成人教育論と人材形成 -M.S.ノールズのアンドラゴジー

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Title
成人教育論と人材形成 -M.S.ノールズのアンドラゴジー・モデルと
その批判を中心に-
Author(s)
三原, 泰煕
Citation
経営と経済, 70(3), pp.123-138; 1990
Issue Date
1990-12
URL
http://hdl.handle.net/10069/28449
Right
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経営と経済第70巻第3号1990年12月
《研究ノート》
成人教育論と人材形成
−M.S.ノールズのアンドラゴジー・モデルとその批判を中心に−
三原泰煕
Iはじめに
わが国の企業経営は転換期にあるといわれて久しいが,ここ数年における
経営環境の変化は特に顕著である。l変革の時代には新しい人材が求められ
る。問題は期待される「新しい個」〔経済同友会(1989)〕としての労働者・
従業員・管理者経営者がいかに形成されるのか,従来のOJT,Off-JT,自己
啓発という体系およびその内容・方法でいいのか,ということである。そこ
で,元々社会教育,継続学習,生涯学習のための理論・技術として展開され
てきた「成人教育」「成人学習」論であるが,本稿では,自己主導的学習を
強調するノールズ(M.S.Knowles)の成人教育論(andragogy)の原理とそ
の評価・批判を紹介・検討し,職場教育・学習の考察の手掛かりを得ようと
するものである。
Ⅱ アンドラゴジーの原理と応用
1.アンドラゴジーの展開
アンドラゴジー(andragogy)とは,成人の教育と学習にかんする固有の
事実や独自性に着目して,従来の教育学・ペグゴジー(pedagogy)から区別
するために,ギリシャ語の成人を意味するandrosと指導を意味するagogos
から合成されたものであり,ペグゴジーが主として子供の教育学であるのに
たいして,成人教育の理論,「成人の学習を援助する技術と科学」を指す名
1
2
4
経営と経済
称として使用されている。アンドラゴジーの用語自体は, 1
8
3
3年にドイツ人
教師によって高齢者教育の意味で使用されたのが最初であるが,成人教育・
学習の関連で使用されるに至ったのは 1
9
2
0年代以降である。成人教育にかん
する研究は,ヨーロッパとアメリカ合衆国において,ほとんど接触なしに展
開されてきたが, 1
9
6
0年代から盛んとなり, 1
9
7
0年代において大きな貢献を
したのが,
F
r
a
n
zP
o
e
g
g
e
l
e
r
)とアメリカのノールズ
ドイツのペゲラー (
(
M
.S
.Knowles)である。
当初,
r
子供を教える技術と科学」としてのベダゴジーと「成人が学習す
るのを助ける技術と科学」としてのアンドラゴジーとは対立する概念として,
二分法的に扱われたが,その後,アンドラゴジーの方法を小学生,中学生に
適用して成功したこともあり,特定の状況に応じて,並行して使うことので
きるもうひとつのモデルとして把握されるにいたっている (
Knowles(
19
8
0
),
p.43J。
2
. 理論的基礎-学習者についての基本的想定
アンドラゴジーは,ノールスーによれば,学習者の自己概念,学習者の経験
の役割,学習へのレディネス (
r
e
a
d
i
n
e
s
s
),時間的パースペクティヴ,学習
へのオリエンテーションについて,ペダゴジーとは決定的に異なる想定に立
っている (
Knowles(
19
8
0
),p
p
.43-44J。これらの想定については,既に
紹介されているところであり,その差異を要約的な表によって示せば次のよ
うになる。
ペダゴジーとアンドラゴジーの諸想定の比較
ペダゴジー
アンドラゴジー
学習者の自己概念
依存的
自己主導性の増大
学習者の経験の役割
あまり価値をもたない
ゆたかな学習資源となる
学習へのレディネス
年齢段階・カリキュラム
生活からの必要
時間的パースベクティヴ
延期された応用
応用の即時性
学習へのオリエンテーション
教科中,心
問題・課題中心
出所:池田 (
983),p
.3
4,木全(19
8
5
),p.66,参照。
成人教育論と人材形成
1
2
5
これらのアンドラゴジーの想定は実践にたいしてそれぞれいくつかの示唆
