kg/d/m2 - 地圏環境テクノロジー

於)東大本郷キャンパス
公益社団法人 日本地下水学会 2014 年春季講演会
7.ベイドズゾーンにおける熱・物質輸送
過程と陸面フラックスの
相互関係に関する数値的検討
2014年5月24日(土)
森康二(地圏環境テクノロジー)・多田和広(同)・
田原康博(同)・登坂博行(東京大学)
1
研究背景と目的
地表面から地下水面までのベイドスゾーンと呼ばれる地上と地
下飽和帯をつなぐ接続領域では、地表面を介した、あるいは土
壌間隙中の様々な物質や熱量が相互に影響を及しあう。
流域スケールの
水収支評価
生物多様性
地下熱環境
水辺の環境
GHG排出量
・・・
地形起伏や地下地
層構造の違いによ
る影響?
地上、地下間の相互
影響にどのような違い
を出現させるか?
ベイドスゾーンにおける熱・物質移動現象に着目し、陸面を通過
する熱量や水蒸気等のフラックス変動を含めて一体的に解析する
数理モデルを開発し、様々な状態設定を想定した数値実験により、
陸面フラックスとの相互関係を考察する。
2
対象系の概念
Evapotranspiration
Atmosphere
Precipitation
Sensible Heat
infrared
Mass/heat fluxes
Latent Heat
G.L
Water Heat
Vadose Zone
Air
Water
Vapor
Advection, diffusion,
dispersion, phase transfer
(vaporization/condensation)
Capillary Zone
Air flow
(air-water displacement)
Groundwater table
Groundwater flow
heat advection,
conduction(fluid/rock)
Saturated Zone
3
支配方程式
水
𝛻 ∙ 𝜌𝑤
𝐾𝑘𝑟𝑤
𝜕 𝜌𝑤 𝜙𝑆𝑤
𝛻𝛹𝑤 + 𝑚𝑤𝑣 − 𝑞𝑤 =
𝜇𝑤
𝜕𝑡
空気
𝛻 ∙ 𝜌𝑔
𝐾𝑘𝑟𝑔
𝜕 𝜌𝑔 𝜙𝑆𝑔
𝛻𝛹𝑔 − 𝑞𝑔 =
𝜇𝑔
𝜕𝑡
水蒸気
𝛻 ∙ 𝜌𝑔
𝐾𝑘𝑟𝑔 𝑅𝑤𝑣
𝜕 𝜌𝑔 𝜙𝑆𝑔 𝑅𝑤𝑣
𝛻𝛹𝑔 + 𝛻 ∙ 𝐷𝑤𝑣 𝛻 𝜌𝑔 𝑅𝑤𝑣 − 𝑚𝑤𝑣 − 𝑞𝑔 𝑅𝑤𝑣 =
𝜇𝑔
𝜕𝑡
水相中の熱
𝛻 ∙ 𝜌𝑤
𝐾𝑘𝑟𝑤 𝐻𝑤
𝜕 𝜌𝑤 𝜙𝑆𝑤 𝑈𝑤
𝛻𝛹𝑤 + 𝛻 ∙ 𝜆𝑤 𝛻𝑇𝑤 + 𝑚𝑤𝑣 − 𝑞𝑤 𝐻𝑤 + 𝐸𝑤𝑔 + 𝐸𝑤𝑠 + 𝑐𝐹𝑤 =
𝜇𝑤
𝜕𝑡
陸面熱収支項
気相中の熱
固相中の熱
𝛻 ∙ 𝜌𝑔
𝐾𝑘𝑟𝑔 𝐻𝑔 + 𝑅𝑤𝑣 𝐻𝑤𝑣
𝛻𝛹𝑔 + 𝛻 ∙ 𝐷𝑤𝑣 𝐻𝑤𝑣 𝛻 𝜌𝑔 𝑅𝑤𝑣 + 𝛻 ∙ 𝜆𝑔 𝛻𝑇𝑔 − 𝑞𝑔 𝐻𝑔
𝜇𝑔
𝜕 𝜌𝑔 𝜙𝑆𝑔 (𝑈𝑔 + 𝑈𝑤𝑣 𝑅𝑤𝑣 )
− 𝑚𝑤𝑣 + 𝑞𝑔 𝑅𝑤𝑣 𝐻𝑤𝑣 − 𝐸𝑤𝑔 + 𝐸𝑔𝑠 + 𝑐𝐹𝑔 =
𝜕𝑡
𝛻 ∙ 𝜆𝑠 𝛻𝑇𝑠 − 𝐸𝑔𝑠 − 𝐸𝑤𝑠 + 𝑐𝐹𝑠 =
𝜕
𝜌 1 − 𝜙 𝑈𝑠
𝜕𝑡 𝑠
相間の熱移動現象は瞬時平衡状態を過程してまとめることも可能
4
陸面熱収支項の取扱い
陸面の放射熱収支は短波放射,長波放射,潜熱輸送,顕熱輸
送及び地下熱伝導量によって保存され,それぞれの寄与につ
いては放射を受ける陸面の状態によって異なる。
地上に水面がある場合
地上に水面が無い場合
地上水相:
Fw
𝜀𝐿𝑖𝑛 − 𝐿𝑜𝑢𝑡 − 𝐻 − 𝐿𝐸 + 𝐺
0
地上空気相:
Fg
𝐻 + 𝐿𝐸
𝐻 + 𝐿𝐸
地表面(固相):
Fs
1 − 𝛼 𝑆𝑖𝑛 − 𝐺
1 − 𝛼 𝑆𝑖𝑛 + 𝜀𝐿𝑖𝑛 − 𝐿𝑜𝑢𝑡 − 𝐻 − 𝐿𝐸
+𝐺
εは射出率(-),Lin は陸面への下向きの長波放射(Wm-2),Lout は陸面からの上向きの長波放
射(Wm-2),Hは顕熱フラックス密度(Wm-2),LEは潜熱フラックス密度(Wm-2),Gは下方への熱
