都庁と都政の探検講座 伊藤久雄(認定NPO法人まちぽっと理事) 1.都庁の組織 ◇ 都庁の組織は時々の知事の意向(政策)によって結構変わる。 ◇ 石原知事時代と猪瀬、舛添知事時代の相違 ▷ 石原知事時代 ・政策報道室→知事本部→知事本局 ・都立大学→大学管理本部→廃止(公立学校法人移行) ・環境保全局と清掃局の統合→環境局 ・衛生局→健康局 病院経営本部の設置(公営企業法の全部適用?) ・都市計画局・住宅局・建設局の一部(区画・再開発)の統合→都市整備 局 ・福祉局→福祉保健局の設置と健康局の廃止 ・新銀行設立本部の設置と廃止 ・青少年・治安対策本部の設置 ・出納長室→会計管理局(特別職の出納長から一般職の会計管理者に変わった-地方 自治法の改正) ・東京オリンピック招致本部の設置→東京オリンピック・パラリンピック招致本部→ 廃止 ・生活文化局→生活文化スポーツ局→生活文化局 スポーツ振興局 ▷ 猪瀬知事時代 ・スポーツ振興局→オリンピック・パラリンピック準備局 ・知事本局→政策企画局 ▷ 舛添知事時代 局再編はなし 2.東京都の財政の特徴 ◇ 予算規模が膨大であること 一般会計と特別会計の合計が 13 兆円を超える…スエーデン並 1 ◇ 歳入は法人二税(法人都民税と法人事業税)が大きく、経済情勢(景気変動)に左右 されやすい。下図…平成 4 年から 3 年間で約 1 兆円減(バブル崩壊)、平成 21 年は 1 年間で約 1 兆円減額(リーマンショック) ◇ 起債依存度が低い(借金が少ない)…資料のとおり、都は税収比 1.1 倍、国は 14.5 倍、 地方財政対策(自治体全体の財政計画)は 5.1 倍 ◇ 一般歳出(公債費と特別区財政調整会計繰出金、税連動経費を除いたもの) 、いわゆる 政策的経費は、福祉保健局がダントツに多い。それは福祉保健局が補助金が多く、局 の一般歳出の約 4 分の 3 を占めるから。 ◇ 東京都の補助金は、一般歳出の約 3 割を占める。 2 ◇ 都道府県の財政構造は直接的な事業費は少なく、補助費等が多いのが特徴。民生費で は、前ページの図のように 7 割近くを占める。市町村の民生費は、扶助費という直接 的な事業費と、介護保険会計などへの繰出金を合わせて約 8 割にもなる。 ※民生費…自治体の歳出において福祉などに支出される費用。生活保護、高齢者福祉、 障害者福祉、児童福祉、国民健康保険・介護保険特別会計への繰出金などである。 (目 的別歳出という) 3.23 区と多摩地区市町村、島しょ町村との違い ◇ 23 区には都区財政調整制度がある。 ▷ 都区制度…昭和 18 年、戦時体制強化のために東京府と東京市を廃止して、東京都と した。23 区(区制度は何回か変遷がある)は都の内部組織とされ、昭和 50 年まで続い た。しかし昭和 50 年以降も特別区は「特別地方公共団体」として今日まで続いている。 2000 年分権改革の時に清掃事務の区移管があり、基礎的自治体(基礎自治体ではない) にはなったが、消防、上下水道、都市交通など、23 区においても都区一体として都が 事業を行っている(大都市行政ともいう)。清掃も最終処分(埋立て)は都の事業であ る。 ▷ 都区財政調整制度 (略) ▷ 調整三税…固定資産税、特別土地保有税、市町村民税法人分をいい、都税として都が 徴収する。なお都市計画税も 23 区は都税である。 ◇ 地方交付税の算定は、都と 23 区は一体として計算され、都も 23 区も交付税は公布さ れない(地方交付税不交付団体という)。 ◇ 多摩、島しょの市町村は個々の自治体ごとに算定される。2016 年度(平成 28 年度)は、 次の 11 団体(10 市、1 町)が不交付団体となっている。 立川市、武蔵野市、三鷹市、府中市、調布市、小金井市、国分寺市、国立市、多摩市、 羽村市、瑞穂町(国立市は今年度から交付団体から不交付団体に移行)。 ◇ 多摩地区市町村は、地方交付税の交付団体と不交付団体とがあるように、財政力に大 きな違いがある。この財政力の違いを調整し、財源を保障するのが地方交付税制度(全 国一定の行政水準を維持する)である。 ◇ 島しょには都の支庁が設けられている(大島、三宅、八丈、小笠原の 4 支庁)。支庁 の基本的な組織は、総務課、産業課、土木課、港湾課の 4 組織。 3 伊豆諸島は明治維新後、足柄県(県都は小田原)、静岡県、神奈川県と移り、1878 年 (明治 11 年)に東京府に移管された。理由は諸説あるが、離島である伊豆諸島は江戸 =東京との間の航路が絶対的な生命線だったというのが最も納得がいく。 ◇ 神奈川県からの移管といえば、多摩 3 郡(北多摩郡、南多摩郡、西多摩郡)は 1893 年 (明治 26 年)に東京府へ移管された。この理由は、東京の水源である多摩川や玉川上 水を東京府の管理下に置くためとされたが、この時期の多摩地域は自由民権運動の中 心でもあり、その解体をねらったという説もある。 ◇ なお、多摩地区の桧原村と奥多摩町は、島しょの町村とともに、都の財政支援(補助 金、交付金など)が大きい(都に依存しているとみることもできる)。府中市と桧原 村、三宅村の財政構造を比較してみる。 歳入構造の違い(2014 年度決算カードから作成) 府中市 地方税 桧原村 三宅村 52.6% 5.8% 7.9% 普通交付税 ― 29.1% 24.1% 国庫支出金 17.5% 7.3% 1.8% 都支出金 10.2% 40.9% 31.0% 4.東京都と市区町村関係 ◇ 23 区との関係は、都区制度と都区財政調整制度につきる。現在の焦点の1つは、児童 相談所の移管問題である。23 区は移管を主張し、都は一貫して難色を示している(5 月 27 日成立した児童福祉法改正後も)。 ※児童福祉法改正 全国に208ある児童相談所は、都道府県と政令市に最低1カ所の設置が義務付 けられている。任意で設置できる自治体は中核市だけだったが、改正法で特別区(東 京23区)も加わった。 ◇ 都と市町村との関係は複雑である。 ▷ 財政・財源 ▷ 23 区との違い(多摩格差という) ▷ 協議機関の不存在(都の 23 区の間には都区協議会がある) 4 ◇ 都と市区町村関係は対等か? ▷ 2000 年分権改革において、機関委任事務の廃止とともに、都道府県と市町村との関係 は上下関係でなく、対等とされた。 ▷ 実際はどうか? 23 区もふくめて、特に財政においては東京都依存が大きいのではな いか。国から都道府県・市町村、都道府県から市町村への財源移譲が必要。 5
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