K - HARP

広島経済大学経済研究論集
第37巻第 1 号 2014年 6 月
サミュエルソンの 2 つの保存則を生成する
フォン・ノイマン型経済成長モデルの一般化
三 村 文 武*
である(サミュエルソンの用いた効用関数は
K 1 即ち G = K 1 )。 n ≥ 3 の場合は U = f( K , t ) + g( K , K )
は じ め に
1)
U = f( K , t ) + g( K , K ) の形であり,g が K と K に関して r
1970年,サミュエルソン は保存則を初めて
理論経済学に明示的に導入し「運動エネルギー
とポテンシャルエネルギーの和は一定である」
次同次と仮定すれば,同様に r ≠ 0 のときは
g = h( K ) となり,U はトータル時間微分 U = G ( K , t )
という力学的エネルギー保存則との類似に注目
U = G ( K , t ) (G = f + h ) である。しかし, r = 0 の
し,すべての産出物がシステムの成長のための
ときは g は必ずしもトータル時間微分とは限
資本形成に供されるような新古典派的フォン・
らない。
ノイマン型経済成長モデルにおいて 2 つの保存
割り引き率 µ (µ : const.)を持つ効用関数 U
則を導出し,これより「総産出-資本(富)比
は不変である」ことを示した。その後佐藤 は
が 1 次の同次関数 G = G( K ) のトータル時間微
分を用いて U = e − µt G と表されるときの一般化
このサミュエルソンのモデルにおいて,ネー
されたサミュエルソンの保存則については注の
2)
3, 4)
を用いて,特に(簡単のため)
7, 8)
9)
2 種類の異なる資本材 K = ( K 1( t ), K 2( t )) が 1
を参照されたい。尚,片岡 (片岡・
10)
橋 本 )は, p ( t ) と p ( t ) を そ れ ぞ れ K 1 と
次同次の変換関数によってその準資本形成
K = ( K 1 , K 2 ) = ( dK 1/dt , dK 2/dt ) と関係づけら
K 2 の供給価格として,割引率 ρ (ρ : const.)
を持つ効用関数 U = e − ρt ( p K 1 + p K 2 ) が保存
れているとき,その変換関数が強凹型であると
則を生成するとき,ネーターの定理を用いて
いう条件の下で,これら 2 つは大域的に作用す
p1 = p10eδ t , p2 = p20eδ t (p10 , p20 , δ : const.)であ
る唯一の保存則であることを示した。続いて片
ることを示し,その保存則を求めている。保存
ターの定理
5)
論文
1
2
1
2
則 を 生 成 す る そ の 効 用 関 数 U は G = p10 K 1 + p20 K 2
G = p10 K 1 + p20 K 2 のトータル時間微分を用いて U = e − µt G
岡 は佐藤の結果が強凹型の条件を弱めた凹型
の条件下でも成立することを示した。
我々はこのサミュエルソンの新古典派的フォ
( µ = ρ − δ ) と表せることに注目したい。
本 稿 で は n 個 の K = ( K 1 , , K n ) と K = ( K 1 , , K n )
保存則を生成するような最適制御問題を考察 K = ( K 1 , , K n ) に 関 す る 1 次 同 次 の 変 換 関 数
6)
F ( K , K ) を s 次同次に一般化して,注の論文
し,最大化を図る積分の被積分関数(効用関数)
U ( K , K , t ) = U ( K 1 , , K n , K 1 , , K n ) の最も一
で求めた効用関数の一般形を再考察する。
ン・ノイマン型経済成長モデルにおける 2 つの
6)
般的な形を決定した 。その形は n = 2 の場合
はトータル時間微分 U = G ( K , t ) = dG( K , t )/dt
* 広島経済大学経済学部教授
(Received, March 4, 2014)
本稿を通して各項の繰り返し現れる同じ添字
については総和をとるという和の規約を採用
し,関数は必要な階まで微分可能とする。
18
広島経済大学経済研究論集
サミュエルソンの成長モデルの一般化
第37巻第 1 号
d
∂F
d ∂U
∂F
∂U
hλ  i H = λ
H+
− h
dt
∂K
∂K i dt ∂K i
∂K i
サミュエルソンのフォン・ノイマン型経済成
と変形して, Ω 1 には(3)を用いて Ω 1 を書き換
長モデルを一般化して,n 個の異なる資本材
えた後に,また Ω 2 には直接代入するとそれぞ
1
n
1
K = ( K , , K ) が n 個 の 準 資 本 形 成 K = ( K , れ次のようになる:
, K n )
K = ( K 1 , , K n ) と関係づけられる拘束条件
d
∂F
Ω 1 = hsλ F − λ K i  i H
dt
∂K
F = F( K , K ) = 0
(1)
= sλ F + sλ F
の下での積分

(2)
T
U ( K , K , t )dt
0
の最大化問題を考察する。ここに F( K , K ) は
K と K に関して s 次の同次関数,即ち
∂F
∂F
K i  i + K i
= sF
∂K
∂K i
(3)
を満たしているとする。この最大化問題のラグ
ランジアン L は λ をラグランジュ乗数として
L = L ( λ , K , λ , K , t )
= U ( K , K , t ) + λ F ( K , K )
であり,そのオイラー・ラグランジュ方程式系
は F = 0 と n 個の式
(4)
d ∂U
∂F
h
+ λ  iH
dt ∂K i
∂K
∂U
∂F
H=0
− h i + λ
∂K
∂K i
( i = 1, , n ) から成る。
こ こ で サ ミ ュ エ ル ソ ン の 2 つ の 保 存 則
Ω = 0 と Ω = 0 ,即ち
1
2
(5)
∂F
Ω1 = λK
= const.
