に壊されるため全身症状に至ることは少ない。
それに対して加熱や消化酵素下で
モモ缶詰や
も比較的安定性を保つことのできるコンポーネントであるLipid Transfer Protein(LTP)に感作されている場合は、
アップルパイなど加熱処理された食品を食べても症状を起こし、腸管から吸収されることで全身症状まで伸展しうる。
将来的にコンポーネント検査が充実すれば、果物アレルギーの診療が改善されることが期待されるが、
まだまだ利用できるコン
ポーネントの種類が少ないし、
日本における各コンポーネントの意義についても十分検討されていない。例えば全身症状を伴う
また最近報告が散見される果物
モモアレルギーであっても、欧米の陽性率に比し我が国のモモLTP(Pru p 3)陽性率は高くない。
による誘導誘発アナフィラキシーについての原因アレルゲンは解明されていない。
講演ではバラ科果物(モモ、
リンゴ)
コンポーネント研究(http://fruit-allergy.jp/)に賛同し協力していただいた多くの提供血清を
用いた解析結果について報告する。加えてオレンジOAS・FDEIAに関連するアレルゲンについてこれまでの研究成果および交差
反応性など報告する。