リサーチ TODAY 2014 年 3 月 20 日 NY 報告、寒波が去れば今年も春回復アノマリー 常務執行役員 チーフエコノミスト 高田 創 米国では昨年12月から今年2月にかけて、大規模な寒波や降雪が発生し、同期間の経済活動を下押し した。みずほ総合研究所では今月、ニューヨークに駐在するエコノミストが、米国の寒波の影響について、 「米国経済に対する悪天候の影響」と題するリポートを発表しその影響を計量的に分析している1。 下記の図表はそのリポートにおける寒波の影響を示すものである。昨年12月、今年1月、2月それぞれに ついて、気温の低下や降雪が発生した州・地域の経済活動のシェアを合計したものである。気温の低下の 影響を受けた州・地域の割合は、12月では約5割にとどまっているものの、1月から2月にかけておよそ6~ 8割に高まっている。また、何れの項目でも1月がピーク(7~8割)となっている。降雪では、12月から2月に かけて影響を受けた州・地域の割合が全ての項目で増加した。なかでも、2月中旬に東海岸一帯を襲った 大雪による影響は甚大で、特に影響が大きかったのが消費や住宅であったことがわかる。ここでいうカテゴ リは米国海洋大気庁による大雪の影響度合いを示すものである。なお、3月5日に発表されたFRBの地区 連銀報告(ベージュブック)では「weather」という単語が119回(1月15日公表の前回ベージュブックは21回) も登場しており、こうした点からもいかに天候要因が米国経済に影響していたかがわかる。 ■図表:悪天候の影響を受けた米国の経済活動の範囲 シェア 小売売上高 2014年 1月 2月 2013年 12月 住宅着工許可件数 2014年 1月 2月 2013年 12月 製造業出荷額 2014年 1月 2月 非農業部門雇用者数 2013年 2014年 12月 1月 2月 44.5% 75.2% 68.4% 49.3% 74.3% 64.7% 55.3% 81.7% 78.0% 45.3% 76.8% 70.9% 0.0% 29.8% 35.0% 0.0% 24.5% 28.1% 0.0% 39.6% 42.8% 0.0% 30.5% 36.0% 平年に比べ高い 55.5% 24.8% 31.6% 50.7% 25.7% 35.3% 44.7% 18.3% 22.0% 54.7% 23.2% 29.1% 降雪あり 58.9% 77.1% 77.1% 52.8% 77.2% 77.2% 70.2% 83.6% 83.6% 61.6% 78.7% 78.7% カテゴリ4 0.0% 0.0% 18.2% 0.0% 0.0% 24.5% 0.0% 0.0% 13.4% 0.0% 0.0% 17.1% カテゴリ2 17.4% 0.0% 21.0% 13.3% 0.0% 13.7% 23.4% 0.0% 13.6% 18.1% 0.0% 21.6% カテゴリ1 41.6% 77.1% 37.9% 39.4% 77.2% 39.0% 46.8% 83.6% 56.6% 43.5% 78.7% 39.9% 降雪なし 18.2% 0.0% 0.0% 24.5% 0.0% 0.0% 13.4% 0.0% 0.0% 17.1% 0.0% 0.0% (降雪データなし) 22.9% 22.9% 22.9% 22.8% 22.8% 22.8% 16.4% 16.4% 16.4% 21.3% 21.3% 21.3% 平年に比べ低い 気温 2013年 12月 大幅に低い 降雪 (注)月中に 1 日でも地域降雪指数(Regional Snowfall Index)に基づく降雪があれば、該当する降雪カテゴリに分類。 山脈地域と太平洋岸は RSI データが得られないため、「降雪データなし」に分類。 (資料)米国海洋大気庁などよりみずほ総合研究所作成。 次ページの図表は市場参加者の米国の景気状況の楽観度合いをみるために、みずほ総合研究所が独 1 リサーチTODAY 2014 年 3 月 20 日 自に作成しているインデックス(Cumulative Surprise Index)である。米国経済指標と市場コンセンサスとを 比較し、公表値がコンセンサスを上回ったか、下回ったかによって作られる。2013年12月以降、このインデ ックスがプラス圏に浮上するとともに、米国の先行き見通しの改善と株高が顕現された。昨年後半以降、日 米欧の株式市場の好調さもこうした市場の楽観的な動きを受けたものだった。しかし、2014年1月半ば以降、 このCSIは一転して低下に向かい、2月にはマイナス領域にまで低下するなかで、米国経済への不安も醸 成された。さらに、丁度その時期は、アルゼンチン危機も含めた新興国不安が高まった局面であり、加えて 米国不安も合わさり、世界的に「リスク・オン」から「リスク・オフ」に大きく株式市場が転換した。ただし、3月 になって先述の寒波の影響が後退し、CSIは漸くプラスに戻るに至った。少なくとも、米国経済の不安は収 拾に向かうと見られる。 ■図表:市場予想と経済指標:Cumulative Surprise Index(CSI)推移 50 40 2012/5-2013/4 30 2011/5-2012/4 20 10 0 ▲10 ▲20 2013/5-2014/4 ▲30 ▲40 ▲50 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 (注)Bloomberg が公表している全ての米国経済指標の市場コンセンサスと公表値を比較、コンセンサスよりも良好な 場合は+1、下回る場合は-1 として 30 日間累計したインデックス。単一の指標でも前月比と前年比があれば夫々 を市場コンセンサスと比較してカウント。直近は 2014 年 3 月 14 日。 (資料)Bloomberg よりみずほ総合研究所作成 2011年、2012年の動きを振り返ると、今年同様、CSIについては年初に一旦マイナス領域になっても、3 月以降春先に反転し上昇に至るというアノマリーが続いていた。同様の動きは、図表には示されていない が、遡れば2007年度以降に毎年生じてきた季節性である。なかでも今年は異例な寒波の影響が経済指標 に表れていたことを勘案すれば、今年も4月にCSIが改善されやすいと我々は展望している。すなわち、今 年も春に改善のアノマリー、「グリーン・シュート」(春の芽吹き)論が生じる可能性が強いのではないか。 残る課題は、2014年のもう一つの冬の嵐である新興国の乱気流が収まるかだ。世界経済は、米国発の 改善で巡航速度に向けて離陸をしたが、年初から米国の寒波と新興国不安という乱気流で「シートベルト 着用サイン」が付いたままの状況を続けている。ここで、新興国市場の不安の落ち着きも加われば、フライト は安定軌道に戻り、市場の「リスク・オフ」のモードも再び「リスク・オン」に転じていくと展望している。 筆者の都合により、3 月 24 日(月)から 3 月 25 日(火)は休刊とさせていただきます。 1 服部直樹 「米国経済に対する悪天候の影響」(みずほ総合研究所 『みずほインサイト』 2014 年 3 月 13 日) 当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり、商品の勧誘を目的としたものではありません。本資料は、当社が信頼できると判断した各種データに基づき 作成されておりますが、その正確性、確実性を保証するものではありません。また、本資料に記載された内容は予告なしに変更されることもあります。 2
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