を含んでいる C
K
n
o
w
l
e
s(
19
8
0
),p
p
.4
5
5
4
J。やや長くなるが,その要点
は次のようである。
(
1
) まず,学習者の自己概念についてみると,子供は成長するにつれて,そ
の自己概念はより大きな自己主導性の方向に動き,自分自身で決定でき,そ
の結果に直面し,自分自身の生活を管理することのできるものとして,自己
をみるようになる。ところが「教育」と L、ぅ活動に入るや,以前の学校教育
が受身的享受であったことから,依然として座って腕組みをして“ T
each
me." という態度をとり,教師もそれを受けて,依存的存在として扱う時,
成人学習者の内部で葛藤が起こる。そこで成人学習者が学習者の役割,自己
主導的学習のスキルについて新しい思考方法を得るのを助ける若干の予備的
経験をプログラム設計に組み込むことが必要になる。そしてひとたび、自分の
学習に責任をとることができることを知るや,彼らは解放感と興奮を経験す
る。それは,自我の参画を伴う学習であり,最も報いのある経験なのである。
ここから引き出される実践への合意としてつぎのものが指摘される。
①学習環境の整備一大人サイズ,色彩などにおける快適な物的環境,および
成人が受容され,尊敬され,支持されていると感ずる心理的環境の整備の必
要
。
⑦学習の必要・欲求の診断の過程への参画。
①自己の学習計画の過程に参加すること。
①学習一教育の相互作用,学習者と教師の相互責任としての学習経験の実行。
教師の役割は学習者が学習するのを助けることである。
①学習の評価。基本的には自己評価の過程である。
(
2
) つぎに,経験の役割についてみると,長く生きれば大量の経験が蓄積さ
れるし,また彼らは違った種類の経験をもっ。大人はその経験の蓄積から自
己のアイデンティティを引き出す。そこで,経験が使われないか,その価値
が極小であるような状況におかれたことを知るとき,否定されたのは経験の
みではなく,彼らは彼らの人格 (
p
e
r
s
o
n
)が否定されたと感ずる。ここから
学習について 3つの帰結が出てくる。①成人は他人の学習に貢献するものを
1
2
6
経営と経済
多くもっている(学習のゆたかな資源である)。②成人は経験のより深い基
礎をもち,それらと新しい経験を関連づける。①大人は大量の固定化した習
慣と思考パターンを獲得しており,それゆえに,偏見が少なくない。ここか
ら成人の持つ経験の差異から生ずる実践への合意としては
3点が指摘され
る
。
①経験をゆたかな学習資源として活用する,経験にふれる技法を強調するこ
と。したがって,学習計画は個人別であること O
e
a
r
n
i
n
gc
o
n
t
r
a
c
tの利用)。
②実践的応用を強調すること。新しい概念やより広い一般化は学習者から抽
出された人生経験によって示すように注意する。すなわち, どのようにして
学習したものを日常生活に応用しようとしているかを示すこと。
①解凍と経験から学ぶことを学ぶこと。すなわち,先入観から解放されてよ
り客観的に自分を見ることができるように援助すること。
(
3
) 学習へのレディネスについて
子供は,主として生理的,精神的な成熟の結果としての発達課題をもつの
であるが,成人の場合にも,主として社会的役割の推移の結果として,成長
e
a
d
yt
ol
e
a
r
nになる。例
のある局面では発達課題をもち,そのとき成人は r
えば,職を得ること,仕事の要求する標準的な技能ゃいかにして仲間とうま
くやっていくかを学ぶこと,昇進にともない監督者や経営者になること,退
職について学び,仕事に代わるものについて学ぶこと,などがある。実践へ
の合意としては,①発達課題に合わせた学習のタイミングを考慮すること,
②学習者にグループ分けを考慮すること,である。②については,発達課題
のほぼ同質のグループ化がより効果的であるが,人間関係の訓練のような場
合には,異質なグループが好ましい。
(
4
) 学習へのオリエンテーションについて
成人は子供時代とは違った時間展望をもって教育・学習に臨む。子供は後
の応用のために知識やスキルを,いわば貯水池に蓄積するのであり,その学
習は学科中心的である。これにたいして成人の場合には,即時的応用を考え
ている。すなわち,現在の生活の状況から感じる圧力に対応して学習に従事
するのであり,成人にとって教育とは,彼らが今直面している生活問題に対
1
2
7
