<近頃多い骨折例> 2015 年 秋号 EAC 便り 橈尺骨骨折 当院でも、トイプードルの骨折の症例が多く見られます。大きな事 故でなくても室内で椅子から落ちてしまったり、抱いていて落として しまったという事も少なくありません。 橈尺骨骨折では治療として外科的な手術を行うことが一般的で す。 手術をせず内科的に、外固定という体の外側からギプスで固定す 今回は、小型犬で急増している骨折と、動物の生活の質に関わる歯の特集です。 る方法のみで治療を行った場合、トイ犬種では合併症を起こし高い 骨折 確率でうまく治らないことが知られています。 「骨折」といえば「交通事故」や「高所からの落下」によるものがほとんどでしたが、最近では「椅子から 外科的治療法として、ほとんどの橈尺骨骨折に適用となるのがプ 飛び降りた」「抱いていて落とした」「フローリングで転んだ」といったささいな原因での“橈尺骨骨折” レートを用いた方法です。骨折部にプレートをあてスクリューネジで がよく見られています。特にトイ・プードルに多く、その他パピヨン、イタリアン・グレーハウンドなどトイ犬 固定します。このような手術に使うプレートやスクリューネジは高価 種でも多く見られています。 なため入院費なども含め、平均20~30万円ほどがかかります。 脛骨・腓骨複雑骨折 また手術後はご自宅での徹底した安静の管理(ケージでの管理) 骨折とは と獣医師による頻回の診察が必要となります。手術後は 2 週間程バ 外から加わった力によって骨の一部または全部が断たれた状態の ンテージを巻いて保護と運動制限をし、定期的にレントゲン検査を行 事をいい、その原因により外傷性骨折、病的骨折などに分かれま い、術後の経過を確認します。また、約 3 か月後にプレートを抜去す す。 る手術を必要とします。プレートを抜去してしばらくは再度バンテージ固定と、定期的なレントゲン検査 外傷性骨折:事故などで、骨のもつ生理的な強度を超えた大きな外 にて、回復の経過を確認し、徐々に運動制限を解いていきます。順調に回復しておよそ半年は治療に時 力が骨に作用しておこる骨折です。 間がかかります。 病的骨折:くる病、骨腫瘍、骨感染症、その他栄養障害などが原因と なって小さな力でも簡単に骨折してしまいます。 整復後 小型犬では、大きな事故でなくとも、骨折を起こす骨格的、性格的な要因が関与していることが考え られます。日頃の運動の中で、滑りにくい床、椅子やソファなどにジャンプさせないという配慮は骨折が 治った後も必要です。 症状 骨折は注意することで避けられる事故もあり、1 歳未満の子犬が骨折で来院される事も少なくありま 骨折の症状として、痛み・腫れ・熱感・内出血・変形などが見られます。骨折部位が四肢であれば破行(足 せん。しつけやワンちゃんの扱い方でお困りの時は、病院スタッフにいつでもお尋ねください。 をつかないで歩くこと)、歩行不能など、脊椎骨では骨折部位以下の神経麻痺をきたし、後肢や腰部の 参考 麻痺と排便や排尿の困難を伴うこともあります。大腿骨では大量出血を伴って出血性ショックの原因と ・CLINIC NOTE No.64 なることもあります。 ・イラストでみる犬の病気 合併症 ・SMALL ANIMAL SURGERY 特に外傷性骨折の場合に神経や血管、筋肉などの軟部組織にいろいろな合併症をおこすことがありま す。この場合、神経や血管の損傷、筋肉の血行障害により筋肉が壊死してしまいます。また同様に血行障 永代橋アニマルクリニック 金町アニマルクリニック 江東区永代 1-9-1 葛飾区金町 2-29-6 KAC ビル ℡ 03-5875-8771 ℡ 03-3609-7517 害による骨折端の壊死がおこり骨折部がくっつくべき日数を過ぎてもくっつかない状態になってしまう こともあります。 2015 年 9 月 1 日 発行 歯の病気の1番の原因になるのは「歯垢」です。 