NO-FOODLOSSプロジェクトのマーク[PDF形式]

生活知識情報
食品ロスの削減に向けて~
第
21 回
NO-FOODLOSS
プロジェクトのマーク
知っておきたい
身の回りのマークのいろいろ
食べ物が作られてから家庭で消費されるまで
の過程において、食品ロスはさまざまなかた
ちで発生しています。今回は、そうした食品
ロスをなくすためのキャンペーン・食品ロス
削減国民運動「NO – FOODLOSSプロジェク
ト」のロゴマーク「ろすのん」を紹介します。
長野県松本市では、宴会などで離席し酒を注ぎ合う慣習による食べ残
しを減らすため「乾杯後30分と終宴前10分は自席で料理を」とろすの
んのついたコースターを協力飲食店へ配布し、食品ロス削減を呼びか
けている。市民の反応も良く、ある飲食店では2年前に比べ、廃棄量
が6割ほどに減ったという。なお、右のテーブルトップは農林水産省
ホームページよりダウンロード可。
http://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/pdf/sankakutyu.pdf
重光 純 Shigemitsu Jun
ライター・エディター。省庁発行の広報誌の編集に長年携わる。
家庭の冷蔵庫の奥でいつの間にか古くなって
の食品ロスですが、過剰除去による調理くずや
しまった食品や、賞味期限切れの食品を「味が
手つかずの食品廃棄、食べ残しなど、家庭から
落ちた」と思って捨ててしまった経験はありま
出る食品ロスも約200 ~ 400万トンあるとみ
せんか。そうした「食品ロス」は、家庭に限ら
られています。世界で約8億4000万人が栄養
ず、食品の生産から流通、販売など、あらゆる
不 足 の 状 態 に あ る と い わ れ る な か、 前 述 の
段階において発生しています。
FAOの報告書によると、開発途上国に比べて
先進国では、かなりの量を消費段階において無
国際連合食糧農業機関(FAO)が2011年にま
駄にしている現状があるのです。
とめた報告書によると、農業生産から消費に至
るまでの間に、世界の全生産量の3分の1に当
そこで、こうした食品ロスを少しでも減らそ
たる約13億トンの食料が毎年廃棄されていると
うと2012年10月、農林水産省はじめ6府省庁*1
いいます。
が連携して
「食品ロス削減関係省庁等連絡会議」
では、日本の状況はどうでしょう。農林水産
を設置しました。2013年から、官民協力による
省などの調べによると、日本では年間約1700万
食品ロス削減国民運動「NO−FOODLOSSプロ
トンの食品廃棄物が発生し、そのうち食べられ
ジェクト」を展開しています。その運動を広げ
るのに捨てられている「食品ロス」は、推計で
るためのロゴマークが「ろすのん」です。丸いお
約500 ~ 800万トンあるといいます。この量は
皿と2本のお箸、涙で「もったいない」感情を
日本のコメ生産量にも匹敵し、世界全体の食料
表現しているというイメージで制作されたこの
援助量の約2倍にもなると推計されます(2010
マークを食品のパッケージや飲食店のメニュー
年データ)
。その内訳は、約300 ~ 400万トンが
などに表示し、食品ロスに対する人々の関心を
事業系(製造や販売などの過程で出る規格外品
高めようというわけです。誕生したばかりでま
や返品、売れ残り、飲食店での食べ残しなど)
だあまり知られていませんが、これから次第に
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国民 生 活
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生活知識情報
で約4万トン、約87億円相当)が見込まれるこ
身近なマークになっていくことが期待されます。
とが明らかとなり、今後、納品期限の見直しが
期待されます。しかし、消費者の購買行動が改
まらない限り、せっかくの試みも食品ロス削減
の決め手にはなりません。
「消費期限」とは異な
り「賞味期限」はおいしく食べられる期限を示
図
ろすのん
しています。家庭ですぐに消費する予定なら、
食品ロスをなくす(non)という意味から命名。細かなキャ
ラクター設定もされていて、今後、さまざまな展開も期
待される。
なお、食品ロスのキャンペーンに賛同する企業・
団体によるこのマークの使用は無料となっている。利用
許諾申請は農林水産省ホームページから。
http://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/
index.html
手前に並んでいる商品を買うという私たちの意
識改革も大切です。
「もったいない」の意識で
食生活を見直す
消費者の購買行動からも
生まれる食品のムダ
食品ロスを削減し、リサイクルを促進するた
めに成立した食品リサイクル法(2000年)では、
それにしても、なぜ食品ロスがこんなに出る
食品関連事業者、消費者、国や地方公共団体の
のでしょう。これにはいくつか理由があり、い
責務として食品廃棄物の発生を抑制し減量する
わゆる「3分の1ルール」と呼ばれる商慣習も
とともに、肥料・飼料化などで有効活用するこ
その1つです。例えば、ある食品の賞味期限が
とを定めています。NPO団体などによる「フー
6カ月だった場合、製造から各小売へ納品され
ドバンク」というボランティア活動(賞味期限
るまでの期間はその3分の1(2カ月)以内、納
が間近となった食品や衛生上問題がない規格外
品から店頭での販売期間も同じく3分の1(2カ
品を引き取り、福祉施設などに無償で提供する
月)以内 ―― つまり、賞味期限が切れる2カ月
活動)や、飲食業界による「小盛りサイズ」の
前には値引き販売されるか、賞味期限を残した
導入などといった取り組みなど、食品ロス削減
まま店頭から撤去、廃棄されてしまうというも
のためにいろいろな手段が考えられています。
今後、世界人口は現在の約72億人から2050
のです。このような商慣習が存在する背景には、
私たち消費者の購買行動も一因としてありま
年には約96億人に増えると予測され*2、食料の
す。牛乳や卵などを買うとき、奥から日付の新
必要性はさらに高まります。食品ロスの削減は食
しいものを引っ張り出して買うことはありませ
料生産のための水やエネルギー資源の節約や地
んか。その結果、賞味期限の近いものが売れ残
球環境を守ることにもつながります。食料自給
り、廃棄されていくといいます。
率が約4割の日本で食品ロスが出続けているこ
そこで2013年8月から半年ほど、一部の食品
の現状を考え直し、海外でも有名になった「もっ
メーカーや卸売業者、スーパーなどでは実験的
たいない」の意識をもう一度、私たち消費者も
に「納品期限見直しパイロットプロジェクト」を
生活の中で見直していきたいものです。
実施しました。これは納品までの期限を2分の
1(例えば賞味期限が6カ月の場合は3カ月)と
*1 内閣府、消費者庁、文部科学省、農林水産省、経済産業省、環境省。
し、残る2分の1(3カ月)の店頭販売期間にお
*2 国際連合「世界人口推計:2012年改定版」(中位予測)
http://esa.un.org/unpd/wpp/index.htm
ける販売期限の設定は各小売の判断に任せると
◦取材・写真協力◦
農林水産省 食品産業局バイオマス循環資源課
長野県松本市 市民環境部環境政策課
いうものです。この結果、食品ロス削減に相当
の効果(飲料および賞味期間180日以上の菓子
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