成人教育論と人材形成
応する能力を改善する過程である。したがって,それは問題・課題中心的で
あり,また業積中心的 (
p
e
r
f
o
r
m
a
n
c
e
c
e
n
t
r
e
d
)である。ここから次のような
実践への示唆が指摘される。
①成人教育者は,彼らが奉住する個人および制度の実存的関心にまず合わせ
なければならない。
②カリキュラムの適切な組織原則としては学科によるのではなくて問題領域
に基づくこと。
①学習経験の設計においては,学習者がもっている問題や関心を出発点とす
ることが適切である。しかし,このことは,学習者が初めに意識している問
題で終わるのではなく,そこから出発することを意味する。
3
. アンドラゴジーのプロセスープログラム設計の原理一
ノールズは,上述の成人学習者の特徴についての想定にもとづき,それら
の実践への合意をまとめる形で, i
成人教育のアンドラゴジー・モデル」を
提案する。
ペダゴジー・モデルの基本形式が「学習内容の計画」にあり,教師の責任
には次の問題に答えることが要求される。すなわち①どの内容が含まれる必
0分
要があるか一長い内容項目の一覧表,②その内容を 5
3時 間 週 間 と
いった管理しやすい単位のなかにどのように組織するか,①そのような単位
を生徒に提示する最も論理的な順序は何か,ーそれを決めるのは,学習者の
r
e
a
d
i
n
e
s
st
ol
e
a
r
nではなくて教材の論理であり,簡単なものから複雑なも
のへという順序で提起されるー,①これらの学習内容を最も効果的に伝達す
る方法な何か,である C
Knowles(
19
8
0
),p
p
.1
1~ 1
2
J。
これにたいしてアンドラゴジー・モデルの基本形式は「プロセスの設計」
(
ap
r
o
c
e
s
sd
e
s
i
g
n
)である。教師は学習の促進者 (
f
a
ci
1
i
t
a
t
o
ro
fl
e
a
r
n
i
n
g
)と
して二重の役割を持つ,すなわち,①学習のプロセス,または手順の設計者
・運営者の役割と,②学習内容の資源としての役割,である。このモデルで
は,教師のほかに仲間,専門知識・技能をもっている人々等,広範で多様な
a
n
d
r
a
g
o
g
u
e
)
教材・媒体資源があると想定しており,したがって,成人教育者 (
の主たる任務の一つは,これらの学習資源のすべてを知り,それらと学習者
1
2
8
経営と経済
とを結びつけることである C
Knowlese
ta
l(
19
8
4
),p
.1
2
J。
そしてアンドラゴジー・モデルは次の 7要素から構成されるプロセス・モ
Knowlese
ta
l(
19
8
4
),p
p
.12-16J。
デルとして提起されている C
(
1
) 学習の雰囲気づくり (
c
l
i
m
a
t
es
e
t
t
i
n
g
)。
これは,有効な学習を促す雰囲気づくりであり,物的環境と心理的雰囲気
の 2側面がある。物的環境については,従来の教室にみられる机と椅子の配
置を円形に変えたり,カラフルな装飾をもっ明るく陽気な会議室の雰囲気を
つくるなどが挙げられる。心理的雰囲気には次の 7点が指摘されている。
①相互尊重の雰囲気,②協力性の雰囲気,①相互信頼の雰囲気,①支持性
a
u
t
h
e
n
t
i
c
i
t
y
)の雰囲気,⑥楽しい雰囲気,⑦
の雰囲気,①解放性と真正性 (
人間的な雰囲気。
(
2
) 学習者を相互的計画化 (
m
u
t
u
a
lp
l
a
n
n
i
n
g
)に参画させること。
人間性の基本法則として,決定に参加した程度に比例してその決定にコミ
ットしていると感ずる傾向がある。
(
3
) 学習者を,彼ら自身の学習ニーズの診断に参画させること。
(
4
) 学習目標の公式化に学習者を参加させること。
(
5
) 学習計画の設計に学習者を参画させること。
(
6
) 学習計画の実行への参画。
(
7
) 学習を彼らの学習の評価に参画させること。
要するに,アンドラゴジー-プロセスに具体化されたモデルの最終目標は
「依存的学習者を段階的に『自己主導的学習者j] (
s
e
l
f
d
i
r
e
c
t
e
dl
e
a
r
n
e
r
)に
形成し,各個人の責任において自己の生涯学習を計画実施しながら,自己の
運命を自らの力によって切り開いていく学習への援助技術を体系化すること
池田,三浦,山本,浅井(19
87
)
, p
.
