2 CH3

有機化学Ⅰ演習(重原)平常テスト⑭(2014.07.17)標準解答
1
次の化合物の IUPAC 英名を示せ。異性体表示に注意せよ。
(1)
CH3 Cl
CH3
(2) CH3
Cl
C(CH3)3
(3)
H
CH2CH2CH3
C
Br
CH3CH2
CH3
H
CH3
F
I
C
CH(CH3)2
CH(CH3) 2
CH2CH3
meso-2,3-dichlorobutane (3R,4S)-3-ethyl-4-fluoro-2,2,3,4,5-pentamethylhexane
(3S,4S)-3-bromo-4-iodo-3-methyl-4-(1-methylethyl)heptane
2
(2R,3R)-2-ブロモ-3-メチルペンタン[A と略記する]の立体構造を Sawhorse モデルにより示せ。次に、SN2
と E2 反応が同時に起きると考えて、A を KOCH3 と反応させたときの主な生成物の構造を示せ。なお、たとえ
ば CH3−CH(Br)−CH(R1)−R2 のようなハロアルカンの E2 反応では、置換度が大きい炭素上からのプロトン引
き抜きによる脱 HBr が優先するので、ここでは CH3-からの脱 HBr は起こらないとみなせ。
Br
CH3CH2
C
H
CH3
SN2 生成物
C
CH3
H
H
CH2CH3
CH3
H
(2S,3R)-体
OCH3 CH3
E2 生成物:左上の Sawhorse モデルで、anti-配置の HBr を脱離する。
CH2CH3
H
C=C
CH3
3
R−H
CH3
H+ + R−なる解離平衡の酸解離定数を Ka とするとき、下記のようなデータがある。
① CH3CH2−H:Ka=3.2×10−53
② (CH3)3CO−H:Ka=7.9×10−19
③ (CF3)3CO−H:Ka=4.0×10−6
④ CH≡C−H :pKa=24.7
⑤ CH3CH2O−H:pKa=16.9
⑥ CH3COO−H:pKa=4.7
(1),(2)の小問に答えよ。
(1) ①∼⑥を、酸性の強さの順に、不等号を用いて「(最も強い酸)①>⑤>③>・・・(最も弱い酸)」のように示せ。
①∼③を pKa に直すと、①52.50、②18.10、③5.40。したがって、
⑥ > ③ > ⑤ > ② > ④ > ①
(2) i)∼iii)の各2種の化学種を出発物質とする平衡式を示し、その平衡定数 K の pK 値[≡−log(K)]を示せ。
ただし、たとえば「左に偏りやすい平衡」であれば
のように、矢印の大きさを違えて表示せよ。
i) Na+(CH3CH2−)と CH3CH2O−H
Na+(CH3CH2−) + CH3CH2O−H
Na+(CH3CH2O−) + CH3CH2−H
pK = 16.9 − 52.50
= −35.6
ii) Na+[(CF3)3CO−]と CH3COO−H
Na+[(CF3)3CO−] + CH3COO−H
Na+(CH3COO−) + (CF3)3CO−H
pK = 4.7 − 5.40
= −0.7
iii) Na+[(CH3)3CO ]と CH≡C−H
−
Na+[(CH3)3CO−] + CH≡C−H
Na+( CH≡C−) + (CH3)3CO−H
pK =24.7 − 18.10
= 6.6
4
ギ酸 2.30(mg)を 500.0ml に定容して得られた水溶液の pH を計算せよ。ただし、ギ酸の pKa=3.752、原子
量は C:12.00,H:1.00,O:16.00 であり、必ず立式して有効数字に留意して計算せよ。
Mw(HCOOH)=12.00+2.00+32.00=46.00
全容を 500mL に定容したのだから濃度は、(2.30・10−3/46.00)÷(0.5000)=1.000・10−4 mol/L
Ka=10−3.752=χ2/(1.000・10−4−χ),χ2+10−3.752χ−1.000・10−7.752
