万国津梁フォーラム 地域と共に創造する安全保障観 メインフォーラム セッション 1:地

万国津梁フォーラム 地域と共に創造する安全保障観 メインフォーラム セッション 1:地域から見た米軍基地 基地所在自治体からの事例発表 村田 光洋 岩国市政策審議官の村田です。今回、沖縄県から声をかけて頂き、岩国市と
してこのような機会に恵まれましたことを心から光栄に思います。市長が参り
お話をさせて頂くところではありますが、本日自民党青年局「有志研修会」が
岩国で開催され、かつて関係のあった国会議員の方々が約 80 人岩国に来られる
ために本フォーラムへの出席が叶いませんでした。したがって、私が市長の命
を受けて発表させて頂きたいと思います。よろしくお願いします。 私が最初に基地政策に関わったのが平成 11 年の頃です。これまでを顧みて、
沖縄県との直接的な関係というのは、実際職務としてはほとんどなかったよう
に思います。公務で初めて沖縄を訪問したのは、平成 22 年 5 月に市長の視察に
同行した時です。昨年、KC-130 空中給油機移駐の件で訪問や連絡調整する中で、
事務的な関係等お付き合いが深まってきました。 申し上げるまでもなく、沖縄と岩国は、同じ米軍海兵隊の部隊を抱える自治
体として大きな共通点があり、同じような課題や悩みもあります。連携や相談
等できることが沢山あったはずですが、これまで事務的なやりとりが少なく職
員間の交流も無かったというのが率直な感想です。 このような状況を変えたのが、KC-130 空中給油機の移駐だと思います。KC-130
の移駐を通じて、岩国市の一職員としても沖縄との間にこれまでにない繋がり
ができ、大変良好な関係が築けたと感じます。KC-130 の移駐に関しては後ほど
申し上げます。 沖縄と岩国の関係は、市長の基地や安全保障に対する基本姿勢にも関係して
いると思います。福田市長でなければ、岩国の状況は今とは大きく異なってい
たことは間違いありません。 市長の人物を言い表す言葉は、
「国会議員のバッチを投げ捨てて、市長に就任
した」です。
「投げ捨てて」のかげには岩国市のためという背景があり、経済界
や女性団体を中心とした多くの市民から出馬要請があったからに他なりません。
平成 19 年頃、私も基地対策課にいたのでよく記憶しています。米軍再編に対す
る前市長の非現実的な姿勢から、岩国市の将来を左右する様々な課題が前に進
まず議会との衝突も激化し、市民の間に閉塞感が漂っている状況でした。岩国
がこのままではいけない、市民同士の対立を解消し心を一つにして岩国再生を
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目指すという思いで立ち上がられたのが、当時のありのままの状況だと思いま
す。衆議院議員任期中には、国防や安全保障政策に関して、国会議員の立場や
政府の視点で考えてこられた経験があります。また地元に米軍岩国基地がある
ことからも、地域の声を大事にし、日米同盟を基軸とした安全保障のあり方や
国防に果たす地方の役割など、ぶれない理念を持っており政治家として責任あ
る行動と発言を実行されています。 岩国市の現状を少し話します。かつて国や県との信頼関係が崩れ、市役所庁
舎建設の補助金が一時凍結され中断する恐れがありましたが、市長就任後は直
ちに解決し市の財政上の懸念は解消されました。また市民、県民の悲願であっ
たが暗礁に乗り上げていた、岩国基地を利用した民間空港の再開交渉もまもな
く決まり、平成 24 年 12 月 13 日岩国錦帯橋空港の名称で開港しました。現在は
岩国羽田便が 1 日 4 往復就航しており、開港以来 1 年 7 ヶ月で約 54 万人と好調
な利用客数を維持し、地域活性化の起爆剤として期待されています。 また良好な住宅環境提供のために開発されたが、住宅需要低迷により事業が
中止した愛宕山宅地開発用地である約 100 ヘクタールの処理問題が、大きな課
題として当時存在していました。この土地を防衛省に売却し、同用地には米軍
の家族住宅や運動施設、野球場・ソフトボール場・陸上競技場が 2017 年頃まで
に整備されることになっています。運動施設については、整備後米軍に提供さ
れますが、市民は身分証明書を提示することなく自由に立ち入り利用すること
ができることとなっており、それを前提として米軍と利用や管理の方法等につ
いて現在調整を行っています。野球場は両翼が 100 メートル、センター122 メー
トル、観客数が約 8,000 人、陸上競技場は 400 メートルでトラックが 8 レーン
あり、800 人収容できます。米軍提供施設を市民が自由に利用できるということ
は画期的なことであり、市としては少しでも早期の整備を望むと共に、整備さ
れた後はこれらの施設を活用して、市民と米軍関係者との交流もより活発にな
っていくことを期待しています。 また時期が前後しますが、市長就任後の平成 22 年 5 月岩国市民の長年の悲願
であった岩国飛行場の滑走路沖合移設事業が完了し、移設後の新しい滑走路の
運用が開始されました。国の事業決定後平成 8 年から工事が着手され、岩国飛
行場に面している瀬戸内海の海を埋め立て、滑走路を 1 キロメートル沖合に移