3
5
J。このような学習の計画
にある JC
一実行ー評価の過程において,ノールズは,学習者が彼らの学習を構造づけ
るのを助ける有効な方法として,
r
学習契約 J(
le
a
r
n
i
n
gc
o
n
t
r
a
c
t
)の使用を
推奨している。学習契約は,①診断された学習ニーズによる学習目標(達成
すべき能力改善),②目標達成のための最も有効な資源と戦略の識別,③目
標が実現された程度を示すために収集されるべき証拠,①証拠の判断と活用
成人教育論と人材形成
1
2
9
の方法,を含む。まず学習者が草稿を作り,小グループの仲間と検討し,続
いて教師一学習の促進者がそれを検討(修正一同意)したのちに承認する。
学習者はその遂行に取り掛かり,それが実行されたとき,学習者は,論文,
テープ,判定者・観察者による評定,口頭の発表等の成果を提出する。それ
によって契約が完成されたか否か,さらに追加的成果が必要かどうかが(学
ta
l
.(
19
8
4
),pp. 1
8
習者の参画のもとで)決定されるのである CKnowlese
-19J。ノールズ自身,大学のコースや実習,在職教育プログラム(医者,
看護婦,ソーシャル・ワーカー,管理者・監督者,教師など),専門職能力
開発の継続などの,
r
私の実践のほとんどすべてにおいて学習契約を利用し
たJC
o
p
.c
i
t
.,p
.2
0
J と述べている。
4
. 応用と評価
ノールズによれば,前述のアンドラゴジーの基本的仮定とプロセスは,個
別のコースについて,例えば,在職者教育,学部教育,大学院教育,継続教
育,技術訓練,宗教教育などで,また団体についてみれば,小,中,高校,
短大,大学の教育機関,産業界,政府機関,保健医療機関,専門職団体,教
会,ボランティア団体等で,地域についてみれば,北米を始めとして世界中
ta
l
.(
19
8
4
),p
.1
9
Jと
で,広く採用または適用されてきている CKnowlese
評価する。
Knowlese
ta
l
.(
19
8
4
) には,教育,専門職などにおいて適用さ
れたケースとともに,第 2章には企業・産業・政府での応用については 8
ケースが例示されているが,それらは全て研修, O
f
f
]
T に関するものであ
ることを付加しておく。
これらのケースには,前述のアンドラゴジー・モテ。ルの全ての要素が含ま
れているとはかぎらない。ある要素は他の要素よりも広く適用されている。
特に雰囲気づくりが最も広く採用され,続く要素としては自己主導的学習,
契約学習,個人別指導,経験を活かす学習,プロセス設計,仲間の援助,自
己診断,自己評価などが目立っている CKnowlese
ta
.
1(
19
8
4
),p
.4
17J。ノー
0年の実践のなかで,その応用に関する多くの問題が識別
ルズによれば,約 2
され,同様に多くの解決策が工夫されてきたのであるが,彼はこれらの実践
から 7項目の結論をひきだしている。その一つは「アンドラゴジー・モデル
1
3
0
経営と経済
は全体的にまたは部分的に採用または適用できる要素のシステムであ(っ
て),全体的に,修正なしに適用されねばならないイデオロギーではない」
C
o
p
.c
i
t
.,p
.4
1
8
J というものである。
これらの経験の総括にもとづいて,ノールズはアンドラゴジーの有効性に
かんする評価と将来への展望を述べる。
実践家は,アンドラゴジー・モデルが,全体的にまたは
まず全般的に, i
部分的に,多様な制度的状況における,多様な教育活動とプログラムにたい
して適用できるということを発見した JC
Knowlese
ta
.(
l
19
8
4
),p
.4
1
7
Jと
評価する。次に将来の教育・訓練ニース'の増大 (
o
p
.c
i
t
.,p
p
.4
1
2一2J を見
通した後に,最後に, 2
0世紀末には教育サービスの提供に電子メディアの利
用が普及するであろうが,これらの変化にたいして「今や,われわれに課せ
られた大きな挑戦は,新しい方法でそのメディアを使うことを学ぶにつれて,
L、かにして『人間的感触j] (
h
u
m
a
nt
h
u
c
h
)を維持するか,と L、ぅ方法である。
アンドラゴジー・モデルのみが,今の時点で,この偉業を完成するためのガ
イドラインを提供する J(
Knowlese
ta
.(
l
1
9
8
4
),p
.4
2
2
J と結んでいる。
E 評価と批判
1.評価と期待
1
9
7
9年にわが国にノールズのアンドラゴジーを紹介した池田秀男(19
7
9
)
は,その結びにおいて「以上,ノールズの説くところのアンドラゴジーのプ
ロセス・モデルの諸位相は,すべての社会教育の活動計画の過程で同一視で
きるように思える。その限りにおいて,社会教育現象の多様性と一般的理論
化の困難のために,これまで一貫した社会教育理論の発展が探究されながら
も,達成されなかった理論化を一歩前進させるものとして高く評価してよか
ろう J(
p
.6
3
J と述べ,さらにまた「教育の科学的理論としては,これらの
理論図式がどこまで子どもと成人の教育の諸事実を科学的に解明し,かつど
れだけ検証されているかという点で今日なお議論の余地のあるところだが,
成人教育の研究と実践を導く指導原理としてアンドラゴジーは大かたの支持
1
3
1
成人教育論と人材形成
と大きな成果をあげ,今や成人教育の最も有力な『理論』体系とみなされる
8
0
)
ようになってきつつある。今後の洗練と発展が期待される J[池田(19