〈歯科処置に使う器具〉 歯磨きトレーニングをして普段から口の中をチェックしましょう!! ①抜歯鉗子:スケーラーで削れない歯垢などを挟んで除去します ②スケーラー:歯の表面の歯垢を削り取ります 歯垢は、歯に食べカスなどが付着した状態で、歯垢は多くの細菌を含んでいます。 ③歯ブラシ 歯垢を落とさずにいると、歯垢の上にさらに汚れがが付着し、層になって「歯石」に ④歯磨きペースト:スケーリング後の歯磨きに使います なります。そうなると歯磨きだけでは簡単に汚れが落ちない為、専用の器具を使っ ⑤イソジンガーグル:口腔内の消毒に使います て歯石を取り除く必要があります。歯の汚れは、進行すると歯周病なども引き起こすので早めの予防が大切です!! 〈①無麻酔での歯科処置の様子〉 ④ ① ② ③ ⑤ 歯磨きで歯垢の付着を防ぐことで歯周病の予防になると共に、普段から口の中をチェックすることができれば歯の汚れ や歯肉の腫れ、口内腫瘍などにいち早く気づいてあげることができます。また、口を自由に触らせてくれるようになれ ばマズルコントロールができ、誤っておもちゃなどを飲み込みそうになった時でも簡単に取り出すことが出来ます。その 他にも、動物病院での診察や処置などがスムーズに行えるといったメリットがあります。子犬を飼ったらマズルコントロー ルをして、人の手に歯を立てたり、人の手をおもちゃにするような犬にしないようにしましょう。 ◆歯磨きの方法◆ ①はじめは、顔の周りを触ることから始めて、口の周りや歯を見せてくれたら褒めてあげましょう。 〈②麻酔下での歯科処置の様子〉 ②口を触らせてくれるようになったら次は歯を触ります。歯を触らせてくれたらすぐに褒めておやつをあたえます。こ の動作を繰り返して歯に触れている時間を徐々に伸ばしていきます。 ③実際に歯ブラシを当ててみましょう。はじめに歯ブラシに歯磨きペーストを付けてなめさせます。嫌がらなければその まま歯磨きをしてみます。歯ブラシが難しい場合はガーゼを指に巻いて行いましょう。 ※焦らずに1ステップずつ時間をかけてあげましょう。また、イヌ、ネコにとって歯磨きの時間が飼い主とのコミュニケー ションにもなるため、しっかりほめてあげることが大切です。 麻酔下レーザー ◆病院での歯科処置◆ 麻酔下スケーリング ①無麻酔での治療 歯磨きでは取れない歯石がついてしまったときは、スケーリングという特殊な器具を使って歯石 を削り取ります。歯の表面はエナメル質という硬い組織で覆われていますが、自宅で同じことを 行おうとするとエナメル質を傷つけてしまう可能性があるため、必ず動物病院で処置を行いま しょう。当院では、通常のスケーリングは無麻酔で行います。無麻酔での処置は①の写真のよう に保定をして行いますが、動物が動いて処置が行えない時は無理をしません。また、歯の裏側の 歯石は無麻酔の処置では取れない為、完全にはきれいになりません。 治療前 治療後 ②麻酔下での治療 歯磨き以外にも、「デンタルバイオ」という歯のサプリメントがあります。動物がおいしく食べれるよう、味がついている 汚れが酷く通常のスケーリングでは取れない歯石があるときは麻酔下にて超音波スケーリングを使って歯石を取り除 為比較的飲みやすいです。使ってみたい方は、診察時獣医師にご相談ください。また、マズルコントロールについては当 きます。また、歯周病などにより抜歯をする必要がある場合なども、麻酔下にて抜歯、ルートプレーニング、レーザー治療 院でしつけ教室やパピー教室も開催していますので、成犬になっても諦めずスタッフにご相談下さい。 を行います。麻酔下での治療は動物が動く心配がなく、歯の裏側の歯石まで超音波スケーリングで取り除けるので完全 にきれいになります。しかし、一度きれいになっても繰り返し歯は汚くなくなるので、日々の歯磨きが大切です。 歯周病は予防ができる病気です! 次は、写真で当院での歯科処置の様子を紹介します。→ 歯磨きや病院での定期歯科処置で健康な歯を保ちましょう!!
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