第 49 回日本理学療法学術大会 (横浜) 5 月 31 日 (土)14 : 50∼16 : 05 第 5 会場 (3F 303)【セレクション 内部障害!循環】 1073 心不全患者の栄養状態とリハビリテーション効果との関係 ―Geriatric Nutritional Risk Index を用いた検証― 櫻田 弘治,石井 香織,長山 医,中嶋美保子,葉山恵津子,氷見 智子,加藤 祐子 心臓血管研究所 key words 心不全・運動療法・GNRI 【はじめに・目的】 栄養関連指標である GNRI[Geriatric Nutritional Risk Index={14.89×血清アルブミン}+ {41.7×(現体重! 理想体重) } ]は手術 後患者や透析患者などの生命予後予測指標として注目されている。我々は,心不全患者における GNRI が,その後の心血管疾患 による死亡の規定因子であることを報告した。心不全患者は心不全の進行により,呼吸負荷や交感神経系の活性化によるエネル ギー消費量の増大や筋肉の異化亢進に伴う筋肉量の低下,腸管浮腫による腸管運動障害による吸収障害や食欲低下によって,低 栄養状態に陥りやすいといわれ大きな問題となっており,心不全患者における栄養状態の改善が急務とされている。一方,心不 全患者の予後規定因子として確立とされている運動能の指標と栄養状態の関係について検討した報告は少ない。今回,栄養関連 指標として GNRI を用いて,心不全患者の栄養状態と運動療法の効果との関係を検討した。 【方法】 2011 年 6 月から 2013 年 10 月までに,NYHAII 度以上の心不全患者に対する運動療法を週 2 回以上の頻度で 291±180 日間実施 した 21 例{男性:14 例,年齢:62±11 歳,NYHA(II 度:11 例,III 度:9 例,IV 度:1 例)}を対象とした。運動療法は,有 酸素運動とレジスタンストレーニングを行った。評価項目は,患者基本情報,運動療法前後の血液生化学データ (Hb, CRP, eGFR, VCO2 slope, ALB,BNP) ,心臓エコー検査による左室駆出率 (LVEF) ,GNRI,心肺運動負荷検査 (AT@VO2,Peak VO2,VE! Peak WR) とした。心不全患者による運動療法前後の GNRI 改善率と心肺運動負荷検査による諸指標の改善率との関係,さらに, 心不全患者の中で GNRI が 94 未満の心不全患者を,栄養障害リスクあり心不全群(7 例)の運動療法前後の GNRI 改善率と心肺 運動負荷検査による諸指標の改善率の関係について検討した。統計学的手法は運動療法の効果については Paired t" test,相関関 係は Spearman の順位相関係数により統計解析を行った。全ての検定における有意水準は p=0.05 とした。 【倫理的配慮,説明と同意】 本研究の実施にあたり,事前に研究の趣旨,研究内容及び調査結果の取り扱いについて説明し同意を得た。また,本研究は他者 との利益相反はない。 【結果】 運動療法前後の Hb,CRP,eGFR,ALB,BNP,LVEF は有意差を認めなかった。GNRI は運動療法前が 97.3±9.2 から運動療 min! kg から 法後に 100.4±7.1 と有意な改善が認めた(p<0.05) 。また,運動療法によって AT@VO2 は運動療法前が 9.2±1.9ml! min! kg から運動療法後に 14.4±3.2ml! 運動療法後に 10.0±1.8 ml! min! kg(p<0.01) ,Peak VO2 は運動療法前が 12.7±3.8 ml! min! kg(p<0.01) ,Peak WR は運動療法前が 68.1±28.0W から運動療法後に 79.8±27.1W(p<0.01)と有意に改善したが,VE! VCO2 slope は運動療法前が 37.0±9.8 から運動療法後に 34.7±10.3 と有意差は認めなかった。 全ての心不全症例において,運動療法前後の GNRI 改善率と心肺運動負荷検査による諸指標の改善率には有意な相関を認めな (r=0.978 ; p<0.001) , かった。しかし,栄養障害リスクあり心不全群において,運動療法前後の GNRI 改善率と AT@VO2 改善率 ,GNRI 改善率と Peak WR 改善率(r=0.791 ; p<0.05)には有意な正の相 GNRI 改善率と Peak VO2 改善率(r=0.877 ; p<0.001) 関関係を認めたが,GNRI 改善率と VE! VCO2 slope 改善率には相関関係を認めなかった。 【考察】 心不全患者を対象とした,GNRI を用いた本研究結果より,栄養障害リスクのある患者は,栄養状態の改善率によって,運動療 法の効果に影響を及ぼす可能性がある。このため,今後は積極的な栄養状態の改善に対する介入研究が必要と考える。 【理学療法学研究としての意義】 心不全患者に対する運動療法の有効性は周知されている。今回の研究結果によって,栄養障害リスクのある患者は,栄養状態の 改善へのアプローチも心臓リハビリテーションの役割のひとつであると再認識できた。栄養状態の改善によって,さらなる効果 的な運動能の改善が期待され,心不全患者の生命予後の改善に影響する可能性が示唆された。
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