設しました。それにより滑走路が市街地から遠ざかり、移設前後の騒音データ
を比較すると、うるささ指数(W 値)が数値的に減少しています。また事故等
の不安も軽減し、移設の効果が十分にあらわれている状況となりました。平成
20 年に福田市長になってから、岩国市が大きく動いていることを実感している
のは私一人ではないと考えております。 こうした岩国の現状をふまえ、話題を基地関係及び安全保障のテーマに移し
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たいと思います。私ども岩国市としては、安全保障をテーマに沖縄というこの
場にふさわしい話は、KC-130 空中給油機の移駐についてだと思います。ご承知
のとおり、普天間飛行場から岩国飛行場へ 15 機の KC-130 空中給油機を移駐す
ることについて、実は一昨日(7 月 15 日)、最初の1機 KC-130 が岩国に到着し
ました。当日は私も市長と共に情報収集の一環として、岩国飛行場内で KC-130
移駐の一番機の到着を見守りました。この移駐は、日米両国政府が平成 8 年に
普天間飛行場の全面返還に合意して以降、普天間基地所属の部隊が本土に移駐
する初めての事例となります。移駐については 8 月 31 日までに 15 機全ての移
駐が完了する予定であると説明を受けています。 岩国から出席させて頂き、このフォーラムの日と岩国で移駐が行われている
状況が重なったことは、沖縄と岩国の深い縁を感じております。KC-130 の移駐
については、昨年 11 月に福田市長以下私も沖縄を訪問し、沖縄の現状、特に普
天間飛行場の運用の状況を拝見しました。また、仲井眞沖縄県知事及び佐喜眞
宜野湾市長を訪問した際、知事から「KC-130 の受け入れが理解頂ければ、沖縄
の基地負担の軽減に大きく繋がっていく」、また市長から「移駐は、宜野湾市民
の負担軽減に繋がる」との見解を頂きました。 その時は、まだ市として結論を出す段階ではなかったのですが、市長もお二
人の言葉を重く受け止められたと考えています。沖縄訪問後、市議会中や報道
機関を前に、市長も度々「岩国飛行場と違い、普天間飛行場は市街地の中心部
に滑走路があり、町のど真ん中で航空機の運用が行われている。普天間飛行場
の危険性除去の必要性は誰の眼から見ても明らかであり、同飛行場の全面返還
に向け、岩国としてできるところから実行していく必要がある」と述べていま
す。もちろん、岩国にも移駐に反対の声がないわけではありませんが、沖縄の
基地に係る負担が集中していることは紛れもない事実であり、岩国市としては
多くの市民が沖縄から岩国への移駐に理解されているものと考えています。 また、先日の 6 月市議会の本会議において「沖縄の基地負担軽減を図るため
の決議」が賛成 24、反対 7 で可決されたことも併せてご報告させて頂きます。
全国版のニュース等でしばしば沖縄の基地負担が取り上げられていますが、基
地負担というものは頭では理解しても実際の負担を実感できる市民・国民はそ
れほど多くはないのが現実だと思います。私たち岩国の市民は十分に理解して
いるつもりですが、KC-130 の移駐を契機として改めて、沖縄の基地問題に向き
合えたことは、岩国における今後の基地政策の在り方や、沖縄を含めて他の基
地所在自治体との連携を考える上で大きな意義があったものと考えています。
また沖縄の負担軽減の必要性が全国的にも叫ばれる中、結果として全国に先が
けて岩国が KC-130 の移駐により沖縄の負担軽減に、目に見える形で貢献出来た
ことは、政府も岩国市の判断を高く評価しています。岩国市は国防や安全保障
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政策は基地所在自治体だけの問題でなく、全ての日本国民に関心を持ってもら
えるように国防や安全保障の在り方について、国民的議論のしやすい環境づく
りを国に注文しています。本来国民全体で担うべき基地負担を担っている私た
ち基地所在自治体は、こうした現状と意識を変えていくためにも、さらに密接
に連携し国に働きかけ、国民に訴えていく必要があると考えています。国には
私たちの思いを十分に汲み取り、目に見える形で条件整備を図ると共に、国民
が議論のしやすい環境づくりを具体的に進めて頂くことを期待しています。基
地負担の不平等を解消するために、私たち基地所在自治体で今後も連携して取
り組んで参りましょうという呼びかけをもって、私の話のまとめとします。 最後に、観光の町として岩国の PR をさせて頂きます。岩国は基地の他にも、
観光都市としての顔もあり、昨年 1 年間で約 345 万人の観光客が岩国を訪れて
います。代表は錦川にかかる錦帯橋ですが、木造 5 連のアーチ橋は周辺の町並
みや豊かな自然と融合し、風情ある景観を作り出しています。市は、世界遺産
の登録に向け現在取り組んでいます。また岩国城や岩国のシロヘビなど、他に
も様々な観光資源をもち大変魅力のある町でもあります。交通に関しても先ほ
ども申し上げたように岩国錦帯橋空港があり、陸路では新幹線・高速道路が通
るなど、利便性が非常に良い所です。是非一度、お越しになって頂けたらと思
います。 以上、ご清聴ありがとうございました。 4/4