∂K i
(6)
Ω2 = λK i
i
∂F
= const.
∂K i
がオイラー・ラグランジュ方程式系(4)の定め
る最適経路上に存在するとする。このとき,
(4)
を
∂F
d
∂F
− λ K i  i − K i hλ  i H
dt
∂K
∂K
∂F
∂F
H
= sλ F + sλ F − λ hK i  i + K i
∂K
∂K i
d ∂U
∂U
H
+ K i h h  i H −
dt ∂K
∂K i
= sλ F + ( s − 1 )λ F
d ∂U
∂U
H
+ K i h h  i H −
dt ∂K
∂K i
∂F
d
∂F
Ω 2 = λ K i  i + K i hλ  i H
dt
∂K
∂K
∂F
∂F
H
= λ hK i  i + K i
∂K
∂K i
∂U
d ∂U
H
− K i h h  i H −
dt ∂K
∂K i
∂U
d ∂U
H
= sλ F − K i h h  i H −
dt ∂K
∂K i
従って最適経路上で F = 0, F = 0, Ω 1 = 0 , Ω 2 = 0
Ω 2 = 0 であるから,(5),(6)より効用関数 U は
d ∂U
∂U
K i h h  i H −
H=0
dt ∂K
∂K i
d ∂U
∂U
K ih h  iH −
H=0
dt ∂K
∂K i
を満たす。即ち,最適経路上で
∂2U
∂2U
K i hK j  i  j + K j  i j
∂K ∂K
∂K ∂K
(7)
2
∂U
∂U
+ i −
H=0
∂K ∂t ∂K i
サミュエルソンの 2 つの保存則を生成するフォン・ノイマン型経済成長モデルの一般化
(8)
∂2U
∂2U
K i hK j  i  j + K j  i j
∂K ∂K
∂K ∂K
∂2U
∂U
+
−
H=0
∂K i ∂t ∂K i
を満たす。
∂f
∂f
f = K i
+
∂K i ∂t
(11)
= K i
∫
∂ξ
dt + ξ
∂K i
より,U は
(7)を満たす U が存在する,即ち U が任意
の K i について(7)式を満たすためには K j の係
 K, t の関数)は零でなければならない
数(K,
ので
∂2U
K i  i  j = 0
∂K ∂K
即ち
U = f( K , t ) + g( K , K )
(12)
となる。ここに f( K , t ) は次のオイラー・ラグ
ランジュ方程式系を満たす(このような K を
含まない K と t の関数 f ( K , t ) のトータル時間
微分はそのオイラー・ラグランジュ方程式系を
常に満たすことが知られている
11, 12)
が,(11)
の最初の右辺を次式に代入してもこのことが示
∂
∂U
hU − K i  i H = 0
∂K j
∂K
せる):
d ∂f
∂f
h  iH −
dt ∂K
∂K i
従って
U − K i
(9)
∂U
= ξ( K , t )
∂K i
2
∂2 f
j ∂ f
+
K
∂K i ∂K j
∂K i ∂K j
∂2 f
∂f
+
−
=0
i

∂K ∂t ∂K i
(13) = K j
とおける。これの K j と t についての微分
∂2U
∂U
∂ξ
K i  i j =
−
∂K ∂K
∂K j ∂K j
∂2U
∂U ∂ξ
K i =
−
∂t
∂t
∂K ∂t
従 っ て U の 中 の 項 f は(7)を 満 た す。(9),
(11),(12)より
i
∂g
∂
K i  i = K i  i (U − f )
∂K
∂K
を(7)に代入すると
が得れれる。これを関数に陽に含まれる変数 t
について積分すると
(10) U = K i
∫
= U − ξ − K i
∂
dt
∂K i
従って(10)より g( K , K ) は K に関して 1 次同
∂ξ
dt + ξ( K , t ) + g( K , K )
∂K i
となる。ξ に陽に含まれる t についての積分を
f (K, t) =
∂ξ
dt
∂K i
∫
ξ
∫
∂U
= K i  i − K i
∂K
∂U
∂ξ
∂ξ
= K i
+
∂t
∂K i ∂t
とおくと
19
∫
ξ( K , t )dt
次,即ち
(14)
∂g
K i  i = g
∂K
を満たす。この同次性より g は(7)を満たす。
実際 g は t を陽に含まないので
∂2 g
=0
∂K i ∂t
20
広島経済大学経済研究論集