χ=[−10−3.752+(10−7.504+4.000・10−7.752)0.5]/2=[1.770109・10−4+(3.133286・10−8+1.770109・10−8)0.5]/2
=1.992235・10−4
pH=−log(1.992235・10−4)=3.7006594
5
Ans 3.700
有効数字は3桁
必要な試薬を補いながら、次の反応の反応式を完成せよ。なお『反応式』においては、
「→」の右辺・左辺
の物質収支が取れていなければならないことに留意せよ。反応式中、異性体のある有機化合物は立体的な構造式
(Fischer 投影式,Sawhorse 模式など)を用いて示すこと。
(1) 脱離反応が無視できる条件であると仮定し、(S)-2-ブロモブタンから(R)-2-シアノブタンを合成する。
H
CH3
CH3
CH2CH3 + KCN → H
CH2CH3 + KBr
CN
Br
(2) 脱離反応が無視できる条件であると仮定し、(S)-2-ブロモブタンから(S)-2-シアノブタンを合成する。
H
CH3
H
CH3
CH2CH3 + KI
→ H
CH2CH3 ――(+KCN)→
I
Br
CH3
CH2CH3
+ KBr
CN
(3) 3-メチルオクタンの 3-位炭素の-H を-OH に置き換えた(S)-体のアルコール[(S)-3-メチルオクタン-3-オール]
を非プロトン性有機溶媒に溶解し、HBr ガスを吹き込みながら常温で反応させる。ただし、脱離反応が無視でき
る条件であると仮定せよ。
CH3
CH3
CH3CH2
(CH2)4CH3 + HBr → CH3CH2
(S)-体
OH
(CH2)4CH3 and
Br
(CH2)4CH3 →
+OH2・Br−
CH3CH2
CH3
CH3CH2
CH3CH2
(S)-体
CH3
(S)- and (R)-3-bromo-3-methyloctane
CH3
(CH2)4CH3 →
+H2O + Br−
この反応はオキソニウムを経る SN1 反応であり、
(CH2)4CH3
Br
C+
(R)-体
中間体のカルボカチオン炭素は sp2 混成で、その
2pz 空軌道の上下からが攻撃するため、(S)-,(R)-体
の両方とも生成する。出発のアルコールが三級な
ので、常温程度で SN1 反応は十分進行する。
6
分子内に二重結合や三重結合があると、HX(ハロゲン化水素)や X2(ハロゲン分子)は不飽和結合に付加してし
まうため、求核置換反応や脱離反応を目的とするときには HX や X2 は使用できない。-OH が置換している 2-位
のキラル炭素が(R)-体である CH3-CH(OH)-CH=CH2 なる不飽和アルコールを出発物質として次の小問のような
反応を行いたい。必要な試薬を補いながら、相当する反応式を示せ。
(1) -OH がシアノ基(-CN)に変換された(S)-体の分子を合成する。
R=CH3-,CF3-,CH3-C6H4-など、Et-=CH3CH2- であるとき、
H
(R)-体
H
CH=CH2 + R-SO2Cl + Et3N →
HO
R-SO3
(R)-体
CH=CH2 ――(+ KCN)→
CH3
CH3
H
CH3
+ (Et3NH)+Cl−
(S)-体
CH=CH2
CN
+ K+(R-SO3−)
(2) -OH がシアノ基(-CN)に変換された(R)-体の分子を合成する。
2回 SN2 反応を行えばよい。上記(1)の中央の化合物に KBr を反応させて(S)-体の臭素化炭化水素を得て、それ
をさらに KCN と反応させて(R)-体のシアン化炭化水素にすればよい。なお、第一段の反応を KBr でなく KI を
用いても可能だが、I−の出入り(注:I−は良い求核試薬であると同時に、良い脱離基でもある)の繰り返しによ
り、ラセミ化する可能性がある。KCl で塩素化すると、第二段の反応が著しく遅くなる。
H
(1)の
中間体
(S)-体
CH=CH2 ――(+ KCN)→
+ KBr → CH3
Br
+ K+(R-SO3−)
(R)-体
H
NC
CH=CH2
CH3
+ KBr