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うららか健康大学
『最近みかける
ビタミンD欠乏性くる病
小児科 部長
―お子さんは大丈夫ですか？−』酒井 信子
はじめに
ビタミンD 欠 乏 性くる病は、栄 養 状 態が良くなかった昔に多く見られました。しかし、いくつか
の社会的背景を理由に、近年再び増加傾向にあります。
ビタミンD欠乏性くる病とは？ 症状は？
ビタミンDは皮 膚が紫 外 線 の 照 射を受けて、コレステロー ルから合 成される経 路と食 物から
摂取される経路の2通りあります。ビタミンDが不足すると、成長期（骨の発育期）の小児でカル
シウムが骨に沈着せず、軟らかい骨様組織が増加します。多くの場合、骨の成長障害および骨格
や 軟 骨 部 の 変 形（ O 脚 ）を伴 います。また、肋 骨 のこぶ（ 肋 骨 念 珠 ）、肋 骨 の 前 方 突 出（ 鳩 胸 ）、歩
行開始の遅れや歩行異常、低身長となります。
〈典型的なくる病の膝関節レントゲン写真〉
近年増加している要因は？
ビタミンD 欠 乏 性くる病が近 年 増 加している要 因は大きく3 つ あります。1つ 目 の 要 因は、母
乳 栄 養 が 推 進 されたことです 。母 乳 は 、免 疫 など赤 ちゃんにとって 好ましいことが 多 い の です
が、ミルクと比較して格段にビタミンD含有量が少ないのです。母乳をあげている母親自身のビ
タミンD不足もリスク因子に挙げられます。2つ目の要因は、日光浴不足です。近年、紫外線と皮
膚がん の 関 連が明らかになってから、紫 外 線 対 策が盛 んにとられるようになりました。ビタミン
Dは皮膚から70∼90％が合成されるため、紫外線曝露を過度に避けることにより、赤ちゃんの
ビタミンDが不 足するのです。実 際に、北 海 道 など緯 度 の 高 い 地 域 、外 出 制 限している乳 幼 児 、
日焼け止めクリームを頻 用している乳 幼 児などにビタミンD 欠 乏 性くる病が多く見られます。さ
らに最 近では、放 射 線を過 度に恐 れるあまりに外 出を制 限した結 果 、くる病を発 症してしまった
2
乳 幼 児もいます。3つ目 の 要 因は、食 事 制 限や
食 事 の 偏りで す 。そ の な か で もっとも 多 い の
は、食 事アレルギーやアトピー 性 皮 膚 炎がある
乳 幼 児です。卵や魚はビタミンDが多く含まれ
ています。食 事 制 限されていて、適 切な代 替 食
品 の 指 導 が 行 わ れ な かった 場 合 にビタミン D
欠乏性くる病が発症します。
診断は？ 血 液 検 査と骨 のレントゲン撮 影で診 断します。骨 のレントゲンは、主に成 長が盛 ん な 膝 関 節 、
手 関 節でのくる病 所 見が診 断に役 立 ちます。さらに、生 活 環 境により、ビタミンD 欠 乏 性くる病
を疑うことが大事です。
治療は？
治 療はビタミンD の 内 服を行 います。ビタミンD の 補 充が、過 量にならないように定 期 的に血
液 検 査や尿 検 査を行 い ながら、注 意して治 療します。治 療が有 効 な 場 合 、骨 のレントゲンでのく
る病所見はおおむね半年程度で改善します。
予後は？
適 切に生 活 環 境が改 善されれば、くる病 の 予 後は良 好です。とくに、乳 児 期 発 症 の 場 合は、母
乳 以 外 の 栄 養が増えることによりビタミンD 摂 取 量が増 加し、外 出 の 機 会が増えることから、治
療を終 了できることが多 いようです。近 年 、ビタミンD 不 足と1 型 糖 尿 病や悪 性 腫 瘍との 関 連が
あることも報告されており、注意が必要です。
予防するには？
ビタミンD 欠 乏 性くる病 は 予 防 が 可 能 な 疾 患 です。母 乳 育 児 の 場 合 、母 親 がビタミンDを摂
取すること、赤ちゃんも適度な日光浴（冬の関東でだいたい1時間以上なので、東北ではそれ以
上！）をすること、食事制限は危険性や必要性を認識したうえで行うことが重要です。
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