これと(14)の K j と K j についての微分
∂2 g
K i  i  j = 0
∂K ∂K
第37巻第 1 号
α = 2, , n (α ≠ 1 ) と し て 用 い る。ま た 関 数
G( K , K ) の変数 K のかわりに新たな変数 Q を
用いた関数を次のように表す:
∂2 g
∂g
K i  i j =
∂K ∂K
∂K j
より直ちに(7)を満たすことが判る。
次に(12)の U を(8)に代入すると(13)より U
の中の項 f は(8)を満たす。g については K j
G = G( K , K ) = G (Q; K ) = G
このとき,旧と新の変数に関する微分の間には
次の関係式が成立する:
Ki
の係数は零:
∂G
∂G
K i  i = Q i
∂K
∂Q i
∂2U
∂g
∂
K i  i  j =  j hK i  i H = 0
∂K ∂K
∂K
∂K
である。従って
(15)
Ki
Ki
∂g
= ϕ( K )
∂K i
とおいて,その K j 関する微分:
より,(8)は
K i hK j
2
∂ g
∂g
−
H
∂K i ∂K j ∂K i
先ず(14)は
∂g
i ∂g
= ϕ( K )
1 = K
∂Q
∂K i
となり g は
(17)
g = ϕ ( K )Q1 + Ψ(Q 2 ,  ,Q n ; K )
とおける。これを(14)から得られる式:
∂ϕ
∂g
∂g
=0
= K j h j −  j H − K j
∂K
∂K
∂K j
となる。即ち(14)を考慮して
(16)
∂ϕ
∂g
K i
− Ki
=g
∂K i
∂K i
ここで U の中の項 g の満たすべき式(14),
(15),(16)より g の形を決定すために次の新
たな変数を導入する:
Q1 =
K 1
K1
∂G
∂G
∂G
= −Q i
+ Ki
∂K i
∂Q i
∂K i
これらの関係式は以下の計算に用いられる。
2
∂ g
∂ϕ
∂g
Ki  i j =
−
∂K ∂K
∂K j ∂K j
∂G
∂G
=
∂K i ∂Q1
Qi
∂g
 i ∂g = g
i = K
∂Q
∂K i
に 代 入 す る と K に 関 す る g の 同 次 性 は Qα
(α = 2, , n ) に関する Ψ の同次性:
Qα
(18)
∂Ψ
=Ψ
∂Q α
に変換される。次に(17)の g を(16)の中の項
K i g / K i を新たな変数を用いて書き換えて代
入すると
∂g
i ∂g
i ∂g
i = −Q
i +K
∂K
∂Q
∂K i
K 1 K α − K α K 1
Qα =
( K 1 )2
Ki
d Kα
 h 1 H (α ≥ 2 )
dt K
= − ϕ Q1 − Qα
以下,α を i = 1, , n と異なる番号を走る添字
+ Q1 K i
∂Ψ
∂Q α
∂ϕ
∂Ψ
+ Ki i
∂K i
∂K
サミュエルソンの 2 つの保存則を生成するフォン・ノイマン型経済成長モデルの一般化
となる。これは(17),(18)より
ϕ Q1 + Q α
∂ K 1ϕ − K 2ψ
∂
ψ
h
H=
h H
( K 1 )2
∂K 2
∂K 1 K 1
∂Ψ
=g
∂Qα
と書き換えられ,これより
であるから
Ki
K 1ϕ − K 2ψ
∂h
=
( K 1 )2
∂K 1
∂g
∂ϕ
∂Ψ
= − g + Q1 K i
+ Ki
∂K i
∂K i
∂K i
と な る。従 っ て Q1 K 1 = K 1 , K α − Q1 K α = K 1Qα
K α − Q1 K α = K 1Qα より(16)の左辺は
ψ
∂h
=
K 1 ∂K 2
を 満 た す 関 数 h( K 1 , K 2 ) が 存 在 し, g = g は
トータル時間微分
∂ϕ
∂g
K i
− Ki
∂K i
∂K i
= g + K 1Qα
g = K 1
∂ϕ
∂Ψ
− Ki
∂K α
∂K i
となり
(19)
K 1Qα
21
∂ϕ
∂Ψ
= Ki
∂K α
∂K i
が得られる。
∂h
∂h
+ K 2
= h( K 1 , K 2 )
∂K 1
∂K 2
となる。従って(12)の U は G = f + h のトータ
ル時間微分 U = G である。
(ii) 3 個以上の資本材の場合:この場合は
g( K , K ) が K と K に関して r 次同次(従って,
(14)より g は K に関して 1 次同次であるから,