1
9
8
7
),p
.3
6
J と,問題とともに期待が述
p.37,池田・三浦・山本・浅井 (
べられている。
8
5
) も前述の「人間的感触」の維持という点に着目して,
また木全力夫(19
情報化社会という視点から「学習,教育は人間と人間との間にのみ営まれる
活動である。知識,情報の伝達・受容のメディアが革新され広く普及するに
な L、
J[
p
.7
2
J
したがってこのような学習・教育観が再認識されるにちが L、
と期待をかけている。
2
. 諸批判
上述の評価と期待がある一方では,その理論そのもの,実践における有効
性についてなお多くの問題を残している。いくつかを取り上げよう。
(
1
) 学習者の特徴について
1
まず,ノールズのアンドラゴジーの理論的基礎である学習者の基本的想定
d
e
s
c
r
i
p
t
i
o
n
)
について,これらの想定が成人学習者の実態にかんする記述 (
なのか,それとも処方・規定 (
p
r
e
s
c
r
i
p
t
i
o
n
)なのか,あるいは殊勝な願望な
のかが暖昧であり,また成人と子供との区別が不明確であることが指摘され
る [
Chene(
19
8
3
),p
.3
9,入江・豊田(19
8
7
),p
p
. 145-6,1
4
8
J。例えば,
自己主導的に,自分で学習する能力は成人に固有のものと考えられる一方,
発達させる必要がある, と理解されており,また成人教育者のあいだには,
成人は子供よりも自己主導的で,自律的であるというコンセンサスがある
[Chene(
19
8
3
),p
.3
9
Jと指摘する。ただし既述のように, Knowles(
19
8
0
)
は,アンドラゴジーを状況に応じて使い分けられる代替的モデルのーっとみ
ている。
(
2
) 学習における自己主導性,自律性の意味
ノールズのアンドラゴジー・モデルの基本形成はプロセスの設計であり,
そこでは学習者の自律性・自己主導性が強調されるが,その自律性の概念の
唆昧さが批判される。
自律性の一般的定義は, Chene(
19
8
3
) によれば,語源的には,すべての
1
3
2
経営と経済
外部の規制や制約からの独立であり,自分自身のルールの設定,自分の遵守
するであろう規範を自分で選ぶことができることを意味する。また自律性は
価値をもつものを選ぶ能力,たとえば,自己実現と調和する選択をする能力
に関わり,その価値の認識を可能にする判定基準の設立を合意するのであり,
o
p
.c
i
,
.
tp
.3
9
J となる。
「規範の存在は自律性の必要な部分 J(
次に,成人教育論で一般に使用されている自律性の概念をみると,自分で
o
p
e
r
a
学習する能力という定義とともに,自己主導的,自律的学習の操作的 (
t
i
o
n
al)定義,すなわち「アイドラゴジー・モデルのプロセスの各段階にお
いて個人・学習者がイニシアティヴをとる過程」という定義が支持されてお
り,そこでは通常専門職的教師によって遂行されている課題(学習目標の決
定,現在の知識・技術の水準の推定,適切な資源の発見,学習の方法・技術
の選択,学習過程のコントロール,結果の評価)が学習者に転嫁される
(
o
p
.c
i
t
.p
.4
0
J。教育の状況に照らしてみると, I
暖昧さはただちに明らか
o
p
.c
i
t
.p
.4
2
J。学習者が独立して学習活動の展開に責任をとり,
になる J(
その要素をコントロールするとき,規範・基準の問題が生ずる。どのように
して学習者は資源が適切であるか,その目標が現実的であるか,期待される
結果が妥当であるかを知ることができるのか,もし学習過程がまだ完了して
いないとすれば, どのようにして成功に必要なすべてのことがなされている
ということを保障できるのか。自己主導的学習において自律的であるために
ol
e
a
r
nを学ばねばならない。しかし, howt
ol
e
a
r
nを学ぶためには,
は howt
人は学び終えていなければならない。また学習活動の基準と範囲が知られて
いなければ人は自分自身に頼ることはできない。ここに自律的,自己主導的
学習のパラドックスが生ずる。そこで自己主導的学習者はしばしば援助を必
要とし,ガイドラインを提供する戦略が展開される。そこには学ばれねばな
らない,そして学習者の成績を評価するための基準がある。これらの基準は,
自律性を生み出そうとするモデルのなかに現れる (
o
p
.c
i
t
.p
.4
3
J。教える
援助または教授的モデルが,教育の自己管理のまだできない学習者に支持を
o
p
.c
i
t
.p
.40-1J
。ここにおい
与えるということによって正当化される (
て
, No
t
t
i
n
g
h
mAndragogyGroupが,ノールズのアンドラゴジーは進歩的
1
3
3
成人教育論と人材形成
であるにせよ,なお,依然として成人教授学であるとして批判するところと
8
7
),p
.1
4
4
J。
なる〔入江・豊田(19
Chene(
1
9
8
3
) によれば,教師からの心理的独立=自律性は学習における
o
p
.c
i
t
.p
.4
3
J にすぎない。学習は独立した主体の
基準の問題を隠蔽する C
行為であるとしても(誰も,誰かの代わりに学習することはないので),知
識-技能の公的性格を考慮すれば,学習は社会的に媒介されており,承認を
要求する。したがって,自律性が成人の学習のレディネスにのみならず学ば
