池田 重政 Who Moved My Cheese?

A net
Vol.18 No.2 2014
セントルイス大学麻酔学教室(前所属) Who Moved My Cheese?
An Amazing Way to Deal with Change in
Your Work and in Your Life
Spencer Johnson 著
Vermilion
1998年
ハードカバー 9.99ドル
ペーパーバック 5.99ドル
他にキンドル版もあり
http : //www.eburypublishing.co.uk/educations/
who-moved-my-cheese/9780091816971
池田 重政
を考えようともせず、直ぐに行動に移すことができな
い。Hawはチーズが無くなってしばらくして恐怖心を
克服し行動を始め、新しいチーズを見つけることがで
きる。行動しようとしないHemのために、迷路の壁に
幾つかのメッセージを残す。それは著者が読者みんな
に宛てたメッセージでもある。
「チーズ」はある人にとっては仕事、人間関係、金銭
などであり、
「迷路」は我々が働く組織、住む場所、環
境などである。“If you do not change, you can become
extinct”と Hawに託す著者のメッセージは、「目まぐ
るしく変わる状況のなかで生き抜くには、現状維持で
あってはならない、変化を恐れてはならない」であろう。
ある IT関連会社の社長が週刊誌で推薦していた一
著者 Spencer Johnsonは1940年生まれのアメリカ人
風変わった題名の本「 Who Moved My Cheese ?:An
医師で、本書は1998年初版後、日本語を含む41ヵ国
Amazing Way to Deal with Change in Your Work and
語以上で出版されている。この書評は英語版による。
in Your Life」を書評を調べることもなく購入した。
現在までに2,000万部を超えるベストセラーで、主に
タイトルから、多分ビジネス関係の本と思っていたの
ビジネス関係者に読まれているが、医学関係者には
で、本を開くまでは著者が医師であることも知らな
あまり知られていないのは残念である。常に変化し、
かった。医学の本ではないが、多忙な医学関係の人達
進歩していく分野に従事している者にとって、登場す
にも手軽に読める本として紹介したい。この100頁に
る 4 者の各々が如何に「変化」に対応、行動したかの
も足りない本は、シンプルな寓話を通し読み手に大切
物語から学ぶことは多い。
なメッセージを伝える、イソップ物語の現代版といえ
よう。
迷路に住んでいる 2 匹のネズミSniff、Scurryと 2 人
の小人Hem、Hawが居場所にあったチーズが無くなる
という「変化」にどう反応し、行動したかで結果が大
きく違ってくるという物語である。4 者は象徴的な名
前を付けられている。Sniffは何か変わったことがある
と本能的に直ぐに臭いをかぐことができ、Scurryはす
ばやく行動に移すことが出来る。ネズミたちは変化を
恐れず居場所を離れてチーズを探す。しかし分析力も
判断力も備えた小人のHem、Hawは変化が起こっても
その前の状態に固執し、名前の通り優柔不断で対応策
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