血液流量UPによる 各種データの変化

血液流量UPによる
各種データの変化
増子クリニック 昴
○田川英昇 鹿島伸康 木下裕子 山﨑親雄
目的・方法
当院のコンセプト「安全で長生きのできる透析」
• 当院では従来,標準血液流量を200mL/minとし,透析不足などがあればその
都度血液流量を増加,その他透析条件を変更し対応していた.
• DOPPSの研究にて血流200mL/minの死亡に対する危険率を1.00とした場
合,230mL/minでは0.38まで低下するとの報告があった.
• 標準血液流量を230mL/minに上げその効果を検証した.
• 血液流量200mL/minで透析していた患者でシャント血流不足がなく,血流を上げ
ても問題ない患者95名を対象に,変更前後3カ月の透析効率,検査データなど
倫理委員会承認番号 増子H26-21
を比較した.
死亡に対する危険率
1.6
1.4
1.37
1.23
1.2
1.00
1
0.8
0.6
0.46
0.4
0.38
0.2
0
<170
170~199
200
血液流量(mL/分)
201~230
>230
DOPPSより
背景
•
•
•
•
•
•
患者数:95名
平均年齢:69.0±8.9歳
平均透析歴:9.1±8.9年
変更前血流量:200mL/min
ダイアライザ平均膜面積:1.8±0.3㎡
平均透析時間:4.1±0.3時間
血流変更後
血流変更前
5.1%
47.7%
52.3%
200mL/分
200mL/分
230mL/分以上
230mL/分以上
94.9%
結果 (HD前後BUN値 BUN除去率)
BUN値(HD前)
BUN値(HD後)
p<0.05
p<0.05
80.0
25.0
20.0
70.0
15.0
60.0
10.0
50.0
60.7
58.2
前3ヶ月
後3ヶ月
40.0
5.0
15.9
13.7
前3ヶ月
後3ヶ月
0.0
BUN除去率
p<0.05
85.0
80.0
75.0
70.0
65.0
73.8
76.3
60.0
前3ヶ月
後3ヶ月
• HD前後BUN値で有意に下降
• BUN除去率では有意に上昇した
結果 (kt/v クリアスペース率 %CGR)
クリアスペース率
Kt/v
p<0.05
2.20
90.0
1.90
80.0
1.60
70.0
1.30
1.64
1.76
前3ヶ月
後3ヶ月
1.00
60.0
p<0.05
71.1
73.5
前3ヶ月
後3ヶ月
50.0
%CGR
n.s.
140.0
110.0
80.0
107.6
109.5
前3ヶ月
後3ヶ月
50.0
• Kt/v クリアスペース率で有意に上昇
• %CGRは上昇傾向にあった
結果 (透析前 カリウム リン クレアチニン)
カリウム
リン
n.s.
8.0
6.0
6.0
4.0
4.0
2.0
n.s.
8.0
5.0
4.9
前3ヶ月
後3ヶ月
0.0
2.0
5.3
5.1
前3ヶ月
後3ヶ月
0.0
クレアチニン
n.s.
15.0
12.0
9.0
6.0
10.4
10.3
前3ヶ月
後3ヶ月
3.0
0.0
• カリウム値 リン値 クレアチニン値ともに
に変化はなかった
結果 (透析後 カリウム リン クレアチニン)
カリウム HD後
リン HD後
p<0.05
6.0
3.0
p<0.05
2.5
4.0
2.0
1.5
2.0
3.5
3.3
0.0
1.0
2.2
1.9
前3ヶ月
後3ヶ月
0.5
0.0
前3ヶ月
後3ヶ月
クレアチニン HD後
p<0.05
5.0
4.0
3.0
2.0
3.5
3.2
前3ヶ月
後3ヶ月
1.0
0.0
• カリウム値 リン値 クレアチニン値とも
有意に低下した
結果 (GNRI nPCR Alb)
GNRI
nPCR
n.s.
n.s.
100.0
1.20
90.0
1.00
0.80
80.0
70.0
91.8
91.1
60.0
0.60
0.40
0.88
0.87
前3ヶ月
後3ヶ月
0.20
50.0
0.00
前3ヶ月
後3ヶ月
Alb
n.s.
5.0
4.0
3.0
2.0
3.6
3.6
前3ヶ月
後3ヶ月
1.0
0.0
• GNRI nPCR Albとも有意な変化
はなかった
透析中の血圧低下に対する処置(補液回数)
60
50
40
30
20
47
43
変更前
変更後
10
0
血流変更前1か月は透析中の血圧低下による補液が47回で
あったのに対し,変更後1か月は43回とほとんど差はなかった.
まとめ
•
•
•
•
•
血流変更後94.9%の患者が230mL/min以上となった.
BUN除去率 Kt/v クリアスペース率は有意に上昇した.
透析前後BUN値は有意に低下した.
HD後のカリウム リン クレアチニン値は有意に低下した.
栄養状態については差はなかった.
• 透析中の血圧低下に対する処置(補液回数)に差は
なかった.
考察
• 血液流量の増加は患者に大きな負担を与えずに
小分子量物質で良好なデータを得ることができる.
• 生命予後については今後,長期的な観察が必要で
ある.
• 当院のコンセプト「安全で長生きのできる透析」
今後も必要な患者だけではなく,クリニック全体で
患者の生命予後をよくするような取り組みをして
いきたい.