れるもの=内容にも言及されるときには,それは自律性の概念の拡張(イン
フレーション)である C
o
p
.c
i
t
.p
.4
4,4
5
J といわれる。しかし,知識技能
の公的性格や基準の強調しすぎは既成の知識の伝達を中心とするペダゴジー
・モデルに接近しアンドラゴジーの否定につらなる。学習の進展につれて
自律的になれるものであり,
r
ペダゴジーからアンドラゴジーへ」
CKnowles(
1
9
8
0
)J というのが現実的であろう。
(
3
) 自己主導的学習と成人性の実現
前述の Chene が自律性の概念の拡張適用されたところを批判したのにた
r
o
o
k
f
i
e
l
dは逆にノールス'の自己主導的学習の形式的・技術的性格
いして, B
a
d
u
l
t
h
o
o
d
)の実現の必要を主張する。
を指摘し,その内容において成人性 (
すなわち,学習の自律性の分析において,自律性は単純に学習者の学習目標
と方法にたいするコントロールを等置することはできず,真の自律的学習は,
B
r
o
o
k
学習者が可能な代替的学習活動の完全な知識をもっ時にのみ起こる C
,
) p
.1
4
J とL、
ぅ
。
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e
l
d(985
ここから,成人学習の特徴的特色としての自己主導の概念の議論において
t
e
c
h
n
i
q
u
e
)と自己主導的学習と呼ぶことのできる意識
は,自己主導の手法 (
における内的変化とを区別すべきであると提唱する。前者は,学習行為を計
画し実行する個人に能力において表明される。すなわち,現実的・達成可能
な目標の設定,適切な資源の配置と選択,学習戦略の設計,評価手続きをつ
くること,などであるが,これらは,規定された目標をできるだけ早く,そ
して効率的に達成するためにそれを遂行することに関心があるという意味に
おいて,機械的・技術的である。自己主導的学習の方法の特性を,このよう
1
3
4
経営と経済
に狭い,挑戦されないところの想定,期待,受容できる目標,可能な代替的
選択肢という枠組のなかで示すことは確かに可能である。しかし,そこでは,
代替的なもの,オプション,または可能性についての自律的な,批判的な思
想が提示されることはなし、。良き党員,従業員または学生であろうとする試
e
c
h
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c
a
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y
みにおいて,われわれは技術的に熟達した自己主導的学習者(t
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1
leds
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dl
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)であることを実証できる。これらの状況におい
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k
ては, I
良 L、」ということの意味するものの根底にある規範,または想定は
決して関われることはない C
B
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k
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(
1
9
8
5
),p
p
.14-5)。
他方,成人性を実現する過程にある大人に特徴的な学習としての自己主導
的学習は,教育事象の外部的管理よりも意識の内的変化に関心をもっ。すな
o
n
t
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t
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y(特定の状、況のなかでのみ意味をもつこと)を認
わち,知識の c
識すること,行為や社会構造の創出に影響を及ぼす価値の枠組,信念の体系,
道徳律などの文化的に構築された形式に気付くこと,等に注目する。そして,
成人が,知識や価値の社会的に構築された性質を認識するに至るとき,そし
て彼らがその認識にもとづいて彼らの個人的および社会的世界を解釈しなお
し,構築しなおそうとするときには,外部的な技術的次元は内的な,自省的
次元と融合し,完全に成人的な形態の自律的,自己主導的な学習が現れる
C
B
r
o
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k
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i
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l
d
(
9
8
5
),p
.1
5
)。したがって, Iノールズの定義する自己主導性
ではカヴァーできない多くの学習領域が存在する JCMezirow(
19
8
5
),p
.2
6
)
のである。
しかし他面では, B
r
o
o
k
f
i
e
l
d等は自己主導的学習の大学院,文化的施設
・制度,医療機関での適用事例の検討をしているが,そこでは前述の Chene