フラックス密度(Wm-2),αはアルベド(-),Sin は陸面への下向き短波放射(Wm-2)
5
土壌蒸発の取扱い
土壌蒸発は地下で生成された水蒸気が地表面を
介して地上へ拡散移動する現象としてモデル化する
水蒸気生成:気液界面における物質移動を両相の濃度
勾配によって生じる拡散現象
𝑚𝑤𝑣 = 2𝜌𝑤 𝑓𝑣𝑤
𝐷𝑤𝑣
𝑅𝑤𝑣,𝑆𝑎𝑡 − 𝑅𝑤𝑣
𝜋𝑇𝑐
水蒸気拡散:地表面を通過する単位面積当たりの拡散
フラックス
𝑞𝑤𝑣,21
𝐷𝑤𝑣 𝑅𝑤𝑣,2 − 𝑅𝑤𝑣,1
=
𝑟𝑤𝑣 (𝑢)
ℎ𝑑
6
Dec-03
Nov-03
Oct-03
Case HW
Sep-03
Aug-03
Jul-03
7.0
Dec-03
Nov-03
Oct-03
Sep-03
Aug-03
Jul-03
Jun-03
May-03
Apr-03
Mar-03
Feb-03
Jan-03
Dec-02
Case HW (GL-5m)
Jun-03
May-03
Apr-03
Mar-03
Feb-03
Jan-03
Dec-02
Nov-02
Oct-02
Sep-02
Aug-02
Jul-02
Jun-02
Air temperature
Nov-02
Oct-02
Sep-02
Aug-02
Jul-02
Jun-02
8.0
May-02
Apr-02
Mar-02
Feb-02
Temperature (deg.C)
40.0
May-02
Apr-02
Mar-02
Feb-02
Jan-02
-5.0
Jan-02
Water vapor flux(mm/d)
地表面を通過する水蒸気フラックス
35.0
Case LW (GL-5m)
30.0
25.0
20.0
15.0
10.0
5.0
0.0
Case LW
6.0
5.0
4.0
3.0
2.0
1.0
0.0
7
異なる地形・地層条件に対する数値実験
データ
単位
[kgm-3]
[Pa・s]
[Wm-1K-1]
[Jkg-1K-1]
[m2s-1]
[Pa]
密度
粘性係数
熱伝導率
比熱
水蒸気分子拡散係数
飽和水蒸気圧
分類
陸面熱収支
土地利用・被覆
地層物性
数値または評価式
𝜌𝑝 𝑓 𝑃 𝑔(𝑇) (水,空気)
𝜇𝑝 𝑓 𝑃 𝑔(𝑇) (水,空気)
0.561(水)
0.0241(湿潤)
4200(水)
1000(乾燥)
1800(水蒸気)
2.23 × 10−5 (1013.25/𝑃𝑔 ) 𝑇 + 273.15 /273.15 1.81
𝑃𝑠𝑎𝑡 𝑇 exp 𝑀𝑤 𝑃𝑐 𝑆𝑤 /𝜌𝑤 𝑅(𝑇 + 273.15)
備考
蒸気表
蒸気表
Kelvin式
データ
単位
数値または評価式
備考
短波放射
[Wm-2]
日照率から全天日射量の日平均値を算定
近藤,2004
長波放射
[Wm-2]
日照率より算定
水津,2001
潜熱輸送
[Wm-2]
水蒸気生成(相変化)+拡散フラックス
顕熱輸送
[Wm-2]
粗度係数
[m-1/3s]
バルク式より算定
0.3
アルベド
[-]
透水係数
[ms-1]
10-11~10-3
有効間隙率
[%]
1~50
密度
[kgm-3]
2,500
熱伝導率
[Wm-1K-1]
𝜆𝑤 𝑆𝑤 + 𝜆𝑑 1 − 𝑆𝑤
飽和度依存
比熱
[Jkg-1K-1]
飽和度依存
屈曲度
[-]
𝑐𝑤 𝑆𝑤 + 𝑐𝑑 1 − 𝑆𝑤
0.5
0.25 𝜃 < 0.1 , 0.35 − 𝜃 0.1 < 𝜃 < 0.25 , 0.10 𝜃 < 0.25
飽和度依存
8
数値実験に用いる流域モデル
透水係数(cm/s)
1x10-1
1x10-2
1x10-3
1x10-4
1x10-5
1x10-6
1x10-7
1x10-8
Aモデル
堅岩の風化・弛みゾーン
Bモデル
固結度の低い堆積岩類
Cモデル
花崗岩のマサ状風化
Dモデル
火山体
9
山体地質と地下水流動
1,000m
250m
Bモデル(固結度の低い堆積岩類)
10
解析結果(水蒸気フラックスの比較)
