土質技能試験結果の頻度分布の正規性について D - 03

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D - 03
第 47 回地盤工学研究発表会
(八戸) 2012 年 7 月
土質技能試験結果の頻度分布の正規性について
技能試験
頻度分布
正規性
関西地盤環境研究センター
正会員
○楠本
奈津子
関西地盤環境研究センター
国際会員
澤
孝平
関西地盤環境研究センター
国際会員
中山
義久
関西地盤環境研究センター
非会員
中田
有美
1.はじめに
関西地盤環境研究センターでは、平成 18 年より土質試験に関わる技能試験を実施している。また、平成 21 年度より
地盤工学会に「地盤材料試験結果の精度分析と表記方法についての研究委員会」が設置され、平成 22 年には研究委員会
内で技能試験を試行し、平成 23 年には地盤工学会会員を対象とした技能試験が実施された。これらの技能試験結果の評
価には、通常 z スコアが用いられるが、変動係数が大きく試験結果がばらついたものでも、z スコアによる評価で「満
足」となる割合(以下、満足度という)が高くなったり、変動係数が小さく試験結果のばらつきの小さいものでも、満
足度が低くなるという不合理が生じている。z スコアによる評価では、試験結果の分布状態が正規分布であることを前
提としている。そこで、本文は、過去に行われた技能試験結果について、分布の正規性を確認することにより、土質技
能試験のzスコアによる評価方法の妥当性を明らかにするものである。
2.技能試験について
平成 18 年の技能試験は物理試験 4 項目(土粒子の密度試験、土の含水比試験、土の粒度試験、土の液性限界・塑性限
界試験)(参加機関:31 機関、試料:まさ土 S、粘土 C)について実施した。平成 19 年は土の湿潤密度試験、土の一軸
圧縮試験(参加機関:29 機関、試料:セメント系改良土 a、b)、平成 20 年は突固めによる土の締固め試験、土の CBR
試験(参加機関:23 機関、試料:まさ土 M、粘土 N)、平成 21 年は平成 18 年と同様の物理試験 4 項目(参加機関:26
機関、試料:粘土 a、b)である。また、地盤工学会研究委員会による平成 22 年の技能試験は、土粒子の密度試験、土
の含水比試験(参加機関:18 機関、試料:砂 S、粘土 C)、平成 23 年は平成 18 年、21 年と同様の物理試験 4 項目(参
加機関:45 機関、試料:粘土 F、A)について実施された。
技能試験の評価に用いるzスコアは次式で表される。
z=
x−x
(1)
σ
ここに、 x は参加機関の試験結果、 x とσは各機関の試験結果の
平均値と標準偏差である。6 年間の技能試験では、z スコアとして
ISO/IEC 17025 に基づく試験所認定において通常用いられる「四分
位法による z スコア」を求めている。この z スコアを用いて、試験
機関の技能レベルは次の評価区分に基づいて評価される。
| z |≦2:満足、2<| z |<3:疑わしい、3≦| z |:不満足
(2)
この評価は試験結果が正規分布である場合、全データの約 95%が
2σ の範囲に入り、約 99%が 3σ 以内に入っていることが根拠とな
っている。過去 6 年間に行った技能試験において求められた土質
定数について、変動係数と z スコアの満足度の関係を図-1 に示す。
これによると、変動係数が大きく試験結果のばらつきが多いもの
図-1
変動係数と z スコアの満足度の関係
でも z スコアの満足度は高くなったり(領域Ⅰ)、変動係数が小さく試験結果のばらつきは小さいものでも z スコアの
満足度が低くなる(領域Ⅱ)ような不合理が生じていることがわかる。このような不合理を生じる理由を考えるにあた
って、ここでは試験結果の分布の正規性を確認することにする。
3.試験結果の分布の正規性の確認
3.1
目視による確認
過去 6 年間に行った技能試験結果について頻度分布を作成し、目視により分布の正規性を確認
する。代表的なものを図-2 に示す。図-2(a)は正規分布に近いものであり、このように正規分布とみなせる試験結果は
全体の 35%ある。図-2(b)はある範囲のデータが全くないもの、図-2(c)は 2 つの山ができるもので、正規分布とは見ら
れないが、外れているデータを除けば正規分布といえるもので、全体の 58%を占める。図-2(d)は一様分布に近い形状
About the Nomality of Frequency Distribution of Proficiency
Test Results on Soil Tests
Natsuko KUSUMOTO, Kohei SAWA,
Yoshihisa NAKAYAMA and Yumi NAKATA
Kansai Geotechnology and Environment Reseach Centar
199
(a)H20 最大乾燥密度 N
(b)H21 含水比 a
(c)H18 含水比 C
(d)H18 液性限界 C
図-2 ヒストグラム
を示すものであり、正規分布とは言い難い。このようなもの等、正規分布とは言い難いものは全体の 7%である。
3.2
尖度・歪度を用いた正規性の確認
尖度は頻度分布のとがり具合を表す数値、歪度は分布の非対称性を表す数値
であり、正規分布の場合、尖度と歪度の両方が 0 となる。また、次式の JB 値により正規性を判定する方法がある 1)。
n
k2
(3)
× (s 2 + )
6
4
ここに、s、k はそれぞれ歪度、尖度、n は標本数である。JB 値は自由度 2 のχ2 分布に従うので、χ2 検定による信頼区
JB =