と同様の指摘がなされる。特に医療機関(看護婦の教育)に適用した事例に
おいて,自己主導的学習を成人が自分の学習の計画,実行,評価に参画する
ときに起きるなにかであると定義するとすれば,そのような学習は病院とい
う状況において可能であるのか,学ばねばならないことが専門職業及び組織
の制約によって予め規定されているという状況において,学習者は言葉の十
全な意味において自己主導的であるのか,あるいはその作業において査めら
れたまたは制約された形の自己主導であるのか,という聞がなされる CAsh
成人教育論と人材形成
1
3
5
(
19
8
5
),p.73J。この指摘は企業内および職業教育における自己主導的学習
にとっては大きな問題の提起である。
(
4
) 職場における自己主導的学習
V
.Marsickは,職場学習という視点からノールズのアンドラゴジーを検
討している。
Marsickによれば,現在の職場教育のほとんどの記述と処方・規定は同じ
パラダイム一行動主義の心理学に基づいているが,今やポスト・インダスト
リアル時代の新しいパラダイムが現れつつある。そして二つの対照的メタフ
ァがその差異を明示する。旧パラダイムのメタファは機械であり,社会組織
の特徴には,論理性,合理性,単線的因果関係,明確な責任,位階的コント
ロール,部分の運動の全体への統一(複製と重複の最小化)等がある。これ
にたいして新パラダイムのメタファはホログラムであり,それによれば,全
体はどの一部分のなかにも完全に存在し, どの部分からも複製できる。組織
の特徴としては,意思決定は論理的および直観的であること,多数の視座に
よる価値評価,基本的決定への相互参加,単線的思考に代わる相互的思考,
創造性,多様性,健全な割合の職務の重複,が挙げられる C
Marsick(
1
9
8
7
),
p
.3
J。
職場の学習についてみると,旧パラダイムのもとでの訓練は,人々をその
階層に応じて機械のように働くために準備するものであり,あらかじめ規定
されたスキルの獲得を目指す。他方,新パラダイムのもとでの学習は,組織
全体の部分としての経験についての個人および作業集団による自省を含み,
各個人のスキルと視座の多様性の向上を強調する。そこでの焦点は「学習」
であって「訓練 Jr
教育」ではない C
Marsick(
1
9
87
)
, p
.3
J。
Marsickによれば,ノールズは,既述のように,子供と成人の聞の学習様
式の差異についての 4つの仮説に基づいて,協同的アプローチを主張し,行
動主義のパラダイムの修正を企図したが,この挑戦は広く受容されてはこな
かった。その理由は職場の条件がそれを支持するほど十分に変化しなかった
Marsick(
1
9
87
)
, p
.2
J。またノールズ自身は高い評価をしたが,
からである C
アンドラゴジーが職場学習において有効であるかどうかについての経験的証
1
3
6
経営と経済
拠はほとんどない C
o
p
.c
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,
.
tp
.1
6
J という。
他面では,ノールズは,個人または組織が学習目標を選択するさいに根底
M
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c
k(
19
8
7
),
に存在する想定や価値を批判するところへは進まなかった C
p
.1
6
J
o Mezirowのいう学習の 3 ドメイン,①手段的学習(in
s
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l
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n
g
),②対話的学習 (
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cl
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n
g
),①自省的学習 (
s
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e
c
19
8
5
),pp.18ー 2
I
J を使えば,ノールズの
t
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el
e
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r
n
i
n
g
)の区別 CMezirow(
プロセス・モデルは,主として仕事関連の手段的学習には有効であるかもし
れないが,その学習者は,上述の B
r
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l
dのいう,技術的に熟達した自
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)に留まる CMar己主導的学習者 (
19
8
7
),p
.1
5
J。しかしながら,今日の学習問題の多くは,前もって考
s
i
c
k(
えられた技術的解決策によっては解決できない複雑な個人的,社会的,組織
的な習慣に根ざしている。スキルはなお必要であるが,それはこれらの習慣
の検討を含む過程の一部分にすぎない。経済的,組織的現実の新しいパラダ
o
p
.c
i
,
.