5.0
地下から地上への流出
Aモデル
Bモデル
Cモデル
Dモデル
水蒸気フラックス(kg/d/m2)
4.0
3.0
2.0
1.0
0.0
地上から地下への流入
(1.0)
2002/1/1
2003/1/1
2004/1/1
2005/1/1
11
解析結果(累積土壌蒸発量)
Aモデル
Bモデル
Cモデル
Dモデル
累積水蒸気フラックス(kg/m2)
800
C
700
600
A
500
400
B
300
200
D
100
0
2002/1/1
2003/1/1
2004/1/1
2005/1/1
12
まとめ
• ベイドズゾーンにおける熱・物質移動現象と地表面
を通過する水蒸気,熱量等のフラックス変動との関
連性に着目した数理モデリングとそれらを適用した
数値実験を試行した。
• 本数値実験では,我が国の典型的な地形・地層条
件を模擬した複数の流域モデルによる比較計算を
行い,土壌水分状態の相違が水蒸気や熱量フラッ
クスへ有意な影響を与えることが示唆された。
• 今後は,本手法を大気循環モデルとの結合解析へ
適用するとともに,実測データによる検証を充実さ
せる予定である。
13
付録
14
鉛直モデルによる基礎的挙動の確認
• 土壌カラムを模擬した鉛直一次元モデル
• 地表面に与えた放射・降水変動に対する地下地層
中の状態量変化と地表面を通過する水蒸気フラック
ス(土壌蒸発量)の関係を解析
• 土壌の水理物性は均質(透水係数10-5m/s,有効間
隙率40%)
• 初期水位の異なる2ケース(HW:GL-1m,LW:GL28m)を比較
• ここでは水相,気相及び固相間の熱交換は平衡過
程とし,それぞれの温度は同じものとして扱った。
15
従来法(バルク法)との比較
Cum. evaporation from soil(mm)
800
700
Case HW
Case LW
Case HW (Bulk Method)
Case LW (Bulk Method)
600
500
400
300
200
100
0
16
従来法(バルク法)との比較結果
Cum. evaporation from soil(mm)
800
700
Case HW
Case LW
Case HW (Bulk Method)
Case LW (Bulk Method)
600
500
400
300
200
100
0
17
堅岩の風化・弛みゾーン
固結度の低い堆積岩類
花崗岩のマサ状風化
火山体
18
山体に浸み込んだ地下水の流れ
1,000m
250m
Aモデル(堅岩の風化・弛みゾーン)
19
山体地質と地下水流動
破砕ゾーン
Dモデル(火山体)
溶岩
細粒火山噴出物
粗粒火山噴出物
火砕流堆積物下部
Cモデル
火砕流堆積物上部
砂礫
岩脈
(花崗岩のマサ状風化)
基盤岩(弱風化部)
火山深部構造
20
解析結果(水フラックスの比較)
50
地下から地上への流出
40
Aモデル
Bモデル
Cモデル
Dモデル
水フラックス(kg/d/m2)
30
20
10
0
-10
-20
-30
-40
地上から地下への流入
-50
2002/1/1
2003/1/1
2004/1/1
2005/1/1
21
解析結果(空気フラックスの比較)
0.08
地下から地上への流出
空気フラックス(kg/d/m2)
0.06
0.04
0.02
0
-0.02
-0.04
Aモデル
Bモデル
-0.06
Cモデル
Dモデル
地上から地下への流入
-0.08
2002/1/1
2003/1/1
2004/1/1
2005/1/1
22
解析結果(熱フラックスの比較)
500
400
地下から地上への流出
Aモデル
Bモデル
Cモデル
Dモデル
熱フラックス(W/m2)
300
200
100
0
-100
-200
-300
-400
地上から地下への流入
-500
2002/1/1
2003/1/1
2004/1/1
2005/1/1
23