アンモニア分子輝線による大質量星形成領域の

アンモニア分子輝線による大質量星形成領域の観測 2(IC2162)
半田利弘、河野樹人、亀崎達也、Ross Burns、松尾 光洋、馬場達也、濱畑秀峰、星原一航、面高俊宏(鹿児島大学) 、永山匠、James Chibueze、
(国立天文台)、仲野誠(大分大学)
概要
我々は、45m電波望遠鏡を用いて大質量星形成領域IC2162のアンモニア分子輝線(J,K)=(1,1)(2,2)(3,3)と水メーザーの同時観測を行った。
観測の結果、IC2162は2つのHⅡ領域S255,S257に挟まれた領域で分子雲の回転温度が高く速度幅が広くなることがわかった。水メー
ザーが観測された領域に対してSEDを用いて星の質量を見積もったところ25~30太陽質量と求まった。これらのことから、IC2162は、コア
同士の衝突もしくは、HⅡ領域からの圧縮により大質量星が形成されていると考えた。
1. 導入
IC2162は、距離1.59kpc(Rygl+, 2010)にあるHⅡ領域に隣接する大質量星形成領域である。
先行研究では、HⅡ領域の拡大に伴う隣接する分子ガスの圧縮により、誘発的星形成が
示唆されている。(Bieging et al.2009)
SCUBA(850μm)の観測結果から分子雲には、コアが3つ存在する。(Wang et al.2011)
そこで我々は、HⅡ領域と星形成の関係を調べるために観測で得られたアンモニアのマッ
プと連続波画像、赤外線画像との重ね合わせを行った。
3. 結果
NH3(1,1) 積分強度図
回転温度の分布
K km/s
K
2. 観測
野辺山45m電波望遠鏡
観測天体
観測周波数
IC2162
NH3(1,1)=22.6914, NH3(2,2)=23.722GHz
NH3(3,3)=23.870GHz, H2O=22.235GHz
観測期間
2013/12/5~2014/6/10
(バックアップ観測)
観測領域(offset原点)
(6h12m56s,+17d57’42”)
ビームサイズ
1.2’
グリッド間隔
0.6’
観測点数
107
速度分解能
1pc
Δb(degree)
Δb(degree)
1pc
雑音レベル(rms)
0.04K
4. 考察
①赤外線との重ね合わせ
Δ ℓ(degree)
Δ ℓ(degree)
検出されたNH3のスペクトル
水メーザーの観測結果
0.38km/s
背景・・・Spitzerによる赤外線画像 (Chavarria et al.2009)
(赤・・・8.0μm,緑・・・4.5μm,青・・・3.6μm)
白い円・・・HⅡ領域
等高線(青)・・・NH3(1,1)
• アンモニアクランプの部分でトリプルピークの水メーザーを検出
• 水メーザーの速度はアンモニアと同一であった。
• 回転温度は、コアの西側で高い傾向
回転温度の高い点で水メーザーを検出
② 連続波との重ね合わせ
②
等高線(水色)・・・VLAによる1.465GHzの
連続波(Bieging et al.2009)
等高線(ピンク)・・・NH3(1,1)
Ss
• 連続波では、2つのHⅡ領域の間に分子雲が存在
• 回転温度の分布と比較すると、HⅡ領域に挟まれた部分で回転温度が上昇
• 最も温度の高い点は、Chavarria et al. 2009 で示されているクラスターと一致し、赤
外線で明るい。
• SEDを用いて星の質量を見積もったところ25~30太陽質量となり、大質量星が存在
することがわかった。
③ 速度幅と速度勾配
速度幅 (赤線は、位置速度図を作った場
所を示し、*は水メーザーの位置を示す)
位置速度図
(等高線はNH3(1,1)の積分強度を示す)
① 2MASS(J,H,K)
② WISE(3.4μm,4.6μm,12μm,24μm)
③ SCUBA(450μm,850μm)
③
①
SEDの作成方法
1. NASA/IPAC INTRARED SCIENCE ARCHIVE で座標を入力して検索
2. 近赤外・中間赤外・遠赤外のfluxデータがあるかを確認
3. SEDを作りたい天体が望遠鏡のapertureに入っているかどうか確認
*目的天体がaperture内で最も明るいと仮定
4. On line SED fittingのページ
(http://caravan.astro.wisc.edu/protostars/sedfitter.php)で光度、距離、星間減光の
範囲(0-100mag)を入力しSEDをフィッティング
5. 複数のフィッティング結果から妥当な範囲を確認
Δb(degree)
5. 結論(3天体について)
Δ ℓ(degree)
• HⅡ領域に挟まれた領域で速度幅が広い。
• 特に(Δℓ,Δb)=(-0.05,+0.02) 付近で速度幅が拡大
• 位置速度図より東西方向に速度勾配が存在。
・回転温度は、HⅡ領域に挟まれた部分で上昇
・回転温度の高い場所で水メーザーを検出
S235,NGC6914,IC2162 すべてで同じ傾向
参考文献
Bieging et al.2009; Rygl+ 2010; Wang et al.2011; Chavarria et al.2009;
Robitaille et al. 2007