t p
.4
J。したがって, Marイムを学習することも必要なのである C
s
i
c
k はノールズのアンドラゴジーよりも「組織の新しい傾向によりよく適
合しているように見える J (上述の批判的自省的学習をふくむ)“ a
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J を評価する。しかしながら,職場の条件は「このよう
な学習が起こるべきだとすれば,生産性が定義しなおされ,組織内の条件が
JC
o
p
.c
it
.p
.2
8
J と指摘せざるをえない状況にあ
再検討されねばならな L、
る。次の問題として,組織,職場においてそのような学習を促進し,また阻
害する要素はなにか,また L、かにして実現するのかが問われる必要がある。
N 結び
以上,ノールズの提唱したアンドラゴジーについて,その基本原理とプロ
セス設計の提言,その応用と彼自身の評価と展望を見たのち,他の論者によ
る評価と批判を紹介してきた。変革の時代における人材形成,職場・学習と
いう視点から,今後の検討の課題を示す意味で要約して結びとしよう。
f
f
ノールズのアンドラゴジーの原理とプロセス設計は,いわゆる研修, O
1
3
7
成人教育論と人材形成
JTに主として関連するが,自己実現を求める成人が主体である職場の学習
には,古典的・伝統的なペダゴジー原理にもとづく教育・訓練するも適して
L、るようにみえる。しかし,学習内容にまでの自律性の主張は行き過ぎであ
り,学習内容には基準が必要であるという指摘と,その結果進歩的教授学に
留まるという批判があり,さらに,自己主導学習のプログラムは,学習ニー
ズの診断,目標決定,学習計画の設計,学習計画の実行,学習の評価への参
加という技術的プロセスのみに留まっており,社会や組織のパラダイムの変
化の起きつつある激動の時代に要求される人材の形成には不十分であり,人
々の思考と行為のより根底に存在する価値や想定自体を問う学習ドメインを
含んだものであることが要請されるという指摘がある。しかしそれは,組織
による,構成員のあいだでの価値や想定の共有の要求,強化とは相対立する。
したがって,そのような学習を可能にし,かっ促進するような組織的な配慮,
新しい組織形態がどのようなものであり,いかにしてそれが実行可能になる
か,ということが課題として残されている。
(注)
(
1
) 例えば,経済同友会
(989) を参照されたい。
(
2
) 人材・熟練形成の実態については,さしあたり小池編著 (
9
8
6
),小池・猪木編 (987
)
を参照されたい。
(
3
) アンドラゴジーの展開については,
Knowles(980),p
p
.40-43,M.S
.Knowlese
t
a
l
.(984
,
) p
p
.1-8,池田 (
9
8
3
),堀 (
9
8
9
) を参照されたい。
(
4
) 池田秀男 (
979),pp.58-61,池田 (
9
8
3
),pp.34-36,堀 (989),p
p
.2
2
9ー 2
3
7,
985),p
p
.6
6,などを参照されたい。
木全 (
(
5
) K
nowlese
ta
l
.(984
,
) p
p
.12-5,なお木全 (985) の紹介が詳しい (
p
p
.68-70)。
(
6
)
Knowlese
ta
l
.(
984),p
.4
1
8
. 実践から得た教訓の他の 6点についは木全 (985) が
紹介している [
p
.7
1
J。
(
7
) このように自律性が強調される理由として, C
h
e
r
ほ(
983) は,①自律性の強調が個人
主義的理想に訴えること,②産業社会では自立性の可能性は特に幻想的であること,①
国家の資源の制限により職業訓練が経済の必要に依存していること,④教育制度にたい
する批判的態度,①成人は非公式的状況のなかでも学習できることがわかったこと,⑤
人間主義的心理学の影響,を挙げている (
o
p
.c
i
t
.,p
.4
5
)。
(
8
) その一例として,ノールズのモデルにシステム分析を併用した
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1
3
8
経営と経済
L
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rmodel によって企業内訓練・開発過程を説明した Lecey,LeeandWallace
(
19
8
8
) がある。
参 考 文 献
堀
薫夫 (
9
8
9
)r
成人教育学を求めて」麻生誠,泉敏郎編『人間の発達と生涯学習』亜紀書房
9
7
9
)r
社会教育の理論構造一 M. ノールズのアンドラゴジー・モデルの研究 J
W日
池田秀男 (
本社会教育学会紀要』第 1
5集
。
9
8
3
)r
アンドラゴジーの視座」伊藤俊夫,河野重男,辻
池田秀男 (
功編『新社会教育辞
典」第一法規。
9
8
7
) W成人教育の理解J実務教育出版。
池田秀男,三浦清一郎,山本恒夫,浅井経子 (
7
)r
成人学習と発達 -NAGのアンドラゴジ一理論を中心にー」
入江直子,豊田千代子 (98
日本社会教育学会編『社会教育の国際的動向 J東洋館出版社。
木全力夫 (
9
8
5
)r
情報化社会における成人の学習方法 -M.ノールズの S
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情報研究.] (創価大学)第 l号
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経済同友会 (
9
8
9
) W新しい個の育成一世界に信頼される日本人をめざして-.]経済同友会。
小池和男編著 (
9
8
6
)W
現代の人材形成』ミネルヴァ書房。
小池和男,猪木武徳編(19
8
7
) W人材形成の国際比較』東洋経済新報社。
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