K に関しては r  1 次同次である),即ち
ここで(18),(19)を満たす ϕ と Ψ を決定す
∂g
∂g
K i  i + K i
= rg
∂K
∂K i
るために次の 2 つの場合を考察する。
(i) 2 個の資本材の場合: Ψ (Q 2 ; K ) は(18)
より Q 2 に関して 1 次同次であるから
Ψ (Q 2 ; K ) = Ψ (1; K )Q 2 ≡ ψ ( K )Q 2
を満たしていると仮定してその形を決定する。
r ≠ 0 のときは(16)より rg = K i ∂ϕ / ∂K i とな
り g はトータル時間微分 g = h( h = ϕ / r ) であ
り,従って同様に(12)の U は G = f + h のトー
と 書 き 換 え て Q1 = K 1/K 1 と Q 2 = ( K 1 K 2 − K 2 K 1 )/( K 1 )2
タル時間微分 U = G である。
Q 2 = ( K 1 K 2 − K 2 K 1 )/( K 1 )2 を(17)の g ( n = 2 ) に代入すると
r = 0 の と き(16)は K i ∂ϕ / ∂K i = 0 と な り,
g = ϕ Q1 + ψ Q 2
=
K 1ϕ − K 2ψ  1 ψ  2
K + 1K
( K 1 )2
K
となり,また(19)( i = 1, 2; α = 2 ) に代入すると
K 1Q 2
∂ϕ
∂ψ
∂ψ
H
= Q 2 hK 1
+ K2
∂K 2
∂K 1
∂K 2
即ち
これが任意の K i について成立するためには
∂ϕ
=0
∂K i
(20)
従って ϕ は定数(ϕ = c: const.)となり(17)の
中の項 ϕ Q1 はトータル時間微分
ϕ Q1 = c
K 1 d( c log K 1 )
=
dt
K1
で,これと f を併せて U の中の項 f  ϕ Q1 は
∂ϕ
∂ψ
∂ψ
= K1
+ K2
∂K 2
∂K 1
∂K 2
となる。これは更に
G = f + c log K 1 の ト ー タ ル 時 間 微 分,即 ち
f + ϕ Q1 = G で あ る。ま た(20)よ り(19)は
K i ∂Ψ / ∂K i = 0 となり Ψ (Q 2 , , Q n ; K ) は K に
22
広島経済大学経済研究論集
第37巻第 1 号
関して零次同次である。ここで Ψ を
2
n
1
Kn
K2
= Ψ hQ , , Q ; 1, 1 , , 1 H
K
K
n
Kn
K2
 Ξ hQ , , Q ; 1 , , 1 H
K
K
2
n
K 1 dt
0
n
Ψ (Q ,  , Q ; K ,  , K )
2

T
の最大化問題より導かれている。そこでの効用
関数 U は K 1 のトータル時間微分 U = K 1 であ
る。サミュエルソンの 2 つの保存則を生成する
ような,割引率 µ (µ : const.)を持つ更に一般
的な効用関数 U は,定理よりたとえば
と書き換え, R α = K α /K 1 (従って Qα = R α ; α = 2, , n
G = e − µt ci K i ( ci : const.; i = 1, , n )
Qα = R α ; α = 2, , n )とおいて次の定理が得られる:
定理 サミュエルソンのフォン・ノイマン型
経済成長モデルを一般化し,n 個の異なる資本
材 K = ( K 1 , , K n ) と そ の n 個 の 準 資 本 形 成
K = ( K 1 , , K n ) とが K と K に関する s 次同
次の変換関数 F( K , K ) によって関係づけられ
ている(拘束条件(1))とする。このとき,拘
束条件(1)の下での効用関数 U = U ( K , K , t ) の
のトータル時間微分 U = G として見出すこと
ができる。即ち K と K に関する s 次同次の変
換関数による拘束条件(1)の下での
∫
0
T
e − µt ci( K i − µ K i )dt
の最大化問題の最適経路上にサミュエルソンの
2 つ の 保 存 則 Ω 1 = λ K i ∂F / ∂K i = const. と Ω 2 = λ K i ∂F / ∂K i
Ω 2 = λ K i ∂F / ∂K i = const. が存在する。
サミュエルソンの 2 つの保存則 Ω 1 = λ K i ∂F / ∂K i = const.