間 95%(棄却限界 2.5%)の値を用いて、JB 値が 5.991 以下の場合、正規分布と判定される。表-1 に過去 6 年間の試験
結果について、尖度、歪度を計算したものを示す。この表には、全参加機関の報告値から計算した JB 値と、外れ値
(|z|>2)を除いた機関(|z|≦2)の試験結果から計算した JB 値を表示している。|z|>2 の機関は試験の不備な
どのために間違った試験結果(外れ値)を求めたものと考えられ、この外れ値を除く場合の頻度分布状態を確かめるこ
とができる。
全試験機関の JB 値では 80%近くが正規分布でないと判定される。一方、外れ値を除いた場合、H18 まさ土 S の土粒
子密度、H21 粒度(粘土分含有率)以外の全ての試験結果が正規分布であると判定されている。これらは目視による判
断ともほぼ一致している。
4.おわりに
過去 6 年間に行った技能試験について、頻度分布の正規性を確認した結果、外れ値を除いた試験結果は正規分布と見
なせる。従って、四分位法に基づく z スコアを用いた技能試験の評価が有効であると判断できる。
表-1 技能試験結果の正規分布判定
全体
土粒子密度
含水比
H18
粒度D50
S
C
S
C
S
C
液性限界
塑性限界
含水比
湿潤密度
乾燥密度
H19
一軸圧縮強度
破壊ひずみ
変形係数
最大乾燥密度
H20
最適含水比
設計CBR
a
b
a
b
a
b
a
b
a
b
a
b
M
N
M
N
M
N
全体
z≦2の場合
JB値
正規性
の判定
尖度 k
歪度 s
JB値
正規性
の判定
48.10
6.86
18.31
0.19
4.05
122.47
6.09
142.74
4.59
28.57
38.13
35.82
18.44
59.72
2.39
1.39
0.22
4.20
78.29
7.03
4.03
0.36
1.27
19.91
2.51
5.15
×
×
×
○
○
×
×
×
○
×
×
×
×
×
○
○
○
○
×
×
○
○
○
×
○
○
5.00
0.09
0.03
-0.85
0.05
0.48
-0.46
-1.14
-0.97
0.57
-0.85
-0.19
-0.50
-0.76
-0.06
-0.50
-0.41
0.01
-1.06
-0.31
-0.20
0.89
-0.55
-0.45
-0.81
-1.15
-1.74
-0.53
0.29
0.16
-0.44
0.94
0.60
0.14
-0.04
-0.08
0.10
0.50
-0.13
-0.04
0.29
0.39
-0.38
-0.75
0.05
0.71
-0.23
0.37
-0.40
-0.44
0.03
-0.27
41.79
1.21
0.40
0.95
0.67
3.44
1.80
1.61
1.16
0.33
0.82
0.99
0.36
0.51
0.34
1.04
0.78
2.07
1.19
2.17
0.21
1.00
0.88
0.89
0.63
1.55
×
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
土粒子密度
含水比
粒度
H21
(細粒分含有率)
粒度
(粘土分含有率)
液性限界
塑性限界
土粒子密度
H22
含水比
土粒子密度
含水比
粒度
H23
(細粒分含有率)
粒度
(粘土分含有率)
液性限界
塑性限界
a
b
a
b
a
b
a
b
a
b
a
b
a
b
a
b
F
A
F
A
F
A
F
A
F
A
F
A
z≦2の場合
JB値
正規性
の判定
尖度 k
歪度 s
JB値
正規性
の判定
13.87
64.60
43.53
138.74
7.58
5.93
157.07
122.75
12.05
38.01
90.07
24.53
12.18
541.75
0.29
1.22
94.27
27.07
21.15
0.51
57.91
603.78
13.60
35.91
189.72
253.55
27.17
11.88
×
×
×
×
×
○
×
×
×
×
×
×
×
×
○
○
×
×
×
○
×
×
×
×
×
×
×
×
-1.01
-0.16
-0.55
-1.03
-0.26
-0.02
11.72
10.39
-0.37
-0.22
-0.58
-1.01
-1.37
-1.12
0.30
-0.77
-0.12
-0.46
-0.43
-0.51
-0.34
-0.68
1.20
-0.28
-0.51
-0.77
-0.61
-0.40
-0.45
-0.66
0.13
-0.58
0.16
-0.88
-2.93
-2.84
0.06
0.39
-0.03
0.19
0.02
-0.24
0.19
-0.30
-0.16
-0.46
-0.22
0.39
0.38
0.29
-0.71
-0.47
0.11
-0.26
0.29
0.36
1.75
1.68
0.35
2.40
0.14
2.95
171.85
134.20
0.13
0.50
0.31
1.15
1.25
0.93
0.16
0.68
0.19
1.72
0.64
1.52
1.08
1.27
4.88
1.48
0.52
1.44
1.29
1.01
○
○
○
○
○
○
×
×
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
【参考文献】1)小西葉子・伊藤有希:Eviews の使い方 補足 Jarque-Bera 検定,H.P.資料 http://ykonishi.web.fc2.com/EViews_manual_JB.pdf,2012.3.1 取得. '
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