5 硬化型肝細胞癌のガドキセト酸造影 MR 像と拡散強調像:特に肝内胆管癌との鑑別に ついて Scirrhous Hepatocellular Carcinoma on Gadoxetic Acid-Enhanced Magnetic Resonance Imaging and Diffusion-Weighted Imaging: Emphasis on the Defferentiation of Intrahepatic Cholangiocarcinoma Park MJ, et al: J Comput Assist Tomogr 2013; 37: 872-881 肝細胞癌の一亜型である硬化型肝細胞癌は全肝細胞癌の 4.6%を占める。この腫瘍は肝細胞癌と胆管細胞癌 の中間に位置する。硬化型肝細胞癌は腫瘤形成性の肝内胆管癌と同様に腫瘍内に豊富な線維性間質を含ん でおり、類洞様の血管腔とわずかな線維性間質を有する通常型肝細胞癌とは対照的である。この腫瘍は造影 CT および MRI においては境界不明瞭で被膜を欠き分葉状であり、造影早期相では辺縁が増強され、遅延相で は徐々に中央部が増強される。硬化型肝細胞癌と肝内胆管癌は、原発性肝悪性腫瘍の 4~10%を占めるが、治 療法が異なるのでその鑑別は重要である。肝細胞癌と比較して、胆管細胞癌はリンパ節転移など侵襲性が高く、 予後不良であるため、その手術にあたっては系統的なリンパ節郭清と腫瘍の完全切除が必要である。 (目的)この研究の目的は硬化型肝細胞癌と肝内胆管癌を、ガドキセト酸造影 MR 像と拡散強調像を用いて鑑 別することにある。 (対象と方法)硬化型肝細胞癌 41 名と肝内胆管癌 41 名に対し、ガドキセト酸造影 MR 像と拡散強調像が施行さ れた。画像は病変の形態、表面の陥凹、造影パターン、動脈相での増強部の割合、肝胆管相および拡散強調 像での標的像、および壊死の存在について検討された。 (結果)分葉状の形態、辺縁の増強効果、肝胆管相および拡散強調像での標的像が両腫瘍の主な特徴であっ た。硬化型肝細胞癌における動脈相での腫瘍径の 20%以上の増強効果が、両者を鑑別可能とする唯一の有意 差のある所見であった(多変量解析にて P≦0.006)。 (結論)ガドキセト酸造影 MR 像と拡散強調像での硬化型肝細胞癌の特徴は肝内胆管癌のそれと類似していた が、動脈相での腫瘍径の 20%以上の増強効果が両者の鑑別に有用である。 (日高のコメント)硬化型肝細胞癌の臨床病理学的特徴は、肝被膜直下近傍に存在することが多い、中心性瘢 痕の形成が多い、癌臍を認める場合がある、ほとんどの症例で中分化型を呈する、被膜を有さない傾向にある、 ということのようです(正常肝に発生し多彩な組織像を呈した硬化型肝細胞癌の 1 例; 泉 貞言ら、日消外会 誌 39(8):1385~1390,2006 年)。肝内胆管癌との画像診断による鑑別は困難と言わざるをえず、ウイルス性慢 性肝炎患者で肝内胆管癌様の腫瘍を見たら、硬化型肝細胞癌も鑑別疾患として考えておいたほうが無難でしょ うか。 (放射線科 日高 啓)
© Copyright 2024 ExpyDoc