Ω 1 = λ K i ∂F / ∂K i = const. と Ω 2 = λ K i ∂F / ∂K i = const. が 存
積分(2)の最大化問題における最適経路上に,
在するような最も一般的効用関数 U は次の形
に定まる:
(i) 2 個の資本材の場合 U は G( K , t ) のトー
タル時間微分 U = G ( K , t ) の形である。
(ii) 3 個以上の資本材の場合 U はトータル
時間微分との和 U = f( K , t ) + g( K , K ) の形であ
り, g( K , K ) が K と K に関して r 次同次と仮
定すれば,同様に r ≠ 0 ときは g = h( K ) となり
U はトータル時間微分 U = G ( K , t ) (G = f + h )
の形である。 r = 0 のときはトータル時間微分
と次の関数 Ξ :
Ξ = Ξ ( R 2 , , R n ; R 2 , , R n )
との和 U = G( K , t ) + Ξ の形である。ここに Ξ
は R α ( R α = K α /K 1 ; α = 2, , n ) に 関 し て 1 次
の同次関数である。
注意 サミュエルソンのモデルにおける 2 つ
の保存則は,積分
注
1) P. A. Samuelson, Law of conser vation of the
capital-output ratio, Proc. Nat. Acad. Sci., Appl.
Math. Sci. 67(1970), pp. 1477 – 1479.
2) R. Sato, Theor y of technical change and
economic invariance: Application of Lie groups,
Academic Press, New York(1981).
3) E. Noether, Invariante Variations probleme,
Nachr. Ges. Wiss. G̈ ottingen Math-Phys. Kl. II
1918(1918), pp. 235 – 257.
4) E. Bessel-Hagen, Über die Erhaltungss̈ atze der
Electrodynamik, Math. Ann. 84(1921), pp. 258 –
276.
5) 片岡晴雄,フォン・ノイマンモデルにおける保
存 則 に つ い て,季 刊 理 論 経 済 学 35(1984), pp.
277 – 282.
6) F. Mimura, F. Fujiwara and T. Nôno, An
equivalent class of utility functions in a von
Neumann growth models, Tensor, N. S. 57(1996),
pp. 318 – 324.
7) F. Fujiwara, F. Mimura and T. Nôno, New
derivation of conser vation laws for maximizing
problem under constraints, Sci. Math. Japon. 55
(2002), pp. 383 – 392; e5, pp. 371 – 380.
8) 三村文武・藤原富美代・濃野隆之,最適制御問
題における保存則の新しい導出法とその新古典派
的経済成長理論への応用,広島経済大学経済論集
サミュエルソンの 2 つの保存則を生成するフォン・ノイマン型経済成長モデルの一般化
33(2010), pp. 17 – 27.
9) 片岡晴雄,フォン・ノイマンモデルにおける新
しい保存則について,明星大学経済学研究紀要
21(1989), pp. 1 – 8.
10) H . K a t a o k a a n d H . H a s h i m o t o , N e w
conser vation laws in von Neumann model, J.
Math. Econom. 24(1995), pp. 271 – 280.
23
11) D. G. B. Edelen, Nonlocal variations and local
invariance of fields, American Elsevier, New York
(1969).
12) E. L. Hill, Hamilton s principle and the
conser vation theorem of mathematical physics,
Rev. Modern Phys. 23(1951), pp. 253 – 260.